転生したら、Vtuberのダミーヘッドマイクだったんだけど質問ある?   作:折本装置

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第二話『相談しよう、調査しよう』

 ベッドの上で、ごろごろとスマホを触っていたしろさんが、唐突に私に声をかけてきた。

 

 

「ねえ、ちょっと相談してもいいかな?」

『はい、何かありましたか?』

 

 

 なんとなく、声がかかるかなと思っていたので、動揺はない。

 しろさんは、ベッドから降りるとスマホを見せてくる。

 ASMRをやっていることもあってか、私に対しては距離が近い。

 何度ドキリとさせられたか。

 閑話休題。

 

 

 

 事の起こりは、永眠しろさんのSNSアカウントに、一通のダイレクトメッセージが届いたことだった。

 永眠しろのSNSアカウントは、メイドたちの判断で相互フォローでなければダイレクトメッセージが送れないようになっている。

 これは、一部ファンからの過激なメッセージやアンチからの罵詈雑言などを防ぐという意味合いがある。

 さて、永眠しろのSNSアカウントはメイドさんと文乃さんが共同で管理している。

 が、誰をフォローして誰をフォローしないかは基本的には文乃さんの裁量に委ねられているものらしい。

 彼女は、自分と似たような活動方針のVtuberはフォローするようにしていた。

 つまり、ASMRをメインコンテンツとしているVtuberたちである。

 その中の一人が、金野ナルキだった。

 

 

『この人から、メッセージが来たんですよね?』

「うん、コラボがしたいって」

 

 

 SNSの、彼女のページをスマートフォンに表示させた状態で、文乃さんが説明してくれた。

 金野ナルキの見た目を端的に言えば、金髪金眼の美女である。

カネノナルキ、またの名をカゲツという多肉植物をモチーフにした髪飾りを頭に着けている。

 服装はメイド服であり、早音家のメイドが着ているようなクラシカルメイド服ではなく、ミニスカートで、肩なども露出したコスプレチックなメイド服である。

 他にも衣装があるらしく、部屋着や、メイドとは別のコスプレ衣装なども持っていた。

 立ち絵の頭身を見る限り、しろさんよりはいくらか背が高い。

 百七十センチくらいあるのではないだろうか。

 もちろん、実際のところはわからないが。

 そして、とある部分の装甲が非常に分厚い。

 どことは言わないけど。どことは言わないけど。

 しろさんも割と大きい方だが、金野ナルキさんはしろさんより一回り、いや二回りは大きいだろう。

 端的に見た目の特徴をまとめれば、金髪で巨乳のお姉さんといったところか。

 ふむ、悪くない。

 

 

「……君、変なこと考えてない?」

『いいえ、まったく』

 

 

 慌ててごまかした。

 いや、今はそんなことを考えている場合ではないね。

 

 

『具体的には、どんなコラボをするかとかは言われてないんですか?』

「ああ、彼女のチャンネルで対談企画をやっているらしくて、それに出てみないかっていう誘いだね」

 

 

 対談。

 向かい合って、話し合うこと。

 特定のテーマに沿って語り合うことが多い。

 私も、生前アニメの監督と原作者の対談などは観たことがあった。

 ただ、Vtuberの場合は、特にテーマが決まっているわけでもない限りは二人で雑談配信をすることになるのだろう。

 これまで、しろさんが一度もやってこなかったタイプの配信。

 未知への挑戦であり、期待と緊張がせめぎ合う。

 

『文乃さんはどうしたいんですか?』

「正直、出たいね」

 

 

 真剣な表情で、文乃さんは言う。

 

 

「ナルキさんのチャンネル登録者数は10万を超えてる。ここで、コラボすれば新規にファンを獲得することができるかもしれない。それに、コラボをしていなかった私がコラボをすることで活動の幅は大きく広がる」

『まあ、そうですよね』

 

 

 しろさんの願いは、自身の声でより多くの人を救うこと。

 つまり、そのためには知名度のアップは必須であり、彼女とのコラボをすればそれが叶う。

 それこそ、彼女のファンの内一パーセントが登録するだけで千人増えるのだから、メリットが大きすぎると言える。

 

 

