転生したら、Vtuberのダミーヘッドマイクだったんだけど質問ある?   作:折本装置

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第十四話『コラボと麻雀』

 先日、永眠しろさんは耳かきオンリーASMR配信を行った。

 結果としては、その配信のアーカイブはかなり再生された。

 コメントや高評価も、今までの比にならないほどつけられており、大成功であると判断できるだろう。

 そして、しろさんはここがチャンスであると判断したようだ。

 今度は、声なしの耳かきASMR配信を行った。

 それもまた、再生数を大きく伸ばした。

 耳かきというコンテンツはやはり王道だけあって需要がある。

 しばらくは、ASMRにおいては耳かきをメインにしていくつもりだと、しろさんは私に語った。

 さて、こうして個人配信でかなりの成功をつかみ取ったしろさんだったが、そこでは終わらない。

 この勢いのままに、さらに永眠しろというコンテンツを広めるための行動を起こすことにしたのだ。

 新たな視聴者層を獲得するために、活動の幅を広げるために、新しくできた友達とまた遊ぶために。

 またしても、コラボ配信をすることになったのである。

 

 ◇

 

 とある日の、午後二十二時。

 ぬるりと始まった配信画面には、ふたりの人物が映っていた。

「麻雀、ですか……」

 一人は、大鎌を背負い、フリル付きのブレザーを着込んだ女子高生こと永眠しろさん。

「そ、麻雀だよ」

 もう一人は、金髪金眼巨乳コスプレメイドこと、金野ナルキさん。

 配信画面タイトルには、「コラボ雑談。ゲスト:金野ナルキさん。トークテーマ、漫画」と書かれている。

 しろさんとナルキさんは、コラボ配信を度々行っていた。

 時にナルキさんのチャンネルで、時にしろさんのチャンネルで。

 時に雑談を行い、時に一緒にゲームをプレイする……というか、介護してもらう。

 明るい性格のお姉さんであるナルキさんと、少し内気な少女ことしろさん。

 二人の組み合わせは、どちらのファンからもかなりの支持を得ていた。

 

 そして今日は、なんだかんだと四回目のコラボとなる。

 今回は、しろさんの枠で、雑談コラボを行う。

 トークテーマは、両者の好きな漫画やアニメについて。

 お互いがお互いの好きなものを、語りあうという配信だった。

 元々、ナルキさんもしろさんもかなり漫画を読んでいる。

 そして、色々と裏でやり取りをする上で、かなり好きな漫画がかぶっていることがわかった。

 というか、私がかなり広く浅くしろさんに勧めたからね。

 なので、ナルキさんが知っている漫画は、概ねしろさんも私も知っている。

 まあ、漫画について守備範囲がかぶっているということで。

 コラボ配信をしようということになった。

 そこで、麻雀の話題になったのだ。

 

 

「おもしろいんですか?やったことがないんですけど」

「うん、普通に面白いし、しろちゃんにもやってみて欲しいなあ」

 

 

 なぜそんな話題になったかと言えば、麻雀を主題にした漫画をナルキさんが好きだといったからである。

 そして、その漫画をしろさんは読んだことがなかった。

 ついでにいえば、麻雀のこともよく知らなかった。

 まあ、それも当然かもしれない。

 麻雀というのは大人のテーブルゲームである。

 大学か、あるいは社会人になってから学ぶものであるというのが一般的な認識だ。

 そんなわけで、現役女子高校生たるしろさんが知るわけがないのである。

 ついでにいえば、麻雀を主題とする漫画は結構成人男性向けに作られた漫画が多く、暴力や未成年の喫煙の描写などもそれなりにある。

 なので、私もしろさんに麻雀を主題とした漫画などをすすめるのははばかられた。

 だからしろさんは麻雀にはおろか、麻雀系の漫画やアニメなどに触れることがなかった。

 

 

【しろちゃん、こういう漫画は読んでないんだね】

【麻雀知らないのは解釈一致】

【ていうか、女子高生になんて物を進めてるんだ……】

【まあ、麻雀は割とナルキちゃんのコンテンツの一つだから】

 

 

「でも麻雀って、Vtuberが配信できるんですか?」

「いやいや、それができるんだよ。この、『天域麻雀』を使えばね!」

「ああ、『天域麻雀』って書いてあるサムネイルを見たような気がしますね」

 

