◆
ブラーボがロックシードを解錠すると共に、空間にジッパー状の裂け目が無数に走る。
其処から飛び出してきたのは、数体の初級インベス。
そして、チームBOOST、チームSpingereそれぞれから勝ち取ったA級ロックシードから呼び出された、二体のイノシシを思わせる姿の上級インベス。
「貴方の戦術の真の恐ろしさ、自らの身で味わいなさい!」
その言葉を合図に、インベスが一斉にバロンに襲い掛かる。
「くっ、雑魚共が!」
ブラーボにより完璧に制御されたインベス達は、初級とは思えない程の動きと連携でバロンを攻め立てる。
そして。
◆
「倭さん、こっちにも来ましたよ!!」
ステージにも、イノシシインベス一体を含めた三体のインベスが迫りつつあった。
「あの野郎、あくまで力づくで来る気か!」
迫り来るインベスに対し、やるしか無いとばかりに身構える倭。
その隣に、小柄な「三つの」影が立つ。
「倭ちゃん、此処は私に任せて!」
「私も、戦う」
「此処は、うちら皆のステージや。 あんな変態ドリアン男に好き勝手させてたまるかいな」
「水依……それに、桜花、菊花も……あ、けど水依、あいつと戦えるのか?」
その問いに、苦笑しながらも答える水依。
「大丈夫。 私もビートライダーズだもん、いくら凰蓮様相手でも、此処は譲れないよ。 ーー変身!」
《ハイィー!!》
《キウイアームズ!! 撃・輪・セイ・ヤッ・ハー!!!》
流れ弾を考慮したのか、龍玄の第二形態、キウイアームズへと変身し駆け出して行く水依。
そして、
「そういえば、桜花達もアーマードライダーだったのか? って、何だそれ……笛、か?」
菊花が衣装のポケットから取り出した物。
それは、鬼の顔が彫刻された金色に煌めく笛。
その隣では、桜花が衣装の袖を捲り上げ、手首に装着された鬼の彫刻の施された腕輪を露出させていた。
「まあ見とき。 インベスとやり合えるんは、アーマードライダーだけやないんやで。 ーーほな、行こか桜花」
「ーーん」
菊花の呼び掛けに応じ、腕輪の弦を弾く桜花。
同時に、菊花も笛を高らかに吹き鳴らす。
「「ーー変身」」
その言葉と共に、それぞれ笛と腕輪を額に翳す。
すると、二人の額に彫刻と同じ鬼の顔が浮かび、
一条の雷鳴が桜花を貫き、
突風が渦を巻き菊花を飲み込む。
「「ーーハッ!!」」
そして、それらが気合と共に吹き散らされた時、二人の姿は人ならざる者へと変じていた。
「え……」
「「「「「えーーーーーーーーーーっっっ!!!!!?」」」」」
倭だけならず、チーム鎧武全員から驚愕の絶叫が飛ぶ。
対して、蒼天のメンバー達は落ち着いたものだ。
「あーあ、また衣装作り直しか……ま、仕方ないか」
「って、何落ち着いてんだよ!!」
「あー……悪い、俺達あれ見るの初めてじゃないんだ」
「え!? ま、マジで!?」
「マジで。 ちょっと口止めされててな。 まあ、詳しい事は二人から聞いてくれ」
蒼天リーダーの言葉に、二人の方へ向き直るが、
「……今は、あいつらを倒す方が、先」
「そーいうこっちゃ。 後で説明するさかい、堪忍な」
そう言うと、桜花は大鉈を、菊花は手槍を構え、インベスへと駆け出して行く。
「〈羽撃鬼・桜〉……推参」
「〈羽撃鬼・菊〉、参上や!」
◆
「な、何よあの子達!? ……悔しいけど、中々美しいじゃない」
悔し気に唸りながらも余裕の表情を見せるブラーボ。
実際、バロンの攻撃はインベス達に阻まれ、ブラーボまでは届かない。
