アニメが今からでも楽しみだから再投稿です。
オープニングどんな曲になるのかな。映像に天使文字と16進数が所々に散りばめられてそう。
残りの資源回収ユニットは、水没都市と遊園地にそれぞれにあった。
どちらに向かうか迷ったが、水没都市にした。
バンカーの無い今、アクセスユニットの転送装置がいつまで使えるか分からない。離れた位置にあるものは今のうちに処理すべき、というポッドの提案だった。
その警鐘通り、転送装置は水没都市への移動を終えると同時に不調のアラートを発した。これ以上使うと、転送先の義体にエラーが出るかもしれない。いっそ使い切ってしまって良かった、と考える事にする。
水没都市のユニットは、あの森の奥深くへとあった物とは違い、すぐ目の前に見えてきた。
『こんにちは! 資源回収ユニットです。防衛体勢に入ります!』
あのアナウンス。森の国の時と全く同様に、外壁に防衛の為の侵入口を作り上げる。
また解体用の機械達がいるのだろうか、と。今からでも臨戦の為に意識を張り詰めた。
だから、すぐにソレには気付くことができた。
視界の端に映った、海外沿いに散らばる黒い残骸。
地面に突き刺さるようにしてあったソレは、墜落した飛行ユニットだった。
ポッドは何かに気付いたように、命令するよりも先に残骸を調べに行くと、その場から此方に伝えてきた。
[報告:当機体より9SのIDを確認]
9Sの飛行ユニット。こんな遠い所から、あの橋の先まで歩いて?
……あのウィルス汚染に犯されていた赤い瞳。その苦痛の中で、何故それでも体を動かして、あんな遠くへ?
もう分からない。9Sが最期に何を思っていたのか。
[飛行ユニットのメモリー内に未送信メッセージを確認]
未送信のメッセージ。いつの物だろう、私を逃したすぐ後か、それとも墜落してからか。
……でも、きっと最期だと思って、何か言い残そうとした事は予想できた。
君はそういう事をする。まだ聞いてもいないのに、不思議とそんな確信があった。
聞きたい気持ちと、聞きたくない気持ちが交差する。
聞くか、聞かないか。
「……再生して……」
『こちらヨルハ部隊所属9S。この録音を聞いた人がいるなら、ヨルハ部隊所属2Bに会ったときにこう伝えて下さい』
『単独行動が主な任務である、僕らS型モデルにとって……』
『…………』
『……いや』
『九号S型モデルにとって、あなたと共に過ごした日々は……例えほんの少しの間だけだったとしても……僕の大切な、大切な「宝物」でした』
『本当はもっと話したい事。聞きたい事、一緒にしたかったことがもっと……もっと沢山あったけど…………』
『……一緒に居てくれてありがとう。2B』
[メッセージ終了]
宝物。
「ナインズ……」
その言葉へ呼んだ声に、もう返事は帰っては来ない。あの姿も、形も無い。
「……行こう」
けれど。せめてその言葉だけを記憶空間の奥底に、……そっと宝物のようにしまった。
早く終わらせようと、資源回収ユニットの方へ向かう。
辿り着いた入口には、またあの天使文字があった。
[魂の箱。と記載]
文字を見上げた私へ、質問するよりも早くポッドは答えた。
「魂……」
9Sの魂は、彼処で安らかに眠れているだろうか? そう願いたい。
開いた入口に、迷わず一歩踏み入れた。
早く終わらせよう。機械生命体も、あの決着も。
それで、私も早く会いに行くんだ。
ユニットの内部は、その外装と同じように、森の国の物と全く変わっていなかった。
何も変化が無い。だから、また敵がいるんだろう。
そう結論付けていたので、その静音に意表をつかれた。
「……敵がいない」
広間には、ポツンと、たった一つの箱が置かれているだけだった。
何か特殊なロックをつけられた箱。これには見覚えがある。
確か、9Sがハッキングで開けていた箱だ。見つけると、手当たり次第に開けていたのを思い出す。
ポッドは私の判断を聞くよりも早く、さっさとハッキングで解除を試みようと、その箱に向かっていく。
「あ、待って」
だから何で呼び止められたのか、それにポッドは疑問そうに硬直と無言をして、クルリと振り向いてきた。
「私にハッキングさせて」
ポッドの持つハッキングへのアクセス権限。それをヨルハ機体本人に移す事ができた筈だ。
[疑問:B型モデルの機体がハッキングを行う必要性]
「いいから」
[警告:スキャナーモデル以外のハッキングインターフェイスへのアクセスは、逆ハッキングされる危険性から推奨されていない]
「この程度の箱なら問題ないよ。……多分」
ポッドに無理矢理を言って強請る。
この単純そうな箱へのハッキングなら、私でもポッドでも、どっちがやっても大して変わらないだろう。
そう頭では分かっているが、……どちらでもいいのなら、と。この機会に9Sと同じ事をしてみたかった。
[了解。ハッキングインターフェースへのアクセス権限をヨルハ機体2Bへ付与]
その意図を汲み取ってくれたのか、それとも単純に命令として受け取ったのか。ポッドからアクセス権を渡される。
ポッドを介する必要はあるが、これで私にもハッキングが出来るようになった。
早速、箱に軽く手をかざしてみた。
「……君はいつもこんな大変な事を」
ハッキングの空間から戻ってきて、開口一番に出てきたのは、その言葉だった。
彼のもう一つの戦場だった、ハッキング空間。その中での戦闘は……。
……なんというか、とても手先の器用さを求められて……、それでいて面倒だ。
初めて触れてみたのもそうだが、その細かな動きを求められる緻密な作業感のせいで、何度も弾かれて失敗してしまった。
なるほど。ハッキングがS型モデル以外に推奨されない理由が何となく分かった。近接戦闘モデルには、明らかにこんな繊細な作業は向いていない。
ただ、その手こずった感覚に不思議と不快感は無かった。私の知らなかった、君と同じ戦場で戦っている。その感覚が、満足感のような物を感じさせていた。
ようやく解除された箱が、バネで吹き飛んだような勢いで開かれる。
だが、苦労して開けた箱の中には、……何も入っていなかった。
またあのアナウンスに弄ばれているのだろうか? そう思った時、エレベーターの降りてくる音がしてきた。
「……そういうことか」
逆だ。ハッキングによる攻撃で、ユニットのシステムを破壊する。それがこのユニットでの戦い方なんだろう。
……でも、ユニットのシステムプロトコルを、わざわざ箱に搭載しておいて、その上で破壊させるなんて。
森の国のユニットなら、『資源』の解体をさせながら、ついでに私の破壊も狙う。の意図で分からなくもない。
けれど、この箱にユニットの弱点を搭載しておくのには、……何の意味がある?
