IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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一言だけ


紘汰さんにパツキンは似合わないと思う


第二十二話 激闘! クラス対抗戦!

 

 

 

 

『SE・0。 勝者、凰鈴音』

 

「おっしゃー!! この調子で優勝よ!!」

 

 

勝利者コールを受け、アリーナ中央にて勝ち名乗りを上げる鈴。

 

その身には、刺々しいスパイクアーマーが特徴的な赤紫色のISが装着されていた。

 

 

「あれが、中国製の第三世代型IS〈甲龍(シェンロン)〉か……」

 

「試合を見る限り、近接パワー型といった所か。 鈴自身の技量に加えて、この試合で使わなかった第三世代兵装も考えると、かなり厄介だな」

 

 

巧のその言葉に、観客席で試合を見物していた真司は緊張した面持ちで頷く。

 

 

「こっちの手札は、ビルガー本体の重装甲と後付けした雪片くらいのもんか。 マトモな打ち合いはキツイな」

 

「ですが、仮にも第三世代型ですし、距離を取っても安心は出来ませんわ。 やはり、今からでもわたくしがーー」

 

「そういう台詞はその目の下のでっかいクマを何とかしてから言おうな、セシリアさんや」

 

「う……」

 

 

実際、一組のクラス代表補佐のポジションに就いている事もあり、倭の看病を深琴と水依に任せてクラス対抗戦の方に駆けつけたセシリアではあったが、ここ数日倭の看病でマトモに寝ていない事もあり疲労の色が濃い。

 

いくらISにバイタル保護機能があるとはいえ、このような状態でクラス対抗戦を勝ち抜くのは難しいだろう。

 

 

「とりあえず、今は勝ち進む事を考えないとな。 何せ、決勝まで行かないと鈴と戦う事すら出来ねえんだから」

 

 

そう言って、真司は右手首に装着された待機形態のビルトビルガーに視線を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一回戦最終試合。

 

真司の前に現れたのは、いかにも「私は偉い」と言わんばかりの雰囲気を身に纏った女生徒だった。

 

 

「フン、たかが男の分際でよくもまあ私の前に顔を出せたものね」

 

 

開口一番の台詞からしてこれだ。

 

その後も、真司のビルトビルガーを「男が乗れるだけあって、美しさの欠片も無いガラクタ」だの、セシリアを真司のクラスメイトというだけで「賄賂でも積まない限り代表候補生になれない屑」だの、悪言雑言喋り倒した挙句、

 

 

「貴方、さっさと棄権しなさいな。 どうせ私が勝つのは判り切っているのだから、やるだけ無駄よ。 大体、この学園に男がいるというだけで私達生徒、ひいてはIS学園そのものの品格に傷が付くというのにーー」

 

 

と、まあ徹頭徹尾この調子である。

 

流石にこれは運営部もうんざりしたのか、

 

 

「はい、時間押してるのでさっさと始めますよー」

 

 

とのアナウンスと共に、女生徒の台詞を遮るかの如く試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

 

「ちょっと、まだ私の話は終わってーー」

 

 

それが、女生徒がマトモに喋れた最後の言葉だった。

 

 

「スタッグビートル……!」

 

 

気が付いた時には、真司は既に女生徒の眼前まで迫っており、

 

 

「がっ!?」

 

 

ビルトビルガーの右アームに装着された鋏状の兵装が、女生徒の腰をしっかりと捕らえ締め上げる。

 

そして、

 

 

「クラッシャァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

わざわざ女生徒の向きを前方に向け直し、全身のスラスター出力を全開に吹かしての突撃により、女生徒は顔面からアリーナの壁に叩きつけられた。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

しかも、それだけでは終わらない。

 

女生徒を押し付けたまま更に出力を上げ続けた事により、真司は女生徒で壁を削り取る形で横滑りを起こし、そのままアリーナの入場ゲートへと突っ込む。

 

結果、アリーナ全体を揺るがすかのような轟音と共にゲートは大破。

 

