なんでまた作ろうと思ったのかですか?
だって2Bをナインズ君関連でイジメるのって、楽しいじゃん?って訳なので再投稿です。
胎動する終焉
私はいつまで戦い続けるのだろう。
この血塗られた、戦場の渦の中。
私はいつまで守り続けるのだろう。
終わる事のない、無限の戦争の中で。
私はいつまで信じ続けるのだろう。
欺瞞と虚飾に満ちた、この世界を。
私はいつまで嘘をつき続けるのだろう。
その暗い未来に、絶望し続けながら
白の契約
「敵ネットワーク基幹ユニットである『アダム』及び『イヴ』の撃破が確認された」
「現在、敵の指揮系統は一時的な混乱状態にある」
「この好機を逃さず、人類軍は機械生命体に対し総攻撃をかける事が決定した」
「無論、我々ヨルハ部隊も例外ではない」
△▽△▽△
エイリアン達は、既に滅んでいた。
アダムとイヴも、失われた。
ネットワークを保有していた彼らを失った機械生命体達は、混乱状態にある。
機械生命体達との戦争が始まってから、もう何千年もの時が過ぎた。
人類の故郷たる地球。それを取り戻す為に散っていったアンドロイド達。
多くの物を失いながらも今日まで戦い続け……、そしてその中に訪れた、絶好のチャンス。
決戦兵器たるヨルハに、それを逃す道理は当然ない。
機械生命体を打倒し、地球を人類の手に奪還する。
機械生命体。アンドロイド。
その命運をかけた、決戦が始まろうとしていた。
自室、重装アーマーを手際よく身に纏っていく。
背中の冷却装置の機能をチェックし、アーマーが身体に滞りなく身についているのか、手を開いたり閉じたりと稼働させて、念入りに確認しておく。
これから総攻撃の為の部隊投下が始まる。
今は先行部隊、9S達スキャナー部隊が先に地上に行って、戦闘モデル部隊が進行するための、妨害を敵の空中戦力にかけている。
私はその後続。恐らく、先行していた戦闘部隊の遊撃に当たる事になるだろう。
ヨルハ部隊総動員の、大規模な戦闘だ。敵味方、それくらい数が多くなれば、苛辣で、過酷な戦場になる。それを考えれば……。
……必要に応じた場合の発生も、視野に入れなければならない。
出撃の開始まで、念入りにチェックを行っておく。
しておいて損はない。それくらい重要な任務になるのだから。何が起きてからでは遅い。……9Sだって、この作戦に参加しているのだから。
最終奪還作戦。大規模進行。
この作戦が成功すれば……、きっと地球の奪還に大きく近づく。
何千年にも渡った戦争に、遂に終止符を打つことが出来るかも知れない。
地球の奪還。人類軍も、ヨルハ隊員達も、その悲願達成に向けて奮起している。
……。
でも、私の気分はいつもとそう変わらない。
高ぶることもなく、大きく沈むこともない。
先行きの見えない……何か暗いものが、いつものように視界や頭の中に巡っていた。
『思い返せ! 故郷を奪われた苦しみを!』
最後にヘルメットの調整。その時、佳境に入った司令官の演説が一際大きく流され、聞こえてくる。
『我々は諦めはしない!』
『海を、空を、大地を……』
『おぞましき機械生命体に奪われた地球を我々は取り返す!』
『本作戦の成功をもって』
『今ここで、この戦争を終わらせるのだ!』
『人類に栄光あれ!』
……あの言葉だ。耳を塞ぐように、ヘルメットを被る。
『『『人類に栄光あれ!』』』
だが、ヘルメット越しでも、隊員達のその言葉は、やはり鮮明に聞こえてきた。
『……人類に、栄光あれ』
欺瞞と不信にくぐもった、小さな声だった。
飛行ユニットの格納庫に後続担当のヨルハ隊員達が集まってくる。
自分と同じく、重装アーマーに身を包んでいる。恐らく通信しなければ誰が誰だか判別するのは難しいだろう。
けれど幸い私が後続部隊として合流する相手は9Sだけ。彼らS型にはそもそも着るようなアーマーは無いし、体格からの判別は容易だ。