「くっ……せめて、バナスピアーがもう少し重ければ一気に薙ぎ払えるものを……」
その時、ふとバロン自身の右腰に装着されたとあるロックシードが目に映る。
「そういえば、橘の奴はパインに変えた途端あの大型インベスを圧倒していたな……面白い。 偶には、運任せというのも悪くは無い」
そう言うと、戦極ドライバーからバナナロックシードを取り外し、新たなロックシードを解錠する。
《mango!!》
《Come on!!》《マンゴーアームズ!!》
アップルマンゴーを模したロックシードを斬ると、消滅したバナナアームズと入れ替わるように大型のマンゴーが現れ、展開しながらバロンに被さる。
そして。
《Fight of Hammer!!》
背中に赤いマントを備えた、巻き角と鶏冠が特徴的な戦士へとバロンの姿を変えた。
「あら? 少し見ない内に随分とイメージチェンジしたじゃない」
「フン、余裕ぶるのも……其処までだ!!」
その言葉と共に、右手に現れた花切りマンゴーを模した巨大なメイスを振りかぶりーー眼前の初級インベスへと叩きつける。
「ヴヴヴゥゥゥゥッ!!?」
横薙ぎに炸裂したメイスの一撃は、直撃を受けたインベスだけで無く、背後の一体すら巻き込み、共に数mも吹き飛ばした。
「フンッ!!」
鋭い踏み込みから繰り出された振り下ろしが、更に数体の初級インベスを纏めて薙ぎ倒す。
「ブゴォッ!!」
その隙を突き、初級インベスの蔭に潜んでいたイノシシインベスが襲い掛かるが、
「ハッ!!」
「ブゴッ!?」
「ハァーーッ!!」
「ゴハァァァッ!!?」
メイスの先端に備えられた穂先に貫かれ、そのまま投げ飛ばされる。
「フン……橘の奴に「余った」と言われて押し付けられたが……気に入った。 力任せに薙ぎ払うのも、案外悪くない」
メイスを眼前に掲げ、満足気に呟くバロン。
「やるじゃない……けど、力任せで勝てる程、バトルは甘く無くてよ!!」
ロックシードをドリノコに持ち替え、バロン目掛け駆け出すブラーボ。
「来るがいい!!」
バロンもメイスを構え迎え打つ。
だが、
「ヴヴゥゥ!」
「ヴゥッ!」
突如、倒れていたインベス達が起き上がり、近くを走っていたブラーボに襲い掛かる。
「ちょっと、アータ達!
まさか突然配下に裏切られるとは思わなかったらしく、動揺しつつ応戦するブラーボ。
その隙を逃すバロンでは無い。
「馬鹿が! ビートライダーズに勝負を挑んでおきながら、インベスバトルの基礎を調べて来なかったのか!」
《Come on!!》《マンゴー・スカッシュ!!》
インベスに組み付かれ身動きが取れないブラーボ目掛け、エネルギーをチャージしたメイスを掲げたバロンが迫る。
「ちょっ、離れ、ま、待ちなさーー」
「ハアァーーーーーッッ!!!」
裂帛の気合と共に、バッティングスイングで振り抜かれたメイスが初級インベスを纏めて粉砕。
ブラーボもマトモに巻き込まれ、派手に吹き飛ばされた。
「
備え付けのフェンスを破壊する勢いで叩きつけられるブラーボ。
変身こそ解けていないが、最早立つのもままならないだろう。
「フン……借りは返させて貰った」
ステージの方を見ると、いつの間にか変身していた鎧武を加えた四人によってインベス達が撃破される所だった。
「ロックシード分の借りは返したといった所か……むっ!?」
視界の端に映った光景に、バロンの顔色が変わる。
唯一、ブラーボに襲い掛かっていなかったイノシシインベスが、自らを呼び出したロックシードを飲み込もうとしていたからだ。
「貴様!!」
