or not to [BE]   作:ヤマグティ

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周囲や当人らすら『同じ顔』で評しているのに、ナインズ君だけはA2の事を『2Bとそっくりな顔』で当然のように一貫してるの好きだから再投稿です。


あの場所

 

 

 

 

 

 ▲▼▲▼▲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

「な、なんだこれ……。これは……、カウンター防壁!?」

 

 

「そんなっ、なんでお前がそんなものを持ってるんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お前から貰ったんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!? 僕から!? お前、一体何を言って____」

 

 

 

 

 

 

 

「お前と会うのは……。これで三回目だよ。九号S型」

 

 

 

 

 

「……は!? ……〜〜〜ッ!!」

 

 

「ぐ……あああ!! クソっ、クソぉぉぉ!! くそぉぉぉぉお!!」

 

 

 

 ハッキング空間内、惨たらしい悲鳴と共に、遂に黒いモヤは少年の顔をも覆い尽くしていく。

 

 

「A2”ゥゥゥ ゥ ゥ ぅぅ ぁああ ア アアァ” ァ ァ”ァ” ッッ……___」

 

 

 

 そして最後に、モヤの中から、ゴキリとした音が鳴った________。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「________ハッ……」

 

 その悲鳴に叩き起こされたように、視界が開いた。

 

 

 

 あの何かの廃墟の、二階。

 

 その影に沈んだ隅っこで、眠っていた。

 

「……あの夢か……。……クソッ……」

 

 眠るのは好きじゃない。いずれ休息は必要だと分かっていても、可能な限りは起きていたい。

 

 ……再起動の時に見る、『夢』。

 

 ボディユニットを休止してる間に行われる、記憶の再フレーム化処理。その時、記憶が無作為な風景になって映る現象を、私達アンドロイドは『夢』と呼んでいる。

 

 私は……碌な夢を見ない。当然だ。過去の記憶に、マシな記憶が無いのだから。

 

「……」

 

 過去に浸るのを止めて、立ち上がる。どうせ振り返って見ても碌なモノが無いのはそうだし、今はそれ所じゃないから。

 

 今起きたのは、別に悪夢にうなされたからじゃない。

 

 こういう時に、反射的に起きれるように体が覚えている。

 

『こういう時』。エスカレーターを下って、その正面に映る奴らと顔を合わす。

 

 

 

『……てっ……きヲを……はっけんんん……』

 

『対象ををを……は、カイカ……イイ……」

 

『任務を、……すいこ……遂行……遂行う……』

 

 

 

 着込んだ重装備から覗く、赤い瞳。

 

 ヨロヨロとして、不安定な口調で言葉を繰り返している。汚染機体の集団だった。

 

 眠っていた耳に聞こえてきた軍靴の音、ヨルハ部隊だという事は分かっていたが、やけに不自然な足幅の音だと思ったのは汚染されていたからか。

 

 見つかったのかと思い、逃げ道が無いから迎え打とうと出てきたが、どうやら偶然ここに入り込んできていただけらしい。

 

 ……どの道邪魔だ。殺そう。

 

 早い所、ここら一帯からは撤収した方が良さそうだ。なぜ集団感染なんて事態に陥っているのか、それに興味は無いが、何か良くない事が起きているらしいのが分かる。

 

 眠る前にはなかった筈の、不審なほど濃くなってきた霧も奇妙だ。何か地響きのような物も地面から感じるし……兎に角嫌な予感だけがする。

 

 さっきも、遠いから関係無いと放置して起きなかったが、大きな爆音が聞こえた気がした。 

 

 変な事に巻き込まれない内に、この辺りからは離脱しよう。

 

 

 

 汚染されたヨルハ機体の相手には、さして苦労しなかった。荒くて力強く、当たれば危ないが、それに反比例するように単調だ。

 

 機敏に立ち回り、隙だらけの奴から切り倒していく。

 

