IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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この作品にホラー要素は皆無です


第二十話 仄暗い森の奥にて

 

 

 

 

「おりゃああ!!」

 

 

《ソイヤッ!!》

 

《オレンジ・オーレ!!》

 

 

カッティングブレードを二回倒し、無双セイバーと名付けた刀にエネルギーを纏わせた斬撃が、周囲の初級インベスを数体纏めて引き裂く。

 

 

「「「ヴヴヴゥゥゥ!!?」」」

 

 

断末魔の絶叫を上げ爆散するインベスを一瞥し、倭は次の襲撃に備え周囲を見渡す。

 

しかし、先程の初級インベスで近くにいるインベスは全部だったようで、しばらく待ってみたが気配は感じられない。

 

 

「ふうっ……とりあえず一安心か」

 

 

変身を解除し、近くの木の根元に腰掛ける倭。

 

 

「簪さん、上手く逃げてればいいけどな……それにしても、 この森って一体何なんだ?」

 

 

改めて周囲を見渡すと、木々のほぼ全てに奇妙な蔦植物が絡み付き、極彩色の不気味な実を垂れ下がらせている。

 

その光景はまるで、得体の知れない何者かに侵略された森の成れの果てを連想させた。

 

 

「そういえば腹減ったな……これ、食えるかな」

 

 

何気無く実を一つもぎ取ってみる。

 

すると、戦極ドライバーが反応したかと思うと、実は錠前へと姿を変える。

 

 

「え? な、何だこりゃ?」

 

 

見た所、以前シカインベスに食われたイチゴロックシードと同型のようだ。

 

 

「もしかして、街で出回ってるロックシードの出処って……」

 

 

試しに周囲の身を二、三個もぎ取ってみると、〈L.S.-11〉と刻まれた赤い錠前、〈L.S.-13〉と刻まれた鋼色の錠前、そして〈L.S.-10〉と刻まれた緑と黒の縞模様の錠前へと変化した。

 

 

「これも戦極ドライバーの機能なのか? じゃあ、戦極ドライバーを開発した奴等と錠前ディーラーは繋がってるって事で……けど、沢芽市にロックシードをばら撒いて、そいつらに何のメリットが……あーもう、わかんねえ事だらけだ畜生!!」

 

 

一度に考える事が増え、混乱の余り絶叫する倭。

 

そんな彼を、少し離れた木陰から監視する一つの視線があった。

 

 

「ーー現在、被験体一号に動き無し。 引き続き監視を継続します」

 

 

 

 

 

 

 

 

森の一角。

 

光さえろくに届かない程草木が生い茂ったその場所に、全身白ずくめの奇妙な一団が存在していた。

 

彼等が森の実を採取すると、先程の倭同様ロックシードへと変化する。

 

よく見ると、放射線スーツに似た服装で全身を密閉したその腰には、カッティングブレードは無いものの、戦極ドライバーと同型のベルトが巻かれていた。

 

彼等は、手際良く実をロックシードへと変え、慣れた手つきで近くのダンボール箱へと詰めていく。

 

 

「うわあああああっ!!?」

 

 

突如、作業中の白ずくめの一人が木立に叩きつけられ、そのまま動かなくなる。

 

 

「キシャアアアアァァ……!」

 

「い、インベスだ!!」

 

 

白ずくめ達は我先にと逃げ出すが、逃げた先にも同じ風貌の上級インベスとその配下の初級インベスが現れ、挟み撃ちにされる。

 

どうやら、彼等のベルトでは変身は出来ないようだ。

 

 

「し、主任!! こちら第三班、ポイントE-7にて上級インベスが出現!! 逃げ場を塞がれて逃げられません!! 直ちに救援を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかった。 直ちに殲滅する」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギシャッ!!?」

 

 

その台詞と共に、白ずくめの眼前に迫っていた上級インベスが縦真っ二つに両断される。

 

左右に倒れるインベスの亡骸の向こう側に、武将を思わせる一人の白い人影が立っていた。

 

 

「インベスは私が始末する! お前達は速やかに撤収の準備を整えろ!」

 

「り、了解!」

 

 

白い武将の指示を受け、白ずくめ達はインベスの襲撃の際に散らばったロックシードを回収していく。

 

