転生したら、Vtuberのダミーヘッドマイクだったんだけど質問ある?   作:折本装置

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第三十九話『三女』

 マオ様が通話から抜けた直後に、三人目が入って来た。

 

 

「むむむ」

『大丈夫ですよ、しろさん』

【どうした?】

【あっ(察し)】

 

 

 しろさんは、パソコンを操作して、配信上の画面からロリ魔王様を外し、別の立ち絵を張り付ける。

 紫の艶やかなロングヘア、牛のような角、背中から生えた蝙蝠のような翼。

 それだけ聞けば、マオ様と同系統だと思われるかもしれない。

 だが、実情は異なる。

 まず、頭身が違う。

 マオ様が明らかに幼いとわかる見た目をしているのに対して、今張り付けられた立ち絵は大人の女性であるとはっきりわかる。

 着ている服装は、体にぴったりと張り付き、彼女の妖艶さを掻き立てている。

 そして、一番目を引くのはその豊満なバストだ。

 ナルキさんもすごかったが、彼女も決して負けていない。

 

 

 彼女こそは、がるる家の一人。

 彼女の名前は。 

 

 

 

「どうも、がるる家三女、サキュバス系Vtuberのラーフェ(・・・・)キューバム(・・・・・)です」

「あ、普通の挨拶なんですね?」

「そりゃそうだよ。普通の挨拶しかしないよ、私は」

「ああそうなんですか、よかっ」

「ところでさ、女×3って卑猥じゃない?」

「あの、もう通話切っていいですか?」

「待って待って、冗談だってば」

 

 

 そう、このラーフェ・キューバムさん。

 問題児である。

 

 

 配信中に、暴言や発狂などを頻発する。

 そして何より、今みたいに下ネタをバンバン言ってくる。

 そもそも、今日は違うけど普段の挨拶からしてとんでもないからね。

 

 

 何が『貴方の心をバキューム〇ェラ、ラーフェ・キューバムです』だよ。

 意味わからないからね。

 

 

 ……あの挨拶のおかげで、私は「ねえ君、バキュームフ〇ラって何?」という質問をリサーチのためにラーフェさんの配信を観ていたしろさんに投げかけられたんだからね。

 結局断固としてごまかしにごまかしを重ね、我慢の限界に達した文乃さんが自分で検索して赤面するまで質問攻めは続いた。

 あれ以降、ラーフェさんの配信で聞いた意味の分からない単語は調べない、というルールが私達の間にはできた。

 高校生には刺激が強すぎるよな。

 一応企業勢なのに、よくクビにならないなあと思う。

 

 

「いやー。一対一で話すのって初めてじゃない?」

「そうですね……」

 

 

 ラーフェさんとの一対一のコラボはやめておこうと提案したのは私である。

 何しろ、ラーフェさんのキャラクターはアクが強すぎる。

 耳舐めなど、ややセンシティブな配信もするが、だからといって男性でも引くレベルの下ネタを配信でするような人をしろさん一人で捌くのは、難しい。

 がるる家のコラボでは、場を引っ掻き回すラーフェと、それをたしなめる羽多とマオ様、そしておろおろするがるる先生としろさんによってうまく回っていたりもする。

 今回は、凸待ちという大勢を呼ぶことが前提の企画であること、加えてラーフェさんと話す時間が短いことから、しろさんは問題ないだろうと判断したようだ。

 

 

「ところでさ、好きな体位は何?」

「あの、ちょ、やめ」

「じゃあさ、長いのと硬いのと太いのとどれが一番好き?」

「あの、本当にBANされちゃうんで勘弁してくださあい」

 

 

【最低すぎて草】

【しろちゃん未成年なんですが】

【よわよわになっているしろちゃんかわいい】

【いやドン引きしてるんでしょ】

 

 

「ごめんごめん、とりあえず初手下ネタから入るって決めてるからさ」

「歌リレーではちゃんとしてたのに……」

「あはははは、まあああいうちゃんとした場では、なあ?」

「今日も一応一周年記念だったんですけど」

「いやいや、後輩に対して洗礼をな?」

「洗礼に謝ってください」

「辛辣ぅ!」

 

 

 一見、ただセクハラをしているようにしか見えないが、これもまたがるる先生の時と同じプロレスである。

 ラーフェさんは、自ら突っ込みどころを作ることで会話を回しやすくしているのだ。

 つまり、これも彼女なりの気遣いということなのだろう、たぶん。

 

 

 

「ところで会話デッキなんだけどさ、第一印象と今の印象ってあるじゃん」

「ああ、そうですね。それについて話していきますか?」

 

 

 会話デッキ、しろさんは複数作っていたが、同じものを使ってはならないという法律はない。

 むしろ、同じ質問であっても人によって応答が違うため視聴者も楽しめる。 

 さて、定番と言うが、一体どんなことをラーフェさんは言ってくるのか。

 

 

「そうだねえ、見た目がエロいなって思った」

「……もう本当に最低なんですけど」

 

 

 ……あのさあ。

 普通にセクハラ発言なんだよね。

 別に間違ってないけどさ。

 本当のことだからと言って、何を言っても許されるわけではないんですよ。

 事実陳列罪ですよ。

 

 

「まあまあ、今は印象変わってるからさ」

「へえ、そうなんですね」

「うんそうだよ、ASMRとか聞いてて、声もエロいなって」

「通話切りますね」

「タンマ、私が悪かったからもうちょっと時間をプリーズ」

 

 

 声を落とした状態ではあるが、あわてているのがわかる。

 まあ、大声を出して企画を潰さないあたり、悪い人ではないのだろう。

 普段の配信とかを見たが、結構暴言や発狂が多いタイプのVtuberだし。

 

 

「あとまあ、個人的なことだけどさ、はじめて妹ができたから嬉しかったってのはあるよね」

「ああ、ラーフェさんは三女ですもんね」

「そうそう、私もデビュー当初は叩かれたなー」

「ラーフェさんも、お互い大変でしたよね」

 

 

【そこらへん触れるんか】

【確かに、ふたりとも初期はそれなりに叩かれてたかも】

【ラーフェの場合、下ネタがひどかったからってのもあるけどね】

 

 

 ラーフェさんを含め、がるる家の人たちの経歴は粗方しろさんがリサーチしている。

 その結果によれば、ラーフェさんはデビュー当初含め、そのどぎついキャラクター性と言動から、何度か炎上しているらしい。

 残念ながら当然である。

 

 

「私は、あんまり末っ子って感じのキャラクターでもないと思うからさ、しろちゃんみたいなかわいい子が来てくれたのは嬉しいなあって思ってたよ」

「いつ頃から私を知ってたんですか?」

「デビュー直後かな、ちょっとがるる先生が燃えてたのは知ってたから。ちょっと、気になってね」

「そうだったんですね」

 

 

 ラーフェさんにしてみれば、燃えやすい自分が絡むと事態が悪化する可能性があったため、静観するしかなかったのだろう。

 彼女なりに、妹のことを見守っていたということか。

 

 

 

「だから、こうやってしろちゃんが頑張っているだけでうれしいんだよな。えらいえらいえらいエロい」

「最後で全部台無しですよ……」

 

 

 こほん、としろさんが咳払いをする。

 心なしか、ジト目になっている。

 口元は、緩んでいる。

 三女と四女、まるであり方の違う二人だが、そこには確かな絆があった。

 

 

「ラーフェさんの第一印象は、ヤバい人、ですね。今の印象は、すごくヤバい人です」

「おい」

 

 

 気のせいだったかもしれない。




三女パート、筆が進み過ぎたので、もう一話だけ続きます。

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