IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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……相変わらず無理の塊……


第二十六話 誕生! 三人目のぶどうライダー!

 

 

 

 

「はぁああああっ!!!」

 

 

裂帛の気合と共に、真司に迫るインベスの一体が両断される。

 

 

「よっと……真司、大丈夫!?」

 

 

その言葉と共に、落下していた真司の身体がオリーブドラブに染められたISを纏った人影に受け止められる。

 

 

「静寂……それに、箒……セシリアも?」

 

「後は任せろ!」

 

「わたくし達が援護致しますわ!」

 

 

会話の間にも、打鉄を纏った箒が鈴と共にインベスを斬り裂き、セシリアのブルー・ティアーズ(BT兵器)が正確な射撃でインベスを撃ち抜く。

 

 

「鷹月さん、今の内に!」

 

「任せて!」

 

 

セシリアの援護を受け、真司を伴いピットへと向かう静寂。

 

 

「よし、私達も後退するぞ!」

 

 

真司達がアリーナのピットへと向かったのを確認し、鈴に指示を出す箒。

 

 

「こいつらはどうすんのよ!」

 

「間も無く教員部隊が到着するとの事だ! 時間稼ぎはもう十分だろう!」

 

「……悔しいけど、それが一番利口みたいね」

 

 

悔しげに頷き、ピットへと向かう鈴。

 

その時。

 

 

「ーー危ない!!」

 

 

唐突に鈴を突き飛ばした箒が、次の瞬間凄まじい勢いで地面へと降下ーー否、墜落した。

 

 

「ーー!!!」

 

 

箒の纏う打鉄が、激突の衝撃で甲高い金属音を上げる。

 

 

「箒!?」

 

 

思わず叫ぶ鈴の背後に、異形の影が覆い被さる。

 

 

「キィッ!!」

 

「ぐっ!? な、何よこいつ!!」

 

 

双天牙月で辛うじて受け止めたその正体は、蝙蝠を人型に引き延ばしたかのような姿の怪物だった。

 

 

「鈴さん、離れて下さいまし!」

 

 

セシリアのBT兵器が全方位から怪物を狙うも、その全てが身軽に躱される。

 

 

「こいつ、しっつこいのよ!!」

 

 

初級インベスとは比べ物にならない機動性と怪力の前に、さしもの鈴も間合いを離す事が出来ない。

 

 

「このままでは鈴さんが……織斑先生、援軍はまだですの!?」

 

『後二分待て!! 出撃準備が完了次第我々も出る!!』

 

「了解ですわ!!」

 

 

多元的なBT兵器の軌道制御に伴う頭痛を堪えつつ、気力を振り絞りインベスの群れに立ち向かうセシリア。

 

アリーナ内の混乱は、収束の兆しすら見えないまま混迷の度合いを深めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってて……悪い静寂、助かった!」

 

「困った時はお互い様でしょ」

 

 

静寂の助けを借り、ピットへと降り立つ真司。

 

だが、ピット内もまた戦場と化していた。

 

 

「二人共、大丈夫ですか!?」

 

 

ラファールに身を包んだ山田先生が静寂の援護に入る。

 

 

「山田先生!! これは一体……」

 

「女権団体の皆さんが隠し持っていたロックシードが暴走して、インベスが溢れ出したんです! 多分、アリーナ内のインベスも彼女達が呼び出したんじゃないかと……」

 

 

山田先生が状況を説明するが、事実と違う点が幾分混ざっている。

 

混乱を防ぐ為という事もあるが、山田先生にとっても野崎という目を掛けていた生徒がこの事態を引き起こしたとは信じたくないのだろう。

 

 

「もうすぐ織斑先生もこちらに到着します! ここは先生達に任せて、赤城君は予備の打鉄の元へ向かって下さい! 生身よりは安全です!」

 

「わかりました! 真司、行こう!」

 

「あ、ああ!」

 

 

静寂に連れられ、訓練機のハンガーへと向かう。

 

その背後では、教師部隊の怒号と悲鳴、そして銃声と爆発音が絶え間無く響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、倭が入院中の病院でも、混乱が広がりつつあった。

 

 

「このっ、離れなさいよ!!」

 

 

深琴の振るったパイプ椅子の一撃を受け、初級インベスが階段から転がり落ちていく。

 

 

「どうなってるのよ……何が起こってるのよ!」

 

