or not to [BE]   作:ヤマグティ

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おまけというか、なんというかという話なので再投稿です。


関係ナイ話
n_0022_BE 報告記録


 

 

 

 アンドロイドも機械生命体も、誰もが寄り付くことのない何処かの廃ビル。

 

 静かな闇に沈んだ最奥の一室で、その扉の下隙間から、小さく明かりが漏れている。

 

 いや、耳を済ましてみれば、更に部屋の奥からは、カリカリとした筆音も漏れてきていた。

 

 本来は人気がない筈の、閉ざされた個室の中。そこにテーブルとイスだけの、簡素な作業スペースが作り上げられている。

 

 廃屋の筈のビル。あるべきがない作業部屋。そこで誰かが、何かを執筆していた。

 

 窓明かりは崩落した瓦礫故に届かず、その為ランプから照らされた蝋燭の光だけが、淡く彼女の姿を照らし出している。

 

 

 

「……分岐発生から、現在7日目」

 

「本日も想定通り、昏睡状態の二号二名の状態に進展は見受けられない。やはり、大まかには既存通りの流れに進んでいると言える」

 

「……それと。再三提言するようだが、今回の分岐の特性は真珠湾降下作戦M隊1.3aa分岐における例に近いとは推測されるものの、この件については我々記録者の過干渉を確認されていない」

 

「現場の意見として、現段階から前例と同列に扱う前提で記録をするという事には賛同しない。記録範囲の拡張を再申請する」

 

 

「……と」

 

「……うん、今日の活動報告書、完成です。……誤字脱字は……ありませんよね? 要確認、要確認……と」

 

「……あ、コレを書き忘れてましたね……」

 

 

「……追記:本日もまた、例の彼女が合流してこない。これ以上遅刻が過ぎるようであれば、体罰的な要指導も必要。これも許可申請を求む……と」

 

 

「……よしっ」

 

 一作業を終えたと、彼女はメガネをクイと上げて、うーん。と目元を押す動作をする。

 

 ……少し力みすぎているように見えるのは、所詮は機械がする人類の真似事だからだろうか。

 

 雰囲気あったランプの蝋燭もフッと消すと、変わりにガイコツらしい何かを模した、風変わりなまん丸電球を何処からか取り出して、パチリとつける。

 

 その光は先程の蝋燭の雰囲気とはうって変わり、随分と近代文明的に明るい。

 

 部屋の壁は真っ白な程に明るく照らし出され、廃ビルの個室はかの日の近代オフィスの姿を取り戻した。

 

 同時に、影に沈んで正体不明だった彼女の姿も、顕になる。

 

 丸眼鏡と、黒髪のツインテールが特徴的な女性。

 

 明るくなった部屋でトントンと、彼女は報告書をキチンと整えて、ファイルに丁寧に仕舞うと、更にトランクケースへと仕舞う。

 

「今日の分は、これで終わりですねっ……と」

 

 それから、解放感ありげに蹴伸びをした。

 

「ふぅ」

 

 

「……」

 

 ……が、すぐに退屈になったようで、少し椅子でクルクルと回る。

 

 それから、また何処からか紙の束を取り出して、執筆を始めた。

 

 

「今回の分岐に関する個人的な考察と見解。項22」

 

 

 

 

「執筆、アコール」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はアコール。

 

 

 何者なのか端的に説明させて貰うと、記録者だ。

 

 今なお枝分かれし続ける世界と、その行く末を観測し、記録する者。

 

 世界を大崩落(フォールダウン)から回避すべく、今日も記録し続けている。

 

 

 ……もっとも、私にとっての記録とは果たすべく使命というよりは、趣味嗜好に近いが。

 

 私はこの役割が好きだ。

 

『記録者』。この立ち位置は、様々な事柄を私に見せてくれる。

 

 

 諸行無常に変わりゆく世界。

 

 紆余曲折の果てに遂げる末路。

 

 そこにある、複雑怪奇のすぎる人間模様。

 

 やがてそれらは入り組んで、始末に負えない程にまで分岐を繰り返し、沢山の事象を生み出していく。

 

 それらを記録する事は、私の知的好奇心をことごとく刺激してくれるのだ。

 

 

 そんな中で、今回は特に興味深い分岐が発生した。

 

 それは新宿にて、レッドドラゴンら特異点の時空移動から始まった分岐世界。

 

 11945年……いや、第14次機械大戦末期と言った方が分かりすいだろうか? 

