IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

23 / 48
今更ながら複数主人公体制に後悔……


第十九話 善意の代償

 

 

 

 

真司が学園に辿り着いた時、学園内は騒然としていた。

 

世界最高峰のセキュリティを誇るIS学園内にて、被害者が病院に搬送されるレベルの傷害事件が発生したのだ、無理も無い。

 

 

「赤城、戻ったか」

 

「織斑先生!! 倭が怪我したってどういうーー」

 

「話は後だ。 ついて来い」

 

 

有無を言わさぬ口調の織斑先生に連れられ、学園の敷地内に併設された付属病院へと向かう。

 

ISという危険な兵器を扱う関係上、訓練や模擬戦等で不慮の事故による負傷者は常に想定して然るべきだ。

 

その為、考えうるあらゆる「最悪の事態」に対処すべく、IS学園の立地である人工島には、大学病院並みの医療体制を整えた総合病院が用意されている。

 

倭が搬送されたのは、その病院の一室。

 

ドアに貼られたプレートには「集中治療室」と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、お疲れさん」

 

「巧、倭が襲われたって本当か!?」

 

「まずは落ち着け、こいつが怖がるだろ」

 

 

見ると、巧が腰掛けているベンチには、見慣れない少女が一緒に座っていた。

 

 

「あ、ああ悪い。 って、この子は?」

 

「まあ、ちょっとな。 簪、こいつも俺のクラスメイトで、真司ってんだ」

 

「………………」

 

 

巧の簡潔な紹介に、少女は軽く頭を下げるのみで返す。

 

 

「あ、ああ、よろしく。 それで、倭の奴どうなったんだ?」

 

「まだわからねえ。 だが、織斑先生がこうして俺達だけ集めたって事はーー」

 

 

と、その言葉を遮るかの如く、別のベンチに座っていた深琴が巧に掴みかかる。

 

 

「馬鹿な事言わないでよ!! ヤマトが、ヤマトが死ぬ訳無いでしょ!! 取り消しなさいよ!! ねえ!! 取り消しなさいよ!!!」

 

「ま、まて深琴、落ち着け!」

 

「そうですわ! 倭さんが強いお方なのはわかっています! だから、落ち着いてください! きっと、いえ、必ず大丈夫ですわ!」

 

 

半狂乱の深琴を、同じベンチに座っていた箒とセシリアが巧から引き離し宥める。

 

 

「巧! 言葉には気を付けてくれ! 深琴がどれ程倭を気に掛けているか、判らないお前では無いだろう!」

 

「本当ですわ! 巧さんはデリカシーに欠けています!」

 

「ゲホッ……悪い。 今のは失言だった」

 

「……大丈夫?」

 

 

ベンチに掛け直す巧に、少女が心配げに声を掛ける。

 

と、そこに数人分の慌ただしい足音が聞こえて来る。

 

 

「真司!! 倭が殺されたって本当!?」

 

 

その言葉と共に駆け込んできたのは、案の定というべきか鈴だった。

 

 

「まだ死んでないわよ!!!」

 

「ちょっ、落ち着け!!」

 

「頼む、落ち着いてくれ!」

 

 

当然爆発する深琴を数人がかりで抑えている内に、他の二人も追い付いてくる。

 

 

「フン、随分と騒がしい病院だな」

 

「ごめん、遅くなった。 倭はまだ治療中か?」

 

「ああ。 それにしても、戒斗が来るなんて意外だよな」

 

「剣号と凰が五月蝿いから来てやっただけだ」

 

 

真司の軽口に憎まれ口で返す戒斗。

 

 

「鈴も心配してるのはわかるけど、もう少し言葉を選んだ方がいいんじゃないか?」

 

「う……ごめん深琴、ちょっと無神経だったわ」

 

「う……うん……」

 

 

流石に怒り疲れた様子で頷く深琴。

 

 

「けど、一体何があったのよ? 聞いた話だと、整備室の方が騒がしいから行ってみたら、血まみれの倭が担架で運ばれてくのを見たって事らしいけど……」

 

