自警団の半妖少女   作:藤咲晃

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人里の秘密結社

 私と先輩が秘密結社の集会所に乗り込むと、既にそこには武装した構成員が待ち構えていた。

 その中でも取り分け刀を持った男性と猛々しい筋肉を誇る男性には要注意が必要そうだわ。

 

「自警団だよ! 神社への奉納品強奪容疑で全員逮捕だ!」

 

 先輩の声に刀を持った男性が小さく笑う。

 何が可笑しいのかな? まさか向こうの頭数が多いからって強気になってる?

 それとも証拠が無いってしらばっくれるのかな?

 

「この数を前に乗り込むとは、やれやれ無謀な小娘達だ」

 

 安い挑発に私と先輩は、

 

「よーし! 全員雁字搦めに拘束して霊夢さんに差し出してあげるわ!」

 

「あ〜? 全員強そうには見えないわねぇ!」

 

 安い挑発に乗って踊り出したのだ。

 一瞬怯む構成員に、私は能力を発動させて手錠を投げる。

 両手から投げ出された手錠は正確に構成員の手足を拘束して床に転がす……だけど、刀持ちの男性はそれが何だと言わんばかりに、その刀で手錠を真っ二つに両断するではないか。

 おまけに怪力そうな男性は両腕を拘束されたにも関わらず、その筋力で強引に手錠を壊す。

 

「むー、あの二人と隠れてる人間が厄介そうだね」

 

「透明になれるって便利そうな能力を持ってるな。だけど、面制圧はどうかな!」

 

 先輩は室内にも関わらず、弾幕を広範囲にばら撒く。

 先輩がばら撒く弾幕はスペルカードルールに則った弾幕じゃない。だから当たれば最悪死ぬ。運が良ければ気絶で済む。

 ばら撒かれた弾幕は拘束されて身動きが取れない構成員に直撃しては、意識を刈り取る。

 そして、

 

「うわぁっ!? クソ! これだから霊力の高い奴は!」

 

 私の背後から男の声がするではないか。

 あぁ、そこに居たのね。

 私は振り向き様に十手を振り抜く。

 振り抜いた十手から伝わる感触、脇腹辺りに当たったのだと判断した私は、

 

「姿が見えなくても!」

 

 空いた手で手錠を投げる。

 彼は一度私の十手に触れた。

 十手には能力を十全に発揮するための術が込められてる。

 発動は単純だ。十手に触れた人物に印を刻み、印を目標に手錠が向かうのだ。

 手錠が正確に姿が見えない人物の両手両足を拘束する。

 

「はい、主犯格を一人確保」

 

「残り二人だけど……戦争でも起こしたいのかしら?」

 

 先輩は二人に目的を尋ねた。

 すると二人は今更何をっと言わんばかりに呆れた眼差しを向けて来る。

 いえ、私に対しては明らかな殺意を込めた視線だ。

 

「我々の目的は幻想郷から妖怪を追い出すこと。だから手っ取り早く争いを誘発したのだよ」

 

「巫女は人間の味方だ。奉納品が妖怪の仕業と知れば我々にも間接的に力を貸すだ」

 

 呆れたわ。霊夢さんが蔵を調べればすぐに誰の仕業かなんて判ってしまうのに。

 

「霊夢さんなら蔵を調べれば、犯人が妖怪かそうでないかすぐに判るよ」

 

「如何かな? 何せあの巫女は甘い」

 

 根拠は薄いけど、変に自信が有るなぁ。

 もしかしてまだ何か有るの?

 

「そもそも戦争を起こして人間が妖怪に勝てると思ってるの?」

 

「思ってるとも。妖怪はいつだって人間に退治されるのだ」

 

 それも根拠が薄いけど、やっぱり自信たっぷりなのが気になるなぁ。

 二人の男性は最早戦争は止められないと思っているのか、自信たっぷりで隙さえ見せ始めていた。

 そんな時、先輩が視線だけで私に合図を送る。

 先輩の意図を理解した私はまた手錠を投げる。

 

「無駄だと理解できんのか、半妖め」

 

 あっさりと斬り落とされる手錠と床に叩き付けられる手錠。

 追尾性の強い手錠を投げただけじゃ拘束できないのは、初手で理解してるよ。

 私の狙いは別に有る。

 私はまた手錠を構える。すると二人は呆れた眼差しを向ける始末……だけど背後から近付く先輩の弾幕に気付かないようだ。

 弾幕は二人の後頭部に吸い込まれるように直撃し、二人は言うまでもなく床に崩れ落ちる。

 そんな二人に私は今度は頑丈な手錠で何重にも拘束した。

 

