IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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もう吹っ切れました

タイトルは気にしない


第十一話 Gの危機/守りたい場所

◆

 

 

 

 

「チームバロンとバトル?」

 

「そう。 今度の日曜にサウスステージで。 来なかったらガレージに乗り込むって」

 

 

あれから二日後、食堂にて。

 

遅めの朝食を摂っていた倭は、同じく朝食中だった深琴からチーム鎧武の近況を聞かされていた。

 

因みに、深琴の今の服装はIS学園の制服なのだが、何故彼女がIS学園に居るのかはここでは割愛させていただく。

 

 

「けど、サウスステージはまだバロンが確保したまんまだろ。 メリットが無いんじゃないのか?」

 

 

その言葉に、深琴の機嫌が目に見えて悪くなる。

 

 

「あいつら、「ステージの代わりに<プレイヤーパス>を渡せ」なんて言ってきたのよ」

 

「な、何だよそれ! 無茶苦茶じゃねえか!!」

 

「私達だって抗議したわよ!! けどあいつら、「弱い奴等にこの街で踊る資格は無い」って聞く耳持たないのよ!! あーもうムカつく!!」

 

 

バン!! とお冷やグラスをテーブルに叩き付ける深琴。

 

 

「あ、あの……倭さん、サウスステージにプレイヤーパスとは……」

 

 

怒り心頭といった深琴の様子に若干引きながら、セシリアが倭に先程のやり取りの説明を求める。

 

 

「ああ、セシリアはビートライダーズを知らねえんだったな。 まあ、それに関してはーー」

 

 

ふと背後に目を向けると、既にスーツ姿の織斑先生がまだ食事の終わっていない他の生徒を急かしていた。

 

 

「ーー昼休み、だな」

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

「これって、あのベルトですよね?」

 

「「返しておく」。 どうせ没収した処でお前にしか扱えん」

 

 

時は遡って事件翌日。

 

緑色の怪物との激戦直後に倒れ医務室に運ばれた倭が目を覚ました時、傍らに居た織斑先生から渡された物はあのバックルとロックシードだった。

 

 

「束に調べさせたんだが、最初に装着した者の情報が登録される事と<戦極ドライバー>という名称しか判らなかったそうだ」

 

「はい? 「あの」束さんにもわからないんですか?」

 

「少なくとも、あいつはそう言っていた。 後、お前が倒れた原因は唯の疲労だそうだ。 まあ、ISの防御すら貫く怪物とあれだけの大立ち回りをすれば無理も無いだろう」

 

 

その後織斑先生から聞かされた話によると、あの時の倭の姿や、同時に確認された「赤いバナナの騎士」「黒いメタルヒーロー」「龍を携えた闘士」「青いカブトムシ」は「正体不明の仮面の戦士」として扱う事にしたらしい。

 

理由は、ISすら苦戦させる怪物を容易く撃破する「強化服」の所有者が此処の生徒である事をを国際IS委員会や女権団体にでも嗅ぎ付けられようものなら、どれだけ厄介な事になるか解ったものでは無いとIS学園の上層部が判断したからだ。

 

勿論、その「所有者」の一人が千冬や束の身内である事も理由の一つだが。

 

そして、あのインベスの群れだが、どうやら人為的に召喚されたらしい。

 

インベスを殲滅した後アリーナ周辺を調査した結果、送還出来ないようにロック部分を壊された下級ロックシードが倭達の居たピット入口の物陰で多数発見されたのだ。

 

只、確認されたインベスの数に対して余りにも少ないのが気になるが。

 

尚、余談だが、今回の騒動の際IS学園への「不法侵入」を図った女子が一人保安部に逮捕されたらしい。

 

それだけ言うと、今日一日は安静にするよう言い残し織斑先生は医務室を後にした。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

時間は戻って、昼休み。

 

「……では、チームバロンは暗に倭さんのチームに解散を求めていると?」

 

「そういう事だな。 ビートライダーズに支給されるプレイヤーパスは沢芽市のフリーステージの音響施設を使うのに絶対必要だし、一度失くしたら再発行に一年は掛かる。 一年もステージで踊れないんじゃ、ビートライダーズとしては終わったも同然だ」

