奥沢美咲短編集   作:rain/虹

9 / 10
今回はゼファー@神界書庫様の短編になります。


常識人の裏の顔?

これはあり得たかもしれないifの世界。

 

俺こと黒鐘真倉は、今日も今日とてある女に振り回されそうになっていた。

 

「見つけたわ真倉!今日こそ私と遊んで貰うわよ!」

 

こいつは弦巻こころ。あのかの有名な弦巻財閥の一人娘だ。

そんな彼女と謎の黒服の人達に只今壮絶な鬼ごっこを仕掛けられている最中である。もちろん俺が逃げる側だ。

 

 

「ざけんな!毎日毎日学校終わる度に家まで追いかけてまわしやがって!」

 

普通の人なら何故黒服の人達から逃げられているのか不思議に思うだろうが、それはひとえに俺の身体能力故だろう。

 

勿論普通に逃げれば一瞬で捕まるだろうが、生憎ここは住宅街だ。足場ならそこら中にある!

 

 

俺は山でも全速力で走る事が出来る。それは最早自然のアスレチックだ。そんな悪路走行を有する俺の身体能力は使えるものを全力で使う。

それこそ室外機の上や、電柱の突起、自動販売機などもだ。しかも、通報されないように細心の注意を払いながら。その様子はさながらパルクールだ。

 

「よっと、はい。今日も我の勝ちね。じゃあ諦めろ。」

 

自宅に着くと黒服とこころにそう言い放つ。

 

「むぅー、少しぐらいいいじゃない!ワタシはあなたを笑顔にしたいだけなのに!どうしてそこまで嫌がるの?」

 

「ありがた迷惑って言葉を知ってるか?俺はあいつの前以外で笑顔を晒す気はない。」

 

そう、俺は滅多に人前で表情を崩さない。

感情がないわけではない。喜怒哀楽はある。

しかし、笑顔は別だ。

笑顔は気が緩んだ証拠だ。気が緩むと表情も緩む、そんな緩みの極みを他人に晒すなどごめんだ。

ただ1人を除いてな。

そんなことを考えながら家に入る。

こころが入って寛ぐまでが一連の流れになっている。

 

訳ではない!

 

 

「さぁ!今日は何をしてあそぶの?」

 

「勝手に人ん家入って何言ってんの⁈てか、〆切近いのに遊んでる暇なんかねぇよ!」

 

「あら?そうなのね!私にも手伝えることはあるかしら?」

 

「じゃあこの紙に好きに絵を描く。何枚もな。」

 

「分かったわ!」

 

色鉛筆と大量の紙を渡しそう告げる。

カリカリと様々な絵を描いている。

 

対して俺は、パソコンを開きキーボードを爪で弾きながら小説を書く。

俺の著作は、子供向けの小説だ。

 

かれこれ30分ほど書いていると、ピンホーンとインターホンが鳴る。

 

「はいはいっと、どちら様って言っても大体誰かわかるけど。」

 

「相変わらず独り言が多いね。しかも大声で。」

 

「それが私だよ美咲。」

 

彼女は奥沢美咲。こころと同じハローハッピーワールドというバンドのメンバーの一員。

ミッシェルというピンクの熊の着ぐるみを着て、DJとして参加している。

初めてみた時は流石に目を疑った。

 

「あれ?こころいるの?真倉?浮気?死ぬ?」

 

「たとえ浮気だとしてもアイツだけは選ばん事ぐらい知ってるだろ。」

 

 

ちなみに俺の彼女だったりする。

え?あっさり言いすぎだって?

だってこれそういう企画で書いたものですし(メタ発言)

 

リビングに戻り、再びパソコンで作業をしていく。

 

「さっきのヤンデレみたいなムーブなんだったの?」

 

「あはは、最近赤羽くんからマグはヤンデレが好きって聞いたから試してみました。あ、これ今日の晩御飯の材料ね。」

 

アイツ何してんの?明日会ったらぶっ飛ばす。

そして何気に晩御飯食べていく気マンマンですやん。

 

「んな訳ないだろ。俺が好きなタイプは世話を焼いているやつの世話を焼く事だ。つまりこころの世話を焼いている美咲の世話を焼きたい。」

 

「あら?ワタシは美咲にお世話されてるの?ワタシは赤ちゃんじゃないわよ?」

 

「よくもまぁ、そんなことを大っぴらと言えるよね。それとこころ、自覚ないの?」

 

「好きなものを好きと言って何が悪い?それとも美咲は好きな色を聞かれて恥ずかしいからと沈黙を貫くのか?」

 

「いや、対象とするものが違いすぎるでしょ!」

 

「わたしは、黄色が好き!」

 

「聞いてねぇ!」

 

 

そんな雑談をしながらも、俺は指の動きは止めずに小説を書いていく。

 

後ろでは美咲が、こころの描いた絵を見ながらそれを言語化していってる。

ハロハピの作詞作曲を担当している美咲の腕の見せどころである。

 