 

 第14次機械大戦。この大戦は、これまでの機械大戦史の流れに対し多くの変動と特異点を見せた。

 

 決戦兵器ヨルハの設立から生まれた特異点。彼女らの存在により、やがて不毛なだけだった機械達の大戦は新世界へ向けた『方舟』へと到達する。

 

 通称、[E]nd of YoRHa。

 

 これまでにおいても、この時代では[E]に至る過程において多くの分岐が記録されてきた。

 

 そして、今回もまた新たに分岐が観測された。……のだが。

 

 その今回の分岐には、今までの形と異なった興味深い傾向が見受けられた。

 

 それは、記録対象の立ち位置の入れ代わりである。

 

 世界というのは大抵『異なる結末に分岐する場合』と、『過程に多少の差異あれど同じ結末に収束される場合』の2つのパターンで進行している。

 

 今回の場合は、『後者』に当てはまると言えるだろう。

 

 しかし、過程に多少の差異。といえど、記録対象そのものの立ち位置が入れ替わるなどというパターンは未発見だった。

 

 厳密に言えば、以前にも酷似した例が一応はあった。

 

 ただ、彼女らは分岐への影響力を持たなかった為、当時はこの入れ替わりという現象を、私もまた注視する点として扱ってこなかった。

 

 基本的に外野で起きる現象という認識であった為、分岐への影響力を持つあの2名にこの兆候が発見されたのは、とても興味深かった。

 

 この分岐の果てには何があるだろう? だが、どんな結末でも構わない。

 

 新たなエンディングを求めて、探求し続ける。

 

「……予定通りに行けば、あと一週間」

 

「……フフン、今からもう楽しくなってきましたね」

 

 溢れ出る好奇心は手持ち無沙汰になって、無駄にメガネをクイクイとする。

 

「あぁ、早く始まりませんかね……」

 

 ウットリとした顔で、机に頬杖をついた。

 

「……」

 

「……早く、といえば……」

 

 ふと恍惚した表情を、何か思い出したように真顔に戻すと、……やがて眉が、少し潜められる。

 

 

 今回の分岐を発見したのは、実は私ではない。

 

 前任が先にいて、その彼女が偶然発見したという形だった。

 

 私は元は別の分岐を担当していたのだが、報告されてきた分岐の特異性に惹かれて、即日の内に異動申請を出したのである。

 

「……もう一週間。前任の彼女、いい加減合流してきてもいい頃なんですけどね……」

 

 

「……まぁ。彼女なら居ても居なくても、あまり変わりはありませんが……」

 

 

 そんな失礼な事をウッカリ溢した時、見計らったようなタイミングでノックの音が小言を掻き消した。

 

 

「入って、どうぞ」

 

 

「すいませ〜ん。遅れちゃいました〜。たはは」

 

 

 扉が開くと、真っ先にあの間延びした声が入場してきた。

 

 そして次に聞こえてくるのは、ヒールの音。

 

 足を横から前に出すという、そんな不可思議な歩き方が、ズケズケと部屋に踏み入ってくる。

 

 まぁ、これが私達の普通の歩き方なのだが。

 

 

「……はぁ」

 

 呆れたように振り向くと、私はその人物と鏡合わせになった。

 

 

 そこにいるのは、全く同じ姿形。

 

 あの丸メガネに、あの黒のお下げ髪。

 

 

 そして寸分の狂いさえ無い、同じ顔。

 

 

 ……ただ。呆れたような表情と、呑気な表情。

 

 対なるようにして、そこだけには区分があった。

 

 

 彼女はアコール……。いや、彼女『も』アコール。

 

 今回の分岐を発見した、前任のアコールだ。

 

 ……なのだが。

 

「大遅刻です。何をしていたんですか? アコール?」

 

 