 

「酷い……どれだけ理不尽なのですか、そのチームは! 強者の所業ではありませんわ!」

 

 

思わず憤りを覚えるセシリア。

 

彼女自身、故郷のイギリスでは名のある貴族の出らしく、力ある者としての自覚と誇りを持つ彼女にとってチームバロンの暴挙はとても許せるものでは無いのだろう(実際、始業式での決闘騒ぎの際にはわざわざクラスメイトの自室にまで赴き、謝罪に回ったらしい)。

 

 

「でしょ!? それにあいつら、ダンスそっちのけでインベスゲームの方でばっかりポイント稼いでるし、 インベスゲームでも卑怯な真似ばっかりしてくるのよ! ビートライダーズでチームバロンを良く思ってるチームなんて一人もいないんだから!」

 

「落ち着けって深琴。 それにしても、チームバロンか……あいつ、相変わらずみたいだな」

 

「あら、誰かお知り合いでも?」

 

「いや、ちょっとなーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、随分と嫌われたものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー! お前ーー戒斗!! 戒斗じゃないか!!」

 

 

背後からの声に振り向くと、IS学園の制服の上をロングコート型に改造した少年が立っていた。

 

 

「カイト!? あんた何でこんなとこにいるのよ!?」

 

「白鳥か。 ニュース位目を通しておけ。誰が好き好んでこのようなモルモットの檻などに来るものか」

 

「貴方は……確か、第五の男性IS操縦者の<駆紋 戒斗(くもん かいと)>さんでしたわね」

 

「そういう貴様はイギリス代表候補生のセシリア・オルコットだったな。 クラス代表決定戦、見させて貰った。 代表候補を名乗るだけはあるようだな」

 

「いえ、倭さんに比べればまだまだでーー」

 

「ち、ちょっとセシリア! あいつが男性IS操縦者ってホント!?」

 

「ええ、以前ニュースで真司さんや一真さんと共に紹介されておりましたのよ? 深琴さんはご存知なくて?」

 

「あー、私ニュースあんまり見ないし……」

 

「それよりも戒斗! 今度のバトル、どういう事だよ!」

 

 

納得出来ないとばかりに食って掛かる倭を軽くいなしつつ、事もなげに言い放つ戒斗。

 

 

「文句があるなら勝てば良い。 力ある者が勝つ、それが今の世界のやり方だろう」

 

 

戒斗が言う「世界のやり方」とは、「女尊男卑」の風潮の事に他ならない。

 

「女性にしか使えない最強兵器」ISによって生まれたこの風潮は、それまでの世界の常識を完全に破壊した。

 

何せ、ISは「戦闘機以上の機動性」・「戦車大隊以上の火力」・「核シェルター以上の防御力」・「拳銃以上の携帯性」全てを併せ持ち、唯一の弱点とも言える「皆無に等しい生産性」も単騎で一国の軍隊を殲滅可能な性能の前では寧ろ「他者に対する適合者の優越性」となりうる。

 

故に、いつしか「ISに敵う兵器は存在しない」「ISを扱えるのは女性だけだ」「よって男は女性には勝てない」「故に女性の方が男より偉い」という風潮が世界の常識になりつつあった。

 

例を挙げると、道行く男性が見知らぬ女性に荷物持ちを押し付けられるのは日常茶飯事、酷い時には同じ電車に居ただけの男性を「顔が気に入らない」というだけで痴漢の濡れ衣を着せて慰謝料までむしり取る、雑用を断わられた腹いせに暴行されたと偽り断った男性を警備員に逮捕させるといった例まで様々だ。

 

戒斗にしてみれば、そのような風潮を彼の主義である「弱肉強食」にかけて皮肉ったが故の台詞なのだろう。

 

 

「そのような考え方は間違っていますわ! 男女問わず、力ある者が力無き者を守るーーそれが力ある者の義務です!」

 

 

セシリアの主張にも、戒斗は怯まない。

 

 

「ノブリス・オブリージュ(高貴なる義務)」という奴か。 下らん」

 

「なんですって!?」

 

