転生したら、Vtuberのダミーヘッドマイクだったんだけど質問ある?   作:折本装置

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第一話『コラボ配信発表』

 Vtuber、永眠(ながねむ)しろ。

 

 

 冥界に引きこもる、死神系女子高生Vtuber。

 ASMRを主軸とするVtuberであり、視聴者を癒すために様々な音を試し、使いこなす。

 デビューから半年以上が経過し、チャンネル登録者も一万の大台に達しようとしている超大物個人Vtuber。

 半年と少し、という活動期間で、どこの企業に所属せずチャンネル登録者数が九千人を突破する。

 中々難しいことではあるが、彼女が、なぜここまで伸びたのか。

 

 

 理由は大まかに分けて三つある。

 

 

 一つは、彼女のプロデュース能力が――厳密に言えば彼女のバックにいる者達のサポートが強力だったからである。

 永眠しろの正体は、総資産何千億ともいわれる早音家のご令嬢。

 当主である父のバックアップを受けて、彼女は最良のものをそろえた。

 機材、配信するためのイラストとLive2D、そして技術的なサポートやスケジュール管理などをしてくれるメイドたち。

 

 

 準備期間の半年と、活動期間の半年、合計一年の間に費やしたコストは、金銭に換算すれば一千万円を優に超える。

 ……因みに、彼女が配信活動で得た収益はその十分の一にも満たない。

 有体に言えば、大赤字である。

 ただ、彼女は金銭的利益を求めて活動をしているわけではない。

 あくまでも人の心を救い、癒したいだけ。

 金銭的損失を恐れなければ、それでいて金が有り余っていれば、活動家はなんでもできる。

 そんなしろさんの採算を度外視したあり方が、今の結果に結びついている。

 

 

 

 二つ目は、活動頻度。

 デビューしてから半年以上が経過し、もう七か月目になる。

 そして、U-TUBEの彼女のチャンネルには、四百以上のアーカイブが残っている。

 半年以上の間、数日の例外を除けばほぼ毎日二回以上配信をしている。

 配信ができなかった日さえも、動画投稿をしていると考えれば、どれほどに彼女が意欲的に活動をしているかがわかるというものだ。

 そもそも、半年間Vtuberとして活動を続けることがどれだけ大変か。

 Vtuberになったものは五万を超えるが、その中で半年間続けられた者は限られる。

 まして、一日二回行動という過酷すぎるスケジュールをこなしたものとなれば、更に限られる。

 そうやって、日々確かに積み上げられた努力の結果こそが、その数値である。

 

 

 そして三つめは、活動内容。

 ASMRというコンテンツは、需要がある。

 それこそ、ASMRだけを聴いている層もいるくらいだ。

 特に、先日行った耳舐め配信のアーカイブに至っては、既に再生数が十万を超えている。

 登録者数が一万人未満の活動者としては、異常値と言える。

 結局、人類が生き続ける限りエロの需要が途切れることはないのだ。

 

 

 最早ファンの中では誰も、彼女のことを新人であるとは思っていない。

 活動してきた期間も、実績も、もう一流の個人勢Vtuberといっていい。

 

 

 そんな彼女に、未だかつてないことが起ころうとしていた。

 

 

 ある日の雑談配信。

 しろさんは、「重大発表をしつつ雑談」というタイトルで枠を取り、配信を始めた。

 サムネイルも、いつもより真面目なテイストで発注した。

 重大発表と書かれたサムネイルを出したことは以前にも一度だけあったが、それより一層事務的なサムネイルである。

 

 

 

 重大発表。

 それは、Vtuberにおいては二種類の意味を含む。

 

 

 一つは、いい意味での重大発表。

 新衣装、リアルイベント、ボイス販売、CD発売など、マルチタレントであるVtuberは様々な吉報をリスナーに伝えることがある。

 そういう意味での、重大発表はリスナーにもおおむね歓迎される。

 

 

 そしてもう一つは、悪い意味での重大発表。

 活動休止や引退など、望ましくない発表。

 特に、Vtuberという業界。

 入れ替わりがとにかく激しい。

 一個人が趣味で始めた、というパターンも多いので仕方がないことではあるのかもしれないが。

 

 

 当然、これはファンを悲しませる発表になってしまう。

 Vtuber界隈における重大発表が、あまりよいものとされないのはそういう理由である。

 まあ、良いとされていないからこそ、重大発表と銘打っておけば注目度が高まるので、Vtuberが人を呼びたいと望んだ時はまず間違いなく使うべきワードになってくる。

 そんなわけで、しろさんももちろん使う。

 そして、配信が始まり。

 オープニングトークとして最近見たドラマの感想を十分ほど話して。

 BGMを消し、ドラムロールとともに、彼女は事前に告知をしていた通り、重大発表を行った。

 その内容とは。

 

 

 ◇

 

 

「と、いうわけで明日はコラボ配信です。コラボ相手である金野ナルキさんのチャンネルにお邪魔させていただきます!」

 

 

【うおおおおおおおおお!】

【初コラボじゃない?】

【楽しみにしてる!緊張するかもしれないけど、なるべく自然体でね】

【ナルキちゃんのところなら納得。活動方針も結構近いしね】

【引退じゃなくてよかった……】

 

 

 Vtuber活動における初コラボ。

 

 

 コラボ配信とは、他のVtuberさんや活動家などとともにU-TUBEなどで配信を行うことを指す。

 コラボ配信のわかりやすいメリットとして、ブーストというものがある。

 コラボ相手のファンとしろさんのファンの中には、どちらかしか知らないという人も一定数いる。

 つまりその分だけ、同時接続数や再生数も上昇し、コメントは活気付く。

 いわばコラボ配信というものは、視聴者にとっては一種のイベント、お祭りのようなものになる。

 初コラボ配信となれば、なおのことだ。

 相手側の視聴者も自分たちの推しを目にすることになり、推しを応援する人が増えることになる。

 人によって、どの程度コラボをするかは様々だ。

 頻繁に行うものもいれば、しろさんのように半年間一切行わなかったものもいる。

 

 

 そんな重大発表に対してファンの反応は、好評。

 純粋に、しろさんの初コラボを祝福し、期待してくれている人が九割。

 後の一割は、スパムと重大発表が悪い知らせではなかったことに安どしている人だ。

 スパムはすぐにモデレーター権限を持ったメイドさんたちによってブロックされていくし、杞憂していた人たちも「心配かけてごめんね」としろさんが謝ったことで沈静化。

 リスナー全体が、コラボを望んでいる状態となった。

 元々、しろさんのリスナーの中にはコラボ配信を望んでいるものもいたのだろう。

 というか、そういう声は結構あったのだが、諸々の事情から半年以上の間コラボをすることができていなかった。

 だが、こうしてコラボ配信は成った。

 

 

 どうして、こんなことになったのか。

 それは、半年記念配信を行った直後に遡る。




第二章のテーマは、コラボとなっております。
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