or not to [BE]   作:ヤマグティ

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((✎))


見て!ナインズ君が積極的に話しかけてくれてるお陰で2Bも内心楽しそうだよ!かわいいね!




ナインズ君が好奇心抑えないからまたやってしまいました。ナインズ君のせいだから再投稿です。あーあ。



内に潜めたモノ sideB
心音の在処


 

 

 ♦ ♦

 

 

 

 この世界の何処かの領域。暗闇から、真っ白な空間へと染まり上がる。

 

 床に転がりこんだ、二人の赤い少女。

 

 少女達は、角ばった白い世界で頬杖をついて、同じ顔をして向かい合っている。

 

 

『あの二号が生きていたね』

 

『あの二号も生きているね』

 

 

 無表情。そんな冷めた顔色が、感情豊かな声色を喋り始める。

 

 

『驚いたね』

 

『おかしいね』

 

 

 

 

『あの二号は興味深いね』

 

『あの二号も興味深いね』

 

 

 

 

『同じ顔だから、よく似てるね』

 

『同じ顔なのに、似ていないね』

 

 

 

 

 

『私達と同じだね』

 

『私達と違うんだね』

 

 

 

 

 

『でも』

 

『でも』

 

 

 

 

 

 

 

『あの二号は、危険だね』

『あの二号は、危険だね』

 

 

 

 

 

 

 

 ニタリ、少女の口角があがる。

 

『壊してしまおうか』

 

 

 

 

 

 

 

 ニタリ、少女の口角があがる。

 

『毀してしまおうよ』

 

 

 

 

 

 

 

『フフフフフフ フフフフフフ』

 

『フフフフフフ フフフフフフ』

 

 

 

 この世界の何処かの領域が、影に包まれた。

 

 

 ♦ ♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 △▽△▽△

 

 

 

 

 [警告:2Bのバイタルに異常を検知]

 

 [推奨:早急なデータオーバーホール]

 

 アクセス認証キーは、あの資源回収ユニットのコアにある。

 

 そう段取りを覚え、次のユニットを目指そうとポッドに座標をマークさせようとしたが、返ってきたのはその言葉だった。

 

 バイタルに異常? そう言われた割には、実感がない。

 

 過去にもバイタル異常の警告は何度かあった。けれど、その時はわざわざ言われなくても分かっていた。バイタルにきたすレベルの異常なら、自分で認知できない筈がない。

 

 実際、息切れのような物は感じないし、心拍数が異常に早い訳でもない。さっきの戦闘でも、動きは快調だった。

 

「……早く認証キーを集めて塔を破壊しないと……」

 

 塔。なんなのかは分からないが、アレは機械生命体が関わっているものだ。

 

 何の目的で作ったのか知らないが、絶対に破壊する。実感の無い事よりも、そちらを優先したい。

 

 [警告:バイタルに異常を抱えたままの戦闘の継続は危険]

 

 けれど、ポッドは相も変わらず、目の前に滞空してくる。

 

 歩けばその分後退するが、こちらと向き合って眼前を阻んでいる。

 

「……わかった。……一旦、レジスタンスキャンプに戻る」

 

 実感が無いとはいえ、ヒーラーモデルじゃない私に体調についての専門的な知識は無い。

 

 あの無機質なポッドが、下らない嘘をつくとも到底思えない。

 

 データオーバーホール。要は、いつもやっている再起動のセットアップだ。そんなに時間はかからないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「敵の数に対してヨルハ部隊員の数はあまりにも少ない……。少数精鋭と言えば、聞こえはいいが、な」

 

 

「だから、あまり無理はするなよ?」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 [……再起動完了]

 

 [おはようございます。2B]

 

 レジスタンスキャンプの個室。彼の物じゃない、おはようの声。それにベッドから、ゆっくりと上体を起こす。

 

「……司令官……」

 

 懐かしくて、寂しい目覚めだった。

 

 私もヨルハの一員であると、私にも居場所があると、ただ一言であの人は認めてくれた。

 

