IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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ようやくライダーが出ます


第四話 運命の切り札/龍の騎士/夢、守る者

◆

 

 

 

 

倭がIS学園の入試会場に迷い込んでいたその頃、街道を猛スピードで疾走する一台のバイクの姿があった。

 

 

「広瀬さん、こちら剣号! もう少しで現場に到着します!」

 

『急いで!アンデッドの反応が活性化してるわ! 被害が出る前に封印するのよ!』

 

「了解!」

 

 

通信を終了するや否や、バイクの男は更にスピードを上げる。

 

その向かう先には、独創的なデザインの建物があった。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

「すいませーん、これどうやって脱げばいいんですか?」

 

「あ、ちょっと待って下さいね」

 

 

試験終了後、倭はピット代わりの部屋に戻ってきたのだが、ISの除装のやり方が判らず脱げずにいた。

 

と、そこに多目的ホールの係員らしき女性が血相を変えて飛び込んできた。

 

 

「た、大変です!! すぐ避難して下さい!! 早く、早くしないとーー」

 

 

だが、その姿は轟音と共に吹き飛ばされ。

 

 

 

 

「グルル……」

 

 

 

 

代わりに現れたのは、赤黒い皮膚に赤い体毛の怪物だった。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

「? なんか騒がしいな」

 

「どうしたの真司君、手が止まってるわよ?」

 

「いや、さっきから何か騒がしくありません?」

 

「騒がしいのは仕方ないでしょ。 今日は此処、入試会場として貸し出されてるみたいだし」

 

「そりゃそうかも知れませんけど……」

 

 

釈然としないものを感じながらもカメラを構える茶髪の少年。

 

 

「それにしても、この建物ってセンス無いですよね? なんか見かけばっか気にして、中身が全然無いっつーか……」

 

「それは私も同感だけど、これでも海外では結構評価されてるのよ? 常識に囚われない奇抜な発想が素晴らしいって」

 

「奇抜な発想なんて、キャンバスに油絵の具でやってりゃいいんですよ。 人が利用する建物で発揮されても迷惑なだけです」

 

「真司君も言うようになったわね。 ……そういえば、真司君は受験しなくて良かったの? こんな所で芸術作品の取材なんかしてる場合じゃないんじゃない?」

 

「それこそ、受験なんてやってる暇なんか無いですよ。 俺は、いずれピュリッツァー賞を獲る男ですよ? 勉強なんかやってる暇があったらーー」

 

 

次の瞬間。

 

その台詞を遮るかのように爆音が響き。

 

少年は、カメラを構えた体勢のまま吹き飛ばされた。

 

 

「ーーっぐはぁ!!? な、何だ!!?」

 

 

幸い、大したダメージは無いらしく、少年は共に吹き飛ばされカメラを拾い上げつつ辺りを見渡す。

 

 

「真司君、大丈夫!? 怪我は無い!?」

 

「は、はい!! けど、一体何が……」

 

 

 

 

「グォアアアアアアアアア!!」

 

 

 

「うわっと!! ……っうええ!!?」

 

 

辛うじて突進を避けた少年が身を起こすと、先程まで少年が居た場所に全身ピンク色の装甲に身を包んだ化物が存在した。

 

 

(こいつ……<ミラーモンスター>!! 何で此処に……って、「こんな所」だからか……)

 

 

所々破損しているものの、周囲をコンクリート壁の代わりに分厚いガラスと金属フレームで構成された渡り廊下のような空間を見渡し、少年は一人納得する。

 

 

「(どうやら、こいつの「獲物」は俺みたいだな……仕方ない、やるか!)令子さん、こいつは俺が引きつけます! 令子さんは助けを呼んできて下さい!」

 

「な、何を言ってるのよ!? こんな化物相手なのよ!? 殺されちゃうわよ!!」

 

「だからですよ! 確か、今日はIS学園も此処で入試やってるんですよね!? だったら、実技試験官の人が居る筈でしょ……っと!」

 

「実技試験官!? ……あっ、そうか、IS……!」

 

「ISだったら、こんな化物イチコロでしょ! だから、早く呼んできて下さい! それまで、何としても持ち堪えてみせますから!」

 

「真司君……」

 

 

少年の言葉に、令子と呼ばれた女性は躊躇うような表情を見せる。

 

だが、程なくその表情は決意の物に変わる。

 

 