 建物の外に出ても、やはり集団感染のようで、何体かが襲いかかってきた。

 

 ただ当然の作業のように、倒していく。同じヨルハ機体だろうが、何も感じはしない。

 

 結局、汚染されていようがいまいが、私にとっては敵でしか無いのだから。

 

 

 

 ……だから、また私の前に現れたアイツに向かっても戦闘にならなかったのには、酷く驚いた。

 

 

 

「2B……?」

 

 

 

 死に体の掠れた声で、私を人違いにそう呼んできたのは、……さっきの悪夢の張本人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 △▽△▽△

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

『さよなら。2B』

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 私にとっての悪夢は、その一言が全てだった。

 

 

 

 

 

 

 

 [ヨルハ機体2B、再起動。]

 

 

「_____……ッ!!」

 

 その一言に叩き起こされたように、視界が開く。

 

 

 意思が芽生えていく感覚と、それと同時に思い出した先程までの記憶。

 

 それがまだ目覚めきっていない曖昧な意識も、無理矢理に叩き起こした。

 

 砂を振りまいて、顔を起こす。

 

「状況はっ!?」

 

 [報告:ヨルハ機体2Bは、13分前に機体損傷の治癒の為、機能の全てを一時的に停止。]

 

 [自己修復機能を限界まで稼働させ、最低限ラインの修復を完了させた。]

 

 [完全な修復ではない為、過度な稼働は___]

 

「私の事はいい!! 9Sは何処!? 無事なの!?」

 

 [既に検索・マーク済み。現在9Sは商業施設跡に向かって進行中。だが、移動スピードがマーク開始時から徐々に低下している。]

 

 [推測:ヨルハ機体9Sが現在、危険な状態にある可能性。]

 

「ッ!!」

 

 9Sが危険な状態。聞き終わるよりも早く、砂漠を駆け出していた。

 

 砂漠。あの広大な、砂だけのエリアに落ちていたようだった。

 

 砂だけで構成された地面。走りにくくて、それにまだ体のあちこちが痛い、何度も転びそうになる。

 

 それでも乾いた砂を蹴り飛ばし続ける。足元を気にせず走っているからか、だんだんと砂が靴の中に入ってきて、ザラザラとしてくる。どれもこれも、私の邪魔をしてくるようで不快だ。

 

 

 この乾いた砂が嫌いだ。

 

 砂漠が嫌いだ。

 

 何もいい思い出なんてない。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

『さよなら。2B』

 

 

 ◇◇◇

 

 

 あの言葉が、また聞こえてくる。私を急かすように、何度も、何度も頭の中に繰り返される。

 

 

 

『さよなら。2B』

 

 

 

『さよなら。2B』

 

 

 

『さよなら。2_____』

 

 

 

 

 

 どんどんと焦燥感で満ちていく。あの言葉を振り切りたくて、ただひたすら走り続ける。

 

 なんであんなことしたの。どうして一人で戦おうとしたの。僕は戦闘が得意じゃないって、いつも自分で言ってた癖に。

 

 

 あんなか弱い体で、いつだって真っ先に身を徹して無茶をする。

 

 あの体が最後なのに、それを分からない訳が無いのに。

 

 いつもそうだ。いつも君は私の思った通りに動いてはくれない。

 

 どれだけ願っても、どれだけ祈っても、いつも勝手に行動する。

 

 私の見えない所で、いつもいつも勝手な事をして。

 

 

 何もかも全部、一人で抱え込んで。

 

 

 

 私だけを置いて、居なくなる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

「誰かと一緒に行動できるのって、楽しいんです」

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 いつもそう言ってくるのに、なんですぐ諦めてしまうの。

 

 どうして、助けての一言も言ってくれないの。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「2Bの為だったら、こんな命……、捨ててしまっても構わない……!!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 いつもそうだ。いつもそうやって、最後は私を突き放すんだ。

 

 

 ……それでも、それでも。

 

 また会えるって言ってたから、だから信じて、ずっと戦ってきたのに。

 

 それなのに……、どうして、こんな事になってしまった? 

