今年もよろしく
◆
「あら、来てくれて嬉しいわ、
「売られた喧嘩は買わせて貰う。 それと、その巫山戯た呼び方は止めろ」
あれから二日後。
有言実行の機会は、すぐに訪れた。
チームバロンが拠点としている市内某所のカーディーラーに、戒斗宛にバナナのフルーツケーキが贈られてきたのだ。
同封されたカードには、こう書かれていた。
『貴方、随分と「力」に拘っているようね。 なら、このワテクシが本物の「力」というものを
これ程あからさまな挑発に戒斗が乗らない訳が無く、ザックやペコの静止を無視し、カードに記載されていたこの廃工場裏手迄足を運んだという訳だ。
因みに、ケーキはザックとペコに譲った(ザック曰く、実は戒斗はバナナ嫌いらしい)。
「一つだけ聞かせて貰う。 パティシエ風情が何故俺に勝負を挑んだ?」
「理解出来ないって顔ね。 簡単な事よ、ワテクシはアータ達みたいな中途半端な存在を許せない……それだけよ」
「フン……中途半端かどうか、その身で確かめてみるがいい。 ーー変身!」
《Banana!!》《Lock-on!!》
《Come on!!》
《バナナアームズ!! Knight of Spear!!》
言うや否や、戒斗は仮面ライダーバロンへと変身し凰蓮に踊り掛かる。
それに対し、
「あらあら、せっかちなBananeね。 そういうの、嫌いでは無くてよ。 ーー変、身」
《ドリアーン!!》《Lock-on!!》
《ーー!!》
《ドリアンアームズ!! Mr.dangerooooooous!!》
凰蓮もアーマードライダーに変身し迎え撃つ。
「喰らえ!!」
バロンの振るう専用アームズウェポン〈バナスピアー〉。
そのリーチと重量から、刺突だけでは無く打撃武器としても有効なランス型武器から繰り出される一撃を、凰蓮は最小限の動きだけで躱す。
「構えがなってないわね。
「黙れ!!」
余裕綽々で攻撃を捌く凰蓮に対し、激昂し更に苛烈な攻撃を仕掛けるバロン。
だが、怒りで単調となった太刀筋は容易く見切られ、擦りもしない。
それが更にバロンの怒りを煽り、判断力を奪っていく。
「さて、そろそろワテクシのTurnかしらーーハッ!!」
「ぐうっ!?」
そして、突きに合わせて振るわれた鋸刃がバロンの腹部を抉ると共に、凰蓮の反撃が始まる。
「ハッ! ハアッ!!」
「ぬ……ぐっ!!」
自らのアームズの狭い可動域を最大限に活かした猛攻の前に、バロンは反撃の糸口を掴めない。
「くっ……こうなれば!!」
バロンが解錠した低ランクロックシードから、複数の初級インベスが召喚される。
だが、その姿はインベスゲームで召喚される立体映像状では無く、ロックシードを手放し暴走させた時のように実体を有している。
「あら、それが噂のインベス? それにしては少し大きいみたいだけど……」
「フン……これはアーマードライダーの能力の一つ! どうやら、ロックシードにはインベスの危険性を取り除く為のリミッターが施されているらしいが、アーマードライダーならそのリミッターを解除出来る! いくら貴様でも、この数相手なら!」
左手一本で三体の初級インベスを完璧に制御しつつ凰蓮に襲い掛かるバロン。
だが。
「発想は悪くないけどーーハッ! ユニットの性能がーーハッ! 追い付いていないわ、ねっ!!」
四方から振るわれる初級インベスの爪も、バナスピアーの穂先すらも容易くいなし、切り払い、瞬く間に打ち払う。
「がっ!? ば、馬鹿な……!?」
初級インベスと共に倒れ伏すバロンに歩み寄る凰蓮。
「さて、下拵えは十分。 そろそろ仕上げと行こうかしら」
《ーー!!》
《ドリアン・スカッシュ!!》
凰蓮がバックルのブレードを一回倒すと共に、頭部の赤い鶏冠に強大なエネルギーが集中する。
そして。
「
上半身ごと振り下ろされたエネルギーブレイドの一撃が、バロンごと初級インベスを粉砕した。
「っがぁあああああああ!!!」
マトモに直撃を受けたバロンも吹き飛ばされ、背後のフェンスに突っ込む。
「ふふ……これで解ったかしら? アータ達のインベスバトルとやらは、所詮子供のお遊びに過ぎないって事を」
「ぐ……ま、まだだ……!」
変身が解除され、激突の際に切ったのか口元に血を滲ませながらも立ち上がる戒斗。
「あらあら、威勢だけは一人前ね。 そういうの、嫌いでは無くてよ」
そう言うと、勝利の際に手に入れたバナナロックシード(ロックシードにはインベスゲーム、及びその延長線上にあるアーマードライダー同士のバトルに敗北すると、使用していたロックシードが自動的に勝者の方へ飛んでいく機能がある)を戒斗に投げ渡す。
「アータ、中々見所があるようね。 再戦なら何時でも受けてあげるわ。
その言葉を最後に、その場を後にする凰蓮。
「……ま……まて……!」
遠ざかっていく凰蓮の背中。
それが、意識を手放す直前に戒斗が目にした光景だった。
◆
『ーー何と見ての通り、これまで無敗を誇ったアーマードライダーバロンが手も足も出ずに完敗だ! 正にブラボー! ブラボー!! そんな訳で、この突如現れたアーマードライダーを、〈アーマードライダーブラーボ〉と呼ぶ事にしたぜ!』
その日の夜。