「……貴方には、まだ教えないといけない事が沢山あるんだから! だから、絶対死ぬんじゃないわよ! 分かったわね!?」

 

 

その言葉と共に、少年の方をしきりに気にしながらも走り去って行く。

 

その姿を確認し、少年は安心したように一息ついた。

 

 

「ふう……さーて、これでようやく遠慮無しにやれるぜ!」

 

そう言って、少年が懐から取り出したのは、龍をデザインした金色の紋章が刻まれた、小さな箱。

 

 

「グルッ!?」

 

 

箱が何かを知っているのか、怪物が怯むような素振りを見せる。

 

 

「……変身!!」

 

 

「決意の言葉」と共に、少年の腰に出現したバックルにあの箱が装填され、バックル上部のランプが激しく光を放つ。

 

そして次の瞬間、無数の幻影が重なるようなエフェクトと共に、その姿は「戦士」へと変わる。

 

 

 

全身を包む、真紅のボディスーツ。

 

手足を覆う、黒くスマートなフレームアーマー。

 

胸部を守るのは、白銀に輝く装甲。

 

頭部を包むのは、額に龍の意匠が刻まれ、巨大な複眼が特徴的な横スリット型バイザーが目元を覆う、奇妙なヘルメット。

 

その姿は、例えるならば……「龍の騎士」と言うべきか。

 

 

 

 

「グルルウ……ッ!」

 

 

形勢不利と感じたのか、怪物は踵を返すと背後の窓ガラスに飛び込みーーガラスに罅一つ入れる事無く「吸い込まれた」。

 

 

「逃がすか! しゃあっ!!」

 

 

ガラスの中に消えた怪物を追って、少年の変身した戦士もまたガラスに飛び込んで行きーーそして、誰も居なくなった。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

怪物に正確な射撃を叩き込みながら、怪物と倭の間に割り込む試験官。

 

その姿に、先程派手に自爆したうっかり者の面影は無い。

 

 

「は、はい! 何とか……!」

 

 

対して、倭の方は身体には傷一つ無いものの疲労の色が濃く、纏ったISも所々破損し見る影も無い。

 

 

「此処は私が引き受けますから、貴方はそこの二人をお願いします!」

 

「け、けど、あいつISの防御を生身で抜いてきますよ! 一人じゃ無理ですって!」

 

「大丈夫です! こう見えても私、元国家代表候補生だったんですよ? そう簡単には負けません!」

 

 

言うや否や、怪物に対し絶妙な間合いを保ちつつ射撃を浴びせる試験官。

 

確かに、ISの搭乗時間がまだ30分にも満たない倭が戦うよりは、彼女に任せた方が間違いないだろう。

 

実際、先程怪物にドアごと吹き飛ばされ重傷を負った女性と腰を抜かして動けない受付の女性の二人を守る為だったとはいえ、倭は僅か数分で武器の殆どを失い機体をボロボロにされ、気絶から回復して事情を知った試験官が駆けつけて来てくれなければ最悪怪我では済まなかっただろう。

 

 

「……じゃあ、この人達を逃がす迄でいいんで、お願いします!」

 

 

内心不甲斐なさを感じつつ、倭は二人を抱えてその場を離脱した。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

「ーーじゃあ、お願いします」

 

「ああ、後は我々に任せろ」

 

 

あれから程なくして、騒ぎを聞き付けた近隣の病院から駆けつけた救急隊に発見された倭達は、一先ず重傷の女性を彼等に預ける事に。

 

 

「それじゃ、俺は他に逃げ遅れた人が居ないか探してきます」

 

「む……出来れば君も我々と一緒に避難して欲しいのだが……」

 

「大丈夫ですって、それじゃ!」

 

 

言うや否や、倭は所々煙の立ち上る建物内へと走り去って行く。

 

 

「やれやれ……仕方ない、まずは貴女達だけでも……む?」

 

 

ふと疑問の声を上げる救急隊員。

 

その場には、彼ともう二人、治療中の女性と彼女の応急手当てを行う女性隊員「しか」居なかった。

 

 

 

 

一方、倭は先程脱ぎ捨てたISの所まで戻っていた。

 

 

「大丈夫かな……よし、まだ動く!」

 

 

どうやら、ISの機動力とパワーを利用して救助活動を行うつもりのようだ。

 

 

「あの人だけに全部押し付けて自分だけ逃げるなんて、俺の気がすまねえしな。 よし、行くぜ!」

 

