IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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この回で第二章は終わりです

何か思ったより長引いた気がする……


第二十九話 真実は未だ遠く

 

 

 

 

約一週間後、沢芽市サウスステージ。

 

 

「皆、今日も私達のダンスを見に来てくれてありがとう!! 今日はチーム鎧武の新メンバーを紹介するわね!! カモン、セシリア!!」

 

 

センターポジションに立つ深琴の呼び掛けに応じ、チーム鎧武のコスチュームである和風デザインのパーカーに身を包んだセシリアがステージ脇から駆け寄ってくる。

 

 

「沢芽市の皆様、初めまして。 わたくし、この度チーム鎧武の一員となりました、セシリア・オルコットと申しますわ。 何分このようなスタイルの舞踊は初めてでして、色々と至らない部分はあるでしょうが、どうか暖かい目で見て頂きたく存じます」

 

 

そう言って優雅に礼をするセシリアに対し、観客からは熱気の篭った歓声が上がる。

 

 

「新メンバーは歓迎して貰えたみたいね! それじゃ、早速行くわよ! 今日最初の演目、新入り考案の新作ダンス! ワン! ツー! ワン、ツー、スリー、フォー!!」

 

 

深琴の合図と共に、今日もチーム鎧武のステージが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、あんな事があったってのに皆元気ねー」

 

「まあ、いつまでも引きずってても仕方ねえしな。 塞ぎ込んでるよりはマシだろ」

 

「確かにね。 それにしても、倭の奴ホンットタフよねー」

 

 

そう言って観客席からチーム鎧武のダンスを観覧している鈴の視線の先には、つい数日前まで入院していた倭が深琴とコンビネーションステップを踏む姿があった。

 

その様子からは、ダメージの残っている様子は見られない。

 

 

「命に別状は無いといっても、一週間はベッドの上って聞いたんだけどな……」

 

「それ、もうタフとか通り越して無いか?」

 

「……人間?」

 

 

呆れ顔の鈴の言葉に、一真、巧、簪も乗っかるように好き勝手なコメントを述べる。

 

余りの無遠慮ぶりに、真司と共にダンスを見に来た静寂も苦笑いを零す。

 

 

「あ、あはは……それにしても、何だったんだろうね、あの事件?」

 

 

その問いに、真司は興味無さげに答える。

 

 

「さあな。 噂じゃ退学になった五組の代表が俺に負けた腹いせにやったって話もあるけど、正直どうでもいいや」

 

「それでいいのかジャーナリスト……」

 

 

実際、真司にとっては今回の事件はもう興味の対象では無くなっていた。

 

真司の興味は、既に「シェグウシェ」と名乗った謎のインベスに向いていた。

 

あの男が今回の事件を引き起こした黒幕に違いないーー真司の直感はそう告げていた。

 

シェグウシェーーそしてシェグウシェが口にした「ロエデェゴ」と呼ばれる者達ーーそれら未知の存在がこの世界に如何なる脅威を齎すのかーーそれに比べれば、既に役割を終えた「隠れ蓑」達の事など興味が湧く筈も無かった。

 

 

「真司?」

 

「ん? ああ、ちょっとな」

 

 

心配気な静寂の呼び掛けに、真司は曖昧な答えを返す。

 

まだ何も解っていないのに、悪戯に不安を煽る事も無いだろうと思っての事だ。

 

 

「そういや鈴、倭とはもう仲直りしたんだろ?」

 

「う……いや、まあその、ね……」

 

「……もしかして、まだ?」

 

「う……し、しょうがないじゃない! ここ一週間事情聴取とか通院とかで、倭の見舞いに行く暇も無かったのよ!」

 

 

簪の指摘に、気まずそうに反論する鈴。

 

 

「お前な……せっかくあの事件の真相調べてやったんだからよ」

 

「わ、わかってるわよ!! このステージが終わったら、ちゃんと和解しに行くわよ!! ほら、ちゃんと「これ」も持ってきてるんだから!!」

 

 

そう言って鈴がバッグから取り出したのは、以前真司が大久保編集長から渡された資料だった。

 

 

