自分の運命とは、果たしてなんなのだろうか。
人には、様々な運命が掲げられている。
例えば、プロの野球選手のインタビューから引用した発言。
『私は、きっと前世での人生でも、野球をしており、来世での人生でも、野球をしているでしょう。
それが、私の人生であり、成すべき『運命』であると思います』
野球というスポーツの中で、様々な良い成績を残し続けた彼の言葉だからこそ、人々は彼の発言に共感していくだろう。
だが、果たしてそれは、本当に自分の『運命』なのであろうか。
彼には、野球以外の道に進む選択、運命は他にもいくらでもあったのではないか?
例えば、医療系は音楽系の仕事に就くだとか、なにか、芸能関係の道に進むだとか。
たまたま、彼が野球選択という道を選んでいただけで、一概にも、運命だとは言い切れないのではないか?
だからこそ、人間には定めれた運命なんてものは存在しない。
「運命なんてものはない……運命なんてものはない……
あぁ〜!!続きが思いつかねぇー!!」
譫言のように言葉を呟いた後に、天を仰ぎながら近所迷惑ギリキリの程度に叫んだ。
眼の前に置かれているパソコンに打ち込まれていた約400字程度の文章。
その続きが思いつかないがために、俺は少しばかりの叫びを上げてしまっていたのだ。
『運命』
そんな、極めて簡単そうで、深い単語をテーマとしたレポートに俺は取り組んでいた。
「運命ってなんだ……?」と疑問に思いながらも、なんとかパソコンに文章を打ち込む。
だが、その運命というテーマとはあまりにもかけ離れた否定的な文章に違和感を覚えてしまい、そのまま文章を全消し。
また悩みながらも文章の打ち込み、そしてまた違和感を覚えて文章の全消し。
これの無限ループをいつまでもし続けていたがために、俺は長期に渡る、終わりの見えない作業をいつまでも取り組んでいたのだぬた。
太陽が沈み、辺り暗闇で包まれていた窓からの景色は、いつの間にか明るいものへと変化しており、太陽も空に浮かび上がっていた。
「あぁ、もうやめだ、やめ」
何度やっても辿りつく結末の変わらない、無駄な作業。
しかもそれが夜中から朝方までの長期戦にまでまで持ち越して1割も終わってない事で、俺の精神は疲労困憊。
このまま作業を続けていれば、俺は発狂などといった狂気じみた行為をやりかねないために、一時中断。
俺はパソコンのキーボードから両手を離し、そのまま椅子から立ち上がって、長期間座りっぱなしで作業していた為にできた体の凝りを、軽く伸びをしたりすることでほぐした。
「はぁ……顔でも洗うか……」
フラフラとした半ば危険な足取りで部屋のドアまで向かい、そのまま取手部分を捻りそのまま開扉。
またもやフラフラとした危険な足取りで階段を下っていった。
階段を下る最中にも、先程まで感じていた徹夜の影響である体の倦怠感、多大なる睡魔による瞼の重みなどを感じていた。
だが、先程と比べて、一つだけ違和感があった。
それは、一階にあるリビングから段々と漂ってくる程よく香る良い匂いだった。
香ばしく焼き上げた、出来立ての焼き魚の匂いや、卵焼きの優しく、甘い匂い。
程よく漂ってくる芳醇な味噌の香り。
食欲が掻き立てられるような炊きたてのご飯の匂い。
さっきまでは感じられなかったいい香りが、階段を一段、一段とゆっくり降りている俺の鼻孔を瞬く間に刺激し、そのまま俺を空腹へと誘っていた。
その証拠として、無意識に、俺の腹からは虫の音が盛大に鳴り響いていた。
だが、その匂いから感じられたのはいい事ばかりではなかった。
言葉通り、悪い意味としも捉えられる。
俺は、夜中から今この時間にかけてまで自室作業をしていた。
その際に自室から出たのは、トイレに行った時のみ。
それ以外に自室から出た覚えもないし、ましてや、リビングにて調理をした覚えも一切ない。
そこから考えられることはただ1つ。
何者かが、俺の家に侵入して朝食を作ったに違いない。
なぜ、わざわざ俺の家に不法侵入してまで朝食を作りに来たのか、その真意は俺には分からない。
だが、人様の家に勝手に上がり込んだ上に勝手な行動をするのは流石に許せない。
しかも、ご丁寧に意識がハッキリしてない状態が多いと思われる朝一の時間に来やがって。
ともかく、何かしらの出来事があったときに、自分が相手に対して反抗出来るように、階段を降り終えた場所の近くにあったモップを持ち、そのままゆっくり、ゆっくりと侵入者がいるであろうリビングに近づいた。
最小限にまで足音を小さくさせてリビングまで近づいた俺は、ドアの引き戸に優しく触れて、そのまま勢いよく横に引いてドアを開いた。
「おいコラ侵入者ャ!!人様の家に勝手に上がり込んで何してんだゴラァ!!」
「……は?」
リビングに入った途端にまるでヤクザのような声を荒げながら、モップを振り回して威嚇じみた行為をしながら周りを見渡し、侵入者を探している俺。
そんな奇怪的な行動をする俺を見て唖然とする侵入者。
異様な光景がリビングで広がっていた。
「あぇ……?美咲……?」
「……なに?」
侵入者の顔を見据えた俺は、その正体が自分の知り合いである
そんな俺に対して、美咲は呆れのような感情を込めた冷たい眼差しで俺のことを見据えていた。
「え、えっと……おはよう。
なんで美咲さんが朝からここにいるのでしょうか……?」
とりあえず、知り合いに会ったら基本の挨拶。
そこら編の常識はしっかりとしていきたい人間になりたいです。
まぁ、睡眠をしっかりと取っていない時点でどうかとは思うのだが……
「おはよう」
ここに来た理由だけど……雅人、スマホ見た?」
「スマホ?バリバリ見ていたつもりだが」
レポート作業をしている際に調べ物などはスマホを用いてしていたため、バリバリ使ってた記憶は俺の中にある。
だが、美咲がここに来た理由は未だに分かっていない。
もしかして、見落としがあったとか……?