 

花瓶の水を替え倭の病室へと戻る途中、深琴は突如初級インベスの襲撃を受けた。

 

辛うじてその場は切り抜けたものの、病院内は既にインベスで溢れかえっており、病室に戻るのもままならない状況にあった。

 

 

「ヤマト……っ!」

 

 

今も病室のベッドの上で眠り続けているだろう幼馴染の姿が脳裏を過る。

 

それがまずかったのか、気が付くとトンボに似たインベスが背後から剣を振りかざしていた。

 

 

「え……キャアっ!!?」

 

 

間一髪、斬撃は躱したものの、その拍子に階段を踏み外してしまう。

 

 

「あーーぐぁ……っ!!!」

 

 

一気に階下まで転げ落ち、派手に叩きつけられる。

 

 

「……ぁ……う、あ…………」

 

 

全身に走る激痛と衝撃に、息が詰まる。

 

朦朧とする意識の中、霞む視界に映るのは、階段をゆっくりと降りてくるインベスの姿。

 

 

(ああ……私、死ぬんだ……)

 

 

最早逃げる事も出来ず、迫る死神の足音に、自分の死を覚悟する深琴。

 

その脳裏に、屈託の無い笑顔を浮かべる少年が浮かぶ。

 

 

(ヤマト……)

 

 

遂に眼前まで迫る怪物から逃げるかの如く眼を閉じる。

 

 

(……助けて……)

 

 

その願いも虚しく、深琴目掛け剣が振り上げられーー

 

 

「……ヤマト……助けて…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーおりゃああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー横手からの飛び蹴りで吹き飛ばされた。

 

 

「ーーえ?」

 

 

思わず思考停止する深琴。

 

その傍らに、入院着に身を包んだ人影が着地する。

 

 

「深琴、無事か!?」

 

「え……や、ヤマト……?」

 

 

痛みに顔を顰めながら身を起こすと、人影は確かに倭だった。

 

 

「話は後だ! 立てるか!?」

 

「う、うん……」

 

 

幸い骨は折れておらず、倭の肩を借りてその場から逃げ出す深琴。

 

だが、インベスも背後から追ってくる。

 

 

「くそっ、このままじゃ追いつかれる!」

 

「てか、ヤマト! あんた、身体は大丈夫なの!?」

 

「へ? ああ、これか。 なんかもう塞がってた」

 

 

そう言って胸元を開けると、まだ痛々しげに赤く染まってはいるものの、傷口自体は塞がっているようだ。

 

 

「塞がった……って、あんなに酷い怪我だったのに……?」

 

「塞がってんだからしょうがないだろ。 それより、早くここから逃げるぞ!」

 

「う、うん……って、危ない!!」

 

「うわっ!?」

 

 

突如襲い掛かってきたインベスの一撃を躱した拍子に、倭と深琴が引き離されてしまう。

 

 

「ってて……深琴、大丈夫か!?」

 

「いたた……う、うん、何とか!」

 

「くそっ、逃げ切れねえか……こうなったら!!」

 

 

決意の表情と共に、懐から戦極ドライバーを取り出す倭。

 

 

「だ、駄目よヤマト!! あんた、さっき目を覚ましたばっかりじゃない!!」

 

「このままじゃ二人揃ってこいつらの餌だろうが! 変身!!」

 

 

《オレンジ! Lock-on!》

 

《ソイヤッ!!》

 

《オレンジアームズ! 花道・オンステージ!!》

 

 

鎧武へ変身し、インベスに挑み掛かる倭。

 

だが、その動きは精彩を欠いている。

 

 

「やっぱり、病み上がりじゃ無茶よ! 下がって!」

 

「だからって、お前を放っておけるか、よっと!!」

 

 

インベスを蹴り飛ばしながら深琴に答える鎧武。

 

しかし、数の差はいかんともし難く、徐々に押されていく。

 

 

「この、野郎……!!」

 

 

二体掛かりで鍔迫り合いを仕掛けてくるインベス相手に、押し切られそうになる鎧武。

 

 

「ヤマト……もういいよ……もう、やめてよ……」

 

 

悲痛な声を上げる深琴に、鎧武は肩越しに答える。

 

 

「……嫌なんだよ……!」

 

「……え?」

 

「俺が、戦わなかったせいで……お前が、傷付くのなんて……嫌なんだよ!!!」

 