「俺も来たばかりだし、詳しい事はな……」

 

 

お互い顔を見合わせ溜息を吐く真司と鈴。

 

そこに、織斑先生と山田先生がやってくる。

 

 

「関係者はこれで全員のようだな」

 

「千冬さん! 倭の奴、一体何があ痛った!?」

 

「織斑先生だ。 説明してやるから落ち着け」

 

 

詰め寄る鈴を出席簿で撃墜しつつ、集中治療室前の面々を見渡す織斑先生。

 

 

「とは言っても、私達もまだ詳しい事は何も解っていないのが現状だ。 大神、報告だと整備室から通報してきたのはお前だと聞いている。 何があったのか報告しろ」

 

 

その問いに、巧は事務的な様子で答える。

 

 

「確かに、通報したのは俺です。 ですが、俺がやったのは精々倭を整備室まで担ぎ出したのと応急処置くらいのものです」

 

「担ぎ出しただと?」

 

「はい。 倭が倒れていた場所は整備室ではありませんでした」

 

 

その言葉に、山田先生が疑問を投げ掛ける。

 

 

「で、ですが本日は大神君と橘君と更識さんの三人名義で整備室の使用申請が提出されてますし、実際に橘君が整備室から外出した所を目撃した人も居ませんでしたよ?」

 

「今日は休日で、整備ブースを使用している生徒も何人か居たようだが、橘がお前達の使用していたブースから退出した所を目撃した者は皆無だそうだ。 大神、お前は一体何処から橘を連れ出して来た?」

 

 

山田先生の言葉を引き取っての織斑先生の問いに答えたのは、巧では無かった。

 

 

「……あ、あの……」

 

「更識か。 そういえば、お前も同じブースを使用していたな」

 

「はい……あの、巧君は、本当の事を言ってます。 倭君は、整備ブースから外に出て……ます」

 

 

織斑先生が怖いのか、更識と呼ばれた少女は遠慮がちに説明する。

 

 

「だが、目撃者は居ない。 なら、橘は何処から退出した?」

 

 

その問いに、少女は消え入りそうな声で、しかしハッキリと答える。

 

 

「……空中に開いた、ファスナーから……です……」

 

 

 

 

 

 

 

 

巧と少女の話を総合すると、こういう事だ。

 

少女の名は、〈更識(さらしき) (かんざし)〉。

 

日本の代表候補生らしい(他国の代表候補生であるセシリアや鈴も名前だけは知っていたようだ)が、とある理由で専用機を持っておらず、元々開発していた研究所から引き取ったパーツを独力で組み上げるべく整備室に入り浸っていた時に巧と知り合ったという。

 

今日も巧の提案で、白式の実動データを簪の専用機の機動プログラムに応用出来ないか試してみるべく、朝から整備ブースに詰めてたらしいが、巧が飲み物を買う為にブースを離れた時、突如ブース内にジッパー状の空間の裂け目が現れ、向こう側からインベスが出現。

 

簪を庇うように仮面ライダー鎧武へと変身した倭が簪を巻き込まないように裂け目の向こう側の奇妙な森へと飛び出してしまったらしく、戻ってきた巧と共に探しに向かった時には既に近くにはおらず、森の中で発見した時には既に何者かに襲われた後だったらしい。

 

 

「あの馬鹿……!! 何でいつもいつも無茶ばっかするのよ……!」

 

 

余りの無謀ぶりに思わず憤慨する深琴。

 

セシリアや鈴、箒も似たような面持ちだ。

 

 

「他人の為に自分が傷つくか。 相変わらずの偽善ぶりだな」

 

「ちょっと!! その言い方は無いでしょ!!」

 

 

戒斗の無神経な言い草に、思わず戒斗に掴みかかる鈴。

 

だが、戒斗は涼しい顔のまま続ける。

 

 

「自らの身も守れない弱者から先に淘汰される。 それが自然の掟というものだ。 排除されて当然の弱者を庇い傷つくなど、摂理に反した愚かな行為と知れ!」

 