 

 『天域麻雀』は、オンラインでインターネット上にいる相手ならだれでも麻雀をすることができるというアプリだ。

 それなりにはやっているゲームだし、Vtuberさんの中にも配信したことがあるという人は少なくない。

 基本的に無料でプレイすることができることや、アプリをインストールしなくてもブラウザで利用できることがその理由の一つかもしれない。

 

 確か、ナルキさんはもちろん、がるる・るる先生も配信していたはずだ。

 サムネイルだけ見て、該当の配信は見ていないが。

 

 

「あー、いやそうでもないんだよね。私が麻雀のルールを覚えたのは、Vtuberになってからなんだよね」

「そうなんですか?」

「大学とか、全然友達いなかったからね。麻雀を覚える機会すら得られなかったというか……」

「ああ、それちょっとわかります。私も、学校で友達ができたことないので」

「う、うーん、ちょっと私の場合は違うかもしれないね」

 

 

【あっ】

【草】

【なんか空気悪くない?】

 

 

 ナルキさんがテンションを高く保っているために、なんとか空気が悲壮にならずに済んでいるが、内容は本当に悲しいだけの話である。

 しかし、ナルキさんコミュニケーション能力が高いはずなのに、友達がいないとは意外だった。

 何かあったのかな、と思いかけてそこまで気にしても仕方がないと思考を打ち切る。

 

 

「職場とかだと、良くしてくれる人もいたけど、ブラックだったからすぐにいなくなっちゃうんだよねえ。だからそれこそ麻雀教わるような人ってのはいないかも」

 

 

 わかるー。わかるなあ。

 まともな人がいても、そういう人って感性がまともだからすぐに退職するか、精神的にやんじゃうんだよね。

 だからすぐにいなくなってしまう。

 ブラック企業というのはそういう場所だ。

 強者と弱者という価値観の檻に囚われて、人の感情におびえていただけの私然り、そんな私に怒鳴り散らしていた元上司然り、ブラック企業に長期的に努めている人はどこかずれていると思う。

 もちろん、もしかしたら例外的にまともな人もいるかもしれないけど。

 

 

「ま、私もこの『天域麻雀』で麻雀を勉強したタイプでさ、はじめは本当に何もわからなくて、視聴者に教えてもらったんだよね」

「そうなんですか」

「うん、『天域麻雀』にはある程度アシストとかルール説明のチュートリアルもついてるし、何ならある程度は私も教えられるから、やってみたらいいんじゃないかな?」

「ほうほう」

 

 

 金髪メイドさんが、目をキラキラさせながら解説してくるのを聞いて、うちの死神系女子高生さんも興味を持った様子だった。

 

 

「せっかくだし、やってみましょうかね」

「うんうん、せっかくだしやってみて欲しいよ。あと、さっき紹介した漫画も読んでほしいな」

「あ、それはこの配信終わったらすぐに買います」

「決断早いね!」

 

 

 いつしか、空気が悪くなりかけたことなどなかったかのように、話していた。

 トークも全体的には盛り上がり、コラボ配信としては大成功に終わったのだった。

 

 

 

 ◇

 

 配信が終わり、ナルキさんとの通話が終わった後も、彼女は麻雀について考えていたようだ。

 おもむろに顔をこちらに向けて、私に問いかけてくる。

 配信外の文乃さんは、割とのんびりしている。

 配信中、せわしなく画面配置や音量などを調整したりしているからその反動かもしれない。

 

 

「ねえ、君は麻雀やってたことある?」

『まあ、多少はやってましたね』

 

 

 一応、就職活動のためにサークルには所属していた。

 全くコネクションがない状態で、就職などできるはずもないからね。

 そして、そのサークルの先輩に麻雀を教えてもらっていた。

 まあ、賭け麻雀をしていることがほとんどだったので、あんまり参加はしなかったけどね。

 賭け事でお金を増やせるとは思っていなかったしね。

 そもそも、賭け麻雀は自分以外の三人がグルだと絶対に勝てないんだよ。

 例えば、三人で手牌を共有されたらこちらは情報のディスアドバンテージがヤバいことになる。

 さらに、味方に振り込んだりもできるからね。

 少なくとも、そういうのも含めるといかさまされている側は絶対に一位にはなれないんだ。

 




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