 

気合一閃。

 

絶叫と共に押し切った一撃は、二体のインベスを一気に弾き飛ばした。

 

 

「だから、俺は戦う! そして……勝って、生き残る! それくらいの事出来ないで、あいつに……一夏に、顔向け出来るかよ!!」

 

《ソイヤッ!! オレンジ・スカッシュ!!》

 

 

倒れたままのインベス目掛け、天井スレスレまで跳躍する鎧武。

 

そして、

 

 

「セイッハァーーーーー!!!」

 

「ミミミィィィィィィィィン!!?」

 

 

液状のエネルギーを纏った飛び蹴りが、インベスを爆砕した。

 

 

「よし……後一体!!」

 

 

勢いのまま、態勢を立て直したもう一体に挑み掛かる鎧武。

 

だが。

 

 

「ミィィィィィン!!」

 

「がふっ!?」

 

 

先程の一撃で体力を使い果たしたのか、インベスの猛攻を捌き切れない。

 

 

「……ヤマト……」

 

 

満身創痍の状態で尚戦おうとする鎧武の姿に、いつしか深琴の頬を涙が伝っていた。

 

 

「……そうやって、あんた一人でみんなの為に戦って、傷付いて……」

 

 

視界が滲み、鎧武の姿がぼやける。

 

 

「……倒れても、みんなの為にまた立ち上がって、また戦って……だったら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなあんたを……誰が助けてくれるのよ…………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「倭ちゃん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の呼び掛けに、倭と深琴、つられてインベスまで動きが止まる。

 

そこに居たのは、体格に似合わない胸囲を有する黒髪の少女ーー

 

 

「ーー水依?」

 

 

ーー香山 水依だった。

 

 

「ーーって、逃げろ水依!! ここに居たらお前もやられるぞ!!」

 

 

鎧武の言葉に対し、水依はかぶりを振るとショルダーバッグから「カッティングブレードの付いたバックル」を取り出す。

 

 

「戦極ドライバー!?」

 

「お前、それ……!?」

 

 

その問いに、水依は無言で笑みを浮かべる。

 

だが、その表情には、可愛らしい顔付きには似つかわしくない「決意」が篭っていた。

 

 

「大丈夫……私だって、戦える!」

 

 

腰に巻き付いた戦極ドライバーから胡弓調のサウンドが響き、東洋龍を思わせるヘルメットの横顔が浮かび上がる。

 

 

《ブドウゥー!!》

 

「変身!」

 

 

幼少の頃より護身術として習っていた中国拳法の構えを取り、意識を戦いへと集中する水依。

 

その脳裏に、戦極ドライバーを手に入れた時の出来事が過る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦極ドライバーを売ってくれ……だと?」

 

 

ドルーパーズの一角。

 

そこを間借りしている錠前ディーラー・シドの着くテーブルの反対側に、一人の少女が居た。

 

 

「裕也さんに戦極ドライバーを売ったのは貴方だと聞きました。 だったら、後一つくらいなら持っているんじゃないですか?」

 

 

まだ高校生ながら、その表情からは弱々しさは感じられない。

 

 

「まあ、確かにまだ在庫はあるが……そう簡単に売る気は無いぜ? 戦極ドライバーは、一つのチームに一つずつ……それが、俺が決めたルールだからな」

 

「でも、倭ちゃ……倭さんは普段IS学園からは出られない。 外出許可もそう何度も出せない事を考えると、私達には「不在時を守る為のアーマードライダー」はどうしても必要……そうは思いませんか?」

 

 

その言葉に、シドは苦笑しながらも同意する。

 

 

「おいおい、随分都合のいい話だな。 ……だがまあ、確かに一理はある。 俺もあんた達やバロンにだけ売るつもりは無いし、アーマードライダー鎧武の不在時に他のアーマードライダーにバトルを吹っかけられたら、それこそ一溜まりも無いからな。 それは俺としても面白くない。 だがーー」

 

 

そこで一旦言葉を切り、少女に鋭い視線を向けるシド。

 

 

「ーー他のメンバーなら兎も角、あんたには売れないな、香山 水依。 いや……《呉島 水依》と呼んだ方がいいか?」

 

「っ!」

 

 

その言葉に、少女ーー水依は、動揺の気配を滲ませる。

 

 

