or not to [BE]   作:ヤマグティ

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運命なんてどうとでも分岐するので再投稿です。


運命の分岐点

 

 

 

 

 

 

「バンカーは破壊され、ヨルハ部隊は定刻通りに壊滅」

 

 

 

 

「記録対象の2名は地球に突入」

 

 

 

「記録対象2名……『2B』『9S』の顔は酷く落ち込んでいる」

 

 

 

 

「【特筆事項、無し】」

 

 

 

 

 

 

「…………っと。……ハァ〜〜あ」

 

 

 う〜ん、このデジャブですよ。

 

 ……あれ? デジャブってこの使い方で合ってるっけ? なんか違うような気もするけど。ん〜……まぁいいや。

 

 

 

 それにしても、退屈だなぁ……。

 

 もう何回目だろう。この二人の記録なんて……。

 

 ミリも変わらない風景、変わった所で結局同じ最後に帰結するミリしか変わらない状況……。

 

 でもこれが比較的に見れば一番マシっていうか……なんていうか……。

 

 だけど、いい加減に飽きてきましたね……、いや、前からずっと飽きてますけど……。

 

 もういいかな〜……このまま適当に前の資料からコピペして、残りを埋めて、また別の分岐に行って最初から……。

 

 ……いや、もうこの二人の記録も止めて、エミール君のグレートでスペースなウォーをやってた時でも眺めてましょうか……。

 

 ……あ〜でも、アレは見ていて楽しいの、最初の内だけでしたっけ……。いや、どの分岐にも言える事か……。

 

 ……。……どこに行っても碌な結末になんてならないし、仕事はただただ単調だし。

 

 

 ハァ〜あ……。自分でいうのもあれだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 私、記録者の仕事には向いてない気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 △▽△▽△

 

 

 

 

「司令官ッ……」

 

 バンカーは、墜落した。

 

 ヨルハ部隊は、壊滅した。

 

 司令官は、死んだ。

 

 

 脳裏に、それらばかりが復唱される。

 

 私達が、最後のヨルハ部隊。

 

 もう帰る場所は無くて、目指す場所もない。

 

 私達は、これからどうすればいい? 

 

 廃墟都市に向かって、地上部隊と合流して、それから____。

 

 [警告:追尾反応多数。]

 

 なんとか自分を落ち着かせようとそう考え始めた時、ポッドが突然声を上げた。

 

「敵!?」

 

 機械生命体の追手? もう見つかった……? 

 

 いくらなんでも、速すぎる。そう思った瞬間、嫌な可能性が頭によぎった。

 

 急いで、追尾反応をスキャンする。

 

 反応は、……グリーン。ヨルハ機体の反応だ。

 

 ヨルハ機体。けれど、今この場にやってきたという事は……。

 

「いや違う……! この反応は……!」

 

 9Sが言い切る前に、答え合わせとなった。

 

 4つの瞬影が、真下を通り抜ける。一瞬だけだったが、その正体、確かに捉えた。

 

「ヨルハ部隊!!」

 

 汚染された飛行ユニット部隊が、送り込まれてきていた。

 

 急いでステルス機能をONにするが、気休め程度にもならなかった。

 

 乗っ取られた機体には制御がかかっていないのか、それとも乗っ取ったアンドロイドの体なんてどうなってもいいのか、敵味方に構わず銃やミサイルを乱射してくる。

 

「……くッ!」

 

 9Sのユニットが被弾している。戦闘が苦手な彼に、飛行ユニット同士の戦いなんて荷が重すぎた。

 

 どうすればいい? どうやってここを突破する? 

 

 二人で沢山の死線をくぐり抜けてきた。だけど、これは余りにも状況が悪すぎる。

 

 飛行ユニットでの降下は何度もしてきた。機械生命体の防空戦力も、何度も突破してきた。

 

 けれど、同じ飛行ユニット同士の戦闘なんてものには、流石に経験なんてあるわけが無かった。

 

 繰り出される凶弾の猛攻。照準が定められておらず、故にバラついて回避の難しいミサイル群。

 

 同士討ちをも厭わない攻撃、それを4機も相手にしなければならない。

 

 仮に戦闘の得意な私が真っ向から戦ったとしても、9Sを守りきったまま勝てるとは思えない。

 

 考えろ。考えろ。

 

 司令官から託された願いを、失ってしまう。

 

 願いを、希望を。

 

 9Sまでも、失ってしまう____。

 

 

 

 

 

 ___そうだ、……9S。

 