 たとえ何があったとしても、あの人の下で戦い抜く。そう決めていた。

 

 ……だけど、もうあの人もいない。

 

 

 せめて気を取り直すように、セットアップされた体を動かしてみる。

 

 ……やっぱり、再起動する前とあまり変わっていない気がする。

 

 ポッドの方を見ると、状態が改善したかについての質問を、いつもよりも事細かに、何度も続けてきた。

 

 平気。質問の一つ一つに、いちいちそれで返す。

 

 それでも、ポッドは納得いかないように、まじまじと見るようにして、私の周りをグルグルと飛び交う。

 

 どうしてだろう? 何か焦っているように見えるのも、気の所為だろうか? 

 

 私は何も変わっていないのに、ポッドは見慣れないモノを見る視線を向けてくる。

 

 ……それとも、私は以前と何か変わっているのだろうか? 

 

 

 

「あっ、2B!」

 

 個室を出てくると、丁度ポポルが、此方に視線を向けてきた。

 

 何か荷物を運んでいたようだが、それを一旦置いて此方にやってくる。

 

「……大丈夫? どこか怪我とかはしていない?」

 

 そう言って近づいてくると、突然ポポルまで、キョロキョロと私を見回してきた。

 

「……平気、どうしたの?」

 

 なんだか、過保護なまでに怪我が無いかを確認してくる。

 

 ……いや。

 

 

『ここにいるのは、2Bなのか?』

 

 

 ……それを確認している。そんな風にも見えた。

 

「……うん、うん。平気そうならいいわ。ごめんなさいね」

 

「でも、何かあった時は無理しないで。治療なら任せて頂戴ね?」

 

 ポポルは私が私であると、何の為にか再確認すると、そう念を押して荷物運びに戻っていく。

 

「……?」

 

 訳が分からない。ポッドも、ポポルも。

 

 ここにいるのは私だ。ただ一人残された、最後のヨルハ部隊。

 

『無理をしないで』? どうして? 

 

 私が機械達と戦いに行くのが、そんなに変に見えるのだろうか? 

 

 もう何の目的も、居場所も無い。だったら、私から全部を奪った機械達を徹底的に破壊するだけだ。

 

 例え無意味だとしても。例え無価値だとしても。生き残った命の使い道はそれだけなのに、どうしてそれが奇妙に見えるんだろう。

 

 機械生命体を破壊する。最初からずっと、ただ殺す為だけに作られた兵器。

 

 その筈、なのに。

 

 

 

 

「なぁ、そこのアンタ」

 

 

 呆然としていた所に、横から声を掛けられる。

 

 声の主は、黒がかった灰色のフードを被った、レジスタンスの一人だった。

 

 ……今日はよく話しかけられるな、と感じる。普段は9Sが応対してくれていたからだろうか。

 

「……どうかしたの?」

 

 レジスタンスは、俯いた顔をして話を始める。

 

「……あんたキャンプの外に暫くいたんだろ? すまないが、こいつらを見たことないか」

 

 そう言って、数枚の写真を見せられる。……人探しか、と大体予想がついた。

 

 道中での事を思い返してみる。……が、その顔写真の人物らに、見覚えはない。そもそも誰とも会わなかった。

 

「……申し訳ないけど、知らない」

 

 

「そうか……。同じ部隊にいた仲間たちなんだが、調査に行ったっきり消息がわからなくてな」

 

「……もし、もしも……死んでいるなら、弔うくらいはしてやりたくて」

 

 

「……自分で探しに行かないの?」

 

「行きたいのは山々だが、前の戦いで駆動部分がイカれちまってね」

 

 そう言うと、レジスタンスは足の付け根の辺りを、不便そうな顔をして、動かして見せてくる。

 

 駆動部分。その表面を見ただけでは分かりにくいが、見せようとしてきた動きに嘘はなかった。その軋み震えた動きは、兵士になら誰にでも経験がある。

 

「だが……やはりどうしても気になって、な」

 