「そんなものは唯の言葉遊びだ。 大体、あのア○○カとかいう国は、貴様等の祖先が原住民から力で奪い取った土地に作り上げたものだろうが」

 

「っ! そ、それは……」

 

「弱者が何を吠えようと見苦しいだけだ! 強者の影に隠れて舌だけ達者な、狐にも劣る卑劣な輩もな! 俺はそのような目障りな奴等を、一人残らず叩き潰す! その次はーー貴様等だ!」

 

 

言い返せないセシリアを指差し、更に言い募る戒斗。

 

 

「貴様等が強者だと言うのなら、同じ場所に居る俺を退けてみせろ! それが出来ないというのならば、俺は貴様等を「最強」の座から引き摺り下ろす!」

 

 

そう言い残し、戒斗は食堂から去っていった。

 

 

「……あのお方が、第五の男性IS操縦者……悔しいですが、一言も言い返せませんでしたわ……」

 

「あいつは言動は物騒だけど、言ってる事は間違ってないんだよな……」

 

「だからって、他のチームを潰すなんて……」

 

 

悔し気に呟く深琴。

 

その肩に倭の手が置かれる。

 

 

「安心しろって。 チーム鎧武は俺達の「居場所」なんだ。 そう簡単に潰させてたまるかよ」

 

「倭……」

 

「ですが、勝つ宛はお有りですの? チームバロンは勝つ為なら手段を選ばないようですし……」

 

「そうだな……」

 

「言っておくが、<アーマードライダー>になるのは許可出来んぞ」

 

「うわっ!? ち、千冬さん!? あいてっ!」

 

「織斑先生だ。 只でさえお前の立場は色々と危ういんだ、この上更に厄介事を増やして貰っては堪らん」

 

「わ、わかってますって」

 

「ならいい。 午後も遅れるなよ」

 

そう言い残し去って行く織斑先生。

 

その後ろ姿を見送る倭の脳裏に、ふと違和感がよぎる。

 

 

(仮面ライダーになるな、ねえ……待てよ? 千冬さん、今何て言ってた?)

 

 

だが、余り重要とは感じなかったらしく、すぐに別の疑問にすり替わってしまった。

 

 

「そういえば……戒斗の奴、何しに来たんだ?」

 

「「あっ」」

 

 

その後、周囲の視線を無視しながら食券を買う生徒の列に律義に並ぶ戒斗の姿を見付け、

 

 

(あいつ、案外悪い奴じゃないかも……)

 

 

と思ったのは余談である。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

「チームバロンに勝てる錠前、ねえ」

 

 

数日後、ドルーパーズ。

 

チームバロンとの決戦を前にチーム鎧武のメンバー全員にで話し合った結果、ロックシードの専門家である<錠前ディーラー>に意見を聞いてみようという事になり、代表として倭……と何故か着いてきた深琴とセシリアの三人でドルーパーズの奥の席を間借りしてロックシードを販売している事の多いディーラー<シド>に相談を持ち掛けたのだが、

 

 

「悪い事は言わねえ、止めとけ」

 

 

一刀両断だった。

 

 

「な、何でよ!!」

 

「勝ち目がねえからだ。 奴等が相手なら、使ってくる錠前は少なくともランクC以上。 加えて、リーダーの戒斗はCランク以下のインベスを複数同時に操る特技も持ってるときた。 正直、マトモな考えの奴ならまず戦わねえ」

 

「う……」

 

「それでも! やらなきゃならねえんだ! 何か手はねえのかよ!」

 

 

その問いに、シドは挑発的な笑みを浮かべつつ手元のタブレット端末を差し出す。

 

 

「なら、こっちも勝てる戦力で行くしかねえ。 となると……こんな所か」

 

 

そう言ってシドがタブレット端末に表示したのは、Aランクのロックシードのカタログだった。

 

 

「いくらバロンでも、こいつは持ってねえ筈だぜ。 只、それなりに値も張るがね」

 

 

実際、錠前一個で数万円はする代物など、そう簡単に買えるものでは無い。

 

金額を目にして固まった深琴を余所に、倭はとある錠前に目が止まっていた。

 

 