阻止すべくメイスを投げつけるが一足遅く。
額に開いた口に、ロックシードが放り込まれた。
◆
時間は少し戻って。
羽撃鬼と名乗った二人の「鬼」は苦戦を強いられていた。
何故なら、
「あーもう、ブンブンうっといなあ!!」
「……飛ぶなんて聞いてない……!」
二人の相手となった初級インベスは、飛行型だったからだ。
一応、菊の手槍には射撃機能が備えられてはいるのだが、それを見抜いているかの如く観客やステージを背にするように低空飛行で迫り来る為、下手に撃つ事が出来ずにいる。
「だああ、もうイライラする!! こうなりゃヤケや、一気に撃ち落としたるわ!!」
「駄目! 今撃ったら、他の人に当たる!」
「だったらどないせいゆーねん!!」
ストレスが頂点に達したのか、とうとう口論を始める二人。
それを隙と見たか、インベス達が背後から二人に迫る。
「ーーそうは」
「行かへんで!!」
瞬間、桜の頭上から襲い掛かるインベスには菊の手槍から放たれた弾丸が。
菊の背後から襲い掛かるインベスには、桜の大鉈が。
二人の位置が入れ替わると共に叩き込まれた。
「「ヴヴヴゥゥゥゥッ!!?」」
「へへん♪ やーっと隙を見せてくれたな?」
「……あの程度で腹を立ててたら、菊花お姉ちゃんの、相手なんて……出来ない」
「ちょ、その言い草酷くあらへん?」
桜の冷たい物言いに傷付いた様子の菊。
その背後から、再度インベスが襲い掛かるが、
「ーー今は、こいつらを片付けるのが、先」
「せやな。 さっさと終わらせよか」
お互いの脇を通すように繰り出された一撃が、それぞれの背後のインベスを貫く。
そして。
「ーー音撃斬・紫電激震!」
「ーー音撃射・颶風一閃!」
大鉈が変形したギターが。
手槍が変形したフルートが。
それぞれの旋律を響かせた。
◆
一方、龍玄の方もイノシシインベスのパワーに苦戦していた。
しかも、羽撃鬼達が足止めされているのを良いことに、更に二体の飛行型インベスが援軍として送られてきた。
「このままじゃ、ステージまで押し切られちゃう……!」
龍玄もキウイ撃輪を巧みに操りイノシシインベスを食い止めているが、隙あらばステージ上のビートライダーズを襲おうとする飛行型インベスの対処でテンポを崩され、押し切れない。
そして、遂に一体の飛行型インベスに突破されてしまう。
「いけない!! 深琴ちゃん、逃げて!!」
「っ!?」
ステージ上の深琴目掛け、一気に急降下する飛行型インベス。
その鉤爪が、深琴目掛け繰り出されるーー
《イチゴアームズ!! 疾風・スパーキング!!》
「ヴヴヴゥゥゥゥッ!?」
ーー直前、横手から放たれた何かが炸裂し、吹き飛ばされる。
「悪い、待たせた!」
その言葉と共にステージ脇から現れたのは、見慣れない赤いアームズに身を包んだ鎧武だった。
「やま……じゃない、鎧武様、その御姿は?」
セシリアの問いに、鎧武は手に持ったイチゴを模した苦無状のナイフをちらつかせながら答える。
「いや、この前迷い込んだ森で手に入れたロックシードが一個余ってたから試してみたんだけどさ。 余り物には福来たるってか?」
軽口を叩きつつ、ナイフを龍玄の頭上を飛び回る飛行型インベス目掛け投げつける。
「ヴヴヴゥゥゥゥッ!?」
ナイフには小型の爆弾としての機能が備えられているらしく、命中した瞬間爆発し、飛行型インベスを弾き飛ばす。
しかも、鎧武が纏うイチゴを模したアームズはこのアームズウェポンを無数に生み出せるらしく、鎧武の両手には既に新たなナイフが握られていた。