 大切な仲間の安否。その不安そうな顔に、あの日の私の姿が重なった。

 

「……わかった。私が探してくる」

 

 

「……いいのか?」

 

 

「最後に連絡が取れた場所を教えて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 工場廃墟。……その地面に倒れているアンドロイドの顔を持ち上げて、覗きこむ。

 

 閉じられた瞳。……もう、死んでいる。

 

 ……せめて、遺品だけでもと、ドッグタグを回収する。

 

 ……だが、それももう既に何回も繰り返していて、タグは束になってしまっていた。これで三人目だ……。あと一人……。

 

 [報告:残存する通信記録に緊急支援要請を確認]

 

「時間は?」

 

 [今から12分前]

 

 ……12分前。ついさっきだ。間に合うには、十分な時間かも知れない。

 

「まだ生きているかも……。助けに行こう」

 

 

 

 座標は、またあの砂漠だった。

 

 誰かを助けに行くために、砂漠を駆ける。それに嫌な記憶がまざまざとしてくる。見ず知らずの相手だが、せめて今回は。そんな想いが強くなっていく。

 

 砂漠、通信反応のあった場所が見えてきた。

 

 だが、そこにいるのは巨大な戦車の機械生命体。嫌な予感はもう確信に変わっていたが、武器を手に取った。

 

 戦車は此方を見つけるや否や、凶暴な声の弾幕を振りまいて、近づけないようにしてくる。

 

 その動きの不確定さ。凶暴ゆえに思考能力に難のある個体なのか、動きが読めない。

 

 だが、逆に言えば、適当に何かの言葉を叫びながら暴れ回ることしかできないようでもあった。

 

 挙動が不安定で危なくもあるが、好都合でもある。あの巨体を足元の悪い砂漠で真っ向から相手にさせられるのは、分が悪い。

 

 あの戦車の装甲では、無理に近づいて刀で斬りつけても効果は薄いだろう。距離を取ることを意識して、ポッド射撃で応戦する。

 

 ただ、戦車の動きがやはり不規則だった。射撃でも上手く標準が定まりにくい。長期戦になるのが目に見えてきた。

 

 距離を維持するためには移動し続けなければならない。だが、長時間稼働し続ければ、この砂漠の気温ではオーバーヒートの危険性があるだろう。

 

 ……どうすればいいのだろう。戦車型の機械生命体ついて、記憶を思い返してみた。

 

 

 そうだ、遊園地にいた個体。あれとはどう戦った? 

 

 あれは確か狭い立地で、おとなしい動きの個体だった。だから9Sがハッキングで更に硬直させて、それを私がポッドのレーザーで貫いた。

 

 ……だめだ、この戦車には通用しないやり方だ。あれだけ動き回っていては、直線上のポッドレーザーは上手く当たりそうにない。

 

 だからと言って、硬直させようとポッドにハッキングさせたら、そもそものレーザーを使えない。本末転倒だ。

 

 本末転倒、無駄。そこで思考を止めそうになったが、それに気づいて、また続けた。

 

 9Sに任せていた分野を、積極的に再現してみようとする。

 

 とにかく手当たり次第に思い返す。なんでもいい。何か有用な情報は無かっただろうか? 

 

 ……。

 

 

 ……そうだ、コア。

 

 あの戦車を破壊した時、機械生命体にコアがある事を知った。

 

 コア。もし、それが機械生命体の心臓部であるとしたら、……私達のブラックボックスと似たようような機能を……、融合炉を担っている?

 

 ソコを破壊できれば、一撃でトドメを刺せるのでは? 

