IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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第二話 オープン・ユア・アイズ

 

 

 

 

「ゔ〜〜〜〜〜〜、まだ首がいてえ……」

 

「自業自得だバーカ」

 

「ひでえ……」

 

 

自分の席のシステムデスクに突っ伏しながら首筋をさする男子生徒ーー橘 倭に対し、特徴的な巻き毛に野暮ったい便底眼鏡を掛けた男子生徒が容赦無い台詞を投げかけ、轟沈した倭を私物と思われる一眼レフカメラを首から下げた茶髪男子が宥める。

 

 

「まあ、あの程度で体罰は確かに理不尽だけどさ。 お前の自己紹介の間抜けっぷりも中々のものだったぜ?」

 

「大きなお世話だ畜生……ていうかさ、お前らが遅刻なんかしなけりゃ俺だってあんなに緊張しないで済んだんだよ」

 

「仕方ねえだろ、こっちはサラリーマンなんだよ」

 

 

便底眼鏡が見た目によらず荒い口調で返すと、

 

 

「俺はもう一人と一緒にモノレールの故障に巻き込まれちまってさ。 後で挨拶に来るって言ってたぜ」

 

 

茶髪男子もカメラを弄りながら言葉を返す。

 

 

「それにしても、織斑先生のあれって絶対鉄板仕込んであるだろ。 音が紙の出せる音じゃ無かったぞ」

 

「いや、食らった感じだとあれは厚紙だろ。 速度と手首のスナップで自分の体重を瞬間的に載せてんじゃねえか?」

 

「よ、よく分かるな……そういうの詳しいのかよ?」

 

「まあ、色々あってな。 織斑先生ともちょっとした付き合いがあるんで、その関係で、な」

 

 

 

 

「ーーそれは本当か?」

 

 

 

 

「? ーー君は?」

 

 

倭が振り向いた先に居たのは、大和撫子を絵に書いたような黒髪ポニーテールの美少女。

 

 

「ああ、自己紹介がまだだったな、すまない。 私は<篠ノ之 箒(しののの ほうき)>だ」

 

「篠ノ之? ……って事はもしかして束さんの?」

 

「ああ、妹だ。 やはり、姉さんの言っていた「やまっち」とはお前の事だったか」

 

「そっちこそ、束さんの言ってた「箒ちゃん」ってのは君か。 大変だったんだぜ、毎日惚気じみた妹自慢聞かされて」

 

「む……それに関してはすまない。 姉さんがISを開発してから疎遠になっていてな……」

 

 

身内繋がりで話を進める二人。

 

そこに、放ったかされた二人が話に加わる。

 

 

「ちょっとお二人さん、ほったらかしはひどくねえか?」

 

「俺等も混ぜてくれよ」

 

「っと、悪い悪い。 ……篠ノ之? どうかしたか?」

 

 

倭がふと箒の方を見ると、首を傾げながら眼鏡男子を見つめていた。

 

 

「いや、少しな……すまないが、名前を聞いていいか?」

 

「ん、おお。 <大神 巧(おおがみ たくみ)>だ。 よろしく」

 

「あ、ああ……大神、以前会った事は無いか?」

 

「? いや、今日が初対面の筈だぜ?」

 

「む……そうか、すまない。 そっちのお前の名前も教えてくれないか?」

 

「ああ。 <赤城 真司(あかぎ しんじ)>。 いずれピュリッツァー賞を獲る男だ」

 

「ふふ、随分と大きく出たな。 私の事は箒と呼んでくれ。 お前達もそのように頼む」

 

「ああ、わかった。 俺もヤマトでいいぜ」

 

「了解だ。 俺もたっくんで頼む」

 

「た、たっくん?」

 

「冗談だ。 巧で頼む」

 

「あ、ああ」

 

 

毒気を抜かれたような表情で眼鏡男子ーー巧と握手を交わす箒。

 

 

「それにしても、知り合いばかり三人も一クラスに集まるなんてな。 偶然ってあるもんなんだな」

 

「まあ、確かにな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

数分前。

 

 

「っでえ!!?」

 

 

自己紹介を終えた倭の脳天に、ズドン!! という轟音と共に重い一撃が炸裂し、思わずシステムデスクに突っ伏す。

 

 

「自己紹介もまともに出来んのか、貴様は」

 

「痛ってえ……」

 

 

後頭部を摩りながら身を起こす倭だったが、彼を轟沈させたと思われる人物を目の当たりにした瞬間動きが止まる。

 

 

「アイエエエエエエエ!!? ナンデ!!? シャドームーン=サンナンデ!!!?」

 

「誰が世紀王候補だ、馬鹿者」

 

 

ドグシャアッ!!! と先程よりも重い炸裂音と共に再びシステムデスクに叩きつけられる倭。

 

 

「全く……山田先生、遅くなって申し訳ない。 モノレールの故障が原因で遅刻した三人を迎えに行っていまして」

 

