IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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今回から間章です

そんなに長くはならない予定です


第三十話 危険なる「切札」

 

 

 

 

「ーー城之内、今だ!!」

 

「了解!!」

 

《Come on!!》《ドングリ・スカッシュ!!》

 

「おりゃあーーーーー!!!」

 

 

小槌を構え、激しく横回転しながら突撃するグリドン。

 

その先には、インベスーーでは無く、ガラクタを組み上げて拵えた案山子のような人型が佇んでいる。

 

見ると、側面から突き出た筒から弾丸らしき物が発射されているが、高速回転するグリドンに容易く弾かれている。

 

そして。

 

 

「これでも、食らえ!!」

 

《ソイヤッ!!》《マツボックリ・スカッシュ!!》

 

 

背後からグリドンの頭を足場に跳躍した黒影の長槍が、人型の胸板を正確に貫いた。

 

 

「よし、やっちまえ城之内!!」

 

「任されて!!」

 

 

直後、槍を手放して離れた黒影と入れ替わる形で飛び込んだグリドンの小槌が人型に突き立ったままの槍の石突を激しく撃ち抜く。

 

その衝撃は凄まじく、人型はバラバラに吹き飛んだ。

 

 

「よっしゃあ!! コンビネーションアタック01〈グリ影3D〉、完成だぜ!!」

 

「いや、グリ影って……まあ、ネーミングはともかく、結構いい感じに仕上がったんじゃない?」

 

「おおよ! これなら鎧武やバロンにもでかいツラはさせねえぜ!」

 

 

子供のようにはしゃぐ黒影。

 

まあ無理も無い。

 

一週間前、デビュー戦としてチーム鎧武にバトルを仕掛けた彼等は、乱入してきたバロンとチーム鎧武のまさかの二人目・龍玄(このネーミングは後にDJサガラが付けた)相手に、終始圧倒されたまま惨敗してしまった。

 

何とか一対一に持ち込んだものの、バロン対黒影は純粋なパワー負けで敗北。

 

龍玄対グリドンに至っては龍玄のメイン武器が銃だった為グリドンの小槌では対処出来ずにフルボッコにされる結果に。

 

惨憺たる結果に憤る黒影こと初瀬に対し、グリドンこと城之内が提案したのは、

 

 

「初瀬ちゃん……俺達に足りないのは、やっぱ経験なんじゃないかな?」

 

「なるほど……つまり、特訓って訳だな!!」

 

 

という内容だった。

 

そんな事もあって、現在彼等は橋のたもとに急遽拵えた特訓場にて、初瀬が器用に組み上げた特訓用ターゲット人形相手に特訓に勤しんでいた。

 

 

「よし! 次のコンビネーションアタック、行くぜ!」

 

「いや、少しは休憩しようよ……ん?」

 

 

ふとグリドンが顔を上げると、黒影の背後に見覚えのある人影が歩み寄ってくるのが見える。

 

 

「どうした城之内? ……あれ、あの子ーー」

 

「睦月……みたいだね」

 

 

その人物は、城之内の妹の城之内 睦月だった。

 

兄である城之内にとっては殊更仲が良いという程でも無いが、時々相談事に乗ったりバイト先での愚痴に付き合ったりする程度には親しい間柄ではある。

 

 

「また愚痴でも零しに来たんじゃねえか? ほら、例の滑舌の悪い先輩の事とかよ」

 

「うーん……けど、俺達が今日此処に居る事は言ってないし、そもそもこの場所の事は教えてないよ?」

 

 

二人でそんな事を話し合っていると、睦月はショルダーバッグから何かを取り出す。

 

それはーー

 

 

「あれはーー戦極ドライバー!?」

 

「ーーいや、バックルには違いないみたいだけど、俺達のとは違うタイプみたいだね」

 

 

グリドンの言う通り、睦月のバックルは楕円の半球が二つ重なったようなデザインが特徴の緑色のバックルだった。

 

そのバックルに薄笑いを浮かべつつ一枚のカードを装填する睦月。

 

すると、バックルの側面から無数のカードが吐き出され、睦月の腰に巻き付くと共にバックルを繋ぐベルトへと変化する。

 

 

「ーー変身」

 

 

右手で顔を覆うかの如きポーズを取り、キーワードを口にすると同時にバックルを操作する。

 

すると、バックルの表面がカバーの如く左右に開かれ、内部に施されたトランプのクラブを模した紋章から紫の光が放たれる。

 

そして、光で形成された、蜘蛛のデザインが浮かぶエネルギーの壁が睦月へと迫りーー通り抜けると同時に、その姿は異形へと変化していた。

 

 

「お、おい!! ありゃ一体どういう事だよ!?」

 

「お、俺が聞きたいよ!! 大体、あんなバックルもカードも聞いた事無いよ!!」

 

 

妹の突然の変貌に、目に見えて狼狽えるグリドン。

 

黒影もグリドンが解らない事を理解出来る訳も無く、戸惑うしか無い。

 

