転生したら、Vtuberのダミーヘッドマイクだったんだけど質問ある? 作:折本装置
部屋の中には、カタカタと新しいパソコンのキーボードをたたく音だけが響く。
『…………』
「さてさて、ここまでできればいいかな」
私が、自分が消えることを想定していると言ったら、しろさんはどう反応するだろう。
まず大前提として何を解説するのかという選定がある。難しすぎる、マニアック過ぎてもだめ。かと言って、眠くなってもらうという都合上簡単すぎるのも良くない。
結果として文乃さんが選択したのは高校の日本史だった。
難しすぎないし、ある程度の人に興味を持ってもらいやすい分野だ。
何より死神系女子高生Vtuberというロールプレイに合致している。
高校生なんだから高校の分野の勉強をするのが当たり前なんだよな。
そう言えば、文乃さん高校もう少しで卒業なんだよな。
卒業したらどうなるんだろうか。
考えないようにしましょう。
Vtuber界の闇を覗き込んでしまったような気がする。
まあ、女子高生を名乗っていても中の人は三十路とかはよくある話だ。
逆に言えば、リアルがどんな人間であったとしても自分のなりたい姿になることが出来るのがVtuberの良さとも言えるが。
もし、私がVtuberになっていたらどんな姿になるだろうか。私はどうなりたいのだろうか。
少しだけ考えて、すぐに答えは出た。
単純な話だ。
答えが目の前にあった。
文乃さんが使っているデスクトップパソコンの待ち受け画面。
そこには、永眠しろさんと、ファンの方が作って下さったダミーヘッドマイクの素材だ。
もちろんこれは私ではない、あくまでリスナー全体に過ぎない。
けれど、これでいい。
これがいい。
今、この姿こそが、ダミーヘッドマイクで文乃さんの相棒として隣にいる状態こそが望ましい。
閑話休題。
今回文乃さんが取り上げているのは縄文時代だ。
日本史の教師には二パターン存在する。
古代から教える先生と、近世近代から教える先生だ。
前者は、古い時代から順番にやることで体系だった勉強ができるから。
後者は受験で重要な近世近代を余裕がある時期に終わらせておきたいから。
古代からやってもらっているのはそちらの方がスタンダードであり
あと、文乃さんに学んで欲しかったから。
なので、今彼女は縄文土器や竪穴住居、貝塚などを調べて朗読用に資料をまとめている。
まとめるというのは意外に難しい。
ただ教科書を丸写しするとかネットの記事をコピペするのとは違い、自分で体系的に知識を理解するのとはわけが違う。
「こんばんながねむー。今日は女子高生らしく勉強解説系ASMR、やっていきますよ」
【きちゃ!】
【始まったぞ、永眠しろチャンネル名物、よくわからない企画系ASMRだ】
「まず、縄文時代というのがいつからいつまでなのかということから説明しておきますね」
縄文時代は、一万五千年前から三千年前である。
当時、人々は狩猟採集を主に生活の糧としていた。
磨製石器で動物を狩り、縄文土器で食物を調理し、貯蔵する。
いわゆる原始時代とは違う。
というか、原始時代というのは歴史学ではなく社会学的な用語らしい。
「実は、この縄文時代以前に旧石器時代というものがあったんですね」
いわゆる、石同士をぶつけ合って出来る打製石器を使って狩猟などで生活する分命だ。
ちなみに、旧石器時代は日本には存在していないという説もあったが、今では旧石器時代に大陸から日本に渡ってきた。
そして、日本に定住して、今の日本人につながっている。
「人の祖先は、アフリカから誕生したという説があります。徒歩によって、長い長い距離を渡って日本まできたんだよね。我々のご先祖様は」
「話を戻そうか。縄文時代は、農耕の始まりとともに終焉を迎えるんだ。狩猟、採取から農耕をして、拠点を作る弥生時代に移り変わるんだよね」
縄文時代でも稲作をしていた形跡はあるらしいが、今のような水田を用いたいわゆる水稲耕作が行われるのは弥生時代になってからだ。
そして、弥生時代と縄文時代の一番大きな違いは土器に表れている。
縄のような文様の土器ゆえに、縄文土器
【ああ、眠くなる】
うん、いろんな反応があるね。
眠そうな反応も、またよし。
難しいことで、眠くなるというのもまた、この配信の意図だからね。
そして、配信が終わりを迎えて。
「今日は、配信聞いてくれてありがとう。もしかしたらまたやるかもしれないから、コメントで感想とかお願いします。じゃあ、おつねむー」
【なんだか不思議な気分】
【これで勉強しようかな】
【結構わかりやすかったな。要点をくりぬいて、まとめている感じ】
【お疲れさまでした!癒された!】
◇
『お疲れさまです。どうでした?』
「楽しかったね!」
文乃さんは、少しだけ疲れたような顔をしつつも、楽しそうだった。
「第二回やりたいね。次は、弥生時代かな?」
『そうなりますね。また一緒にやっていきましょう』
「うん!」
それから、度々ASMRのための勉強会をすることになるのだった。
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