「ふむ、これが「一夏誘拐事件」の真相か……鈴、見せて貰っても構わないか?」

 

「真司、どうなのよ?」

 

「まあ、読むくらいなら構わないけどよ。 くれぐれも他言無用で頼むぜ。 うちの編集長も結構ヤバイ橋を渡って調べてくれたんだからよ」

 

「解った、約束しよう」

 

 

そう言って、鈴から資料を受け取る箒。

 

そのページに目を通すにつれ、表情に暗い影が刺す。

 

 

「……そうか……やはりあいつのお人好しは最期まで治らなかったか……あの、馬鹿が………」

 

「ホントにね……馬鹿よ、あいつは……そりゃ、倭にも死んで欲しくなんて無いけどさ……それで、自分が死んでたら意味無いじゃないのよ………」

 

 

資料に記載された内容。

 

それは、〈第二回モンド・グロッソ〉の舞台裏で起こった〈織斑 一夏誘拐事件〉の真相を、大久保編集長が独自の情報網を駆使して調べ上げた物だった。

 

それによると、一夏が誘拐された際、会場スタッフだった姉の手伝い名目でドイツに来ていた倭が現場を目撃。

 

駐車場に止まっていたバイクを盗んで追跡した後、犯人一味が一夏を殺害しようとしている現場に突入、大立ち回りを演じる。

 

一夏の加勢もあり一味と善戦するも、犯人一味の黒幕と思われるIS操縦者の乱入、交戦の末、倭を背後から撃とうとした犯人の一人から倭を庇う形で一夏が銃弾を受けーー死亡。

 

その直後、決勝戦を放棄した織斑 千冬の到着により倭は九死に一生を得るも、犯人一味はISと倭達との戦闘に巻き込まれる形で全員死亡、IS操縦者も逃亡し、倭もISとの戦闘により全治一ヶ月の重症を負う結果に。

 

これだけの事件が何故表沙汰にならなかったのかーーそれは、ドイツが当時「モンド・グロッソ開催国」だった事にある。

 

開催国だったドイツが、優勝候補の家族という最重要警備対象をみすみす誘拐を許した挙句殺害されるーーこの失態が表沙汰になれば、当然ドイツは世界中からバッシングを受ける事になる。

 

それは、ドイツへの打撃だけに留まらず、下手をすればISそのもののイメージダウン、引いては排斥運動へと繋がる火種に発展しかねない。

 

そう考えた各国のIS推進派によって、この事件は徹底的に隠蔽が施された。

 

その結果、表向きには「織斑 一夏、及び橘 倭は会場外にて大規模な交通事故に巻き込まれた」事になり、千冬の決勝戦辞退の理由については不明という事にされた。

 

その後、千冬は大会を混乱させた責任を取る形で引退を表明後、誘拐事件に関する情報を提供したドイツ軍への恩を返す意味もあり、ドイツ軍に新設されたIS運用部隊〈シュバルツェ・ハーゼ〉の戦技教官に一年限定で赴任。

 

倭に関しては、世界が混乱するとの理由で目撃した物全てに箝口令が敷かれる事となった。

 

 

「要は、国のメンツを守る為に口を塞がれた訳か。 ま、こんな失態が広まった所で、世界が無駄に混乱するだけだしな」

 

「……国なんて、こんな物」

 

「あはは……簪さん、辛辣だね」

 

「言いたくもなるだろうよ。 倉持技研の奴等、今迄白式に掛かりっきりだったってのに、打鉄弐式にスマブレ所属の俺が関わってるって耳にした途端に「完成の為にデータ取りを行うから持って来るように」だぜ。 図々しいにも程があるだろ」

 

「うわあ……うちの国でも流石にそこまでやるかどうか……」

 

「胸糞が悪くなってくるな……」

 

「ホントにねー。 政府の馬鹿共の御守りも疲れるよ実際」

 

「ひかるんも大変だねー。 束さんみたいにフリーでやれる実力があるんだから、倉持なんて凡人の集まり、さっさと見限っちゃえばいいのに」

 