 

 

 9S、まだ……君がいる。

 

 

 ……ここを二人で突破する必要なんて、無い。

 

 君だけなら、君一人だけなら、ここから逃がせるかも知れない……。

 

 もうバンカーは失われてしまった。ヨルハ部隊も、司令部も。

 

 ヨルハ部隊の全てと、私達は隔てられてしまった、……けれど、それはつまり……。

 

 

『君の隣にいる必要』も、同時に無くなった筈だ。

 

 

 9Sだけなら、逃がせる。

 

 この戦線からも、……私達の運命からも。

 

 今の私のユニットには、隊長権限がある。

 

 大型兵器捜索の任務以降、部隊に編入される事がなかったから、その時に移行されたままの権限が私の使用IDにずっと残っている。この白いユニットの翼が、その証明。

 

 飛行制御を私に移して、ルートをセットすれば……そのまま逃がせる。

 

 残った私は囮として、奴らを引き付ける。それでいい。……それが一番、ふさわしい。

 

 

 ……でも、どうやって9Sを納得させる? 

 

 私が囮になるから、君は一人で逃げて。なんて事を、彼が絶対に聞いてくれる筈がない。

 

 9Sと違って、私はこういう事への機転があまり利かない。上手く言い包めて納得させるなんて事はできない。

 

 どうすればいい? どうすれば……。

 

 

 ……。

 

 ……いいや。何も心配なんていらない。

 

 私はそれを知っているはずだ。

 

 9Sは、私を……。

 

 

 ……いいや、『二号B型モデル』を信用している。

 

 

 心苦しく、居心地が悪くなるほどに。……それを、私は知っている筈だ。

 

 だったら……。

 

 

 最後まで、それで騙しきってしまえばいい。

 

 

 けれど、今回だけは、最後だけは。

 

 この嘘だけは、君を守るためのモノ__。

 

 

「9S。飛行制御を貸し、て……」

 

 意を決して、遂に彼に掛けたその言葉。

 

 

 ……だが。

 

 

「……9S?」

 

 だが、その言葉に、彼からの応答は無かった。

 

 

 あの彼が通信への、それも直接聞こえるくらいの距離。私の言葉に返事をしないなんて事は、まず無かったのに。

 

 ……何か形容し難い不安に襲われ、その顔を覗き込む。

 

 9Sの口元は、一瞬だけ、声もなく何かに驚嘆する表情をする。そして、やがて悩み込んだ物に変わる。

 

 暫くして、そっと見上げてきた視線。ゴーグルの下の瞳と、今、目が合った気がした。

 

 ……その瞳は、私の何を見ている? 

 

 見透かしてくるような、その視線。何か漠然としない不安感が、どんどんと募っていく。

 

 

『……2B』

 

 

 

 

 

 

 

 

『ごめん。2B』

 

 

 

 

 

「え……? 9___」

 

 9Sのその言葉と共に、飛行ユニットが不自然に揺れた。

 

 操縦に異常が出て、勝手に降下していく。

 

「……!? なんで、操縦が……__」

 

 [___報告:ヨルハ機体9Sのハッキング攻撃により、ヨルハ機体2Bの飛行ユニットの移動機能全般に支障が発生。]

 

「……!? 9S!?」

 

 ハッキング攻撃? どうして、私を? 

 

 [ブースター出力、継続して低下。修復困難。]

 

 ポッドが早口で言葉を発し続けているが、全く頭に入ってこない。

 

 どうして9Sが私に攻撃を? 

 

 どんどんと降下しているのに、自分の事などまるで気にせず、それらばかりが頭に浮かんでいく。

 

 まさか9Sまでウィルスに? さっきの攻撃にウイルスが? でも、本体には当たっていなかった筈。どうして? いつ? 

 

 [着陸の可能なスポットを検索。完了。航行ルートを設定。]

 

 [警告:不時着による衝撃。]

 

 ポッドの、早口に緊急事態を処理していく言葉。

 

 航行ルート、不時着。

 

 それに、嫌な予感が頭をよぎった。

 

 

 

 ____ごめん。2B。

 

 

 

 どうして今、謝った? 