「あ〜〜……、釣りをしてたら日を忘れて没頭しちゃいまして……。あやうく漁師になりかけちゃったというか……」

 

 

 

「……それはいいとしましょう。それより、分岐発生の報告が発見時点からかなり遅れていたようですが、……これはどういう事です?」

 

 

 

「いや〜、バックレるかどうか死ぬほど悩ん……じゃなかった」

 

「えっと……。……あっ、咄嗟の事にトラブって、ケース一式をビルから放り落としちゃいまして〜……」

 

「焦ってて直すのに手間取ったっていうか……てへへ?」

 

 

「…………ハァァ……」

 

 盛大に、呆れた溜め息を吐いた。

 

 この間延びした声のアコール。彼女は私達アコールという存在において、少し特殊なアコールだった。

 

 端的に言うなら、それは個体差というもの。これ自体は、数多いる我々アコールにとって然程驚くような物ではない。

 

 ……ただ、見ての通り非常に責任感というものが薄い。

 

 いや、薄いだけならまだいいが、彼女は時折職務放棄も起こしたりする。

 

 報告書を途中からコピペして持ってきたり、飽きたからなどと言って、いつの間にか他の分岐へ渡っている事もままある。

 

 結果的に大事は引き起こしていないからいいが、あまりにも勤務態度が悪すぎるのだ。 

 

 

 ……ただ、それくらい彼女がコロコロと分岐を渡り歩いていなければ、今回の分岐が発見されていなかったのではと考えると、それはそれで感慨深いなとは感じる。

 

「……あれ、貴方その直していたというケースは何処にやったんですか?」

 

 今一度彼女を見つめると、彼女があのトランクケースを持っていない事に気付いた。

 

 あれはアコール達の必需品。まさか失くしたとでも? 

 

 

「あ〜、あれ重いじゃないですか? だから……」

 

 

「……何処かに置いてきたんですか?」

 

 

「いえ、頼んできました。そろそろ来るんじゃないかと……」

 

 

「はぁ……?」

 

 

 頼んできた? 何を言っているのかと思うと、ふと遠くから、小さく騒音が聞こえてきた。

 

 振動して鳴り響くエンジン音に、ラッパの音楽が混じっている。

 

 まさか、と身構えると、一瞬にして騒音が扉の先にまで迫ってくる。

 

 

 ドバンと盛大な音が、扉を跳ね飛ばした。

 

「こんにちはー! 本日限りの新サービス、う〜ば〜? エミールです!」

 

 そこには顔つきのトラックが部屋へ入り込もうとしていて……、扉の縁で、見事に巨体が引っ掛かっていた。

 

 やかましいエンジンを吹かしながら、軽快な少年の声がトラックの巨体、それも骸骨顔から放たれている。

 

「……ってやや!? アコールさんが二人!?」

 

 壊れた扉の下敷きになっていたアコールがヒョッコリ出てくると、ガイコツは二人のアコールを見比べて、驚嘆の声を上げる。

 

「アコールさんって、双子だったんですか!?」

 

 

「ん? ……あ〜〜、まぁそんな所ですね。アレは私のお姉ちゃんです」

 

 

「へぇー、お姉さんですか! こんにちはー!」

 

 

「あー……。……こんにちは。アコールの姉の……。……イコールです」

 

 アコールからの咄嗟のアドリブに、こちらも違和感無いように合わせる。

 

 

「そっか、お姉さんかぁ。いいなぁー」

 

「双子の……、お姉さん……」

 

 

「どうしたのエミール君?」

 

 

「あ、いえ。何でもありません。ハイ! こちらお届けの荷物です!」

 

 アコールは顔付きトラック、エミールからあのトランクケースを受け取ると、代金らしいものを律儀に支払う。

 

「それじゃあ僕はこれで!」

 

「エミール宅配サービスをご利用頂き、ありがとうございました──!」

 

 また軽快にエンジンを吹かすと、エミールは逆走姿勢でもと来た道を帰っていった。

 

 

 ……あんな巨体で、どうやってこの狭いビルを登ってきたのだろう……。

 

 

「……というか……、貴方……」

 