「あ、いえ、連絡は他の先生から聞いてましたから」

 

 

どうやら、童顔眼鏡教師の名前は山田先生というらしい。

 

 

「さて……諸君、私がこの一年一組の担任の<織斑 千冬(おりむら ちふゆ)>だ。 新人であるお前達をこれから三年間で使い物になる程度まで鍛え上げる為の基礎を叩き込むのが私の仕事だ。 私の言う事を良く聴き、理解しろ。 理解出来ないのなら、理解出来るまで指導してやる。 口答えは許さん。 いいな」

 

「それなんてハートマン軍曹? っだぁ!!?」

 

 

よせばいいのに余計なツッコミを入れた結果、またしても脳天に出席簿の一撃を食らう倭。

 

 

「ってて……ん?」

 

 

ふと気が付くと、女子がほぼ全員織斑先生の方を見て固まっていた。

 

そして。

 

 

「「「「「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」」」」」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

出し抜けの黄色い悲鳴を至近距離で喰らい、思わず耳を塞ぐ。

 

 

「千冬様、本物の千冬様よ!!」

 

「ずっとファンでした!!」

 

「わたし、千冬様の教えを請う為にこの学園に来たんです! 北海道から!」

 

「私は佐渡島から!!」

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しくも本望です!」

 

「まさか本当に千冬様のクラスに入れるなんて! 夢ならどうか覚めないで!!」

 

「地球に生まれてよかった〜〜〜〜〜〜!!」

 

 

思い思いに織斑先生への想いを口にする女子達。

 

流石にこれは織斑先生当人も辟易しているようだ。

 

 

「全く……やっと馬鹿者共から解放されたかと思えばまたこれか。 毎年毎年、よくもまあ馬鹿者共がこれだけ集まるものだ。 呆れを通り越してある意味感心するぞ。 それとも何か? 私のクラスに馬鹿者だけが集中するように仕組んでいるのか?」

 

 

心底うんざりしているのだろう、教師にあるまじき発言を連発する織斑先生。

 

だが、最早信者の域に達しつつある女子達にはご褒美にしかならないらしく、

 

 

「きゃあああああっ! お姉様! もっと叱って! 鞭で叩きながら罵って!」

 

「でも時には優しい笑顔を見せて!」

 

「そしてつけあがらない程度に躾して!!」

 

 

もう手遅れとしか思えない歓声が返ってくる。

 

 

「全く……時間が押しているようだな。 仕方ない、外の二人の自己紹介を優先するか」

 

「二人ですか? 確か、橘君を含めて五人ですよね?」

 

「流石に、五人全員を一組に集中させたら私はともかく山田先生が持たないと判断しましたので。 駆紋と剣号は二組に編入して貰えるよう、学園長に直談判しました」

 

「そうなんですか……じゃあ、早速入ってきて貰いましょうか」

 

「ええ。 大神、赤城、入ってこい」

 

「「はい」」

 

 

 

「……は?」

 

 

間の抜けた声を洩らす倭。

 

彼の視線の先では、

 

 

 

 

 

 

 

 

「大神 巧です。 よろしく」

 

「赤城 真司だ。 皆、よろしく頼むぜ」

 

 

 

 

 

 

 

自分以外の「男子生徒」が自己紹介していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと……あれ? ここはあれで……あれ?」

 

 

IS学園では入学式当日から授業がある。

ISという兵器を扱う以上、必要な知識を一秒でも早く、一文字でも多く覚えこませようという方針なのだろう。

合格通知と共に郵送されてくる、広辞苑並みに分厚い参考書もそれを物語っていると言える……のだが。

 

 

「橘君、どうかしましたか?」

 

「あ、山田先生……いや、あの、その〜……」

 

「授業で分からない所があるなら、いつでも質問して下さいね。 何せ私は副担任なんですから!」

 

 

誇らしげに豊満な胸を張る山田先生。

 

そんな彼女に対し、倭は

 

 

「えーと……殆ど全部分かりません」

 

 

想像の範囲を遥かに上回る馬鹿発言を返した。

 

 

「え……ぜ、全部ですかあ!? えっと……あの、皆さんはここまでで分からない部分はありませんか?」

 

 

山田先生の問いに、揃って「ありません」と返すクラス一同。

 

ISを学ぶ為にこの学園に来ているのだから、予習くらいは済ませているのだろう。

 

 

「大神君と赤城君はどうですか?」

 

「俺は大丈夫です……けど」

 

 

そう言って巧が指差す先には、

 

 

「…………」プスプス……

 

 

頭から煙を上げて、顔面を参考書に突っ込んだまま動かない真司の姿があった。

 

 

「授業中に寝るとはいい度胸だな」

 

「イデェ!!?」

 

 

相変わらず紙とは思えない程重い出席簿の一撃で真司を再起動させる織斑先生。

 

 

「橘、参考書はどうした。 貴様にも配布されている筈だろう」

 

「参考書? ああ、あの電話帳みたいな代物ですか?」

 