幸い、女生徒は気絶したものの軽い打撲程度で済み、真司も勝利を認められたものの、試合に使用していた第二アリーナはしばらくの間使用禁止となってしまった。

 

当然、真司には織斑先生から出席簿アタックとクラス対抗戦終了後に反省文500枚が下されたのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、第三アリーナ・Aピット内。

 

 

「あっはっはっは!! 痛快痛快、こりゃ愉快! いやー、スカッとしたよしんくん!」

 

「笑い事か馬鹿者。 先程まで女権団体の馬鹿共が怒鳴り込んで来て大変だったのだぞ」

 

「で、どうしたんです?」

 

「イギリス政府の高官が自国の代表候補生を公然と侮辱された件で女生徒の関係者を探していたらしくてな、彼等に任せてきた。 今頃責任逃れに苦慮しているだろうな」

 

「うーわ、エグい……」

 

 

女尊男卑の風潮とは言え、政府の要職は未だに男が務めている事が多い。

 

いかに女が権利を声高に叫ぼうとも、そのポジションに必要な経験というものは一朝一夕で身に付くものでは無く、国の舵取りを任せる以上実力の伴わない者には任せられないからだ。

 

そして、国というものは面子を何より重んじる。

 

セシリアの場合はBT兵器開発を目的としたテストパイロットとしての意味合いが強いものの、国の威信を賭けた機体を任せる以上操縦者としての技量も平均基準を遥かに上回る事が求められ、セシリアも超人的な努力でそれに応えてきた。

 

今回はセシリアが民間出身という事やBT兵器のデータ取りそのものは真剣に取り組んでいる事もあり実質的な欠場を認めてはいるが、本来ならセシリアはイギリスの代表として同世代のIS操縦者全ての頂点に立つ事を求められる身だ。

 

それを衆人環視の前で侮辱されるという事は、イギリスにとっては自国そのものを侮辱される事に等しい。

 

故に、国は傷付けられた面子を取り戻す為に威信を賭ける。

 

恐らく、あの女生徒は責任逃れの為に切り捨てられるだろう。

 

権利団体とは、とどのつまり自らの権利を主張する為の団体であり、正当な理由さえあれば不都合な存在を切り捨てるのに何の躊躇いも無いのだから。

 

 

「けど、スタッグビートルクラッシャーだっけ? あれ、あの貧乳に使うには危険なんじゃないかな?」

 

「せめてツインテールって呼んだげて……まあ、確かに近接パワー型に組み付きを仕掛けるのは自殺行為でしょうね」

 

 

スタッグビートルクラッシャー。

 

ビルトビルガーの右下腕部に装着された、大型の鋏。

 

本来は、武装や手足の関節部を狙い挟み潰す為の武装だが、最大まで開けば人間の胴回りを挟み込む事も可能の為、先程の試合で真司がやったように捕縛して壁面や地面に叩きつけるような荒技も可能だ。

 

だが、近接武装故にそのリーチは短く、鈴の甲龍のような近接型を下手に拘束しようものなら、近接型ならではのパワーで殴られる危険を伴う事になる。

 

加えて、殴る、斬る、突く、等の原始的手段が主になる近接攻撃ではどうしても決め手に欠け、大きな危険を伴ってまで狙う価値のある攻撃手段かを問う声が上がった事から、ISという人体と同じ動きが可能で並外れた耐久性を誇る兵器が世に現れるまでの間開発が中止された経緯のある、曰く付きの武装である。

 

実際、先程の振り回しは相手が戦い慣れていない一般生徒だからこそ上手く決まったようなものであり、代表候補生相手では近接型の鈴はおろか、近接型を苦手としているセシリアにすら容易くあしらわれてしまうだろう。

 

 

「少なくとも、次の相手の青髪眼鏡がツインテールの第三世代兵装を引き出してくれればまだ対処のしようがあるんだけどねー」

 

「青髪眼鏡、ねえ……」

 

 

見ると、鈴の次の対戦相手は一年四組代表ーー更識 簪だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? アンタ、専用機は使わないの?」