 

「ポッド、あの機械から熱反応の強い位置を探して」

 

 あれだけ動き回っているんだ、もし融合炉なら、かなり暖まっているハズ。

 

 [了解]

 

 [完了。頭部に高熱反応あり]

 

「頭部?」

 

 何処を指して言っている? と思ったが、すぐに分かった。

 

 目のようなヘッドライトと、そして他ならぬ砲口のついた部分。確かにアレは称すならば頭部か、あるいは顔と言うだろう。あそこにコアがある。

 

 駆け回る戦車の隙を見て、近くにある砂丘を駆け上がる。それから戦車の方を見下ろし、タイミングを図る。

 

 砂丘の下からは、こちらを追いかけてきた戦車が登ってきている。

 

 まだ。

 

 戦車の砲口に、エネルギーが収束し始める。

 

 ……まだ。

 

 エネルギーの収束が小さくなって消えると、戦車が一瞬硬直する。

 

 今だ。

 

 赤黒いレーザーの閃光。それを合図に砂丘から飛び上がる。

 

 すぐに背後からは粉塵が舞ってきた。私が先程いた位置を砂煙に変えたようだが、もう遅い。

 

 両手で黒い柄を握り締めると、戦車の頭部を目掛けて落ちていく。

 

 そして、その頭頂に刃を叩き込んだ。

 

「オオオオオッ……ガ……、ガ…ッ……!!」

 

 刀身が針のよう脳天に突き刺さると、戦車は電撃が走ったように軋み震えて、切り裂くような声色で悶え上げる。

 

「ガガガガ……!! アアアアア……!!」

 

 刀を通して、鼓動のような、心音のような物が熱帯びて伝ってくる。

 

 コアを捉えている。と、より力を込めて、刃を更に押し込んでいく。

 

 

「アアア……ア……」

 

 やがて、戦車のうるさい声色と軋みは、嘘のように静かになっていく。

 

 

「アッ___ ァ______」

 

 ただ静かに、か細く震えて。

 

 

「      」

 

 ……硬い装甲を綺麗に残して、戦車は機能を停止した。

 

 

 刃を引き抜き、動かなくなった戦車の頭部で立ち尽くす。

 

 酷くアッサリと終わった。コアを破壊すれば、こんなに手際よく殺せるなんて。

 

 これからもそうしよう。手際よくコアを貫いて、一撃で殺せばいい。それで楽に終わる。

 

「……?」

 

 ふと、ソレに何かを思い出したような感覚になった。

 

 コアから伝ってきた、あの鼓動のような質感。

 

 手に持っている黒い刀。感覚の正体を掴もうと、刀身に映っている姿を覗き込む。

 

 

 

 ここに映っているのは、一体誰だ? 

 

 

 

「……私は……」

 

 

 

「……いや、レジスタンスを探さなきゃ……」

 

 思い出したのはきっとソレだろう。そうに、違いない。

 

 

 

 

 戦車の通った、砂のタイヤ痕。

 

 そこに埋もれてハミ出ている、関節を増やして歪み曲がっている腕を掴み、引きずり出す。

 

「……っ」

 

 その全身は轢き潰された為に爛れていて、あの顔写真とどう比べていいか分からなかった。

 

 [確認:捜索を依頼されていたレジスタンス。]

 

 [生体反応なし。死亡を確認。]

 

 だが、ポッドはソレをそのレジスタンスと断定してしまう。

 

 つまり、助けられなかった。あの暴走した戦車にレジスタンスは為す術もなく轢き殺されてしまった。

 

 レジスタンスから、せめて機体の証明であるドッグタグを取り外す。

 

 これもまた、轢き潰されて歪な形になっていた。名前の表記は文字通り潰れ、あるいは剥げてしまっている。

 

 形見。存在した証明。それさえも、こんな形に。

 

 [報告:以上で捜索を依頼されていた全てのレジスタンスの死亡を確認した。]

 

「……遺品だけでも届けよう」

 

 帰り道の、砂を踏みしめる足取りはとても重かった。

 

 ……そしてふと、黒い刀と、そのタグを見比べていた。

 

 

 

 

 

「その顔をみると……。駄目だったんだな、仲間達は……」

 

 砂漠からレジスタンスキャンプに戻ると、私一人しかいないこと、そしてその顔を見て、説明するよりも早く黒フードのレジスタンスは顔を落とす。

 

「残念だけど、……全員死んでいた」

 

「そうか……」

 

