IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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予定より長くなってしまった……


第三十三話 ダンス・プライド・襲撃者

 

 

 

 

数日後。

 

 

「〈チーム魍魎〉が凰蓮に潰された!?」

 

「ああ。 奴等は殆どインベスバトル専門チームだったからな、真っ先に狙われたらしい。 チームリーダーも他のメンバーの呼び出したインベスがやられてる間に逃げ出して戻ってないらしいし、もう魍魎は終わりだろうな」

 

「そうか……野郎、遂に動き出したか」

 

 

ドルーパーズを訪れた倭を待っていたチーム蒼天リーダーから齎された情報。

 

それは、凰蓮がビートライダーズ潰しに動き出したというものだった。

 

 

「レッドホットの奴等も襲撃を恐れて拠点に来なくなったらしいし、〈チームBOOST〉や〈チームSpingere〉もメンバーで金を出し合ってA級ロックシードを購入して襲撃に備えてるらしい。 全く、いい迷惑だ」

 

「確かにな……あの野郎、何様のつもりだ!」

 

 

と、そこにセシリアと深琴が駆け込んでくる。

 

 

「ヤマト、大変よ! とにかく今すぐテレビを見て!」

 

「テレビ? ああ、そういえばもうビートライダーズホットラインの始まる時間だっけか」

 

『ーー日もストリートから驚きのホットなニュースが届いてるぜ!話題沸騰中の、あのニューカマー!名づけて、ブラーボ!』

 

 

深琴の言葉に、思い出したように店長が点けたテレビに映っていた画像。

 

それは、ブラーボに変身した凰蓮がアピールポーズを取っている姿だった。

 

 

「あっ、あの野郎!!」

 

『ストリートのダンスとは縁もゆかりもなかったビジターだが、その実力は間違いなく本物だ!衝撃のデビュー戦で黒影とグリドンを苦戦させた謎のインベスに圧勝して以来、既に4つのチームを連続制覇!Oh・・・。奪われたロックシードは、ブラーボの手に鈴なりだぜ!』

 

「あのスタジャンは……BOOSTまでやられたのか!」

 

「くそっ……このままじゃ本当にビートライダーズ全解散にされちまう!」

 

「戦極ドライバーを持っていないチームでは、アーマードライダーには太刀打ち出来ませんもの。 かと言って、バロンが敗れた相手に倭さんが勝てるとは……」

 

「う……」

 

「かと言って、水依を戦わせる訳にもね……あの子、あんな調子だし」

 

「どうかしたのか?」

 

「尊敬してる人が自分と同じアーマードライダーだからって、トリップ真っ最中よ。「凰蓮様、あんな凄いケーキを作れるのに、戦っても強いんだ……ス・テ・キ……」ってね」

 

「おいおい、フィルタ掛かりまくりだろ、あの甘味中毒……」

 

 

水依の予想以上のスイーツマニアっぷりに、倭も言葉も無い。

 

 

「はは……それより、今度の日曜の合同ライブの件なんだが」

 

「ああ、そういやこの前は俺が入院してて中止になったんだっけか」

 

「蒼天の皆様には申し訳ありませんが、今回も中止にした方が宜しいのでは……あの凰蓮が目を光らせている状況で目立つような行為をすれば、それこそ目を付けられてもおかしくありませんわ」

 

 

セシリアのその言葉に、倭の表情が輪を掛けて不機嫌になる。

 

 

「確かにそうだけどよ……何て言うか、癪じゃねえか。 ビートライダーズは俺達のステージなのに、そこで踊るのに横から乱入してきた奴の顔色を伺わなきゃならねえってのも、さ」

 

「確かに、な。俺達もチーム鎧武も、ただ単にストリートでのダンスを楽しみたいってだけの集まりだ。 パティシエだか何だか知らないが、ダンサーでも無い奴に横から口出しされる筋合いは無いな」

 

「その通りよ! ヤマト、いざという時は頼んだわよ!」

 

「ああ! あのオカマ野郎、もし俺達のステージを邪魔しに来たら返り討ちにしてやるぜ!」

 

 

心配気なセシリアを余所に意気上がる三人。

 