「大人には色々しがらみってのがあるのさ。 篠ノ之束さんみたいにフリーダムにやるにゃ、もう年を取りすぎたのさ」

 

「いや、ひかるん同級生だよね?」

 

「……というか姉さん、いつの間に来たんですか?」

 

 

ふと気がつくと、箒の背後に篠ノ之博士が、その隣には白衣にタイトスカートに身を包んだ怪しげな雰囲気の美女が席に着いていた。

 

 

「お、君達が世界でも五人しか居ない男性IS操縦者の皆さんだね? 私の名前は〈篝火(かがりび) ヒカルノ〉。 かの悪名高き倉持技研の第二研究所所長なんて面倒な役職を押し付けられてる身だよ」

 

「いや、悪名高きって自分で言いますか……」

 

「だーって、あそこって堅苦しくて仕方無いんだぜい? ちょーっと研究所内を水着で歩き回っただけでグダグダうるっさいしさー」

 

「いや、それは誰だって注意しますって……というか、何で研究所内で水着姿なんですか……」

 

 

一真のその問いに、簪が何処か疲れた様子で答える。

 

 

「第二研究所は近くに川があるから……この人、良く仕事さぼって泳いだり釣りしてる……」

 

「あ、更識簪さんご無沙汰ー。 ごめんねー、私が担当外されてから全然進んで無かったんでしょ、打鉄弐式。 挙句に白式の解析を口実に簪さんに丸投げとかホント酷いよね。技研のボンクラ共に代わって謝らせて貰えないかな?」

 

「……構いません……巧が、手伝ってくれましたし……」

 

「ふーん。 ーーおや? おやおや?」

 

「? 何か?」

 

「いや、ちょーっとね。……ふむ、これは面白くなってきたかな……」

 

 

心底面白そうな表情の篝火所長の呟きは、巧の耳には届く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と景気が良いな、チーム鎧武!」

 

 

ダンスも終盤に差し掛かった時、その言葉と共に現れたのは、黒いスタジャンに身を包んだ青年だった。

 

背後には、同じ服装の男達の姿も見える。

 

 

「お前ら……〈レイドワイルド〉! また邪魔しに来たのかよ!」

 

「人聞きの悪い事言ってんじゃねえよ。 ステージの奪い合いはちゃんとルールで認められてるだろうが」

 

「そうそう。 お前等もビートライダーズなんだから、文句があるんだったら俺達に勝ってから言うんだね」

 

 

そう言ってレイドワイルドのリーダーらしき青年の隣に立つのは、首元のスカーフと黒縁眼鏡が特徴の茶髪の青年だった。

 

 

「お前は……誰だっけ?」

 

「倭ちゃん……あの人、確か〈チームインヴィット〉の〈城之内 秀保(じょうのうち ひでやす)〉だよ。 勝つ為なら手段を選ばない卑怯なやり口で有名だって聞いてるよ」

 

 

水依の言葉に、倭の間抜けな発言で他の皆と共にずっこけていた城之内が気を取り直して答える。

 

 

「策士、と呼んで欲しいな。 悪いけど、このステージは俺達が貰うよ?」

 

「お前等みたいなガキにはステージなんて勿体無いんだよ!」

 

 

そう言って二人が取り出したのは、ドングリとマツボックリのロックシード、そしてーー戦極ドライバーだった。

 

 

「お前ら、それを何処で!?」

 

「シドの奴から「良い物があるが買わないか?」なんて持ちかけられてな。 確かに安くは無かったけどな、これでお前等と条件は対等だぜ!」

 

「そういう事。 いくらそっちのアーマードライダーが強いからって、二人掛かりなら行けるでしょ」

 

《マツボックリ!!》

 

《ドングリ!!》

 

「「変身!!」」

 

《ロック・オン!》

 

《ソイヤッ!!》《Come on!!》

 

《マツボックリアームズ!! 一撃・イン・ザ・シャドウ!!》

 

《ドングリアームズ!! Never give up!!》

 

 

それぞれが戦極ドライバーにセットしたロックシードを斬ると共に、スタジャンの青年は足軽を思わせる姿に、城之内はローマ時代の甲冑を思わせる姿にそれぞれ変身する。

 