そして、白ずくめ達が作業をしている間、白い武将がたった一人でインベスの群れを相手にしている。

 

その太刀筋は機械の如く精密かつ力強く、数で勝るインベス達を次々と斬り捨てていく。

 

 

「くらえ……!」

 

《ソイヤッ!!》

 

《メロン・オーレ!!》

 

「ハッ!!」

 

 

白い武将の刀から放たれた斬撃が、周囲のインベスを一気に薙ぎ払う。

 

その一撃は、カッティングブレードの操作や挙動こそ倭の変身する鎧武の放った技と同じだったが、速度、太刀筋共に倭のそれを遥かに上回っていた。

 

 

「ギシャアアアアァァァ…………!!」

 

 

初級インベスと共に爆散するカミキリムシのような上級インベスを、白い武将は一瞥すらしなかった。

 

 

「主任、ご無事で!」

 

「問題は無い。 それより、撤収を急がせろ」

 

「何か問題でも?」

 

「監視班からの報告だ。 どうやら、被験体一号が自然発生した〈クラック〉からこの近くに迷い込んだらしい。 今、我々の活動を知られる訳にはいかん」

 

「了解! 直ちに撤収します!」

 

 

その言葉を残し、他の白ずくめと共に森の奥へと消えていく。

 

先程やられた白ずくめも気絶していただけらしく、他の白ずくめの肩を借り去っていく。

 

程なく、その場には白い武将以外の人影がいなくなった。

 

 

「……来たか」

 

 

その言葉と共に茂みに目を向けると、

 

 

「ーーふう、やっと抜けたか」

 

 

一人の少年が、茂みの奥から這い出してきた所だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? さっきの裂け目何処だったっけ?」

 

 

倭は迷子になっていた。

 

見渡す限り木々ばかりな上、先程まで絶え間無く襲い掛かるインベス相手に大立ち回りを演じる内に、方向感覚を完全に失っていた。

 

 

「腹減った……そういや、もう昼飯の時間じゃねえか。 ったく、何で俺がこんな目にーーん?」

 

 

ふと、倭の耳に何らかの物音が聞こえてくる。

 

 

「今のは……間違いない、爆発の音だ。 まさか、誰か襲われてるのか!?」

 

 

思うや否や、物音の方へと向かう倭。

 

そして、鬱蒼と繁る下生えを掻き分け、辿り着いた先にはーー

 

 

「ふう、やっと抜けたか。 確か、音はここからだったよなーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそのインナーは、シミ一つ無い純白に輝き、

 

ーー上半身を覆う鎧は、エメラルドを思わせる緑色の煌めきを湛え、

 

ーー猛禽を思わせる鋭い眼光を放つ兜の額には、鋭利な兜飾りが三日月の如き黄金の光を放つ。

 

鎧武とは違うもう一人の「武将ーーそれが、倭の眼前に佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……あんた、一体……」

 

 

その問いに、白い武将は刀ーー無双セイバーでの銃撃で返す。

 

 

「うわっ!? いきなり何しやがる!!」

 

 

辛うじて回避した倭目掛け、追撃を仕掛ける白い武将。

 

 

「っと、危ねえ!! くそっ、このままやられてたまるか!!」

 

 

装着したままの戦極ドライバーにオレンジロックシードをセットし、カッティングブレードで斬る。

 

 

《ソイヤッ!!》

 

《オレンジアームズ! 花道・オンステージ!》

 

 

その姿を仮面ライダー鎧武へと変え、倭は白い武将へと駆け出す。

 

 

「喰らえ!!」

 

 

ダッシュの勢いを乗せた斬撃を放つも、

 

 

「遅い!」

 

「がふっ!? ぐあぁ!!」

 

 

カウンターで膝蹴りを喰らい、左手に携えていた巨大な盾に突き飛ばされる。

 

 

「ハァッ!!」

 

「あぐっ!!」

 

 

無双セイバーの斬撃が、態勢を崩した倭を捉える。

 

 

「このっ!!」

 

 

倭も果敢に反撃するが、白い武将を捉える事は出来ず、

 

 

「その程度か?」

 

 

白い武将の攻撃は、確実に倭にダメージを与えていく。

 

 