自室で勉強の合間にテレビでビートライダーズホットラインを観ていた倭の目に飛び込んできたのは、一真の話に出てきた凰蓮ーーブラーボが圧倒的な実力でバロンを撃破する光景だった。
「戒斗が、あんなにあっさりと……マジかよ!?」
「相手がプロの傭兵とは言え、これは予想外ですわね……」
「うん……カイト、大丈夫かな……」
倭に勉強を教えていたセシリアと深琴も言葉が無い。
『さて、此処で鮮烈なデビューを果たしたブラーボから、オーディエンスの皆にメッセージを預かっているぜ!』
DJサガラのその言葉と共に、画面が高級そうなホテルの一室に切り替わる。
『沢芽市の皆様、お初にお目に掛かりますわ。 ワテクシ、只今ご紹介に預かりましたアーマードライダーブラーボこと、凰蓮・ピエール・アルフォンゾと申します。 甚だ僭越ではありますが、この場を借りて宣言させていただきます。ワテクシがアーマードライダーになった以上ーー』
『ビートライダーズは、全て解散していただきます!』
「な……!?」
余りに突然の宣言に、思わず絶句する倭。
『世間ではあのような紛い物が沢芽市の皆様の注目を集めているようですが、ワテクシに言わせればあんな物は子供のお遊戯にも劣る代物。 人様の前で披露する価値など、欠片もありませんわ!』
「ーーんだとてめえ!!」
「ちょっ、落ち着きなさいって!!」
「録画映像に怒鳴っても仕方ありませんわ!」
紛い物呼ばわりされ激怒する倭を余所に、画面に映るブラーボの演説は更に続いていく。
『芸術とは、選りすぐりの本物のみを残し伝えていく物!これ以上紛い物の跳梁跋扈を許すような事があれば、この沢芽市の文化は廃れていくばかり! 故に、ワテクシが紛い物達に「本物」という物を思い知らせて差し上げますわ! それでは皆様、Au revoir♪』
その言葉を最後に、映像は終了した。
「あの野郎、言いたい放題言いやがって!!」
「だから落ち着きなさいっての!!」
怒りが収まらない倭を必死に宥める深琴。
「それにしても、倭さん達の前に現れた白いアーマードライダーの言う通りになってしまいましたわね……」
「自らが「偽物」と判断した物は全て排除するってか? 上等だあの野郎、逆に排除してやるぜ!!」
「だから、落ち着きなさいって、のっ!!」
「ごべらっ!?」
業を煮やした深琴のジャーマンスープレックスによりベッドに沈められる倭。
「気持ちは解るけど、今ここで怒ったってしょうがないでしょ! 私だって腑が煮えくり返ってるんだから!」
「そうですわ。 わたくしもまだ入って数週間程度ですが、チーム鎧武は皆様純粋にダンスに打ち込んでいる事が肌で感じ取れる、素晴らしいチームだと思います。 それを、あのような狭量な輩に否定される等、我慢なりませんわ」
「深琴……セシリア……悪い、お陰で頭が冷えた。 そういや、あの白いアーマードライダーも言ってたな、「奴は私が対処する」って」
「うん……とりあえず、今はそれに期待するしか無いでしょうね」
「ですが、他のメンバーの皆様が心配ですわね……わたくし達も毎日は顔を出せませんし」
「だよなあ……」
◆
その頃、沢芽市某所。
「ーーつまり、奴の事は暫く泳がせておけ、という事か。 凌馬……本気で言っているのではあるまいな?」
「その通りさ。 考えても見なよ、実戦経験を積んだ特殊部隊の精鋭なんて人材、探したって見つかるもんじゃない。 貴重なデータを得る為にも、彼にはもっと活躍して貰った方が良いと思うんだけどね」
「だが、その犠牲となるのは力無きガキ共だ! 凌馬、お前はたかがデータの為に罪無き市民を危険に晒すというのか!」
『まあまあ、落ち着きなって主任。 俺からしてもその凰蓮とかいう輩の飛び入り参加は大歓迎だぜ。 うちの配信も、大層盛り上がってるしな』
その声に振り向くと、空間に投影されたホロスクリーンにとある人物が映し出されていた。
「貴様ば黙っていろ! 大体、貴様の茶番はあくまで情報統制が目的だ! 履き違えるんじゃない!」
『おお、怖い怖い。 けどよ、どうせ最後には大幅に間引かなきゃならねえんだろ? だったら、ここで何人か危険に晒した所で今更だと思うんだがね』
その言葉に、反論出来ない青年。
「まあ、君が彼を排除に掛かるというなら止めはしないさ。 君と彼の戦闘なら、それこそ素晴らしいデータが取れるだろうしね。 まあ、今回の事態はイレギュラーではあるが、プロジェクト全体からすれば許容の範囲内だ。 出来ればもう少しだけ様子見してて貰えれば僕としては有難いんだがねーー貴虎」
その言葉に、貴虎と呼ばれた青年は苦々しげな表情を浮かべ、
「ーー好きにしろ」
との言葉を残しその場を後にした。
◆
とある地下施設。
部屋を退出した貴虎が訪れたその場所は、異質な空間となっていた。
巨大なホールの奥に、所々にケーブルを繋がれた不気味な巨木が鎮座し、その幹の半ばからあの空間の裂け目に似た巨大なジッパーが開いている。
その周囲には、巨木を計測する為の機材が所狭しと設置され、研究員らしき人間達が忙しなく動き回っている。
それらを見下ろす貴虎の顔には、無表情の中に何処か諦めに近い色が浮かんでいた。
「〈プロジェクト・アーク〉……解っているさ、凌馬……やらねばならない、という事は……」
中々話が進まない……
次回は新アームズのお披露目です
それではまた