 

 

二回戦、第二試合。

 

鈴と相対する簪が纏う機体は、近接用追加武装パックを装備した打鉄ーー量産機だった。

 

 

「……あれは、まだ未完成……それに……」

 

「それに?」

 

「……ハンデ、には……丁度良い……!」

 

 

そう言って、薙刀型ロングブレードを構える簪。

 

その挑発に対し、鈴は心底楽しげに笑みを浮かべる。

 

 

「へえ、大人しそうな顔して言うじゃない。 そういうのーー大っ好きだわ!!」

 

 

その言葉と共に鳴り響く開始ブザーを背に、簪目掛け駆ける鈴。

 

対する簪は、ロングブレードを半身で構え迎え撃つ。

 

 

「はあっ!!」

 

 

鈴の甲龍の青龍刀型近接ブレード〈双天牙月(そうてんがげつ)〉の一閃。

 

簪はその重い一撃を、ロングブレードの柄の表面で滑らせるようにして受け流す。

 

それにより、鈴の体勢が崩れた所をーー

 

 

「ーーふっ!!」

 

「っあぁっ!!?」

 

 

無防備な背中目掛け、簪の一撃が吸い込まれる。

 

 

「ったあ……やったわね!」

 

 

得意な近接戦でしてやられた事で本格的にスイッチが入ったのか、間合いを取り様子を伺っていた簪目掛け猛然と挑み掛かる鈴。

 

二振りの青龍刀をプロペラの如く回転させながら斬り掛かる連撃の前に、流石に攻めあぐねる簪。

 

 

「中国の!! 代表候補生が!! 接近戦で!! 遅れを取る訳には!! 行かないのよ!!!」

 

 

嵐の如き猛攻。

 

迂闊に踏み込めば、たちまちバラバラにされかねない脅威に晒されながらも、眼鏡の奥に隠された眼差しに恐れの色は無い。

 

そして、

 

 

「貰ったぁ!!」

 

 

勝利を確信した一撃が振り下ろされ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーそこ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

二度響いた甲高い金属音と共に、鈴が吹き飛ばされた。

 

 

「ーーっが……はぅ……っ!!?」

 

 

信じられないといった表情のまま、地面へと叩きつけられる鈴。

 

その傍に、自身が右手で握っていた筈の青龍刀が突き立つ。

 

 

「……アンタ……一体、何やったのよ……!?」

 

 

何とか立ち上がろうとする鈴の問いに、簪は何事も無かったかのような無表情で答える。

 

 

「……あんな持ち方じゃ、保持力は、無いも同然。 そこを、狙っただけ」

 

 

鈴のあの攻撃ーー名付けるならば、ジャイロ斬りと呼ぶべきかーーは、チアガールのバトントワリングの要領で武器を回転させながら斬り掛かる技だ。

 

つまり、あの技の使用中は武器をしっかり握る事が出来ない。

 

簪はそこを利用し、鈴が斬り掛かった瞬間、タイミングを合わせて青龍刀の峰を薙刀の石突で打ち、勢いを更に加速すると同時に斬撃の軌道を操作。

 

それにより唯でさえ重い青龍刀に遠心力の増加が加算され、鈴の手を引く形で離脱。

 

更に、自らの武装に引っ張られた鈴は大きく体勢を崩し、簪の薙刀をマトモに喰らう羽目に陥った。

 

恐るべきは、各国の代表候補生の中でもトップクラスの近接戦の技量を誇る鈴相手にそれらを容易く行った簪の技量と判断力、そして鈴の技の欠点を瞬時に見抜いた観察眼だろう。

 

 

「あーあ、何やってんだかアタシ……けどまあ、お陰で目が覚めたわ」

 

 

改めて青龍刀を掴み取り、簪目掛け構える鈴。

 

 

「悪いけど、かっこ悪いアタシのまんまじゃ終われないのよ! 汚名挽回に付き合って貰うわよ!!」

 

「……それを言うなら、汚名返上!!」

 