 

「四人目……五人目のアーマードライダー……だと!?」

 

 

驚愕に言葉を失う倭を余所に、青年は名乗り始める。

 

 

「先ずは、改めて名乗らせて貰うぜ! 俺はチームレイドワイルドのリーダー・初瀬 亮二(はせ りょうじ)! またの名を、〈アーマードライダー黒影〉!!」

 

「あ、それは自分で名乗るんだ」

 

 

多少呆れ気味な城之内。

 

だが、

 

 

「そして、こいつはチームインヴィットのリーダー・ 城之内 秀保! またの名を、〈アーマードライダーグリドン〉!!」

 

「え……ぇ、ええーーーーーっっ!!?」

 

 

自分まで変なネーミングを付けられてしまう。

 

当然、周囲からは

 

 

「グリドンってwwwカッコわるwww」

 

「ネーミング安直過ぎね?」

 

 

等の意見が漏れる。

 

 

「ちょっ、初瀬ちゃん!? そのネーミングは勘弁してくれないかな!?」

 

「何でだよ? いいだろグリドン、徹夜して考えたんだぜ?」

 

「いや、それ絶対深夜テンションの賜物だよね!?」

 

 

流石に城之内もこのネーミングは勘弁ならないのか、必死に抗議する。

 

そんな二人を余所に、チーム鎧武の面々は対処に困っていた。

 

何せ、アーマードライダー鎧武の正体は深琴と水依以外に明かす訳には行かないし、水依もアーマードライダーとしてはまだ未熟だ。

 

使用するロックシードのレアリティに差があるとは言え、流石に二対一はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーフン、相変わらず姑息な奴等だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉と共に、観客の群れを割って現れたのは、戒斗だった。

 

 

「戒斗! もしかして、お前も勝負しに来たのか!?」

 

「そのつもりだったが……気が変わった。 貴様等との勝負は、先に雑魚共を片付けてからだ」

 

《Banana!!》

 

 

戒斗がバナナロックシードを解錠するのを目の当たりにして、初瀬達が目に見えて焦り始める。

 

 

「お、おい! 流石にバロン相手はマズイんじゃねえのか!?」

 

「お、落ち着いて初瀬ちゃん! まだ鎧武のアーマードライダーは来てないし、二対一ならまだ勝ち目がーー」

 

《ブドウゥー!!》

 

 

城之内の希望的観測を掻き消すかの如く、水依の解錠したブドウロックシードの起動音が響く。

 

 

「フン、貴様もアーマードライダーになったか。 加勢の必要は無い。 そこで休んでいろ」

 

「そんな訳にはいかないよ。 此処は私達のステージなんだから、他人任せになんかしていられない!」

 

「……フン、勝手にしろ」

 

 

その言葉を最後に、戒斗と水依は最早言葉も無いアーマードライダー二人組に向き直り、

 

 

《Come on!!》《ハイィー!!》

 

 

戦闘の口火を「斬った」。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーやれやれ、とんだアマチュアね」

 

 

サウスステージを見下ろす高台。

 

其処に一人の男が立っていた。

 

筋骨隆々とした体格を煌びやかなラメで彩られたノースリーブの衣装に包み、頭部をスカーフで覆っている。

 

彼の視線は、先程迄激闘が繰り広げられていたステージ上に向いている。

 

現在ダンスを披露しているのは、チームバロンだ。

 

と言っても、彼等は今回インベスバトルでは無く、純粋なダンスバトルでチーム鎧武に勝利している。

 

それも、たった一回のダンスの権利を得る為に。

 

それが、彼等なりの「けじめ」らしい。

 

そんな彼等のダンスを、男は冷めた目で見下ろしていた。

 

 

「全然なってないわ。 さっきの「チャンバラごっこ」も今の「お遊戯」も、お客様にお見せする演目としては、落第点もいいところね。 ここはやはりーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーこのワテクシが、真のArt(芸術)という物を見せて差し上げないと、ね」

 

 

 

 

 

 

 




次回からは間章に入ります

誰が登場するかはもうお分かりですよね


それではまた
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