 

 6Oも、司令官も、ヨルハ部隊も、バンカーも、……みんな失くなってしまった。

 

 私は、ずっと最善を尽くしてきたつもりだったのに。

 

 

 機械生命体を、アンドロイドを。

 

 復讐を叫ぶ敵を。

 

 命を叫ぶ、かつての同胞も。

 

 

 全部、この手で斬り捨ててきたのに。

 

 

 壊して、壊して、壊して、壊して、殺して、殺して、殺して、殺してきたのに。

 

 

 それなのに、今は君さえも失おうとしている。

 

 私が赦されないなんて事は分かっていた。いつか受ける罰を、受け入れなければならないと分かっていた。

 

 だけど、こんな。こんな形でなんて。

 

 

 嫌だ。

 

 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 

 

 それだけは認めない。それだけは耐えられない。

 

 

 これが、私への罰だなんて。

 

 

「9S……っ……9S……ッ……!!」

 

 何度も転ぶ足取りを、何度も諦めそうになる思考を、纏わりついてきた砂と共に振り払って、立ち上がる。

 

 だんだんと砂漠地帯を抜けてきて、廃墟都市の景色が見えてきた。

 

「アンドロイド……。……殺ス……コワス……!」

 

 [警告:このルートを通る事は]

 

「うるさい!! このまま突破する!!」

 

 砂漠と都市の境に溜まった機械生命体が、此方を見るや否や向かってくる。邪魔だ。迎え撃つ。

 

「コロス! コワス!」

 

「うるさいっ!!」

 

 刀を手に取り、すれ違いに切りつけて、横薙ぎに弾いていく。

 

 治りきっていない腕が、振るう度にビシビシとして痛んでくる。

 

 走り続ける足が、ビリビリとして捻じれ切れそうな感覚になってくる。

 

 関係無い。私の事なんて、構うものか。

 

「9S……!! 9S!!」

 

 9Sの反応へ、だんだんと近付いてきている。けれど、こんな本調子でないスピードで、それで追いつける程に9Sの足取りが遅い。

 

 ウィルス汚染。唯一の可能性が、何度も、何度も、頭にチラついてくる。

 

 ハッキングできる彼が、自分で治せない。

 

 それがどんな状態か、それがどれだけの進行具合か。

 

 考えたくない、認めたくない。それでも、彼の元に向かわずにはいられない。

 

 その先で私に何が強いられるか、本当は分かっていても。

 

「9S!! 9エ___うっ!?」

 

 突然視界が、いや、この地表全体が大きく揺れてきて、橋が見えてきた所で転んでしまう。

 

 [警告:大型の振動を関知。地下の構造が不安定になっている模様。大規模地震の可能性を示唆。]

 

 [推奨:早急な離脱]

 

「離脱なんて……、するわけない……ッ!!」

 

 そう言って立ち上がろうとするが、上手く行かない。限界の体が、一度止まってしまった事で言うことを聞かなかった。

 

 地響きの振動が、痛む体に響いてくる。

 

 何かが、始まろうとしている。

 

 関係無い。関係、無い。

 

 もうバンカーは無い。あれが最後の義体なんだ。それが壊れてしまえば、本当の死を意味している。

 

 痛む体を無理矢理に押し上げて、橋を駆け出す。

 

 乱雑な走りだからか、それとも地響きか、吊り橋が不安定に揺れて進みづらい。

 

 9Sの反応が、もう目の前にあるのに。

 

「9S……!」

 

「9S……!!」

 

 

「9Sっ!! ……9Sッ!!」

 

 

 

 

「……9Sッ……! ……ハァッ……9ッ……!」

 

 

 

 

 

 

 

「……ナインッ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナインズッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうか応えて欲しいと。その限界の頭が、遂にその名前を口に出してしまった。