「ユグドラシル・コーポレーションの幹部一族の末娘が、身分を偽ってストリートダンスチーム入りとはな。 ……個人的にはあんたみたいなガキは嫌いじゃないが、こいつはちと危険でな。 俺があんたにこいつを売ったと知れたら、あんたのバックに何をされるか分かったもんじゃない。 悪いが諦めてくれ」

 

 

その言葉を最後に、席を立とうとするシド。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー貴方が怖いのは兄さん? それともーーユグドラシル・コーポレーション?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その問いに、振り向きかけていた視線を戻すシドの眼に映ったもの。

 

それは、寒気が走る程の「イイ笑顔」を浮かべた水依だった。

 

 

「貴方が兄さんを恐れるのは無理もありません。 何せ、「あの」ユグドラシル・コーポレーションを実質支配する呉島一族の一人……それも、一番の出世頭とも呼ばれる人物ですからね。 でも……私だって、呉島の人間なんですよ?」

 

 

妖艶とも言える笑みを浮かべる水依から放たれるプレッシャーに堪えかねたのか、再度席に着くシド。

 

 

「……何が言いたい?」

 

「簡単な話ですよ。 将来、本当に怖いのは……誰なんでしょうね?」

 

 

そこまで言うと、水依は身を乗り出し、シドの無精髭に覆われた顎に手を掛けつつ囁く。

 

 

「今の内に、仲良くしておくのも……悪くないんじゃありませんか? シ・ド・さ・ん?」

 

「……オイオイ」

 

 

目の前の小柄な少女のペースに飲み込まれてしまったシドは、辛うじてそう呟くのが精一杯だった。

 

 

「お前……本当に高校生か?」

 

「言った筈ですよ? 私だって、呉島の人間だと」

 

「……確かに、な」

 

 

そう答えるシドの顔に浮かんだ表情ーーそれは、引き攣りながらも楽しそうな笑みだった。

 

 

「ああ、そういや今日は今から大事な商談があったな。 悪いが、話はここまでだ」

 

 

そう言って、今度こそ席を立つシド。

 

 

「そういや……あんた、学校じゃ結構な優等生なんだってな。 そんな優等生ならーー忘れ物はちゃんと届けてくれるよな?」

 

 

その言葉を最後に、シドはドルーパーズを後にした。

 

だが、シドの座っていた席には小振りのアタッシュケースと、葡萄モチーフのロックシードが残されていた。

 

 

「……優等生なら、ね」

 

 

そう呟く水依の傍らに、フルーツパフェの盛られた器が置かれる。

 

 

「お疲れさん。いい女優っぷりだったぜ」

 

 

そう言って人懐っこい笑みを浮かべるのは、ドルーパーズのマスターだった。

 

 

「……っ!!」

 

 

思わずマスターに縋り付く水依。

 

その姿に、シドと互角に渡り合った悪女の面影は無かった。

 

 

「ストリートダンスチームより、演劇部に入った方が良かったんじゃないのか? 今のは俺も寒気がしたぜ」

 

 

その問い掛けに、水依は肩を震わせながらかぶりを振る。

 

 

「冗談だよ。 必死だったんだろ? チーム鎧武は、お前さんの「居場所」だもんな」

 

 

優しく語りかけるマスターに、水依はただ嗚咽を堪え縋り付く事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一世一代の賭けに勝ち、水依は今此処に居る。

 

その胸に宿すのは、誰よりも強い決意。

 

 

(辛い事も、悲しい事も、決して消えて無くなったりしない)

 

 

(だったらーー大切な人が傷付くより、自分が傷付いた方が良い)

 

 

 

 

「そうだよね……倭ちゃん」

 

《Lock-on!!》

 

 

銅鑼の音と胡弓のサウンドをBGMに、螺旋を描くかの如く構えを取っていく。

 

そして、その右手がカッティングブレードを握り、ロックシードを「斬った」。

 

 

《ハイィー!!》

 

《ブドウアームズ!! 龍・砲・ハッハッハッ!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

ーそのインナーは、鮮やかなメタリックグリーンに輝き、

 

ーその鎧は、深き紫の色彩で彩られ、

 

ー顎髭を思わせるチンアーマーと黄金の角飾りを備えた兜は、東洋の龍の如き威圧感を放つ。

 

 

 

 

ー今此処に、新たなる「武将」が降臨する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回も新たなライダーが出ます


それではまた
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