9Sは上手く妨害任務を進められているだろうか。まだ予定より早いかも知れないが、なるべく早く向かおう。
飛行ユニットに向かい、歩き出す。
そうして、ゲートを抜けたその時。
「……?」
ふと、違和感を覚えて振り返った。
……ヘルメットの異常だろうか。
ヘルメットのレンズを、軽く指で拭うと、あとは手早く慣れた動作で飛行ユニットを着込む。
そうして、いつでも発進できるその数秒前。
……もう一度、やはり先程の場所を見つめる。
これもやはり、そこには何も無い。精々いるのは飛行ユニットに向かう、他の隊員達だけ。
「……」
……バンカーに、あんなヨルハ機体はいない筈だ。
やっぱり、ヘルメットか自分の視覚不調だろう。
さっき一瞬、小さな女の子と入れ違ったような気がした。
▲▼▲▼▲
上空、沢山の火球が空から降ってきているのが見える。
「……。……厄介になるな」
若草の生い茂る平原、近くに転がる機械生命体の残骸と、あの火球を交互に見比べる。
……いや、あれは火球じゃない。降下してくるヨルハ部隊の、成層圏に突入した飛行ユニットだ。
ついこの前から、機械生命体が突然混乱状態になった。何があったのかは知らないが、統制を失っていたようだった。
理由は分からずとも、殺しやすいのは都合が良かった。
……だが、それを叩きにヨルハ部隊が大勢来るとなれば話は別だ。
機械共の少ない所に行こう。そこなら、掃討に当たるヨルハ達と出くわさずに済むから。
長髪を揺らして、橋の方へと振り返る。橋の先にあるのは、あの何かの建物の跡地。
その先の、奥地にある森なら……。
……いや、行けないな。あそこはかえって危険になる。
理由は他でもない。……王を殺したからだ。
あの幼くて、出す手も足もない、……無抵抗だった王を。
……あれは機械生命体だ。機械生命体だった。だから殺した。それだけだ。
……だが、王を慕っていた森の兵士共からは、当然の報いのように、……恨みと顔を覚えられた。
……。
……暫くは、あの建物の中に隠れていようか。
今日は大人しくしていよう。久しぶりに、少し眠る事にする。……気は進まないが。
「……ッ!!」
そうして橋に一歩踏み入れるその時、突然に殺気立って、振り返る。
だが、……そこには勿論、何も無い。
野生動物と機械生命体だけが、遠目に見えるだけ。
……気のせい、か。
だが、確かに見られていたような気配が……。
「……」
再び、空に見える火球達を見つめる。直にこの地上に辿り着くだろう。
ただ鋭い視線で見つめると、再び歩き出した。
何かが、始まろうとしている。そんな気がした。
△▽△▽△
『2Bさんの作戦開始地点は廃虚都市の南西にあります』
『飛行ユニットで向かい、現地の9Sさんと合流して下さい』
『了解』
『前日の戦闘で破損した武器も修復して搭載して置きました』
『到着時には既に全体の作戦が始まっていますので、気をつけてくださいね』
『……ありがとう』
その気遣いに返事をして、6Oとの通信を終了する。
現地で9Sと合流。具体的な作戦内容はそこで聞くことになるだろう。
恐らくは遊撃部隊。私と9Sはチームと言えど、二人しかいない。
精鋭部隊も大勢いるだろうし、まさか真っ向から多数を相手にさせられる小隊のような戦闘にはなら無いだろう。……多分。
今やるべき事は、迎撃されずに飛行ユニットで9Sの所まで向かう事。それだけ。
『月面人類会議より地上で奮闘しているアンドロイド諸君に告げる』
『我らが誇る精鋭ヨルハ部隊が、敵ネットワークユニット、アダムとイヴを撃墜した』
『この勝利は地球奪還にむけての大きな一歩となるだろう』
『我々月面の人類も喜びの声に満ちている』
『今後の更なる諸君らの健闘に期待している』
『人類に栄光あれ』
人類会議から、隊員に直接あてられた連絡。
それが贈られてくる程に、この大規模進行が重要な作戦であると伝わってくる。
