自警団の半妖少女   作:藤咲晃

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今回は文視点となります。


射命丸文の密着取材!

 私、幻想郷の清く正しい射命丸文は自警団の二人組である朧絢音さんと小兎姫さんの後ろから彼女達の仕事ぶりを取材してるのですが。

 今朝から始まった人里の見回りは正直に言えば退屈そのものです。

 

「何か事件が起きないですかね?」

 

 私が不満を漏らすと絢音さんが何とも言えない表情で、

 

「事件なんて起きない方が良いの……それはそれで自警団の存在意義が問われそうだけど」

 

 事件が無ければ自警団は見回りだけでその日が終わるそうです。

 つまり、対外的に見れば日中ふらふら歩いている少女二人組ということですね!

 

「あやや、こうも退屈では記事になりませんよ」

 

「えっ? こうなる事が判ったうえで取材してるんじゃないの?」

 

 絢音さんは不思議そうな眼差しを向けてきますが、私はもう少し刺激が有ると予想していたのです。

 例えば変人として名高い小兎姫が暴走! それを諌める絢音さんの構図などを!

 ですが、現実は如何でしょうか? 今日の小兎姫さんは非常に大人しいです。

 

「自警団の所長でも有る小兎姫さんは刺激が欲しいですよね?」

 

「あ〜? 刺激が欲しいなら博麗神社に弾幕を放てばいいのよ」

 

 そんな生命に関わる刺激は求めてません。

 私はあくまでも記者として自警団の活動を外から知りたいのですが、

 

「あやや、いつもこうなんですか?」

 

「いつもではないわね。けど、牢屋が余る程には平和ね」

 

「平和な事は良いことよ」

 

 ふむ、先日秘密結社が事件を起こしたばかりですからね。流石に人里で連続で事件は起こりませんか。

 何か刺激が欲しいのは本心ですが、あくまでも本命は夜の絢音さんですからね。

 なんて事を思っていると慌てた様子の男性が二人に駆け寄るではないか。

 

「大変だ! 学者の若者が自宅で倒れていたんだ!」

 

 事件の訪れは唐突とは言いますが……って! 駆け出すの早いですね!

 その場から駆け出す二人を私は追いかけた。

 むろん人間と半妖の足で私を置いてこうなど無理な話しですけどね。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 学者の若者の自宅に訪れた絢音さんと小兎姫さんは、倒れている学者と部屋の様子。

 そして床に落ちてたカビの生えた物体に眉を寄せ、

 

「食中毒かな?」

 

「食中毒よ」

 

 小兎姫さんがそう言うと、綾音さんは学者に息が有るのか確かめた。

 どうやら学者は生きてるようですが、何故カビの生えた物体を食べたのでしょうか?

 ふと周囲を改めて見渡せば、山積みに積み上げられた幻想郷の歴史資料と妖怪の資料が有るではないですか。

 つまりこの学者は歴史と妖怪を徹夜で、それも空腹になるまで調べていたということですね。

 だとすればこの方は秘密結社の構成員なのかもしれません。

 私は瞬時に推測を並べ、有る程度の解答を出すと絢音さんと小兎姫さんはお互いに顔を見合わせ、

 

「いつも勉強熱心だよね」

 

「これで今年は何度めかな? 全く人騒がせな学者だ」

 

「ん? 何度め? 彼は何度も食中毒を??」

 

 えっ? 何度も食中毒になるという事は、何度も傷んだ食べ物を口にしていたということですよね?

 は? 学習能力が無いんですか??

 

「そうなのよ。だから対応も簡単」

 

 そう言って絢音さんは様子を見守っていた数人の男性に微笑んで語りかける。

 

「お願い、この人を永遠亭まで運んであげて? 無理そうなら妹紅さんにお願いしてもいいから」

 

「任せな! こいつは無事に妹紅の姉さんに引き渡すさ!」

 

「おう、お嬢さん方には毎度迷惑をかけるな、こいつが!」

 

「毎度思うけど自警団を呼ぶ前に永遠亭に運んであげてよ」

 

「いやぁ、今度は死んでしまったのだとばかり思っちまうからなぁ」

 

 こうして倒れた学者は二人の若い男性に運ばれて行くのであった。

 記事にするのに内容は薄いですが、注意喚起には丁度良いかもですね。

 秋は人間にとって風邪を引きやすい時期でもありますし。

 

「あ〜、急に巫女さんに会いたくなったわぁ」

 

 本当に唐突に小兎姫さんが思い焦がれるっと言った様子でそんな事をぼやいた。

 そんな小兎姫さんの様子に綾音さんは額に手を当て、

 

「なんか発作的にそんなこと言うよね」

 

「霊夢が避けるから〜」

 

「先輩の自業自得。霊夢さんとまともに話したいなら突然捕まえようとしないで」

 

「無理よ。霊夢には有る容疑がかかってるもの」

 

 おや? 何やら物騒な話しですね。

 霊夢さんに容疑とは? 妖怪を通り魔的に退治してることでしょうか?

