IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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学の無い自分が恨めしい……


第三十一話 ミスター・デンジャラス

 

 

 

 

翌日。

 

日曜日という事で倭達はドルーパーズに来ていた。

 

 

「シャルモン洋菓子店?」

 

「ああ、最近この沢芽市に出来た話題の店でな、何でもオーナーのフランス帰りの凄腕パティシエが陣頭指揮を取ってるらしい。 ケーキの味は勿論、店の調度から従業員に至るまでとにかく「本物」である事に拘ってて、連日超満員。 お陰で、うちみたいな場末のフルーツパーラーは商売上がったりって訳だよこれが」

 

 

そう言って、カウンターに突っ伏す阪東店長。

 

 

「あー……だから今日お客が少ないのか」

 

「でも、阪東さんも腕は確かなのに、そんなにお客さんが流れるくらい凄い人なんですか、そのパティシエさん?」

 

 

深琴の問いに、実は沢芽市のスイーツに詳しい水依が答える。

 

 

「凄いなんてものじゃないよ、深琴ちゃん! 何でも、クープ・デュ・モンドってパティシエの国際大会での優勝経験がある人で、本場の味を極める為にフランス国籍まで取得して、日本人では彼を除いて四人しかいないルレ・デセールの会員にまでなった、正に超人なんだから! とにかく妥協を許さない性格で、従業員に関しても自分と相性が合わない人は絶対に採用しないんだって!」

 

「何だそりゃ? 従業員との相性なんて、スイーツの味に関係あるのか?」

 

「まあ、私的には気分を害するような店員のいる店にはあまり行きたくは無いですね」

 

「いや、お前が言うなよ〈イヨ〉……」

 

 

ネイルアートの手入れをしながらこちらを見ようともせず倭に返事を返す店員に対し、店長は無駄と解りつつもジト目を投げかける。

 

 

「あはは……そ、それにしても水依の話を聞く限り、とんでもない人らしいですね、その……オーレンジャーさん、でしたっけ?」

 

「それもう人間の名前じゃねえだろ……えーと、確かーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー凰蓮・ピエール・アルフォンゾ、か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その声に倭が振り向くと、入口に立っていたのは一真だった。

 

 

「おお、一真。 久しぶりだな」

 

「へ? 一真、お前ここの常連だったのか?」

 

「ああ、開店当時から良く世話になっててな。 それより、凰蓮について話してたみたいだな」

 

「何か知ってるの?」

 

「昨日ちょっと、な」

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡って、昨日の午後。

 

アンデッド出現の報を受け現場へと急行した一真が目にしたもの。

 

それは、

 

 

「ホラホラ、その程度かしらLocust()さん?」

 

「ギッ……ギィィ……」

 

 

見慣れない仮面ライダーーー沢芽市ではアーマードライダーと言ったかーーによって、アンデッドが一方的に叩き伏せられている光景だった。

 

 

「ギギィィ……!!」

 

 

一際高く鳴き声を上げると、蝗ーーローカストアンデッドは自らの身体を無数の蝗へと分裂させ、謎のライダーの一撃を躱す。

 

 

「あら、やるじゃない。 でもーー」

 

 

謎のライダーの言葉を遮るかの如く殺到する蝗達。

 

だが、

 

 

「ーー逃げなかったのはマイナスね」

 

 

その言葉と共に、両手に握っていた鋸刃状の双剣の柄同士を連結させ、蝗の群れ目掛け投擲する。

 

 

「ギギギィィィィィィィイ!!?」

 

 

換気扇のファンの如く高速回転する双剣に吸い込まれ、次々と叩き落とされていく蝗。

 

それらが地面に寄り集まると、全身ボロボロのローカストアンデッドへと姿を変える。

 

 

「さて、下拵えは十分。 そろそろ仕上げと行こうかしら」

 

《〜〜!!》

 

《ドリアン・スカッシュ!!》

 

 

再び分離させた双剣の柄で、器用にブレードを押し上げる。

 

