自警団の半妖少女   作:藤咲晃

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殺人事件?〜犯人は誰だ〜

 正月も終え、本格的に自警団の活動も再開した。

 外に積もった雪で遊ぶ人里の子供達とそれに混じるチルノをはじめとした妖精。

 楽しげな光景を微笑ましげに見護る大人達を尻目に私と先生は、雪道を踏み歩く。

 

「新年の活動再開に何か騒動はないかしら〜?」

 

 先輩は相変わらず突飛もなく不可侵なことを言い出す。

 ま、里の人間は滅亡論とかとにかく物騒な話題が好きだからねぇ。

 それはそれとして自警団として言動に気を付けて欲しい。

 

「先輩、私は今年こそいい加減に後輩が欲しいんだけど?」

 

「ふふ、果たしてうちの激務に付いて来られる有望株は居るのかしらね」

 

 自警団の仕事は別に激務じゃないと思うけど?

 見回りは午前と午後、三食と休憩時間付きの優しい職場だ。

 時には犯人の逮捕や妖怪と戦うことも有るし、人里の外に出向く集団の護衛なんかも有る。

 たけど二人だけでは人里全体をカバーするのは難しい。

 

「真神様が手伝ってくれてはいるけど、春になると真神様は里を外から守護するからね」

 

「それが本来の役割りよ……雪遊びに興じてる姿を見ると忘れがちになるけど」

 

 確かに真神様の威厳は今では……見る影も無い。

 現に人里の子供達の輪の中で雪の上を転がって楽しそうにしてるし。

 まあ、でも子供達の側に居てくれるから慧音先生達も安心できるんだよね。

 私がそんな事を考えているとすれ違う若夫婦が、

 

「あら、今年もよろしくね」

 

「お二人のお陰で人里は安心だべ……絢音ちゃん、小兎姫にはくれぐれも眼を離さないようにだ」

 

 そんな事を言って長屋の方に歩いて行く。

 二人の姿を見届けた私は、

 

「私は先輩の見張り役扱いだね」

 

「あ〜? はたして私を見張り切れるかしら〜」

 

 なんで挑戦的な笑みを浮かべるかなぁ、この人は。

 それはそうと新年明けも有って人通りは控えめ、妖怪も大人しいなぁ。

 とは言え、夜になると営業再開の居酒屋を訪れる妖怪が跡を絶たないけど。

 しばらく見回りを続け、大通りに到着した頃。

 慌てて駆け付ける若い男性が、

 

「あっ! 自警団のお二人方! 大変なんだ!」

 

 必死な形相で私達の目の前に現れた。

 これは何か事件が起きたのかもしれない。

 

「何が起きたの?」

 

 頭を冷静にさせて質問すると、若い男性も落ち着きを取り戻したのか、何が起きたのかゆっくりと話し始める。

 

「あ、あぁ。実はさっき長屋の隣人につくねを差入れに訪ねたんだ……何度か呼び掛けても声が無いもんで、つくねだけ置いて帰ろうとしたんだ」

 

「殺人事件でも起きたのかしら?」

 

 先輩の物騒な切り返しに若い男性はみるみるうちに表情が青褪め、私は先輩の脇腹に黙るように肘打ちを放った。

 

「不謹慎な先輩でごめんね? それであなたは何を見たの?」

 

「食いかけの餅を片手に倒れてるアイツを見たんだ。でも、ただ倒れてるだけじゃない、口元には血のような痕跡も!」

 

 食いかけの餅と聴いた時は、いつもの学者さんが食当たりを起こしたのかと思ったけど……口元に血のような痕跡って殺人事件?

 

「すぐに現場に行きましょう!」

 

「絢音、脇腹が痛くて走らないわぁ〜」

 

 しまった! 少し強く打ち過ぎちゃったかも。

 私はそんな先輩を連れて長屋に向けて走り出した。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 現場に向かうと既に人集り、人々の小さなざわつきが響き渡っていた。

 私と先輩は人集りを掻き分け、倒れている人の部屋の中に踏み込む。

 そこには若い男性の証言通りに倒れていた男性の姿が残されていた。

 確か、この男性は随分と女性にモテると有名な人だ。

 でもこの人は、甘味処の看板娘を取り合って日々別の男性と競い合っていたとも記録してる。

 念の為に私は倒れている男性の脈を測る……脈無し、でもまだ温かい?

 うーん、ここに鈴仙さんが居たら一発で分かるんだけどなぁ。

 でも口元に付着してる血痕のような物……なんだろう? 血の臭いとは少し違うような?

 

「……なるほど、犯人はこの中に居るわ!」

 

 突然先輩がそんな事を声だからに言い出して、人集りが騒つく。

 

「先輩、この人は殺されたと言うの?」

 

「少し待ってなさい」

 

 先輩はそう言って人集りに突っ込んで、程なくして顔面蒼白の古明地さとりさんを連れて来た。

 こいしさんのお姉さんだ、地上に来てるところうちの先輩がごめんなさい!

 

「先輩! さとりさんを今すぐ解放してあげて! 彼女怯えてるよ!」

 

「そう? なら今から私が言う人以外は解散!」

 

 先輩の鶴の一声で人集りは瞬時に動いた。

 そして現場に残されたのは、第一発見者の若い男性、被害者と恋のライバル関係に有る吉永さん、甘味処の看板娘だ。

 

「先輩、まさかこの中に犯人が居るとでも?」

 

 何だろう? 今回の事件は殺人事件なのかな?

 血の臭いもしない、でも呼吸も無い。餅を喉に詰まらせた事故死な気がしてならないんだけど?

 

「心の声を聴けば一発じゃない」

 

「……自警団の存在意義!!」

 

 私が叫んだのも無理はないことかもしれない!




次回更新はさとりの視点でお送りします。
なお、今作品は10万文字超えた辺りで完結する予定です。
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