 

 

 もう二度とその名前では呼ばないと、何度も決めてきた筈なのに。

 

 

 でも、もうなりふりなんて構っていられなかった。

 

 

 

 

 

 彼の姿が、見えたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▼▲▼▲

 

 

 

 

 

 

 

 突然、大剣を振り上げたあの少年。その最期の執念に一瞬身構えたが、矛先は私ではなかった。

 

 大剣は地面に突き刺され、少年の手は何かを込めるようにして、柄を握りしめている。

 

「これは……僕の記憶、です……」

 

 記憶? 何を言っているのかピンとこなかった。

 

「残された……2Bを……お願い……」

 

 ……状況から考えるに、今際の頼みという事か。

 

 それを聞いてやる道理は、当然無い。

 

 ほんの少し前まで、いや。それ以前からも、この少年はずっと敵だった機体だ。

 

 ……だが。

 

 残される者を想う、かつての仲間と同じ願い。

 

 そして、何より。

 

 

 今、私に2Bを頼むと言っていた。

 

 さっきこの少年、9Sが私を2Bと呼んでから、ずっとあの二号モデルと勘違いされていると思っていた。

 

 その赤い瞳の、ウィルス汚染の視界じゃ、かろうじて顔も見えるか見えないかぐらいだろう。

 

 それに私は一言も発していなかった筈だ。聴覚も駄目になっているだろうから、喋っても聞こえないと思っていた。

 

 同じ二号モデルの顔、あの2Bだと勘違いされて、今際の頼みをしてきたと思っていたが……。

 

 

 どうやら9Sには……、そんな状態になっていても、私と2Bの区別がつくらしい。

 

 ここにいるのは2Bじゃない。そう分かっているから、彼女への願いを託してきている。

 

 ……。

 

 

「ハァ……」

 

 ……その執念に、根負けした。

 

 

 託された所で、私なんかにできるのは機械共を壊し続けること。その程度だ。

 

 けれど、そんな事でもいいのなら。

 

 

 と、その大剣を手に取った。

 

 その瞬間、記憶の意味を理解した。

 

 どうやら次世代の武器には、私の頃には話に聞いていただけだった、記憶を保存する機能が実装されていたらしい。

 

 9Sの記憶が一瞬脳裏によぎる。その殆どに映し出されていたのは2Bの顔。様々な彼女の表情が、ありありと記憶に焼き付いている。

 

 そして、ここにくるまでにどんな経緯があったのかも、記されていた。

 

 

「2Bに……会ったら……、こう、伝えて欲しい……」

 

「優しい貴女のままで……いてほしいって……」

 

 

 身を徹して庇い、そして死に征く最期まで、9Sの中にあるのは残される2Bへの心配。

 

 ……残される者がどんな想いでその後を生きていくのか、私は嫌というほど知っている。

 

 ましてや、私と同じ二号モデル。

 

 

 ……分かった。

 

 

 

 その想いだけは私が継ごう。他の誰でもない、あの二号の為に。

 

 

 

 大剣を胸に突き刺し、楽にしてやる。

 

 ゆっくりと眠るようにして、ふと後ろに振り返って、そのまま9Sは倒れていく。

 

 

「__……__……___……__、______……_……  」

 

 最期に何かを呟いていたが、私に向けられた物ではなかったからだろう。こんなに近くにいる筈なのに、私には何も聞こえなかった。

 

 髪を切って、彼の亡骸に散らす。

 

 こんな物しか用意できないが、せめてもの手向けとして。

 

 全てに一段落をつけた、丁度その時。続いていた地響きがどんどんと加速してきた。

 

 ここを離れようと咄嗟に動き出したが、もう遅いようだった。

 

 

 白い何かが地面から突き出て、私を含めたあらゆる物を、みるみる上へ吹き飛ばしていく。

 