「そうだ。 まさか電話帳と間違えて捨てた訳ではあるまい?」

 

「え、ええ……まあ、持って来てはいるんですけど、その……飯作ってる時に読んでたせいで醤油ジミ作っちゃって……」

 

「構わん、出せ」

 

「は、はい……」

 

 

有無を言わさない口調に、渋々鞄から教本()()()()()を取り出す倭。

 

 

「……何だこれは」

 

「参考書……なんですけど」

 

「これが……ですか?」

 

 

そこにあったのは、ビニール袋に包まれた褐色の本らしき物体だった。

 

 

「……確かに醤油が染みているな」

 

「てか、どこをどう間違えたら芯まで染みるんだよ……」

 

「道理でここら辺が醤油臭いと思ったぜ……」

 

「あ、ある意味凄いですね……」

 

 

その場の全員も流石に呆れ顔だ。

 

 

「全く……橘、後で再発行してやるから一週間以内に覚えろ」

 

「一週間!? い、いや流石にそれは無r「い、い、な?」……はい」

 

 

取り付く島も無い。

 

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。 そう言った兵器を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。 そうしないための基礎知識と訓練だ。 理解ができなくても覚えろ。 そして守れ。 規則とはそう言うものだ」

 

「仰る通りです、はい……」

 

「え、えっと、橘君? 分からないところは授業が終わってから放課後に教えてあげますから、一緒に頑張りましょう、ね?」

 

「……お気遣い、痛み入ります……」

 

 

その後は隣の女子から参考書を見せて貰いながら何とか授業を終えたのだが、この遣り取り以後周囲の視線がやけに痛く感じたのは倭の気のせいでは無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「よろしくねえです」

 

 

授業後、とりあえず内容を暗記しているから必要無いという巧から参考書を借りて必死で勉強中の倭。

 

えらく高飛車な声が聞こえてきたような気がするが、まあ気のせいだろう。

 

 

「……なら、貴方でもよろしいですわ。 ちょっとよろしくて?」

 

 

次に話しかけられたのは巧。

 

 

「ん、何か用か?」

 

「まあ、何ですのそのお返事は!? 私に話しかけられているだけでも光栄なのですから、それ相当の態度というものがあるのではなくて?」

 

「いや、そんな事言われてもな……」

 

 

絵に書いたような上から目線に思わず呆れ顔になる巧。

 

そこに余計な横槍が入る。

 

 

「ていうか、あんた誰?」

 

「わ、私を知らない!? このセシリア・オルコットを!?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこの私を!?」

 

「ダイヒョーコーホセイ?」

 

「お前な……代表候補生ってのは、読んで字の如くIS操縦者の国家代表候補って事だ。 お前もモンド・グロッソくらい知ってるだろ? あれの出場者は全員国家代表だ。 つまりそこの偉そうなお嬢さんは国の代表として選ばれるだけの素質持ちって事だ。 ジャーナリスト目指してるんだったらそれくらい知っとけ、てか字面で分かれ」

 

 

横から割り込んで間抜けな質問を繰り返す真司に対し、セシリアと名乗った金髪縦ロール女子は当然憤慨し、巧が多少突き放し気味ではあるものの解説する。

 

 

「ふーん。 そういえば参考書の最初辺りに書いてたような……まあ、つまりはIS操縦者の中じゃエリートって事でいいのか?」

 

「そう!! エリートなのですわ!! 本来なら、わたくしのような選ばれた人間とクラスを同じくするだけでも奇跡のようなもの。 その幸運を少しは理解していただけるかしら?」

 

「ふーん」

 

「そんな事言われてもな……」

 

 

余りに自分勝手な物言いに、男子二人も心底呆れ顔だ。

 

そこに、更なる火種が投入される。

 

 

「悪いけど、勉強の邪魔だから後でいいか?」

 

 

流石に煩かったらしく、参考書から目を離しての倭の物言いにセシリアが憤慨しない訳も無く。

 

 

「な、なんて失礼な……大体、貴方も貴方ですわ! ISの事を何も知らずにこの学園に来るなんて、非常識とは思いませんの!?」

 

「仕方ねえだろ、俺だって本当はこんなとこに来たく無かったんだよ! 文句なら日本政府に言いやがれ!」

 

「まあ、確かに迷惑ではあるよな」

 

「お前もか? 俺だって高校に行く気無かったってのによ……」

 

 

そう、この三人の男子生徒は本当ならIS学園に来る気は無かったし、何より本来なら男子がIS学園に入る事自体があり得ない事なのだ。

 

なら、何故彼等はこの場に居るのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、高校入試の日まで遡るーー

 

 

 

 

 

 

 

 




ペース上がらない……ライダー出せるのいつになるやら

あ、タグに仮面ライダーって入れるの忘れてたんで、後で入れときますね

正直つまらないでしょうが、長い目で見て下さい

それではまた


7/20 元第三話と統合しました
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