そんな二人に対し、睦月は普段の可愛らしい声とは似ても似つかない、まるで某格闘中継のナレーターを思わせる低い声でこう告げる。

 

 

「仮面ライダーはーーこの〈レンゲル〉一人居ればいい。 貴様等は此処で消えるがいい!」

 

 

その言葉と共に、睦月ーーいや、レンゲルは二人に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「開発中のバックルが盗まれた?」

 

「うん……後、所長とバックルの開発スタッフ、それに睦月も行方不明なの。 今、要さんが行方を追ってるけど、これと言って有力な手掛かりは……」

 

 

一方、BOARD第一研究所。

 

オペレーターの〈広瀬 栞(ひろせ しおり)〉から連絡を受けた一真が広瀬から説明された内容がそれだった。

 

これだけ聞くと新型バックルの開発に携わった人間が共謀してバックルを持ち去ったと推測できない事も無いがーー

 

 

「けど、あのバックルって確か対応するカテゴリーAがまだ見つかってない筈ですよね?」

 

「うん……だから、仮に完成していたとしても使いようが無い筈なんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーそのカテゴリーAを誘拐犯側が有しているとしたら、どうかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その声に一真達が振り向くと、部屋の入り口にチベットの民族衣装に身を包んだ温和そうな青年が佇んでいた。

 

 

「「嶋さん!?」」

 

「やあ、二人とも。 元気そうで何よりだ」

 

 

この青年の名は〈嶋 昇(しま のぼる)〉。

 

BOARDチベット支部の客員研究員にして、元BOARD理事長・〈天王寺 博史(てんのうじ ひろし)〉がとある事件で理事長職を辞する際、無名ながら後任の一人として直々に推薦された逸話を持つ人物でもある。

 

尤も、彼自身は然程地位には興味は無いらしく、早々に辞退しそのまま研究が停滞していたチベット支部研究所へと自ら異動してしまったのだが。

 

 

「い、いつ日本に帰ってきてたんですか!?」

 

「つい先程だよ。 風に不穏な物を感じてね」

 

 

そう言って人差し指をピンと立てると、指先に小さな旋風が巻き起こる。

 

 

「風……ですか?」

 

「うん。 どうやらこの事件、一筋縄では行かなそうだ」

 

「嶋さんがそう言うって事は……もしかして、上級アンデッドが動いてるって事ですか?」

 

「そう考えて間違いないだろうね。 それも、かなり悪質な奴が絡んでいる。 例えばーー」

 

 

と、そこまで話した時、突如オペレーター室の警報が鳴り響く。

 

 

「この反応ーーカテゴリーAのアンデッド!! 場所はーー沢芽市○○地区の河川敷

!! 反応からして現地のアーマードライダーが応戦してるけど、かなり苦戦してるみたい!! 剣号君、急いで!!」

 

「はい! すいません嶋さん、話はまた後で!」

 

 

言うなりオペレーター室を飛び出す一真。

 

 

「彼はいつも一生懸命だね。 とても好感が持てるよ」

 

「ええ……そういえば嶋さん、前々から聞きたかったんですけど……」

 

「何だい?」

 

「嶋さんは、今回の〈バトルファイト〉には興味は無いんですか? 仮にも〈カテゴリーK〉なんですし」

 

 

その問いに、嶋は事も無げに答える。

 

 

「それはまあ、僕の種族の行く末位は興味があるけど、広瀬さんが聞きたいような事は考えていないさ。 僕は、今の立ち位置が一番気に入っている。 ハートのカテゴリー2が望んだ、この世界がね」

 

「今の世界……人間を頂点とし、全ての種族が共存する、この世界ですよね?」

 

「うん」

 

 

そう答えると、嶋はオペレーター室を後にする。

 

 

「じゃあ、僕も烏丸所長を探してくるよ。 犯人があの上級アンデッドなら、彼の行動はある程度予測出来る」

 

 

そう言って部屋を出て行く嶋を、栞は複雑な表情で見送っていた。

 

 

「全てが共存する世界……もし、「人類の祖」がそれを望んだのなら、彼にとって今の世界はどう映るのかしらね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は戻って、沢芽市河川敷。

 

黒影達アーマードライダーは、たった一人の仮面ライダー相手に満身創痍にまで追い込まれていた。

 

 

「畜生……っ! グリ影3Dが全然通用しねえ!」

 

「そりゃまあ、特訓始めたばっかで連携も取れてないからね……」

 

 

軽口を叩くグリドンのドングリアームズには所々にヒビが入り、コンクリート壁にもたれ掛かって辛うじて立っている状態。

 

黒影に至っては、左肩アーマーが完全に喪われ、専用アームズウェポンの長槍も半ばから折れてしまっている。

 

 

「この程度でライダーを名乗るか……雑魚が」

 

《REMOTE》

 

 

その言葉と共に、自らの専用武器らしき錫杖のカードリーダーに一枚のカードをスライドさせるレンゲル。

 