 それとも妖怪を退治してるようで退治しきれない霊夢さんは、妖怪と結託していると疑ってるのですかね。

 

「霊夢さんに容疑?」

 

「巫女さんかわいい罪の容疑?」

 

 何ですかその容疑?

 あぁ、やっぱり小兎姫さんは変な人ですねぇ。

 

「はぁ〜。先輩、それよりも見廻の続きしよ? 夜は私居ないしさ」

 

「あ〜。今日は寂しく一人で夜の見廻かぁ」

 

「大丈夫、今日は文さんが居るから!」

 

「あやや? 私は絢音さんに取材を続けますが?」

 

 今晩は月に一度しか訪れない絶好の機会! それを逃す訳にはいきませんからね!

 

「私よりも先輩の変な行動が沢山見れるかもよ? 記事のネタにもなるんじゅないかなぁ?」

 

 それは記者としても気になるネタですが、そうやって絢音さんから興味を逸らそうとする……その手には乗りませんよ?

 

「どんな誘惑的なネタにも私は負けず、あなたを取材してみせますよ!」

 

 絢音さんは嫌そうな顔はせず、かと言って何を考えているのかいまいち読めない表情を浮かべるではありませんか。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 人里の見廻はあれから何事もなく夕飯を迎えるまで無事に終わりました。

 あっ、小兎姫さんが作った肉じゃが大変美味だったと記事に書きましょう。

 いやいや、そんな事よりも夜まであまり時間がありません!

 私は急いで自警団の寝室に向かう。

 するとそこでは既に出掛ける準備を済ませた絢音さんの姿が有るではありませんか。

 

「危うく肉じゃがとお酒で逃すところでしたよ!」

 

「そのまま逃しても良かったのに」

 

 絢音さんは荷物を背負うと、

 

「此処は私と先輩の寝室兼自室だよ」

 

 そんな事を話し始めた。

 言われて見れば絢音さんがにとりさんの出店で勝ち取った多数の景品が置かれた棚。

 五十音順に整理された書物が並ぶ本棚が有りますね。

 片や、乱雑に何に使うのか全く判らない珍品が置かれた棚……こちらは小兎姫さんのスペースですか。

 二人の生活模様が表れている部屋と判断できる空間ですね。

 などと関心していると、絢音さんが廊下に出てるではないですか!

 

「あやや! 私を出し抜こうったてそうは行きませんよ!」

 

 走り出す絢音さん、その跡を追う私。

 夜が近付くに連れて絢音さんの身体能力が徐々に上がるではありませんか。

 これは変化の前兆なのでしょうか?

 それでも未熟な半妖が私を撒こうだなんて千年速い!

 

 私は絢音さんに合わせながら並走することしばらく。

 人里を出て霧の湖に到着した絢音さんはその足を止めて、空に浮かぶ満月の光に照らされ始めた。

 満月の光を受けた絢音さんの身体は、薄い雲に包まれ始めるではありませんか。

 

「これは正に半妖の変化の瞬間! 幻想郷において歴史的な瞬間ですよ!」

 

 そう言って私は写真機を取り出して、連写モードで写真を撮る。

 絢音さんが完全に雲に包まれる様子と徐々に雲が晴れ始める様子が写真に収められるのですが……そこで私は自分の眼を疑う事になろうとは思いもよりませんでしたよ。

 そう、先程まで目の前に居た筈の絢音さんの姿は何処にも居ないのです。

 撮った写真を一枚一枚、順番に並べる。

 そこにきっと絢音さんが移動した決定的な瞬間が有る筈です。

 私は何度も写真を見比べ、

 

「嘘でしょ?」

 

 結論を言えば変化した絢音さんが移動する瞬間が写されていないのです。

 

「私の眼から絢音程度の半妖が逃れる事は不可能に近い。……そうか、彼女は自身の身体を雲に変質させ離散、この場を離れたと推測した方が良さそうですね」

 

 まさか伊吹萃香様の様に身体を雲に作り替えられるとは思ってもいませんでした。

 ふふ、これは私への挑戦状と受け取りますよ?

 

「今宵は始まったばかり。朝日が登る前に見付けて差し上げましょう!」

 

 そうと決まれば彼女が潜伏しそうな場所をしらみ潰しに捜してやりましょう。

 こうして私は闇夜の幻想郷の空を羽ばたく。

 変化した絢音さんの姿を写真に収め、取材するために。

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