 せっせと律儀に扉を直しているアコール、彼女をムスッと睨む。

 

「ん?」

 

 だが、睨みつけてくる私へ、アコールはキョトンと訳が分からないような顔を返す。

 

「……」

 

 我々記録者は、記録する世界の住民へ干渉することを原則禁止としている。

 

 多元世界というのは非常に不安定で、別時間同士の物が迂闊に触れ合えば、何が起こるか分かった物ではないからだ。

 

 

 一応、それで事態が『好転した例』も無くはないが……。

 

 ……やはり、原則的には禁止事項だ。褒められた事ではない。

 

 

 

 ……なのだが。

 

「……ハァァ……」

 

 もう何度も注意した事。どうせ言っても無駄なんだろう。また何度目かのため息が漏れた。

 

「どうして貴方はこんなにも、壊滅的に記録者に向いていないんですかね……」

 

 

「む……壊滅的とは失礼な。もっとこう、個性的と言って欲しいですね」

 

「ほら? 私達見た目に全く違いがないんですから、これくらい個性的な方が……」

 

 

「個性的、とは……」

 

 いい加減呆れきって、彼女から視線を逸らして遠い目をする。

 

 このアコールとは縁があって、以前にも作業を共にしたことがあるが、その時からソリが合わない。

 

 

 

 イノシシに余計なちょっかいをかけて翌日まで追いかけ回されていたり。

 

 あろうことか漂着船で昼寝をして、人魚姫からとばっちりを喰らって死にかけたり。

 

 カイネがカイネをカイネしている所をコッソリ覗きにいって、外装を失ったズタボロにされて帰ってきたり。

 

 崖の村に荷物一式を全て忘れて一緒に消滅させられた時は、当のエミール以上に天を仰いで咽び泣いていたり。

 

「ここで人類滅亡ツアー、レプ御一行様を始末すればヨナちゃん万事解決じゃ〜ん!」とか言って双子に加勢しようとしたら。

 

 ……突入のタイミングが悪く、これもまた一緒に消滅させられそうになっていたりと……。

 

 

 

 全て自業自得の範囲で済んではいるが……こう、何というか……彼女の無駄なしぶとさが、見ていて疲れる……。

 

 多分、異動許可が申請その日の内に降りたのは、ひとえに彼女が信頼されていない、この一点に尽きるからだろう。

 

「……はぁ、もういいです」

 

「さっさと記録整理を手伝ってください」

 

 ただ、珍しく今回の分岐の記録は彼女の方から手伝いを申し出てきた。

 

 よく『見飽きた』と言うのが口癖なあたり、新しい分岐には意外と関心が高いのかも知れない。

 

 こんな彼女だが、同じ分岐への好奇心を持つ同志である事に免じて、今回は快く手伝ってもらおうと思う。……色々と不安だが。

 

「あぁ、そうだ。この分岐への記録に二人いるのなら好都合です。作業を分担しましょう」

 

「では、貴方はどちらを?」

 

 

「はい?」

 

 

「ですから、二名の記録の、どちらを担当するのか聞いているんです」

 

 

「あ〜〜、じゃあA2で」

 

 

「えっ」

 

 迷いのないアコールからの即答に、思わず似合わない動揺の声が漏れてしまった。

 

 どちらの二号を担当するか。ごく淡々と話を進めようとしていたが、正直ここで揉めると思っていた。

 

「え、いいんですか?」

 

 あまりにもスンナリと終わったので、逆に聞いてしまう。

 

 2B。この分岐における一番変化点は彼女の存在だ。ここが一番気になる筈なのに。

 

 

「……? 貴方のほうが記録纏めるの得意でしょうし……」

 

 

 まさかアコール、貴方私に気を使って? 全く、貴方という人は案外……。

 

 

「それに2Bがあの立ち位置だと、色々と可哀想すぎる事になるのがもう目に見えて正直嫌なんですよね」

 

 

 ……まぁ、そんな事だろうと思いましたよ。貴方の事ですし。

 

 

 ……、……? 