「これって……間違いねえ、同じ奴だ」

 

 

それは、倭の白式に組み込まれ、倭を「仮面ライダー」へと変身させた物と同型の<オレンジロックシード>だった。

 

 

「ん? ……お前さん、ちょっとその錠前開けてみてくれないか?」

 

「ん? あ、ああ」

 

≪Orange!!≫

 

 

初変身時と同じく、オレンジ型の物体を呼び出す。

 

それを見るなりシドは納得したように頷く。

 

 

「成る程な……お前さん、戦極ドライバー持ちか。 残念だがそいつでインベスは喚べねえ。 既にパーソナライズされちまってる」

 

「パーソナライズ?」

 

「簡単に言っちまえば、戦極ドライバーを腰に巻いた状態で一回でも解錠すれば、その錠前はもう戦極ドライバー専用になっちまうって事だ。 その代わり、ゲームのルール上では戦極ドライバーの装着者が直接インベスと戦っても構わないって事になっちゃいるがね」

 

「直接?」

 

「ああ。 そいつは元々その為に作られたんだ。 安心しろ、安全対策は万全だ。 そうでもなけりゃ、俺だって角井の奴にそいつを売りつけたりしねえ」

 

「裕也さんが買いに来たの!?」

 

「ああ。 最近チームバロンのせいで満足に踊れないってんで、橘が帰ってこれる日が来るまでチームを守ってやりたいなんて言うもんでな。 餞別としてAランクの錠前もオマケに付けてやったんだが、どうやらその錠前じゃなさそうだな」

 

「え? あ、ああ。 こいつは知り合いから貰ったんだ

 

「ベルトは変な森に落ちてたんだけど、ロックシードは落ちてなかったわね」

 

「変な森?」

 

「空中に浮いてる妙な裂け目から入れる場所なんだけど、なんか気味の悪い植物ばっかり生えてたわね。 後、こんな木の実が成ってたわ」

 

 

そう言って深琴がポーチから取り出したのは、赤紫の毒々しいグラデーションの掛った木の実だった。

 

 

「うわあ……よくこんなもん取ってくる気になったな」

 

「ですが、意外と美味しそうに感じません?」

 

「セシリア……いくらイギリス料理がまずいからってそんなもんに食欲をわかさなくても……」

 

「い、イギリスにだって美味しい料理は沢山あります! 倭さんはわたくしの祖国を誤解しておられますわ!」

 

「はいはいそこまで。 喧嘩なら俺のいない所でやってくれ」

 

 

変な方向に脱線しかけた会話を打ち切るようにシドが割り込んでくる。

 

 

「変な森ねえ……なあ橘、この木の実俺にくれないか? 勿論タダとは言わねえ、引き換えにこのカタログのAランク錠前の好きなやつ一個と交換ってのはどうだ?」

 

「本当か!? あ、けどこれ、深琴が取ってきた奴だし……」

 

「いいわよ別に。 取ってきたのはいいけど、扱いに困ってたし」

 

「商談成立だな」

 

 

深琴から木の実を受け取ったシド。

 

その表情は、いかにも胡散臭い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

夕方。

 

ドルーパーズの閉店時間になった為、シドも閉店準備の最中だった。

 

その背中に、阪東店長が声を掛ける。

 

 

「なあシド、倭達と何を話してたんだ?」

 

「別に、普通の商談だよ」

 

「ふうん……俺としちゃ、あんまりうちの常連に危ない橋を渡って欲しくないんだがな……」

 

「わかってるさ。 危険の無い物しか売りつけちゃいないって」

 

「ならいいんだけどな……」

 

 

そのまま店の奥に引っ込む阪東店長を余所に、シドは先程深琴から買い上げた木の実を手に一人呟く。

 

 

「若い奴ってのは、力を求めるもんだ。 例えそれが、どんなに危険な力でもな。 勿論ーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー大人なら、そんな危険な橋は渡らないがね」

 

 

 

 

 




今回は原作鎧武の設定を自分なりに解釈してますので、原作との食い違いが多数発生してるかも知れません




次回はチームバロンとの決戦です
新キャラも出す予定です

それではまた
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