すると、双剣の刀身にエネルギーが集中し、二倍近い長さの刀身を作り上げる。

 

 

un(一つ)!!」

 

「ギッ!?」

 

 

右の切り上げが胴を捉え、

 

 

deux(二つ)!!」

 

「ギィッ!?」

 

 

左の切り上げが反対側より挟み込むように決まり、

 

 

trois(ラスト)!!」

 

 

束ねるように振り下ろした一撃が、ローカストアンデッドの頭部から股の間までを引き裂いた。

 

 

「ギギャアアアアアァァァァ!!?」

 

 

断末魔の悲鳴と共に倒れ伏すローカストアンデッド。

 

 

C'est bon(オッケー)〜♪」

 

 

動かなくなったローカストアンデッドに背を向け、勝利を宣言するライダー。

 

その姿を、グリドン達は呆然と眺めていた。

 

 

「つ、強い……」

 

「何なんだ、あのおっさんは……」

 

 

と、そんな二人の元に変身を解除した凰蓮が歩み寄ってくる。

 

 

「な、何だよ……?」

 

 

傲然と見下ろす凰蓮に対し、すっかり腰が引けている初瀬。

 

庇う位置に居るグリドンも同じような面持ちだ。

 

 

「ーーまあ、ギリギリ合格点といった所かしらね」

 

「「ーーは?」」

 

 

突然、そのような言葉を掛けられ呆然とする二人に対し、凰蓮は構う事なく告げる。

 

 

「アータ達、有難く思いなさい! 今この時から、このワテクシ、凰蓮・ピエール・アルフォンゾがアータ達アマチュアコンビを、Professional(一流)へと鍛え上げてあげるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ーーはい??」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーで、二人はそのまま連れてかれて、放ったらかしになってたアンデッドはこの通りって訳だ」

 

 

そう言って一真がポケットから取り出したのは、蝗のイラストが表面を蠢くカードーー♠︎4・ローカストアンデッドのカードだった。

 

 

「ふーん……まあ、確かに俺も一度イノシシのアンデッドに襲われてるから、あいつらが半端無くヤバいってのは解ってるつもりだけどよ……けど、その凰蓮っておっさん、所詮はパティシエなんだろ? 何でそんなが奴アーマードライダーになってんだよ?」

 

「ビートライダーズのお前達が知らないのに、俺が知る訳無いだろ。 連れてかれた二人なら、もうちょっと詳しく知ってるかも知れないけどな。 正直、あの戦いぶりを目の当たりにした俺からして見れば、あのマッチョハゲのおっさんがパティシエだって方が信じられないんだけどさ」

 

 

確かに、格好だけ見れば単なるガタイのいいオカマにしか見えない。

 

パティシエというより、軍人と言われた方がまだ説得力があるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー知りたいか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その声に、再び入り口に目を向けると、

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー!? ……白い、アーマードライダー……!!」

 

 

其処には、つい半月前に倭達の前に姿を現した白いアーマードライダーが、入り口に背を預けるように立っていた。

 

 

「ーー教えてやってもいい。 但し、条件がある」

 

「……何だよ?」

 

「奴とは決して戦うな。お前達ストリートダンサーには荷が重い」

 

 

その言葉と共に、手に持っていた書類の束を倭に投げ渡す。

 

 

「これ……凰蓮とかいうおっさんのプロフか?」

 

「そうだ。 奴の本名は〈凰蓮 厳乃介(おうれん げんのすけ)〉。 元フランス外人部隊所属の傭兵だ」

 

「「「傭兵!?」」」

 

 

白いアーマードライダーの言葉に、騒然とする一同。

 

 

「奴は、フランス国籍を得る為に外人部隊に入る道を選んだ。 フランスの法律では、外人部隊に5年程在籍すれば国籍を得られるからな。 そして、国籍を得た後フランス国民としてパティシエ修行に入った」

 

「で、でも、このプロフィールだと10年は所属してるってーー」

 

 

水依のその問いに、白いアーマードライダーは事もなげに返す。

 