 

アリーナ中央にて、再び激突する二人。

 

最初こそ互角の打ち合いだったが、次第に簪が圧され始める。

 

 

「まだまだぁーーー!!!」

 

「くっ……!!」

 

 

簪の薙刀に対し、鈴は青龍刀を柄頭で連結した双刃刀形態で対抗。

 

慢心を完全に捨てた鈴の技量は、簪の観察眼と機械の如き正確性を以ってしても凌ぐのは容易では無く。

 

二人を隔てる唯一の、しかし絶対的な差である「機体性能の差」により、簪は徐々に、しかし確実に追い詰められていく。

 

そして、

 

 

「今度こそーー貰ったぁ!!!」

 

「あうっ……!!」

 

 

遂に、薙刀が青龍刀との打ち合いに耐えきれず、砕け散った。

 

 

「これでーー終わり!!」

 

 

そして、唯一の攻撃手段を失った簪目掛け、青龍刀の一撃が振り下ろされた。

 

 

「……まだ!!」

 

 

だが、その一撃は打鉄の非固定浮遊部位である実体シールドに深く食い込み、動きを止める。

 

そして、

 

 

「……これが、私の意地!!」

 

 

青龍刀を一時的に奪われた鈴目掛け、拡張領域(バススロット)から瞬時に量子実体化した日本刀型近接ブレードでの突きを繰り出した。

 

 

(……勝った!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

《打鉄、SE0。 勝者、凰鈴音》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合後、選手控え室。

 

その片隅で、鈴は膝を抱えて蹲っていた。

 

 

「……はあ……」

 

 

先程から、何度溜息を吐いたか分からない。

 

それ程、鈴は深く落ち込んでいた。

 

そこに、控え目なノックの音が響く。

 

 

「どうぞー……」

 

 

力無く応対する鈴だったが、訪ねてきた人物を目にした瞬間思わず息を飲んだ。

 

何故なら、その人物は先程まで刃を交えていた相手ーー簪だったからだ。

 

 

「……大丈夫?」

 

「だ、大丈夫って……それ、アタシの台詞でしょ!」

 

「……私は、大丈夫……打鉄が、守ってくれた……」

 

「そ、そう……えっと……わ、悪かったわね。 あんな卑怯な真似して」

 

 

その言葉に、しかし簪は静かにかぶりを振る。

 

 

「……近接武装以外を、使っていけないルールは、無い。 貴女の、判断は、正しかった」

 

「けど!」

 

「確かに、負けたのは……結構悔しい。 けど、誇らしくもある」

 

「誇らしい?」

 

「あの武装を使われなければ、私は勝っていた。 それって、量産機で、貴女をそこまで追い詰める事が出来た……そういう事、でしょ?」

 

「……何よそれ。 ポジティブ過ぎでしょ」

 

「私も……そう思う」

 

 

沈黙は一瞬。

 

程なく、二人同時に吹き出す。

 

 

「ねえ、簪って呼んでいい? その代わり、アタシの事は鈴って呼んでよ」

 

「わかった……「鈴」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、いい試合だったねー。 まあ、ちーちゃん程じゃないけどね」

 

「いや、織斑先生の試合は別の意味で見応え無いでしょ。 どんな相手も寄って斬るだけなんですから」

 

「わかってないなー、しんくんは。 今度ちーちゃんの試合のDVD見せたげるから、しっかり勉強するんだよ? ……よし、解析終了!」

 

 

そう言って篠ノ之博士が空中い浮かぶ仮想ディスプレイに映し出したのは、鈴と簪の試合に決着が付く瞬間の映像だった。

 

 

「あれ? 更識さんの周りが何か歪んでません?」

 

「おっ、いいとこに気が付いたねー。 これが青髪眼鏡が負けた原因だよ」

 

「この歪みが?」

 

「そう。 厄介だよこれ、何せーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「見えない」攻撃なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




バトル描写がダイジェストにしか見えない……


次回は多分決勝の予定です


それではまた
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