こころの描く独創的な絵を正しく読み取り噛み砕き言語化する。「言うは安し、行うは難し。」とはまさにこの事である。

 

 

それから約1時間後…

 

「終わったー!あとは転送して乙!」

 

「こっちもある程度出来ましたっと。」

 

「んー!お絵描き楽しかったわ!」

 

各々の作業が終了し、三者三様の声をあげる。

 

 

「さて、晩御飯だけど食べていく?」

 

「私は今日は用事があるから帰るわ!お邪魔しましたー!」

 

「用事があるなら、こんなとこで油売ってないで早よ帰れよ。」

 

そう言って黒服の人たちに連れられこころは帰った。

 

「美咲はどうする?食べていく?」

 

「あたしは、泊まるよ。いいでしょ?」

 

「美咲さんってたまにとんでもない事サラッと言うよね。俺男だよ?2人きりだよ?」

 

「いや真倉にそんな度胸無いでしょ。それにもしもの事があったら、ますきさんにある事ないこと吹き込むから。」

 

「ある事だけにしてください。死んでしまいます。」

 

ますきに顔の原型が無くなるまで殴られてしまう。

 

「と言っても、結構な頻度で泊まりに来るけど、親御さんは心配せんのかい?娘が男の家に頻繁に泊まりに行くって。」

 

 

「いや知らない仲じゃないんだし、何年の付き合いだと思ってるの。」

 

「年齢とイコールで繋がりますね。」

 

そう、美咲とは所謂幼馴染である。それも初めて会ったのは事実上生後1週間で記憶は3歳ぐらいだっけ?流石に生後三年の記憶はない。

 

「お父さんもお母さんも早く孫の顔が見たいってよく言ってくるよ。よかったね、両親公認で私とヤレるよ?」

 

「ばっかじゃねぇの?高校生カップルに孫を求めるな。あと、女の子がそういった話題をペラペラと喋るんじゃありません。はしたないぞ。」

 

「しかしや真倉さん。実際のところ付き合って四年ほど経つわけですが私達どこまでいったか言ってみ?」

 

「えーとですね、恥ずかしながら申し上げますと、例外を除いて、ほっぺにキスですね。」

 

「例外を入れると?」

 

「抱き枕?膝枕?どちらかになりますかね?」

 

そうなのである。付き合ったのが中学二年の春からで、2.3.卒業、1.2となり四年目でありながら、未だに接吻すらしていない、なんなら、未だに手を繋ぐ行為をして赤面するといったレベルである。

 

何が言いたいかと言うと、黒鐘真倉は超絶ヘタレだと言うことだ。しかし抱き枕ヤンデレ膝枕などの寝ることに関する際、羞恥心は消え去る。

 

「抱き枕は大丈夫なのに手ぇ繋いで赤面ってどんな価値観なのかさっぱり理解出来ないんだけど。」

 

「寝る時は頭が真っ白になるからねしょうがない。」

 

「つまり、寝込みを襲ってほしいと。」

 

「どう言う解釈したんだよ。」

 

じつは、いいなぁと思ってだけど墓場まで持って行こう。

 

そんな会話を美咲としながら、二人で晩御飯を作っていく、メニューは買い物袋の中を見る限りだと、ネギ、じゃがいも、にんじん、大根、トマトにパセリ、そして鳥の胸肉。

 

「なぁ美咲さん。何を作ろうとしてこの材料買ってきたの?」

 

「主流かつ、安かったやつ。真倉ならなんでも作れるかな〜っと思ってコスパを優先した結果そうなった。」

 

「吹っ飛ばすよ?ありがたいけど献立を考えるこっちの身にもなれよ。」

 

肉はある、野菜も。パッと思い浮かんだのは、

 

 

「カレーかな?トマトとネギはスープにでもするか。パセリは知らん。」

 

そこからは早かった。

 

美咲が野菜の皮を剥きそして切る。

 

その横で俺はトマトの皮を剥き、ネギを刻みコンソメやらと一緒くたにして煮ることにより汁物を作る。

 

なんやかんやでチキンカレーとトマネギスープが出来た。

 

「美味し!ホントに万能だよねー。一家に一段真倉って感じ。」

 

「人を家電みたいに言うな。この位誰にでも出来るだろ。」

 

「またまたご謙遜を、なんで材料がおんなじでもこんなに味が違うかな〜。家で作ったカレーよりも美味しいよ。」

 

「そりゃどうも。」

 

 

食べ終わり洗い物も終わりひと段落つく。

 

 

「先にシャワー浴びてこいよ。俺は作品の件で担当と話あるから。」

 

「真倉、それって無意識…だよね、真倉にそんな度胸ないもんね。」

 

「?風呂を譲るのに度胸がいるのか?おかしな奴だ。」

 

 

ただただ鈍感な真倉。そんな真倉にドキドキさせられる美咲。

 

なんて恋愛ものならこんな感じになるのだろうが、この2人は恋人でありながら既にその域にいない。

具体的に言うと、

 