 

 まさか、まさか。9S、君は。

 

 

「9S! ……9S!! 返事をしてっ……!!」

 

 その通信に、答えは帰ってこなかった。通信をオフにされていた。

 

 嫌な予感は、確信に変わってしまう。

 

 

 私を逃がす気だ。

 

 

「どうして……!! その数じゃ、君の手には負えない!!」

 

 そんなこと、君自身が一番分かっている筈なのに。戦闘は得意じゃないなんて、いつも自分でそう言ってた癖に。

 

 それなのに、どうして君は私と同じ事を考えてしまうんだ。

 

 よりによって、私に。

 

 私に、そんな資格は無いのに。

 

 みるみると離れていく私達の距離、通信でも、叫んでも、私の声は届かない。

 

「9S……!! ナインエッ__うあっ……!?」

 

 届かないと分かってくる癖に、通信にばかりに叫んで、もう砂漠の地表が目の前にあった事に気付かなかった。

 

「あっ っ……!!」

 

 減速していたとはいえ、その墜落の衝撃は激突された砂を煙に変えて、何十メートルにも巻き上げる。

 

「あっ……  ぐっ……    うぅ……」

 

 砂煙の中から、吹き飛んだユニットのパーツと共に投げ出され、砂の斜面をゴロゴロと転がり落ちていく。

 

「……ッ……あ……」

 

 転がりきって平らな場所に出たのか、仰向けになっていた。

 

 頭が、全身が痛い。照りつけてくる日差しまでも、痛いくらいに眩しい。

 

 落下の衝撃で、思考がゴチャゴチャになってしまっている。

 

 グチャグチャになった思考を組み立てていく。大切な事を、思い出さなきゃいけない事を。

 

「……9、S……ッ……!」

 

 そこで真っ先に浮かぶのは、彼の顔。

 

 体を転がして、立ち上がろうとする。

 

 けれど、思考に反して意識は朦朧とし、上手く立てない。

 

 [警……く:高速で……落……た影……に……り機能…… 般が……非常……不安……。]

 

 [……ん在の状……の再……は不可……うと予……く。]

 

 ポッドが何か言っている。だが、その声にはノイズと、キーンとした空白が混じって聞こえない。

 

 その聴覚で分かった。落下の衝撃で、機能が不安定になってしまっている。

 

「ハァッ……、ハァ……ッ……」

 

 構わない。無理矢理にでも立ち上がって、おぼつかない足取りでも、砂漠を歩き出す。

 

 9Sが。まだ、9Sが。

 

 でも、こんな状態で、どうやって砂漠を抜ける? 空から落ちてきて、どうやって9Sの所に戻る? 

 

 ゴチャゴチャした思考でも、それぐらいの事は分かってる。分かっている。でも、そんなの関係ない。関係、ない。

 

 一歩、また一歩を砂に沈める。

 

 けれど、どれだけ意思を固めても、足元の砂は崩れていく。体の方も揺らついて、言うことを聞いてくれない。

 

 足を取られたのか、遂に前のめりに倒れ込んでしまう。

 

 [……奨:強制シャ………………ウン及……び再起……で……能の……一……的な……復……ゅう……。]

 

「9……S……」

 

 柔らかい砂に倒れた筈なのに、ザラザラした砂粒が、突き刺すように痛んでくる。

 

 でも、それだけ体が悲鳴をあげていても、這いつくばってでも、進もうとする。

 

 行かなければ、彼の元に。私が、行かなければ。

 

「ないん…………S……」

 

 S型は戦闘には向いてない。あの数に勝てる訳ない。

 

 そんな事、君が一番分かっている癖に。……それなのに、いつもいつも、誰かの為に戦おうとする。

 

 誰にも助けてもらえないのに、全部から裏切られているのに。それさえ、分かっているのに。

 

「ない、……ん……」

 

 君が助けたのだって、裏切り者の一人なんだ。

 

 私が、ここに居ていい筈が無いのに。

 

 私だけが、赦されていい筈が無いのに。

 

 

 まだ何も償って無いのに。

 

 まだ、何も贖って無いのに。

 

 

 [活……う……続に関わ……る危……な……と判断……強制……止を……実……う。]

 

 

 突然視界に走り始めた、ノイズような霞み。

 

 それ__と、同時に、__急激に_落ちていく感___覚。

 

 

 

 あぁ_____っ

 

 

 

 意識が___途絶え__これは_____強制_停___

 

 

 

 まっ_____て_____9____Sが___________

 

 

 

 

 

 

 どうし_て_____こんな___こん__なっ____

 

 

 

 まだ____私は____なにも______

 

 

 

 

 

 

 まって___

 

 

 

 

 

 

 

 

 _____まってよ__  

 

 

 

 

 

 

 また__置いて____かないで_______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナイン……______________. . .

 

 

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