「行くぜ、ここからは俺達のステージだ!!」
その言葉と共にステージを飛び降りる鎧武。
飛行型インベスは形勢不利と見てイノシシインベスの援護に向かおうとするが、
「させるか!!」
「ヴヴッ!?」
「ヴヴヴ!!」
もう一体の飛行型インベスと共に撃ち落とされ、
「はいっ!!」
「ブゴォ!?」
飛行型インベスの邪魔が入らなくなった事で龍玄もイノシシインベスを押し始める。
そして。
「水依、一気に決めるぞ!!」
「うん!!」
《Lock-on!!》
《イチ、ジュウ、ヒャク、イチゴチャージ!!》
「せいっ!! おりゃあーーー!!」
巨大なイチゴ型のエネルギー塊を打ち割る事で生み出した大量の苦無型エネルギー弾の豪雨が飛行型インベスに降り注ぎ、
《ハイィー!!》
《キウイ・スカッシュ!!》
「はいやぁーーー!!」
フリスビーの如く放たれたキウイ撃輪がエネルギー弾に巻き込まれ動きが止まったイノシシインベスを両断した。
「「ヴヴヴゥゥゥゥ!!!?」」
「ブゴォォォォォォ!!!?」
断末魔の絶叫と共に爆散する三体。
「よっしゃあ!」
「ふうっ……何とかなったね」
「ああ。 桜花達や戒斗の方も終わったみたいだし、さっさとダンスの続きをーー」
『ブゴァアアアアアアァァァァ!!!』
「な、何だ!?」
「やま……じゃなかった、鎧武ちゃん、あれ!!」
龍玄が指差す方に振り向くと、其処には巨大な四足歩行の怪物と化したイノシシインベスの姿があった。
「まさか、また暴走か!? おいオカマ野郎、よりにもよって何て事しやがる!!」
「ノ、nonnonnon!! 流石にこれはワテクシも想定外よ!!」
「言ってる場合か! 鎧武、手を貸せ! 被害が拡大する前に始末するぞ!」
「わ、わかった!!」
「鎧武ちゃん、私達も!!」
「桜花、うちらも続くで!!」
「……ん!」
逃げ惑う観客達を守るべく、一丸となってイノシシインベス暴走態に立ち向かう鎧武達。
だが、
『ブゴァアアアアアア!!!』
「うわっ!!」
「きゃああっ!!!」
「ぬうっ!!」
その巨体に違わない怪力により、容易く蹴散らされてしまう。
「おのれ……調子に、乗るな!!」
《Come on!!》《マンゴー・オーレ!!》
「ハァーーーーーッ!!」
バロンがハンマー投げの要領で投げ放った、巨大なエネルギー塊と化したメイスが、イノシシインベス暴走態の顔面に直撃、牙の片方をへし折る。
『ブゴオァッ!!!?』
堪らずひっくり返るイノシシインベス暴走態。
その隙に、龍玄の手を借りて立ち上がる鎧武。
「ってて……あのイノシシ野郎、好き勝手やりやがって!」
「大丈夫、鎧武ちゃん?」
「ああ、何とかな。 けど、あの突進力はシカ野郎より厄介だぜ。 パインのパインアイアンでも止め切れるかどうか……」
「うん……あれ? これって、ロックシード?」
そう言って龍玄が拾い上げたのは、スイカを模したロックシードだった。
「ん? ああ、そういやこれはまだ試してなかったな。 カタログにも載ってなかったんで使ってなかったんだけど……」
「だったら、使ってみいへん? どうせこのままじゃジリ貧やん、一か八かや」
「ーーだな」
《スイカ!!》
羽撃鬼・菊の提案を受け、スイカロックシードを解錠する。
ところが。
「ーーって、デカッ!? ちょっ、無理!! あれは無理!!」
通常より巨大な裂け目から召喚されたのは、それに見合った巨大なスイカ型アームズだった。
「な、何よあれ!?」