 

「奴には、パティシエとしての才能と共に、戦士としての才能も眠っていたという訳だ。 元々その道を究めないと気が済まない凰蓮は、外人部隊で見る間に頭角を顕し、その腕前を買われ紛争地域を転戦する日々を送っていたらしい。 パティシエ修行に入った後も、自らの後進が育つ迄の間は軍を離れる事は無かったそうだ」

 

「菓子職人の修行と軍人としての活動を両立って……もう人間業じゃないなそれ」

 

「け、けどそんな化物みたいなおっさんが何でアーマードライダーになったんだよ!? シドの奴「俺が見込んだビートライダーズにしか売らねえ」って言ってたぞ!?」

 

「それについても調べは付いている。 曽野村は知っているな?」

 

「ああ。 チームレッドホットのリーダーだろ? バロンやレイドワイルド程じゃねえけど、血の気が多いって評判のチームだって聞いてる」

 

「うむ。 そいつ等が二日程前ーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「見ろよ野郎共!! これが噂の戦極ドライバーだぜ!! これさえあれば俺達も、アーマードライダーになれるって訳だ!!」

 

「マジかよ、すげぇぇぇぇぇえ!!」

 

 

雰囲気の良い店内に、場を弁えない下品な大声が響き渡る。

 

音源は、店の中心の席を占領している赤いスタジャンとキャップで服装が統一された男達。

 

 

「へっへ、これでもうバロンや鎧武のようなガキ共にデカイ顔はさせねえぜ!! 俺達レッドホットの、天下だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「「「イェーーーーーーーイ!!!」」」

 

「「「「レーッドホット!! レーッドホット!! レーッドホット!! レーッドホット!!」」

 

 

場末の居酒屋と勘違いしているかの如きテンションで、周囲の客の迷惑を考えずに騒ぎまくるチームレッドホットの面々。

 

客達も、悪名高きチームレッドホットに注意も出来ず、怯えて顔を背けるしか出来ずにいる。

 

その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

pardon(ちょっと貴方達)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーで、曽野村達を追い出しに掛かったおっさん一人に五人掛かりで手も足も出ずにボッコボコにされて、飲食代と迷惑料代わりに戦極ドライバーを巻き上げられた、と……馬鹿だろそいつら」

 

「クズ共の事はこの際どうでもいい。 問題は、殺人経験のある戦闘のプロの手に戦極ドライバーが渡ったという事実だ。 しかも、凰蓮は全てに於いて「本物」に拘る余り、自分が「本物」と認められない全てのものを排除しに掛かりかねない過激な思考の持ち主だ。 下手をすれば、この沢芽市に存在する全てのアーマードライダー、いや、ビートライダーズを名乗る全てのストリートダンサー達が危険だ」

 

「何だよそれ!? そのおっさんパティシエなんだろ!? 何で俺達ビートライダーズが危険なんだよ!!」

 

 

その問いに、白いアーマードライダーは冷たく言い放つ。

 

 

「お前達の現状を知らないとは言わせん。 大半はチームバロンやチームレイドワイルドのように、インベスバトルでの点数の奪い合いに終始するだけ。 お前達チーム鎧武や蒼天のように、純粋にダンスを楽しむようなチームは極一部に過ぎん。 凰蓮にとって見れば、お前達ビートライダーズはデ○モン擬きの怪物で対戦遊びに興じるだけのアマチュア集団にしか見えないのだろう」

 

 

白いアーマードライダーの言葉に、返す言葉も無い倭。

 

と、倭を押し退けるように深琴が割って入る。

 

 

「さっきから聞いてれば、勝手な事言ってんじゃないわよ!! 大体、ヤマトに怪我をさせたのだってあんたじゃない!!」

 

「そうだよ!! 倭ちゃんから聞いたよ、裂け目の向こうの森でいきなり襲い掛かってきたって!! 倭ちゃん、あれから一週間も目を覚まさなかったんだから!!」

 

 

水依も加え、二人掛かりで詰め寄る。

 