一人取り残されたセシリアの目の前に、店長の特製パフェが置かれる。

 

 

「まあ、元々ビートライダーズってのは沢芽市の閉鎖的な雰囲気に馴染めなかった奴等がストリートダンスに捌け口を求めて出来た集まりだしな。 大丈夫、凰蓮さんもプロを名乗ってるんだ。 彼が傭兵としてもプロなら、非武装の民間人にまで武力を向けるような真似はしないさ」

 

「そうだと宜しいのですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、日曜日。

 

セシリアの懸念は現実の物となる。

 

それは、サウスステージにてチーム鎧武と蒼天がそれぞれ演目を終え、いざ合同ダンスに入ろうとした時だった。

 

 

「なあ、これ見ろよ」

 

「あ、これ昨日のホットラインじゃん」

 

 

観客の何人かは、ダンスそっちのけでタブレット端末の録画していたビートライダーズホットラインを観ている。

 

其処には、昨日の放送で凰蓮が番組に再度送りつけてきた映像が流れていた。

 

 

『ワテクシがご披露した、本物のエンターテイメント、本物のパッションは如何だったかしら?』

 

 

どうやら先程までインベスバトルの模様を放送していたらしく、チームSpingereのホームであるイーストステージにて、戦利品のロックシードを掲げ立つブラーボ。

 

背後には、無謀にも生身で立ち向かったらしいチームSpingereのメンバー数人が倒れている。

 

流石に鋸刃剣やスパイクは使わなかったようだが、肉弾戦でも数t単位の破壊力を叩き出すアーマードライダーの性能は例え手加減していても生身の人間には危険な事に違いは無く、マトモに起き上がる事も出来ないようだ。

 

 

『見比べれば、本物と偽物の差は歴然。ビートライダーズとか言う連中も、皆さんが見向きもしなくなれば、自然と消えていなくなりますわ。これからは、厳正な目で本物を見極めて、評価して頂けるかしら?』

 

 

自らの生み出した惨状を背に演説を続けるブラーボ。

 

その余裕に溢れた姿に、観客席からは、

 

 

「すっげえ、もう五つもチームを潰したのかよ!」

 

「なあ、バロンもブラーボに負けたんだって?」

 

「レイドワイルドとインヴィットのリーダーもブラーボに負けて、シャルモンで見習いパティシエの修行やらされてるって噂だぜ?」

 

「ビートライダーズじゃ、誰もあいつに勝てないのかな?」

 

「次、狙われるの鎧武じゃね? 案外ここに襲ってきたりして!」

 

「やべ、超楽しみ!」

 

 

等の声がダンス中の倭達の耳にまで届いてくる。

 

 

「ったく、俺達のダンスには興味無しかよ……」

 

「確かに、ちょっとカチンと来るわね」

 

 

流石に不満気なラットとチャッキー。

 

 

「……気にしない方が良い。 ……私達も……観て貰う為に、踊ってる訳じゃない……」

 

「そうそう、お客さんが観てくれへんのなら、うちらも勝手に踊っといたらええんや」

 

 

コンビネーションステップを踏みつつ、ラット達を宥める二人。

 

蒼天に所属する〈月白 桜花(つきしろ おうか)〉と〈月白 菊花(つきしろ きっか)〉の姉妹だ。

 

倭とは従姉妹同士の関係らしく、現在は深琴の家に居候しているのだが、この二人も倭に負けず劣らずのトラブルメーカーである。

 

 

「よし、そろそろメインのステップに入るか」

 

「OK、派手に行こうぜ!」

 

 

蒼天リーダーから模造刀を受け取ると、蒼天のダンスジャンルである剣舞に合わせるべく構えを取る倭。

 

だが、その時。

 

 

「ーーえ?」

 

「おい、音楽止まっちまったそ!?」

 

 

ステージの音響設備から流れていたBGMが急に停止した。

 

設備の故障でも無い限り、その原因は一つしか無い。

 

即ちーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういうもので公共のステージを使わせるのなら、もっと厳正なる審査の上で発行するべきよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー何者かがライダーズパスを設備から引き抜く行為。

 

それは、ビートライダーズにとっては宣戦布告の意味も持っていた。

 