 

 じゃあ、嫌ならなんで自分から手伝うって言い出したんですか。……やっぱりよく分かりませんね、このアコールは。

 

「……わかりました、では私が2B、貴方はA2の観測をお願いします」

 

 

「は〜い」

 

 

「ポッドとの関係性にはよく注意を入れておいて下さい。予想通りに行けば、彼女に随行するのはポッド153になる筈ですから」

 

 

「はいは〜い、ポッドとのやり取り要チェック、メモメモ……と」

 

 

「……あ」

 

 アコールは細かしいメモ取りの手を突然ピタリと止めると、顎にペンを当てる。

 

「そういえば、この分岐の名前って何になるんですかね?」

 

 

「ルート名を今からですか? ……あ、でも確かにそうですね……」

 

 

「だって、もう[A]から[Z]まで埋まっちゃったんでしょう? ダブりが出ちゃうのって、なんか気持ち悪いですし……」

 

 

 

 ルート名。アコールの言うソレは、端的に言うとラベリングのような物だ。

 

 

 [A] [B] [C]

 

 

 このような感じで、観測したエンディングにはラベリングをしている。

 

 これが大抵は[E]までに終了するのだが、ここの分岐の記録対象3名は突然奇行に走る事があった為に、予期せぬ分岐を量産していた。

 

 結果、[A]から[Z]までの全てが埋まってしまったのである。

 

「……そうですね……」

 

 基本的に、ルート名を決めるのは現場のアコールになっている。

 

 第一発見者たる彼女に譲るのが道理だと思うが、……なんだか断られそうな気がするので、先に自分で考えてみる事にする。

 

 まず考えるのは、英文。

 

 いつ、どのアコールが始めた風習なのかは知らないが、たまに英文をつけたりする事があった。

 

 その分岐で起きた事を顕す、一文ほどの英語。

 

 例えば。

 

 flowers for m[A]chines

 

 childhoo[D]'s end

 

 

 

 

 

 ……aji wo [K]utta。等々。

 

 

 そこから英語を一つ抜き取ってラベリングするのだが、……生憎、全て埋まってしまっている。コレでは重複が出てしまう。

 

 ……無難にver1.なんとかにでもしておこうか。

 

 

 ……いや、折角の機会だ、もっと工夫を凝らそう。

 

 グルグルと頭を回して、色々と組み立てて見る。

 

「……よし」

 

 

 我ながら、中々良いのができたんじゃないだろうか。アコールの方へ振り向く。

 

 

 

 

「[BE]」

 

 

 

 たった一言、そう呟く。

 

 

「……[B]? それだとダブりになっちゃうんですけど……」

 

 

「いえ、違います。[BE]です」

 

「BとEで構成された、……ホラ、アレですよ。原形で表す時とかに使うアレです」

 

 

「あ〜〜、それが……?」

 

 

 どうやら、まだ主旨が分かっていないらしい。

 

 

「この二文字、彼女を表すのにはピッタリでしょう?」

 

 

「…………、……あ〜〜……!!」

 

 彼女は意図を理解したようで、感嘆の声をあげる。

 

 

 少し自信があったとは言え、ここまで分かりやすく感嘆とされると、我ながら誇らしいが照れくさい。

 

 

「……いや、でも二文字って……やっぱり変ですよ。変です」

 

 と思ったら、アッサリ否定してきた。もう少し彼女には思考が行動と同じくらい単調であって欲しい。

 

 

「というか、彼女にピッタリの二文字って……こう、中々……性格の悪い事を言いますね、アコール……」

 

 

「……そうですか?」

 

 

 性格が悪い? 

 

 BE。一言聞けばBだけの発音の中へ、あのもう一文字が潜んでいる。

 

 如何にも、彼女らしさを端的に表せていると思うが……。

 

「もっと、こう、面白いのにしましょう。私にも考えさせて下さいよ! きっと面白いのを作りますから!」

 

 

「……いえ、劇的な変化がない次第では、[BE]にします」

 

 彼女にも発言権はあるが、申し訳無いが彼女の言う面白いにはどうしても信頼が置けなかった。

 

「これは決定事項です。今決めました」

 

 

「え〜〜〜〜」

 

 

 今日一番の、間延びした声が聞こえてきた。

 

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