「能力に目覚めて油断でもしたの? それとも私を殺せるって嬉しさで周りが見えなくなちゃったかな?」

 

 何方もなのだろう。

 彼らにとって半妖の私は疎ましい存在でしかないのだから。

 気絶した二人には私の声は届かない。

 これで後は構成員と主犯三人を連れて行けば全部解決……そう思った時だ、背後から足音が聞こえたのは。

 私と先輩が振り向くと、秘密結社のリーダー甲さんと老人が佇んでいた。

 甲さんと老人はこの場の現状にため息を吐いた。

 

「まさか、強硬策に出ようとはのぅ」

 

 老人は拘束された構成員に失望混じりの眼差しを向け、

 

「この愚か者共めがぁぁぁ!!」

 

 空気がひり付くほどの激昂を顕にした。

 

「どういうこと? 彼らはあなた達と無関係じゃないでしょ?」

 

「朧のお嬢ちゃんと小兎姫よ。確かに儂等は幻想郷から妖怪を追い出すことを目的にしとるがのう。今の儂等の目的は幻想郷の歴史を正しく識ることじゃよ」

 

「慧音に歴史を隠されてる以上、途方もないと思うけど」

 

「うむ、しかし彼女が隠す歴史とは儂等が争う危険性に対する配慮とも理解しておるよ」

 

 この人は慧音先生がどんな理由で歴史を隠すのか理解してるのね。

 でも、なら如何して幻想郷から妖怪を追い出そうと考えているの?

 

「如何してそんなに妖怪を追い出したいの?」

 

「妖怪が恐ろしいからじゃよ。里の人間は呑気で緩いからのう、人里で妖怪が酒を飲んでようと買い物に来たとしても形だけの恐れはするがそれだけじゃろう」

 

「形だけでも恐れる必要が有るからねぇ。そうやってバランスを保ってきたのよ」

 

「バランスの大切さはよう理解しとる……じゃがのう、昨晩まで酒を酌み交わした妖怪が里から出た瞬間に襲って来るのは誠に恐ろしいとは思わんか」

 

「……気持ちは判るよ」

 

「人間と妖怪の関係なんてそんなもんだ。襲われたなら返り討ちにして牢にぶち込めば良いのよ」

 

「相変わらずじゃのう。まあ、ともあれ其奴らは好きにしてよい」

 

「あっさり切り捨てるのね」

 

「今は妖怪と戦争を望まん。今は長い時間をかけてゆるりと歴史を解き明かす時じゃ」

 

「老師、そろそろ退散しよう」

 

 老人は甲さんに連れてそのまま立ち去ってしまった。

 もしかしてお爺さんは秘密結社を組織する事で、暴走しがちな若者に歴史の解明を名目に管轄に置いてるのかな? あっ、リーダーは甲さんか。

 じゃあお爺さんは御意見番の立場に有るってことか。

 でも甲さんの目を見ていると歴史を正しく識る事を急務としてるけど、妖怪の放逐が最終目的なのは変わりなさそうだ。

 これは、いずれ一波乱有りそうな予感がするなぁ。

 

「あ〜こいつらを連れて人を集めなきゃね」

 

 今回この三人は奉納品を盗むことで、妖怪の仕業だとでっちあげた。

 そこには戦争という危険過ぎる目的も有った。

 だから平和に呑気に暮らしたい人里の人間はきっと彼らを許さないだろう。

 

 こうして秘密結社の構成員と主犯の処遇が里の人々に決められることとなった。

 彼らの処遇に付いては構成員は一年間の無償労働で済んだけど、主犯格の三人組は人里からの追放が決まったのだ。

 その後、奉納品は無事に博麗神社と守矢神社に納められ今回の騒動は幕を閉じた。

 狭い里だからこそ危険人物は伸ばしにできない。

 そこに苦渋が無いと言えば嘘になる。結局追放した者は妖怪に喰われてしまうのだから非常に後味の悪い結末だ。

 それと主犯格は戦争を確信していたけど人里の人間は、秘密結社の言葉を鵜呑みにしなかったようだ。

 以前人里はあらゆる噂と情報に踊らされた時期が有った、それも世界が滅ぶという突飛もない噂で。

 今回はその時の教訓が活かされたのかもしれない。

 

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