それもその筈だ。人類が地上に舞い戻る、その悲願が目の前にあるのだから。
それに対して人類再興への希望の意志が、ふと心の何処かに湧き上がってくる。
創造主たる人類への、アンドロイド達の存在意義が果たされようとしている。
ふつふつと湧き上がる、勝利への切望。
地上にやってくる人類への羨望。
今まで戦ってきた、賭してきた全てが報われる。
この作戦ですべて終わらせる。その決意が湧き上がってくる。
……その筈だ。
その筈、なんだ。
……けれど、私は……。
……。
……9Sが、いつか堅苦しいと評したあの人類会議の声色。
いつからだったろう。酷く無機質な声のように感じてきていた。
アンドロイドの創造主たる人類。
捧げるべき命の、栄光。
……その人類がどんなものなのか、私は良く知らない。
地球。その戦場に残された痕跡から、彼が楽しそうに語る考察と、想像。それだけが、私の知る人類。
アダムの言葉が思い浮かんでくる。
人類は、かつて仲間同士で殺し合っていたと。
機械生命体の創造主たるエイリアンは、機械生命体自身に滅ぼされたような、単純な生き物だったと。
◇◇◇
「お前たちが信じる人類はどうかな?」
◇◇◇
今度は、イヴの言葉がよぎってくる。
侮辱だ。人類はエイリアンとは違う。
持ちえない根拠で、その不快感を払拭しようと、無意識的に反感が湧いてくる。
……けど、その中に、それでもやはり。
私の中にも、確かにソレはあった。
本当に自分には、信じるべき栄光があるのか。
◇◇◇
『前日の戦闘で破損した武器も修復して搭載して置きました』
◇◇◇
6Oのさっきの言葉が、これもまた、繰り返し頭によぎってくる。
破損した武器……、イヴとの戦いで折れてしまった、あの白い刀の事。
か細く、寂しそうに、最期に兄を呼んだあのアダムと同じ顔も、これで貫いた。
いつか来る日を、その栄光の日が来ることを信じて。
……でも、この戦いに勝利したとき、本当に全てが終わったとき。
その栄光は、この刃で奪ってきた全てに意味があったものだったと。
私はそう……、胸を張れるのだろうか?
彼らが死の間際に振り絞る、最後の叫びの一つが、ふと再生される。
◇◇◇
「う゛あぁ゛……!」
廃ビルの屋上。
傷だらけになった、一体のヨルハが倒れる。
「22B!!」
22Bと呼ばれたその機体は、もう動かない。
「クソォ! クソォォォォ!!」
残された片割れが怒りを込めて、私達に刃を闇雲に振るってくる。
後ろにいる君がなるべく戦闘に参加しなくていいように、向かってくる彼女の刃を的確に受け流し、隙をつき、胴体を斬りつける。
B型の動きは一撃が強いし重いけど、個体差あれど大体は単調な傾向にある。……そう作られているからだ。何かあったとき、始末しやすいように。
慣れた手つきで追い詰める。追い詰めれば追い詰める程、相手の動きは鈍くなり、楽になる。
君は……対アンドロイド戦なんて初めてだから、ハッキングを構える手がまだ震えている。
……それでいい。それでいいんだ。これは私に当てられた任務だから、君は戦わなくていい。
9Sを一人置き去って、彼女と一騎打ちに入る。
軽装な筈の自分に、みるみる追い込まれていく事に、彼女の顔は疑問と悔しさに歪んでいく。
そうして粗くなった防御、その腹部に、一刀を入れる。
「あぁ゛……ぐ……うぅ……」
斬りつけた場所から、ビッとした、張り裂けた鈍い音が小さく鳴る。
当たり所が悪い所に当てたから、すぐに彼女は体勢を崩した。ケーブルを軒並み切った、致命傷だ。
「隊……長……」
溢れ続ける赤色にうずくまって、そう最後に呟くと、その内彼女も動かなくなった。
それからは、ひどく静かになった。
後ろの方に、視線を向ける。
相手が裏切り者といえど、どうして同じ隊員同士で戦わなければならないのか。
そう言いたげに、おしゃべりな筈の君の顔が、口を閉ざして沈んでいる。
……君は私をどう思っただろう?