 フワリとした浮遊感から、やがて真っ逆さまに落ちていく視界。

 

 

 

 そんな状況でも気になるのは、あの轟音の中に混じって、誰かに呼ばれた気がした事。

 

 

 

 

 あの同じ顔と、視線が合った。

 

 

 その記憶を最後に、意識が途絶えた______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 △▽△▽△

 

 

 

 痛み続ける体と、少し霞んだ視界。

 

 その中でも、9Sの姿を確かに捉えた。

 

「ナインズ……!! 大丈夫________」

 

 けれど一瞬の安堵感は、すぐに消えて無くなる。

 

 一際ハッキリと映った、いや。

 

 

 映ってしまった、光景。

 

 

 視界がその一点だけを見て、固まる。

 

「……そんな」

 

 9Sの背中からは、赤黒に塗れた、鋭利な何かが飛び出ていた。

 

「……そんなっ……」

 

 赤黒い物は、彼の血。

 

 鋭利な何かは、刃。

 

 ひと目見て分かるはずの事に、どれだけ見つめても理解が遅れる。

 

 私の呼ぶ声に気づいたのか、9Sが振り返る。

 

 ユラユラと、その瞳に赤い光の尾を引いて。

 

「__……__……___……__、______……_……  」

 

 最期に私に向かって、何かを呟くように9Sの口が動く。

 

 ……けれど、もう私達を隔てる距離は遠すぎて、届かなかった。

 

 ゆっくりと刃が引き抜かれて、9Sは仰向けに倒れていく。

 

 冷たくグッタリとして、……もう、動かない。

 

 

 ……私の視線が、力なく、恐る恐ると、……その顔に向けられる。

 

 血に濡れた刃を握る、……そのアンドロイドへ。

 

 

 

 

『アタッカー二号』。

 

 

 

『A2』。

 

 

 

 

 

 あの場所に、二号()がいた。

 

 

 

 

 

 

「……そんな」

 

 

「……そんなっ」

 

「…………そんなッ、ナインズっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 体が凍えるように、震え始める。

 

 この事実を拒むように、ゴーグルの上から、さらにその両手で視界を遮ろうとする。

 

 

 

 

 

 押し留めておいた何かが、遂に身の内から食い破られようとしている。

 

 

 

 

 

 胸に秘めていたあの小さかった筈の黒い染みが、どんどんと広がって心を覆い尽くしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 9Sが、死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 A2が。

 

 

 

 あの二号が。

 

 

 

 二号が、殺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その事実を認めてしまった、その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の中で何かが壊れて、死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッッ……!! ッッ……A2ゥゥ!! キサマぁぁぁぁッッッ!!」

 

 

 突然、鉄さえ断ち切るような甲高い声が聞こえてきた。

 

 違う。私の喉が震えている。これは私の声だ。私がそう叫んでいる。

 

 こんな声を、今まで出したことがあっただろうか? 

 

 これだけの憎悪を、今まで感じた事があっただろうか? 

 

「殺す……!」

 

 9Sを殺した、A2を。

 

 あの二号をッ。

 

 あの仲間殺しを、裁かなくてはッッ!! 

 

「……殺すッ!!」

 

 刃を乱雑に構え、A2を目掛けて走り出そうとした。

 

「……ッ!?」

 

 その瞬間、地響きが勢いづいて激しさを増していく。轟音と共に、下から突き出てきた白い何か。押し上げられて、橋が崩落する。

 

「……えっ、……ぁあ……っ……!!」

 

 みるみると下へ、谷底に落ちていく。

 

 

 だんだんと暗く、音の遠くなっていく周囲。けれど、その視界に鮮明に焼きついている光景。

 

 

 

 

 

 

 あの同じ顔と、視線が合った。

 

 

 その記憶を最後に、意識が途絶えた_____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 NieR:Automata

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ありえた世界の彼女(BE)の話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは呪いか。それとも罰か。

 

 

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