 

だが、倭がISと共に浮かび上がった瞬間。

 

突然の爆発によって、悲鳴を上げる間も無く床に叩きつけられた。

 

 

「がっ……は…………!?」

 

 

不意の衝撃に混乱する倭の視界に、この場に居ない筈の人物の姿が映る。

 

 

「な……なんであんたが……救急隊員と一緒に逃げたんじゃなかったのかよ!?」

 

 

今の爆発で最早動かなくなったISから這い出し、その人物ーー受付の女性に歩み寄る倭。

 

だが、不意にその足が止まる。

 

何故なら、女性の背中には普通人間には存在しない、一対の翼が生えていたからだ。

 

 

「……な……んだよ、それ……あんた、一体……?」

 

「説明した所で意味はありませんよ。 これから死んでいく人間には、ね」

 

 

その言葉と共に、女性の姿は異形へと変わる。

 

その姿をあえて例えるなら、猛禽類の意匠を盛り込んで削り出された石膏の女神像。

 

だが、倭に迫り来るその姿は、石膏像には無い「生命力」と「悪意」に溢れていた。

 

 

「邪魔なんですよ、「男のIS操縦者」が世間に認知されては。 だから、貴方には此処で消えていただきます」

 

「ふ……っざけんな! てめえは、そんなくだらねえ理由で人を殺すってのか!!」

 

「ええ。 当たり前じゃないですか、ISは私達女性にのみ触れる事を許された最強の兵器。 つまり、選ばれた者にのみ与えられる神聖な力なんですよ。 それを、男なんて穢れた存在に勝手に使われてはたまった物では「ふざけんなこの野郎!!!」」

 

 

異形の自分勝手な演説を遮るように叫ぶ倭。

 

その瞳には、処刑宣告をされた時以上の怒りが篭っていた。

 

 

「束さんはなあ……そんなくだらねえ事に使う為にISをーーインフィニット・ストラトス(無限の成層圏)を作ったんじゃねえ!! てめえは、束さんがISの名称に籠めた願いを考えた事があるのか!!」

 

「ああ、元は宇宙開発用マルチフォームスーツとして開発されたという話でしたか? あの人も愚かですよね、せっかくの素晴らしい力をそんなつまらない事に使おうと言うのですから。 ですが安心して下さい。 私達女性が、ISを真に正しく活用してあげますから」

 

 

その言葉と共に、異形が背中の翼を大きく羽ばたかせる。

 

その身から数枚の羽根が抜け落ちるや否や、禍々しい赤い光を纏い倭目掛け飛んで来る。

 

 

「うわっと!!」

 

 

辛うじてその場を飛び退く倭の背後で、先程まで倭を護っていたISが無数の羽根に貫かれ、小型爆弾と化した羽根により内部から弾けるように爆散した。

 

 

「あら、逃げ足だけは中々の物ですね。 私達からISを横取りしようとするコソ泥にはお似合いですよ」

 

「くそっ、好き勝手言いやがって……!」

 

 

先程まで散々苦しめられた、複雑に入り組んだ多目的ホールの構造が、今の状況に於いては倭に有利に働いていた。

 

だが、いくら異形が直線的にしか攻撃出来ないとはいえ、丸腰では逃げる事すらままならない。

 

更に、状況は悪い方へと傾いていく。

 

 

「きゃああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

爆発と共に、怪物を引き受けてくれていた試験管がボロボロの姿で吹き飛ばされてきたのだ。

 

 

「ちょっ、一体何が……だ、大丈夫ですか!?」

 

 

まだ意識はあるようで、助け起こそうと近寄った倭に力無く縋り付く試験管。

 

その身に纏ったISは、力任せの殴打により見る影も無く叩き壊され、まだ稼動しているのが奇跡に近い有様だ。

 

そして、

 

 

「……に、逃げて下さい……あいつは、あの化物は……どんな攻撃、でも、倒せない……人の、敵う相手じゃ……」

 

 

それだけ言い残し、意識を失ってしまった。

 

 

「冗談だろ……」

 

 

しかも、「最強の兵器」の筈のISを此処まで破壊した「張本人」が、通路の向こうから歩み寄ってくる。

 

前門の怪物。

 

後門の異形。

 

正に絶体絶命だった。

 