「ぜえっ、ぜえっ……だったら、こいつでどうだ!!」

 

 

《ソイヤッ!!》

 

《パインアームズ! 粉砕・デストロイ!》

 

「ぬっ!?」

 

 

装着されていたオレンジアームズを白い武将目掛け射出し、怯んだ隙にパインアームズを装着する。

 

 

「これでも、喰らえ!!」

 

 

遠心力を乗せたパイン型鎖鉄球ーーパインアイアンを白い武将へと投げ放つ。

 

その一撃は、頑強な巨大盾を弾き飛ばす。

 

 

「うおっ!?」

 

「オラオラオラァ!!」

 

 

機を逃すまいと猛攻を仕掛ける倭。

 

だが、

 

 

「調子に……乗るな!!」

 

《ソイヤッ!!》

 

《メロン・スカッシュ!!》

 

 

白い武将はパインアイアンを回避する動きを利用し、エネルギーを纏わせた巨大盾を倭目掛け投擲する。

 

 

「がはっ!!?」

 

 

巨大盾の縁はメロンの断面を模した鋭利な刃になっており、高速回転とロックシードのエネルギーにより強化された斬れ味はパインアームズの胸部装甲を抉り、分厚い肩部装甲を容易く切り落とした。

 

 

「うぐ……っ!」

 

 

巨大盾の一撃はインナーすら引き裂いていたらしく、左二の腕から鮮血が零れ落ちる。

 

 

「その程度か」

 

 

白い武将が倭に迫るが、蓄積したダメージが流血により一気に吹き出し身動きが取れない。

 

しかも、パインアイアンを振り回していた時にカウンターを喰らった為、遠心力で遠くにすっぽ抜けてしまい、拾う事も出来ない。

 

 

「どうした。 それで終わりか?」

 

 

その言葉に、倭は左腕を庇いつつ問い掛ける。

 

 

「ふざけんな……何でいきなり喧嘩を売られなきゃならないんだ……!」

 

 

その問いに対し、白い武将は事もなげに返す。

 

 

「何故、だと? 戦場で敵に何故などと問いかけるなど……」

 

「ぐっ!?」

 

 

パインアームズの胸部を踏みにじりつつ、更に続ける白い武将。

 

 

「戦いに意味を求めてどうする? 答えを探し出すより先に、死が訪れるだけだ。 この世界には理由のない悪意がいくらでも転がっている。 そんなことさえ気付かずに今日まで生きてきたのなら、貴様の命にも意味は無い」

 

 

「命……だと……?」

 

 

嫌な予感を覚え、白い武将に再度問い掛ける。

 

 

「一つ教えろ……この森に、角井 裕也って男が迷い込んだ筈だ。 何処にいる?」

 

 

その問いに、白い武将は冷たく言い放つ。

 

 

「知らんな。 たかがストリートダンサーのようなクズ一人、構っている暇は無い。 今頃はインベスの餌だろう」

 

 

そして、無双セイバーを腰だめに構えーー

 

 

「貴様も、その男と共に今この場で消えるがいい!」

 

《ソイヤッ!!》

 

《メロン・オーレ!!》

 

 

一気に振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「てめえ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様……正気か……?」

 

 

呆然と呟く白い武将。

 

それも無理も無い。

 

倭は、白い武将の放った一撃を、敢えて踏み込んで脇に受け止め、抱え込んだのだ。

 

 

「てめえが……てめえが、裕也兄を!!」

 

《ソイヤッ!!》

 

《オレンジ・スパーキング!!》

 

「うおおおああああああああ!!!」

 

「ぐううああああああああああ…………!!!」

 

 

カッティングブレードを三回倒して放った一撃は、咄嗟に身を引いた白い武将を確実に捉える程のエネルギー刃を生み出し、森の奥に吹き飛ばした。

 

だが、

 

 

「っ……ぐ……ぁ…………!!」

 

 

白い武将が吹き飛ばされた際、脇に食い込んでいた無双セイバーの切っ先が振り抜かれ、運悪く胸部装甲の亀裂を更に抉り取った。

 

その結果、変身が解除された倭はその場に仰向けに倒れ、その胸には、鮮血に染まる深い傷跡が無惨に刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はクラス対抗戦までの動向の予定です


それではまた
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