 タグを取り出して、レジスタンスに渡す。

 

「ありがとう。……この花でも添えてやるかな……」

 

 レジスタンスは受け取ったタグを握りしめると、もう片方の手で足元の花を一つ摘み上げる。

 

「花を?」

 

「あぁ……いや。真似事だよ。人類には死んだ者を弔う風習があったらしい」

 

 「だから何だという話だが……。安らかに魂が眠ってほしいという願いを花に込めてな……」

 

「今回はありがとう。世話になったな」

 

 

「……」

 

「……俺は……怪我をして戦場に行かない事でどこか安心してたんだ…………」

 

 

 ふとレジスタンスが去り際に、呼び止めるように呟く。

 

 

「……安心して…………逃げてたんだ……」

 

 

 ……どうして、その後悔を私に呟いたのかは分からない。

 

 

 けれど、その懺悔がもう届かない事だけは、互いに分かっていた。

 

 

 

 

 

「弔う……風習……」

 

 次の資源回収ユニットを目指そうとした足取りが、ふと止まる。

 

 先程のレジスタンスから聞いた話がずっと頭に残っていた。

 

 弔う。私はあまり人類の文化に詳しくない。弔いという事がどんなことなのか、よくは分からない。

 

「……ナインズ……」

 

 ……だけど、安らかに眠っていて欲しい。その願いは良く分かる気がした。

 

 背に浮かんだ、黒の柄に目を向ける。

 

 

 ……決めた。あの場所に向かおう。

 

 きっと、彼処が一番ふさわしいから。

 

 

 

 

 

 

 

 エレベーターが止まり、扉が開く。

 

 何処か地下深くの洞窟。地面一帯に咲いた白い花々から、淡い光が放たれ、暗い洞窟の輪郭を映し出している。

 

 『月の涙』。それが、この花の名前。

 

 ここには一度、9Sと共に訪れた事がある。とある依頼の、その終着点がこの場所だった。

 

 ……とても静かで、美しい場所だと思った。

 

 安らかに眠れる場所、そして花に弔いの意味があるのなら、……きっと、ここが一番ふさわしい。

 

「ナインズ」

 

「私には、弔うということがどういう事なのか良くわからない。けど、もし私達にも魂があるのなら……ここで……」

 

 黒の刀を地面に突き刺す。黒い色は、淡い暗闇へもの静かに溶け込んでいく。

 

「……」

 

 もう一つ、ポッドからある物を取り出させて、受け取る。

 

 

 月の涙の髪飾り。

 

 

 とある依頼の、そのお礼に貰ったもの。

 

 君はいつか、私に似合うと言ってくれたけれど……、結局、一度も身に着ける事は無かった。近接戦闘モデルの私だと、きっと駄目にしてしまうだろうと思ったから。

 

 髪飾りを柄に括り付ける。私が持っているよりも、ここで君と共にした方がいい。

 

 

 月の涙。この花を探して、各地を巡った。

 

 砂漠。アダムとイブ。ここから因縁が始まった。

 

 遊園施設。あの歌姫と共に戦い、力を合わせた。

 

 商業施設跡に、森の国。王サマの兵士達に囲まれ、背中を預けあった。

 

 水没都市。あの怪獣とは接戦だった。君がいなければ、きっと勝てなかった。

 

 

 白く、柔らかな花弁の一つ一つが放つ淡い光、それに包まれて、沢山の思い出が浮かんでくる。

 

 ……墓標に背を向けて、歩き出す。

 

 

 この花が、私達の旅の記憶。だけど、それはここに置いていく。

 

 まだ、私にはやるべき事があるから。

 

 

 だから……それまでは少し待っていて。

 

 

 

 

「……今度は、私が会いにいくから」

 

 

 

 

 ふと、立ち止まる。

 

 

 月の涙は、願いが叶う花だと言っていた。

 

 ……もう、墓標には振り返らない。

 

 だけど最後に、これだけを願い。……祈った。

 

 

 

 

 

 

「おやすみナインズ。良い夢を」

 

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