 

「おい、あれ!」

 

「もしかして、凰蓮って奴じゃね?」

 

「そうだよ、間違いねえ!」

 

 

途端に色めき立つ観客達。

 

その人混みを押し退け、ステージに歩み寄る凰蓮。

 

 

「見て、深琴ちゃん!! 生凰蓮様よ生凰蓮様!! ああ……ス・テ・キ……」

 

「スイ……あんたね……」

 

「悪い深琴、水依抑えといてくれ……」

 

 

緊迫した雰囲気を乱され肩を落とす倭。

 

だが、凰蓮がステージの前に立つと、再び緊迫した空気が漂い始める。

 

 

「フン……見るからに育ちが悪そうな顔立ちね。 それに、そんなファッションセンスの欠片も感じられないコスチュームでよく観客の皆様の前に立てたものね。 少しでもプライドという物があるのなら、今すぐこのステージを去って、一から勉強し直す事ね」

 

 

余りにも一方的な物言い。

 

それに反応したのは、未だトリップ状態の水依を武に預けた深琴だった。

 

 

「黙って聞いてれば、随分な言い方じゃない! ファッションセンスが無い!? そんなの、単にあんたが不勉強なのを棚に上げて、自分が知らないファッションを勝手にダサいと決め付けてるだけじゃない! 大体、私達のダンスの良し悪しを、何で関係無いパティシエのあんたに決められなきゃいけないのよ!!」

 

 

怒り心頭の深琴の怒号に、凰蓮もそれ以上の迫力で反論する。

 

 

「誰も決めようとしないからよ!芸術は、選りすぐりの本物だけを残していかなきゃ!あなた達のような偽物を誰もが放っておくから!文化が廃れてしまうのよ!」

 

「何が文化や! 何がゲージュツや!うちらはな、誰かに認めて貰う為に踊っとんのとちゃうのんや!」

 

「……楽しいって……一緒に感じたい……それだけ……!」

 

「そうよ! 皆でダンスを楽しみたい! そんな気持ちを皆に伝えるのが、何でダメなのよ!」

 

 

チーム鎧武、蒼天のメンバーからも次々と反論が飛ぶ。

 

それに対し、凰蓮も語気を荒げていく。

 

 

「甘ったれんじゃないわよ!そうやって気安く人前に立つなって言ってんの!」

 

 

そう言って、腰に巻いていた腰布を取り払う凰蓮。

 

其処に巻かれていた物は、戦極ドライバー。

 

 

「野郎、結局実力行使かよ!!」

 

 

咄嗟に身構える倭。

 

だが、

 

 

「ヤマト、駄目!!」

 

「ぐっ……!」

 

 

深琴に止められ、戦極ドライバーを取り出せない。

 

そして。

 

 

「口で言って解らないのなら、しっかりお仕置してあげないとね。 覚悟なさい……変・身♪」

 

《ドリアーン!!》

 

《Lock-on!!》

 

「おおっ!!」

 

「ドリアン、キター!!」

 

 

ドリアンロックシードがセットされた戦極ドライバーから響くエレキギターの8ビートサウンドに、観客達から歓声が上がる。

 

盛り上がる観客達を背に、凰蓮の手がロックシードを『斬った』。

 

 

《ーー!!》

 

《ドリアンアームズ!! Mr.dangerooooooous!!》

 

 

スパイクアーマーを纏い、ブラーボへと変身する凰蓮。

 

その右手には、先程ステージの設備から引き抜いたライダーズパスが握られていた。

 

 

「さあ、始めますわよ。 無法者を成敗する正義の味方、アーマードライダーブラーボのShowtimeを!!」

 

 

その言葉と共に、頭上へとパスを放り投げる。

 

 

「やばい、パスを壊す気か!!」

 

 

ライダーズパスは、一度失われると一年間は再発行出来ない。

 

つまり、そのチームは一年間ステージを使用出来ない。

 

流石にそれは許容出来ないと、戦極ドライバーに手を掛ける倭。

 

だが、今から変身しても間に合わない。

 

そして、ブラーボの振るった鋸刃剣が、空中を舞うカードを引き裂いた。

 