「なぁ美咲。」

 

「ん?来週の金曜日なら空いてるよ?」

 

「じゃあ、5時で。」

 

「了解。」

 

これで伝わる。

 

ちなみにこれは、真倉が美咲をカラオケに誘った時の一連の流れである。

 

なんで分かるのか市ヶ谷に聞かれたが返答は、

 

「「美咲(真倉)だから」」

 

らしい。

 

 

そんなレベルである。そんな2人が未だに一線を越えてないと言うのだから美咲はあんな行動に出たのだろう。

 

 

 

シャワーから上がってきた美咲。

 

「空いたよー」

 

「じゃあ入ってくるわ。」

 

そう言って真倉がシャワーに向かった。

 

「あーあ、なんであんな鈍感野郎好きになったんだろう。あそこまで言ったのに。バカ」

 

クッションに顔をうずめ、モンモンとする美咲。

付き合い始めてはや四年、美咲も所謂年頃になる。

そういう事にも興味がある。そして真倉ならいいと。しかし、あの男ときたら、稀に一緒に寝るのに、抱き枕にしてくるがそれ以上はしてこない。

最初は嬉しかったがどんどん物足りなくなってくる。

 

「腹括りますか!」

 

「何のだよ。」

 

「え⁈早くない?もう終わったの?」

 

「いや、15分もあれば終わるだろ。」

 

時計を見るとしっかり15分経っていた。

 

「ホントだ、考え事してたから気づかなかった。」

 

「で?腹括って何すんの?」

 

「その前に、真倉って私のこと好き?」

 

「勿論だ。」

 

「じゃあなんで?」

 

?美咲が何を言いたいのかわからない。

 

「何がだ?」

 

そう聞き返すと美咲は、抱きついてきた。

それを受け止めると同時に、背中に鋭い痛みが走った。

 

「いっつ!」

 

「真倉が悪いんだからね。」

 

「美咲、何…を…?」

 

そう聞くと、意識が遠のいて行く。

 

ドサッ…と膝をつく。

 

「大丈夫、黒服の人に頼んで人体に害はないから。少し眠くなってしまうけど。起きた時には全て終わってる。もしかするとはじまりかもだけど。」

 

そこまで聞こえたが俺の意識はそこで途絶えた。

 

 

真倉をベットまで運んで寝かせる。

zzz....と寝息が聞こえる。

 

 

「ふぅ、寝たよね?よし。服薬タイプじゃなく水圧注射にしといてよかった。」

 

「へー、便利なもんだなぁ。なぁ美咲さん?」

 

「へ?」

 

 

後ろを振り向くと寝たはずの真倉がすごくいい笑顔で起きていた。そして腕を掴まれ、ベットに押し倒される。

あ、これめっさ怒ってるわ。

てか!何で起きてんの?

 

「何故このような行為を?」

 

「黙秘権!」

 

 

「では選択肢を与えよう。一つ謝る。二つ黙秘権そのままを行使する。三つ拷問を受ける。」

 

「因みに拷問の内容は…」

 

「パクチーを生で食わす。」

 

「よし!話し合おう!話せば分かる!」

 

「何故このような行為を?」

 

「…ため。」

 

「なんて?」

 

「そのーー、まぁー私も年頃ですし、そのー何と言いますかー、そのー、三大欲望ってあるじゃん?その発散といいますかー。」

 

「端的でいうと?」

 

「食べようとしましたすんませんでした。」

 

バレた、薬まで打ったのに。ホントに何で起きてんの?結構強力な奴らしいよ?あんまし詳しくないけど。

 

 

「てか何で起きてんの?薬効かないの?」

 

「え?ああ、気合い。実際のところもう限界。」

 

そう言った瞬間再び寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはようございます。真倉です。

起きたら、お互いに衣類を身に纏っていませんでした。そして、美咲さんが腹の上で幸せそうに寝てます。

 

 

完!




どうもゼファーです。
今回は初めてこういった企画に参加させていただきました。
もともと夏休みに入る前に企画されていて、ちまちま書いてはいたのですが、とある事情によりRainさんに頼み、〆切を伸ばしてもらえたこと感謝してます。さて、感想になりますが、今回奥沢美咲短編集という事で、もともとは大学に進学した美咲さんとの同棲物にする予定だったのですが、とある理由で、データが吹っ飛び、内容を一から作ったことによって〆切を伸ばして貰うことになりました。結果、僕の小説の方の主人公の名前を借り、作風もガラッと様変わりし、出来上がってみたら、4500字程度の量。ありきたりな鈍感系。正直なところ作者の僕ですら読む価値に関しては…皆様に委ねます。
ここからは感謝を。
今回、駄文ながらも企画に参加させて頂きありがとうございました。
お手数をかけさせないようにしますので、今後ともよろしくお願いします…。いやホントに。


代表作『共感覚持ちの偽善者とちびっこ革命家』
https://syosetu.org/novel/223488/
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