そう思った俺は今すくに連絡通信アプリを開き、美咲とのトーク欄を見返した。
「『明日、朝ごはん作りに行くね……』
あっ、そんな会話した記憶あったわ」
「はぁ……全く、集中しすぎるといつもそうなんだから……」
「面目ない……」
昨日の美咲とのやり取りで、俺はたしかに美咲に朝ごはんを作りに行くと言われて承諾をしていた。
そしてそのままレポート作業に意識を持っていきすぎてこのことを完全に忘れていた。
そのため、美咲の発言にはぐぅの音もでずに反論することはできないし、しようとも思えなかった。
まぁ、こんなことはそんなに気にしても仕方ないか。
「まぁ、過ぎたことは置いといて、飯作ってくれたんだろ?
冷めないうちに食ってしまおうか」
俺は早速切り替えをして、美咲の飯を頂こうとした。
「もぅ……調子いいやつなんだから」
そんな俺に対して美咲はまたもや呆れた目線をしながらはぁ……っと小さく溜息を漏らしていた。
おいおい、美咲、そんなに溜息をすると不幸になるぞ」
「別に、いまはそんなに不幸な気分じゃないから」
「わお、なかなかに照れる言い方されたな」
あと、しれっと口に出てたっぽいな。
と言うか今の優しい笑みは、なかなかに可愛いな。
俺でなきゃ惚れてたぞ。いや、俺も惚れたか……?
「変なこと考えてないで、早く食べて」
なぜバレたし。
「……考えてないぞ?」
「何その間。あと分かりやすく顔に出てる」
「さいでっか」
俺と美咲は、そんなごく一般的なやりとり(?)をしながら、美咲が作った料理が置いてあるテーブルに向かい、そのまま近くにある椅子に対面するように座った。
「そいや、美咲。
運命ってなんだと思う?」
俺は飯を食う前に、疑問に思ったことを美咲に問いかけた。
「なんでそんな急に難しいこと。
そんなの、私がわかるわけ無いでしょ」
「だよなぁ……なんでこんなめんどくさいレポートにしたんだよ……」
「今どきの若い生徒はどういう考えを持っているか、知りたいんでしょ」
「にしてはその題材ムズい気もするなぁ……
美咲、手伝ってよ」
「ん?やだ」
「いい笑顔で、即答すんなよ」
「ん、ごめんごめん。
別に良いよ」
「わり、助かるわ。
んじゃ、そろそろ食うか。
いただきます」
「いただきます」
俺達は互いに手を合わせ、そのまま美咲の作った朝食を食べ始めた。
どうも、今回の奥沢美咲短編集の企画者の内の一人であるrain/虹と申します。
今回の企画は、企画者の内の一人である弾正君とのTwitter場でのおふざけ?気味のやり取りから始まったものでした。
企画の募集をしてみて、まぁ、2人、3人いればいいかなのノリでいたら、まさかの15人程度の人達が集まったときには、もう、驚きしかありませんでしたね。
今回の、私の作品は、奥沢美咲短編集と言っておきながら、それ本当に奥沢美咲?とかそれ奥沢美咲でやる必要ある?とか思うような内容だと思います。
自分でもそう思いました。
ですが、今回、参加してくださった方々の小説は奥沢美咲と言うキャラをしっかりと捉えた上で、面白い内容の創作を作ってくださいました。
いろいろな作家の人達の奥沢美咲を見ることができる。
それは、この企画の一番の醍醐味だと思います。
大変長く語ってしまい申し訳ありません。
少し企画者としての熱が出てきました()
次回も今回と同じ日に投稿されます。
ぜひ楽しみに待っていただけるとありがたいです。
それでは、ご愛読ありがとうごさいました。
rain/虹
代表作【人見知りの幼馴染は俺にだけデレッデレ】
https://syosetu.org/novel/253378/