ただ淡々と、彼女らを斬り倒した私をどう思っただろう?
恐れただろうか? 嫌悪しただろうか?
……。
いいや、私は知っている。
君は、私を嫌ってはくれない。
「これは、一体……。22B ……64B……」
後ろから、もう一人の声が聞こえてくる。
彼女たちと同じようなアーマーを身に包んでいる事。そして、ここにやってきた事。
[確認:逃亡ヨルハ機体の元隊長8B。]
[推奨:捕縛。]
「お前達がやったのか!!」
そこに倒れ伏しているのは、他でもない彼女の仲間。
……そして、そこへ代わりに立っているのは、私達。
信じられないモノを見るような顔をして、私達を方を彼女はゴーグルの下から睨み上げる。
「お願い! 抵抗しないで下さい!」
戦わずに済むように、君は必死に訴える。
まだ、間に合う。そう言葉を続けたいんだろう。
……でも、仲間を殺された恨みなんて、そんなものでは治まらないんだ。
それを、私は________
「うるさい! なにも……」
「なにも知らない癖にっ!!」
_____あぁ、そうだ。何も知らないんだ。私は。
彼女がこれから何の為に殺されるのか。何の為に逃走したのか。何も知りはしない。
きっと彼と違って、私は知ろうともしないんだろう。
それはその資格が無いから? それとも人類への忠誠?
それとも…………。……私は恐れている?
この刃の意味を、知ることを。
私は、……間違っているのだろうか?
分からない。知らない。知ろうともしない。何もかもを。
……だからその手は、もう刃を握りしめていた。
◇◇◇
……どうして、こんな記憶をまだ覚えているんだろう。
あれは任務だったから。これは命令だから。
ずっと、そう割り切ってきた筈なのに。
まだ、真新しい記憶だから?
それとも、意味があったと証明される時に、一人でも多く忘れていかない為?
それとも、それとも。
どの記憶の中にも。
いつだって、君がいるから?
「2B!」
君の声が聞こえてくる。気がつけば、もう地上に着いていたようだった。
『……状況は?』
頭を戦闘の事に切り替えて、ヘルメットにくぐもった声でそう返事をする。
「作戦は開始。先行部隊は既に交戦中。僕たちの役割は、先行部隊の状況にあわせて援護する遊撃部隊」
「先行部隊が交戦している場所をマップに転送しました。援護に向かいましょう」
『了解』
全てが終わった後の事。奪ってきた全て。
……そんなことは、今はどうでもいい。
目の前の戦争に、勝利する。
全てを、終わらせる。
今考えるべきは、機械生命体と戦う事だけだ。
白の刃は取り出さず、最新鋭の四〇式の軍刀を取り出して、装備する。
徹底的に、機械達と殺し合う為に。
この戦争に勝つ事。
得るべき報酬も、……受けるべき報いも、その後の話なのだから。
与えられた命令に則り、殺して、殺して、殺す。
……それでいい。
私達は、殺すために作られた兵器だから。
けれど。私はまだ、知らなかった。
この戦いの結末と。
私達の、運命を。
2B、どれだけ調べて回っても、「どこまで知らされていたのか?」について明記が無くて、マジで何の機密保持させられてたのかすら知らなかった可能性あるんですよね。鬼畜か?