直後に放り投げた別のカード目掛け一条の光線が放たれ、カードを包み込む。

 

すると、光の中でカードが変化していきーー(いなご)を思わせる一体の怪物へと姿を変えた。

 

 

「私が相手をする迄も無い。 こいつと遊んでいろ」

 

 

その言葉を最後に、レンゲルは人間離れした跳躍で橋の上へと姿を消した。

 

 

「ふざけやがって……待ちやがれ!!」

 

 

ボロボロになった身体を引きずり、レンゲルを追う黒影。

 

だが、その眼前に立ちはだかる蝗の怪人。

 

 

「野郎、邪魔すんな!!」

 

 

激昂した黒影が振り下ろした影松を、蝗怪人は軽い身のこなしで次々と躱していく。

 

 

「これならーーどうだ!!」

 

《ソイヤッ!!》《マツボックリ・スカッシュ!!》

 

 

ブレードを倒し、マツボックリ状のエネルギーを纏った切っ先を放つ黒影。

 

その必殺の一撃は、

 

 

「ギギィ……!」

 

 

蝗怪人が突如霧散した事により空を切る。

 

 

「何ぃ!? ぐぁあああああ!!?」

 

 

霧散した霧に包まれ、為す術も無くズタズタにされる黒影。

 

その正体は、無数の蝗の集まり。

 

 

「初瀬ちゃん、伏せて!!」

 

《Come on!!》《ドングリ・スカッシュ!!》

 

「これならどうよ!!」

 

 

グリドンが死力を振り絞り放ったドングリ状のエネルギーを纏った高速回転スイングは、半ば崩れ落ちるように倒れ込んだ黒影の頭上を掠め、雲蚊の如く群がる蝗の大群を吹き飛ばした。

 

 

「ギギィ!!」

 

 

実体化しその場に倒れ込む蝗怪人。

 

だが、その姿からは大してダメージを受けたようには見えない。

 

対して、黒影は先程のダメージで耐久力の限界を超えたのか変身が解除され、グリドンも最早立つ事すら覚束ない。

 

 

「くそっ……城之内、お前口だけは上手いだろ! チーム鎧武辺りから、他のアーマードライダーを連れて来れないのかよ!?」

 

「そうやって、変な口実作って俺だけでも逃がすつもり? やめなよ初瀬ちゃん、そんなキャラ似合わないよ?」

 

「うるせえ! てめえが仲間の為に身体張る方がよっぽど似合わねえよ!」

 

「まあ、自覚はしてるよ。 けどさ、初瀬ちゃんみたいな便利な咬ませ犬を此処で手放すってのも、ちょーっと勿体無いかなーってね」

 

 

そう言って、立ち上がりつつある蝗怪人と初瀬の間に立ちはだかるグリドン。

 

 

「……ったく、相変わらず捻くれ者だなてめえは!」

 

「だから、自覚はしてるってば」

 

 

そして、蝗怪人がグリドン目掛け飛び掛かったーー

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ!!」

 

「ギギャア!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー瞬間、グリドンの背後から放たれた何者かの飛び蹴りによって、蝗怪人は再び派手に吹き飛ばされた。

 

 

「フン……なってないわね」

 

 

そう言って、着地した態勢から立ち上がったその人物は、筋骨隆々とした体格にラメ入りの煌びやかな衣装を身に纏い、ごつい顔立ちに怪しげな化粧を施したーー蝗怪人とは別の意味で「怪人」と呼ぶべき男だった。

 

 

「な、何だよあんた……」

 

「ちょっと待って初瀬ちゃん、この人何処かで見たような……」

 

 

困惑する二人を余所に、男は蝗怪人に向き直ると、ジャケットの内ポケットから「戦極ドライバー」を取り出す。

 

 

「戦極ドライバー!? 何であんたが持ってんだ!?」

 

「そういえば……思い出した! 確か、シドから戦極ドライバーを買ったもう一つのチームが、どっかの店で騒いで摘み出されたって! その店の名前はーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーそう、ワテクシは〈シャルモン洋菓子店〉店長にしてチーフパティシエ、〈凰蓮(おうれん)・ピエール・アルフォンゾ〉。 アータ達の下らないお遊びに旋風を巻き起こす者。 ーー変・身」

 

《ドリアーン!!》《Lock-on!!》

 

 

〈L.S.-12〉と刻印された、棘の生えた球形のデザインのロックシードをセットすると、ギターを基調とした激しい待機音が鳴り響く。

 

そして。

 

 

《〜〜!!》

 

《ドリアンアームズ!! Mr.dangerooooooous!!!》

 

 

ロックシードを「斬る」と共に、その姿は全身に鋭いスパイクを装備した、鶏冠が特徴の「剣闘士」へと変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、始めますわよ。 破壊と暴力のPageant(華麗なる演劇)を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




そういえば、このパティシエって口癖はフランス語なのに、会話の合間に挟む単語は英語なんですね

まあ、学の無い作者にとってはその方がありがたいですが


それではまた
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