 

「ーーあら?」

 

 

だが、ブラーボの頭上に降り注ぐのは、ライダーズパスのプラスチック片では無く、

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー話を無視された事に腹を立てて、幼稚園児でもやらんような下らん嫌がらせか。 戦場のプロフェッショナルというのは、貴様のように精神年齢が幼くとも務まるようだな」

 

 

 

 

 

 

 

ーー戒斗により観客席から放たれ、ライダーパスを弾き飛ばし身代わりとなったトランプの紙片。

 

 

「戒斗!! お前、動いて大丈夫なのかよ!!」

 

「余計なお世話だ。 貴様に心配されるような鍛え方はしていない。 人の事を気にする余裕があるのなら、貴様は貴様のやるべき事に集中するんだな。 ーー変身」

 

《Banana!!》

 

《Lock-on!!》《Come on!!》

 

《バナナアームズ!! Knight of Spear!!》

 

 

凰蓮の時にも劣らない歓声を背に、戒斗もバロンへと変身する。

 

 

「借りは返させて貰うぞ……凰蓮・ピエール・アルフォンゾ!!」

 

「おやおや・・・。なかなか美しいじゃない。アマチュアにしては上出来よ! でも気を付けなさい、美しさと脆さはーー紙一重!!」

 

 

観客の只中にて、二人のアーマードライダーが激突する。

 

 

「って、俺達はどうすりゃいいんだよ!」

 

 

思いがけず取り残された形となる倭達。

 

と、其処に菊花が手を差し伸べる。

 

 

「とりあえず、踊るしか無いんとちゃう? ほら、せっかくステージに上がっとるんやし」

 

「……だな」

 

「よし、ライダーバトルやりたい人達は勝手にやらせときましょ! 行くわよ! ワン! ツー! ワン・ツー・スリー・フォー!!」

 

 

深琴の音頭と共に、再び踊り始める二つのチーム。

 

パスは既に取り返している為、BGMも復活している。

 

そのステップに篭る「想い」に、バロンとブラーボの激戦に目を奪われていた観客達も少しずつではあるが、倭達のダンスに目を向け始める。

 

 

「あっ、アータ達ワテクシに断りも無く何勝手に踊ってるのよ!!」

 

「うるせえ!! たかがパティシエ風情に許可を貰う筋合いなんかあるもんか!! 悔しかったらダンスで語りやがれ!!」

 

「うぬぬぬぬぬ〜〜〜!! アマチュアが調子に乗ってんじゃないわよ!!」

 

「アマチュアアマチュアうるせえんだよ!! だったら何か、てめえは公園の砂場で子供が作った砂山を「見るに堪えないから」って踏み壊すのか!! 幼稚園児が授業で描いた絵を「芸術的じゃないから」って破り捨てるのか!! 評論家ぶりたいんなら、オークション会場や美術館みたいな俗っぽい場所で勝手にやってろ!! てめえみたいな名声に目の曇った「プロフェッショナル(笑)」なんてお呼びじゃねえんだ!!」

 

「な……んですって!?」

 

 

倭の反論に、思わず動きが止まるブラーボ。

 

其処に、バロンの一撃が飛ぶ。

 

 

「余所見とは余裕だな! 喰らえ!!」

 

《Come on!!》《バナナ・オーレ!!》

 

 

巨大なバナナ状のエネルギーを纏った切っ先は、重装甲に覆われたブラーボを数mに渡って吹き飛ばした。

 

 

C'est incroyable(そんなバナナ)〜〜〜!!!!!!」

 

 

ステージ脇に積まれていた資材にマトモに突っ込むブラーボ。

 

 

「フン……プロフェッショナルというのも、案外大した事は無いようだな」

 

 

数日前敗れた借りを返すかの如く、此処ぞとばかりに罵倒するバロン。

 

その言葉に、怒り心頭といった風情で起き上がるブラーボ。

 

 

「言わせておけば〜〜〜……なら、Professionalのやり方を見せてあげるわ!」

 

 

そう言って、ブラーボが取り出した物。

 

それは、無数のロックシードだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回には閑話を終わらせます

ええ、必ず


それではまた
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