機械生命体のやることに意味なんてないから。と、何度目かそれで片付けようとしてみる。
……だが、パスカルや、特にアンドロイドと似通った特徴を現した、アダムとイヴ。
機械生命体の中にも、一部、意志らしい物をもって行動する者がいる。それは認めざる負えない事実だった。
アナウンス。あの塔の機械生命体にも、何か目的があって行動しているように見える。
そもそもの、私を回収ユニットへ巡らせている理由。その目的は一体なんだ?
何か『塔』についての情報があれば。そう思っていた矢先に、ソレは手に入った。
ハッキングに一通り慣れ、スムーズになってきた箱の開封作業。その何個目かを開けた時、その箱には空洞ではなく、何かデータが入っていた。
それは正しく、今求めていた『塔』についての情報。
「射出?」
詳細については良く分からなかったが、塔は回収した残骸から生成した何かを射出するための装置である事が分かった。
「あの塔は……、砲台……?」
[情報不足の為、否定も肯定も不可能]
どうやら、空に向かって何かを撃ち出す気らしい。でも、何を狙って?
空……。……いや、宇宙空間?
宇宙空間にあって、機械生命体が狙うもの。
「まさか……月面の人類を狙って?」
月面に向けた砲撃。まさか、とも思うし、機械生命体ならやりかねない、と思いもした。
思い返してみれば、ずっと疑問に思ってはいた。
それはパスカルの村に初めて訪れた時に、道中でみた月面への資材輸送船のこと。
何故、月面人類に向けた資材輸送船を、機械生命体は落とさないのだろうか?
その疑問に、コレで答えが出た気がした。
わざわざ資材の供給を断ち切る必要なんて無かったんだ。最終的に、月面ごと破壊する手筈を整えていたのだから。
「……砲台なら、尚更破壊しないと……。月面の基地が……」
月面基地を守らなければ。ヨルハ部隊はもう壊滅した。だが、それ以前に私は人類の為に作られたアンドロイドの一人だ。
人類の為にも、戦う意義がある筈。その意志を改めて確認した。
だけど、その決心は次に手に入れた情報に上塗りにされてしまった。
「ブラックボックスが……、機械生命体のコアでできてる……?」
極秘の文字が一際大きく記された、そのデータ。
それはブラックボックスが、機械生命体のコアの流用で作られているという記載だった。
ブラックボックス、それはヨルハ機体の融合炉……、即ち、心臓部を担う機関。
その名の通り、内部構造については謎が多い。ヨルハ機体当人らにすら、一切の情報は与えられていない。
今までずっと、それについては最新兵器故の機密性として、然程おかしな話だとは思っていなかった。
だが、これでは……。
「これは……まるで……」
私達ヨルハ部隊は、敵の技術で作られた兵器?
それが、一切の情報が与えられていなかった理由?
唯一にして最大の疑問へ、その情報がピッタリと当てはまりそうになる。
つまり私達は、あれだけ殺し合い続けた機械生命体と、……同じ?
当てはまりかけたピースを、そこで食い止める。
そんな筈無い。そんな筈、無い。……と。
[警告:敵の偽造情報による撹乱の可能性]
ポッドが立ち止まったままの私を、叩き起こすように言葉を放つ。
偽造情報。そうだ、この情報を用意したのは機械生命体側だ。
そもそも本当に機密情報なら、何故奴らがヨルハ部隊の機密を握っている?
偽造情報。きっと、そうに決まっている。
だって私は、9Sは。私達は、機械生命体とは違う。
仲間と共に過ごして、共に戦って、泣いて。笑って。怒って。ときには憎んだりして。
平和を望んだり、孤独に寂しさを感じたり。
見えない希望に縋ってみたり、祈りを捧げてみたり。
人類に憧れたり。家族や、兄弟に憧れてみたりして……。
それから……それから……。
……あぁ……でも、それって……。
……いや、違う。
違う。違う違う……!
私達と違って、機械生命体のやることに意味なんてないんだ。
そうだったでしょ。
そう言ってたでしょう。
ねぇ、そうなんでしょうナイン__________
エレベーターの扉が開いた音。それでようやく、視界は前方へ戻る。
また屋上に配備されていたユニットのコア。
動揺していたからか、それともまだ追憶を求めていたのか。
森の国と同じように、そのまま破壊すれば良かったのに、無意識にハッキングを仕掛けてしまっていた。