そして、怪物が倭の姿を認め、その命を奪うべく駆け出しーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴェェェェェェェェェェイッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーガラス張りの壁をぶち破って飛んできたバイクに、思い切り撥ね飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨッシ、ギニーリセーヴ!!!」

 

 

ガラスの破片を撒き散らしながらダイナミックに着地したバイクから、聞き取りづらい口調で喋る青年が降り立つ。

 

 

「君、怪我は無いか?」

 

「え? あ、はい……」

 

「そうか、よかった。 いやー、余裕無かったからちょっと荒っぽいやり方になっちゃってさ。 まあ、後は任せてくれよ」

 

 

言うや否や、青年は懐からメカニカルなバックルを取り出し、怪物に向き直る。

 

 

「ち、ちょっと待った! そいつ、ISの攻撃すら効かないんだ! 人間に勝てる相手じゃねえ!」

 

 

だが、青年は臆した様子は無く、事も無げに言い返す。

 

 

「そりゃそうさ、<アンデッド>はいくら殺しても死なない。 現代兵器じゃトドメは刺せないんだ。 けど安心してくれ、その為に俺達ーー」

 

 

バックルに昆虫らしきイラストの描かれたカードを装填すると、側面から飛び出した無数のカードが腰に巻き付き、青年とバックルを繋ぐベルトへと変化する。

 

そして。

 

 

「ーー<仮面ライダー>が居るんだ。 ーー変身!!」

 

≪Turn up≫

 

 

「決意の言葉」と共に、右手でバックルのレバーを引くと、カードを装填したパネルが反転。

 

トランプのスペードがデザインされた面が現れ、青白く輝く壁が射出される。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおお、ヴェイ!!」

 

 

青年が気合と共に壁を通り抜けると、その姿は重装甲に包まれていた。

 

 

 

 

青く分厚いスーツに身を包み、

 

スペードをデザインに取り込んだ銀の鎧を纏い、

 

甲虫の角を思わせる意匠のヘルメットに頭部を覆われた姿は、

 

RPGの世界から抜け出してきた「勇者」と呼ぶに相応しかった。

 

 

 

 

「な、何だよあれ……IS、じゃなさそうだけど……」

 

 

怪物と激戦を繰り広げる青年の姿を呆然と眺める倭。

 

その背後から、今度は異形が歩み寄ってくる。

 

 

「何でしょうかあれは……まあいいでしょう。 私はこのイレギュラーを排除するだけです」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー悪いが、それは諦めてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

突然、背後からかけられた声に異形が振り向くと、そこには巻き毛と瓶底眼鏡が特徴的な少年が壁に寄り掛かって立っていた。

 

 

「<スコート・ラボ>の者だ……と言えば解るよな?」

 

「なっ……!! ……まさか、<スマートブレイン社>の処刑機関がこんな場所まで来るなんて、意外ですね」

 

「サラリーマンは会社の命令には逆らえないんだよ、悲しい事に。 それに、悪いが<オルフェノク>は飯の種なんでなーー狩らせて貰うぜ」

 

≪Standing by≫

 

 

少年が手に持っていた携帯に「5・5・5」のコードを打ち込み「Enter」のボタンを押すと、携帯から機械音が鳴り響く。

 

そして、

 

 

「ーー変身!」

 

≪complete≫

 

 

「決意の言葉」と共に、腰に付けていたベルトのバックルに携帯を装填、横倒しにする。

 

すると、バックルから赤い光のラインが展開し少年を包む。

 

そして、一際眩い光が少年を中心に辺りを包むとーーその姿は、一人の「闘士」へと変化していた。

 

 

 

 

 

そのスーツは闇のように黒く、

 

全身を走るラインは血のように朱く、

 

身に纏う金属装甲は氷のように冷たく。

 

ただ、頭部を覆うヘルメット前面の殆どを覆うファインダーアイだけが、

 

闇夜を照らす朝日のように光を放っていた。

 

 

 

 

「くっ……そのスーツは私達オルフェノクしか使えない筈……この裏切り者! 誇り高きオルフェノクが、たかが人間に与する気ですか!」

 

「スマートブレインの方針を無視して、人類共存派のオルフェノクを虐殺したのを棚上げするような奴に言われたくねえな。 ったく……だから女は嫌いなんだ」

 

 

そう言って溜息を一つ溢すと、闘士は異形目掛け駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

 




誰が「主役の変身シーン」と言った?




次回はバトル回です

それではまた






7/20 第七話と統合しました
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