「アイエエエ!? ナンデ!? スイカナンデ!?」
「でか過ぎでしょ!?」
ステージ上のビートライダーズ達もパニック状態だ。
「ーーって、まさかあれを装着する気!? 止めなさいガイム、いくら何でも無茶過ぎよ!!」
我に返った深琴が鎧武を制止するも、
「何だあれは……ぐあっ!?」
『ブゴァアアアアアア!!!』
巨大スイカに気を取られたバロンを蹴散らし、イノシシインベス暴走態が鎧武目掛けて突進してくる。
「こうなったら……男は度胸!!」
《ソイヤッ!!》
「来い、スイカアームズ!!」
ロックシードを斬り、落下するスイカを待ち構える鎧武。
だが。
「ぐっ、おわあっ!!?」
ズウン!!! という重低音と共に、鎧武の姿はスイカに押し潰される形で消えた。
「ああっ!?」
「ヤマト!?」
「倭さん!!」
「ちょっ、ホントに潰された!?」
深琴達の間から悲鳴が上がる中、ブラーボの高笑いが響き渡る。
「ホッホッホ、自滅ですって? 所詮はアマチュアね、ぶっつけ本番で何でも上手く行くものですか」
「何よその言い草は!? 元はと言えばアンタのせいでしょうが!!!」
「ちょ、深琴さん落ち着いて!!
「今ステージを降りたら危険ですわ!!」
羽交い締めにされて暴れる深琴を余所に、スイカの落下に驚いたのか足を止めていたイノシシインベス暴走態がピクリとも動かないスイカに歩み寄る。
すると。
『ブルル……ブゴッ!?』
突如、スイカが横回転を始め、イノシシインベス暴走態へと突撃する。
《スイカアームズ!! 大玉・ビッグバン!!》
『ブゴッ、ゴフ、ゴアァァァ!!?』
巨大スイカに何度も激突され、派手に弾き飛ばされるインベス。
「ふうっ……おーい、すげえぞ皆、こいつは使えるぜ!」
停止した巨大スイカの天辺から、複眼をスイカの赤に染めた鎧武の頭が飛び出す。
どうやら、これがスイカアームズを装着した姿らしい。
「こっの……バカァ!!! 心配かけるんじゃないわよ、馬鹿ヤマト!!!」
「そうですわ!! 倭さんは無茶をし過ぎです!!」
「……同感」
「せやせや。 今のは流石にうちらもびっくりしたで」
「おおっ、味方無しかよ」
「あ、あはは……ていうか、さっきから本名言っちゃってるけど、良いのかな……」
四方八方からの非難の声に首を竦める鎧武。
龍玄も苦笑するしか無い。
「とりあえず、さっさとあのデカブツ片付けるか。 行くぜ!」
《ヨロイモード!》
ロックシードから響く音声と共に、巨大スイカが姿を変える。
それは、例えるならばアーマードライダーが乗り込んだ巨大ロボット武者。
『ブゴォォォォォ!!』
「おおりゃあ!!」
全高4mはあろうかという暴走インベスの巨体を、スイカアームズは真っ正面から受け止める。
「桜花、そっちお願いな!」
「……ん!」
イノシシインベス暴走態の足が止まった隙を見計らい、羽撃鬼が側面に回り込む。
「そりゃあ!!」
「……ふっ!!」
左右から同じタイミングで前脚を攻撃され、インベスがバランスを崩す。
其処に、背後からバロンのメイスが振り上げられる。
「ハァッ!!」
『ブゴッ!?』
「これなら、どうだあ!!」
『グオォォ……ゴハァッ!!?』
強烈なカチ上げで浮き上がった瞬間、背負い投げで地面に叩きつける。
「トドメだ!! 輪切りにしてやるぜ!!」
《ソイヤッ!!》《スイカ・スカッシュ!!》
アームズ内部でカッティングブレードを倒すと、右腕に装備された薙刀状の双刀からスイカ状のエネルギー球が放たれ、イノシシインベス暴走態を包み込む。