 

一触即発の空気が流れる中、ふと携帯の着信音が流れる。

 

 

「束か。 用事は済んだのか。 ……分かった、すぐに来い」

 

 

どうやら織斑先生の携帯だったらしく、簡単に応答するとこちらに向き直る。

 

 

「束も後数分でこちらに着くそうだ。詳しい事は、あいつが来てからになるだろう」

 

「てか、篠ノ之博士が来たからって解決するんですか? 現場は裂け目の向こうだし、倭をやった犯人も森をうろついてる野良インベスかも知れないでしょ?」

 

「それを明らかに出来る機能がある。 こいつにな」

 

 

そういって織斑先生が取り出したのは、倭の戦極ドライバーだった。

 

 

「ここ数日の解析で、これを装着している間、装着者の視覚と聴覚をデータ化し保存する機能がある事が判明している。 かなり高度な暗号処理が施されている為、映像化出来るのは束くらいのものだろうがな」

 

「つまり、篠ノ之博士に解析して貰えば、変身中の倭の動向がわかると」

 

「けど、何でそんな機能が?」

 

 

その疑問に答えたのは、戒斗だった。

 

 

「知れた事だ。 戦極ドライバーの所有者は、何者かに常に監視されている。 それも、戦極ドライバーを使用した戦闘時だけな。 それがどういう事か、理解出来ない訳では無いだろう」

 

「……モルモット……」

 

 

誰かが呟いたその言葉に、真司達の間に重苦しい雰囲気が漂う。

 

その空気を吹き飛ばしたのは、集中治療室の扉が開く音だった。

 

 

「!! 先生、ヤマトは!! ヤマトは大丈夫なんですか!!?」

 

「落ち着いて下さい。 処置は成功しました。 幸い、どの傷も急所を外れていました。 出血が酷かったので意識の回復には時間が掛かるでしょうが、命の心配はありませんよ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「はい、ご安心下さい。 それにしても、彼は幸せ者ですね。 貴女みたいな可愛い彼女に心配して貰って」

 

「ふえっ!!?」

 

 

女医から不意打ちで彼女呼ばわりされ、素っ頓狂な声を上げる深琴。

 

 

「聞き捨てなりませんわ! 倭さんの隣に立つのはこのセシリア・オルコットです!」

 

 

勿論、セシリアも黙っていない。

 

結果、二人は周囲に配慮して声こそ抑えてはいるものの、一歩も引かない舌戦を開始した。

 

そんな二人を余所に、織斑先生は女医から倭の容体の説明を受けている。

 

どうやら、倭は個室へと移されるようだ。

 

 

「束と合流次第、学園に戻るぞ。 映像の解析には機材が必要だしな」

 

「倭の方はどうします?」

 

「意識が戻るまで面会謝絶だそうだ。 白鳥、オルコット、お前達はどうする?」

 

 

その問いに、二人は病院に残る旨の答えを返す。

 

 

「解った。 何かあれば直ちに連絡しろ」

 

 

そう告げると、織斑先生は真司達を伴い集中治療室を後にした。

 

 

「それにしても、厄介な事になったものだ」

 

「厄介な事?」

 

「凰、お前はクラス対抗戦で誰と戦うつもりだ?」

 

「だ、誰って……そりゃ、倭に決まっ……あっ!!」

 

「一組のクラス代表はあの通り絶対安静。 オルコットは補佐を務めているが、あの様子では実力を出し切るのは難しいだろう。 つまり、このままでは一組は不戦敗という事だ」

 

 

そこまで告げると、織斑先生は巧の方に目を向ける。

 

 

「大神、オルコットを除けば専用機持ちの中ではお前が一番練度が高い。 いざという時は、お前に出て貰うかも知れん」

 

「ま、そうなりますかね。 了解しましーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー悪い巧、その出番……俺に譲ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラ出した意味ないよな……


次回は倭視点での話の予定です

原作イベントを挟んでみようかと思います


それではまた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。