と、其処に割って入る倭。

 

 

「二人共止めろって」

 

「「でも!!」」

 

「確かに、俺はこいつに負けて大怪我を負った。 けど、トドメも刺されなかった。 つまり、少なくともあの時こいつに俺を殺す必要は無かったって事だろ。 もし本当に口封じを行う気だったら、俺を探しに来た巧と簪まで襲われてた筈だからな」

 

「そ、それはそうかも知れないけど……」

 

「それに、あの時はこいつが入り口まで誘導してくれなかったら正直助かったかどうか怪しかったろ」

 

「う、うん……」

 

「だから、とりあえずは引いとけ。 大体、俺と水依の二人掛かりでも勝てるかどうかわからないだろうに」

 

 

それでもまだ納得のいかなそうな二人だが、一先ず席に着く。

 

 

「で、あんたは俺達にどうしろってんだ?」

 

 

その問いに、白いアーマードライダーははっきりと言い放つ。

 

 

「何もするな。 凰蓮がお前達に仕掛けるようならば、私が対処する。 無駄な被害を出したくないのならば、ビートライダーズの活動は暫く自重する事だ」

 

「「「「なっ……!?」」」」

 

 

余りの物言いに、倭達三人に加え店長まで絶句する。

 

 

「凰蓮が戦極ドライバーを手に入れた事は、ある意味私の責任でもある。 納得は出来ないだろうが、恐らくは一ヶ月もあれば決着は付く。 気の毒だが、それ迄はーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー随分と勝手な物言いだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

背後からの声に振り向く白いアーマードライダー。

 

其処に立っていたのは、チームバロンリーダー・駆紋 戒斗だった。

 

 

「戒斗!」

 

「相変わらず厄介事に巻き込まれているようだな、チーム鎧武」

 

「あんたね……偉そうに言ってるけど、あんた達チームバロンもその厄介事を起こしてる一つなんだからね! 」

 

「落ち着けって深琴。 けど、いくらインベスゲームにうつつを抜かしてるからって、何でケーキ名人なんかに文句を言われる筋合いがあるってんだ? わけわかんねえ・・・」

 

 

独り言のように呟く倭に、店長がパフェを差し出しながら話し掛ける。

 

 

「まあ・・・君らが楽しそうにしてんのが、気に食わねえかもな」

 

「え?」

 

「その凰蓮さんってはさ、長い間修行を重ねて、いくつものコンテストに勝ち抜いて、それでようやく自分のケーキをお客さんに食べてもらえるようになったんだろ? でも最近じゃネットに動画を投稿すれば誰だってアーティストになれる」

 

「まあ、ボーカロイドなんてのも流行ってるし、そういう傾向はあるけど……」

 

「昔の芸人はな、師匠の許しがなければ舞台に立つことなんて許されなかった。 凰蓮さんが憤慨するのも、解らないでも無いかな」

 

「そんなの昔の話でしょう? 別にプロを目指してる訳じゃないし、いきなり頭ごなしに否定されてもいい迷惑ですよ」

 

 

深琴のその言葉を鼻で笑う戒斗。

 

 

「フン……無様だな」

 

「戒斗、そんな言い方はねえだろ。 お前はそいつが文句を付けて来たとして、そいつの言い分が正しいと思うのか?」

 

 

その問いに、事もなげに返す戒斗。

 

 

「正しいかどうかは問題じゃない。 強い者の言葉を否定できるのはより強い者だけだ。 奴の言い分が気に食わないなら叩きのめして黙らせればいい」

 

 

相変わらずの物言いに、思わず言い返す倭。

 

 

「暴力に暴力で返しても、ただ憎しみがのこるだけだろ! そんなの、何の解決にもならねえ!」

 

 

その言葉に、戒斗は鋭い睨みを返しつつ告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら、精々高みの見物でもしていろ。 奴はーー俺が黙らせてやる」

 

 

 

 

 

 

 




次回はマトモなバトル回……になるといいなあ


それではまた
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