そして。
「おりゃあああああああっ!!!」
《ブゴオォァアアアアアアァァァァ!!?》
手首を起点にジャイロ回転したまま突き出された双刀が、すれ違い様にイノシシインベスの巨体を宣言通り輪切りに斬って捨てた。
「おっしゃあ!! ーーって、うわっと!?」
ガッツポーズを決めた瞬間、スイカアームズが消滅し投げ出される鎧武。
辛うじて着地したその姿は、直前まで変身していたイチゴアームズに戻っていた。
「あっぶねえ……これ、もしかして時間制限あるのか?」
緑の縞模様から灰色へと変色したスイカロックシードを拾い上げ首を傾げる鎧武。
その背後に、ダメージが抜けたのかしっかりした足取りでブラーボが歩み寄ってくる。
「アータ、アマチュアにしてはやるようね。 けど、ワテクシもそう簡単に負けを認める訳にはいかないのよ!」
「まだやろうってのか!?」
いいかげんうんざりした口調で構える鎧武。
だが。
「あら、アラーム?」
突如、ブラーボのアームズ内部からアラーム音が鳴り響く。
変身を解除してポケットからタイマーを取り出してみるとーー
「ーーあらいけない、パイ生地が焼き上がる時間だわ!! すぐお店に帰らないと!!」
「「「「「おい!!!」」」」」
突然の話題転換に、思わずその場の全員がツッコミを入れる。
更に、
「店長〜〜〜〜〜!! 大変で〜〜〜〜〜す!!」
調理師の服に身を包んだ城之内が、息も絶え絶えに駆け込んでくる。
「パティシエとお呼びなさい! どうしたの!?」
「れ、レッドホットの奴等が店長の留守を狙ってお礼参りに来たんです! 今は初瀬ちゃんが応戦してますけど、数が多くて! このままじゃ店を壊されちゃいますよ!」
「何ですって!? 仕方ないわね……アータ、名前は!」
「俺? が、鎧武! アーマードライダー鎧武だ!」
「鎧武ね、確かに覚えたわ! 今日の所は素直に負けを認めてあげるけど、これで終わったと思わない事ね! ワテクシは、諦めないわよ〜〜〜〜〜!!!」
その言葉を最後に、凰蓮は疲労困憊の城之内をわざわざ背負って走り去っていった。
「……結局、何だったんだあいつ……」
「さあな。 で、どうするつもりだ?」
「何がだよ?」
「顔に書いてあるぞ、「放って置けない」と。 ーー丁度良い、受け取れ」
そう言って、変身を解いた戒斗が鎧武に投げ渡したのは、桜の花の意匠が施されたロックシードだった。
「何だこれ?」
「〈ロックビークル〉。 バイクに変形する、新型のロックシードだ。 こいつの代金代わりに取っておけ」
「代金なんていいのによ……まあ、くれるんなら貰っとくか。 よし、行くぜ!」
そう言うと、解錠したサクラロックシードが変形したオフロードバイクに乗り、凰蓮達が去っていった方向へと走り去っていった。
「フン、相変わらず甘い奴だ。 だが……やはり、弱者の枠に収まらない奴」
「私達としては、もうちょっと自分の事を考えて欲しいんだけどね……」
そう言うと、戒斗と深琴は顔を見合わせて共に溜息を吐いた。
こうして、沢芽市にアーマードライダーが出揃った。
彼等がこの街に何を齎すのか、それは誰にもわからない。
次回は設定集の予定です
それが終わったら、ようやく次章へと入ります
それではまた
作者注
今回、イチゴアームズの変身音を変更しています
個人的に、イチゴアームズの「名乗り」だけ鎧武のアームズの中で浮いてる感じがしたので、オレンジやパインと共通する名乗りへと変えてみました
本来は「シュシュッと・スパーク!」です