「それにね、コラボ配信を今までしてこなかったし、挑戦してみたい気持ちもあるんだ」

 

 

 しろさんは、半年間今まで一度もコラボをしたことがない。

 それは、ASMRというソロ向けの配信が主体だったこともあるし、彼女が人間関係に消極的だったこともある。

 私と友人関係を築き上げた今、人間不信を、いじめのトラウマを払しょくする意味でも他人とのコラボは重要なステップになりえるかもしれない。

 物理的にも、心情的にも恩恵が大きい。

 それが、今のしろさんの状況だった。

 

 

『……なるほど。そう思いながらも、迷う理由があるんですよね?』

 

 

 誘いに乗るつもりなら、私にわざわざ相談しない。

 コラボをしたくないか、あるいはコラボしたいが躊躇うわけがあるのか。

 まあ、ただの勘だが、後者だろうな。

 

 

「……話がうますぎる、と思ってね」

『あー』

 

 

 金野ナルキさんは、SNSを見る限り、活動期間もファンの数もしろさんより圧倒的に多い。

 文乃さんにはメリットがあるものの、金野ナルキさんにはメリットがないように見える。

 コラボ最大のメリットが、互いのファンを取り込むことによるブーストである以上、当然の考え方ではある。

 その好条件が、逆に不安なのだろう。

 加えて、しろさんはナルキさんのことを知らない。

 ……実際、そういう一見好条件の案件が地雷だったりするからなあ。

 生前、上司の判断ミスのしりぬぐいを押し付けられたのは今となってはいい思い出、でもないな。

 普通に嫌な記憶だわ。

 

 

 さて、問題は文乃さんの悩みにどうアプローチするか。

 ここで、彼女に対してコラボを勧めたり、逆に止めることは可能だ。

 プレゼンにはある程度の自信がある。

 揺れている女子高生を説得することは可能だろう。

 だが、それでは意味がない。

 永眠しろの活動方針は、文乃さんに主導権がなくてはダメだ。

 そのために、相棒としては出来ることは口八丁で煙に巻くことではなくて。

 

 

『じゃあ、一緒に考えましょうか。金野さんの配信を観ながら』

「ふえ?」

『相手を理解するには、その人の配信を観るのが一番ですよ』

 

 

 配信にはある程度、その人の在り方が出る。

 それは内面というわけではない。

 アバターをまとったVtuberが、その腹の内で何を考えているかなどわかりようがない。

 どちらかと言えば、見えてくるのは彼ら彼女らのブランディングだ。

 どういうコンテンツに力を入れるか。

 どういう層を狙って配信をするのか。

 どういう人たちと絡むのか、あるいは絡まないのか。

 どういうことを目標にして活動しているのか。

 あり方を理解すれば、自然と金野ナルキというVtuberが何を考えているのかが見えてくるはずだ。

 

 

 恐怖心は、無知から生じる。

 であれば、彼女の恐怖を和らげることができるはず。

 コラボするのか、あるいはしないのか。

 どちらにせよ、正しい判断をしたいなら恐怖は邪魔になるはずだ。

 そして知って、恐怖を除くためには、動画や配信を観るのが一番手っ取り早い。

 そんな私の考えに、彼女も賛同したのか。

 

 

「そうだね。返事は急がなくていいと言っているし、とりあえずは課題を写しながら今までの対談コラボの配信を観てみようか」

『……課題はちゃんとやりましょうね?』

 

 

 相変わらず勉学に対して一切やる気のない彼女を叱責しておく。

 将来どれだけ役に立つのかわからないが、勉強はしておいた方がいい。

 今は彼女は考えていないようだが、早音家の当主となって経営に携わる可能性だってあるのだ。

 それを抜きにしても、将来の選択肢は増やせるに越したことはない。

 まじめに勉強すべきだと思うのだが……まあいいか。

 とりあえず、文乃さんが選んだ金野ナルキさんの動画を、一緒に観始めた。

 ちなみにだが、同時並行で課題を写そうとし始めたので、そちらは全力で妨害した。

 だから、本当に勉強はしっかりやっておきなさいよ……。

 わからないところがあったら、私が教えますからね。

 




第二章のテーマは、コラボとなっております。
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