IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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やっぱりバトル描写は難しい……


第七話 白騎士・ウェイクアップ

 

 

 

 

篠ノ之 束(しののの たばね)。

 

十年前、若干14歳の若さで宇宙開発用マルチフォームスーツを独力で開発した天才。

 

だが、彼女を知る者は口を揃えてこう評する。

 

気まぐれ、我儘、悪戯好き、自分勝手。

 

人見知りを拗らせた挙句、身内以外はモブどころか背景としか認識していない。

 

人よりずば抜けて優れた頭脳を持ちながらも、人として大事な部分の成長が止まったまま大人になった、そんな彼女をいつしか人々は「天災」と呼ぶようになった。

 

そのような自然災害レベルの個人はーーある日を境に、突如世界から姿を消した。

 

自らが宇宙への架け橋として生み出した「娘達」が、醜い人間達のエゴによって地上に縛られ、血と硝煙に穢され続ける現状に絶望しーー467基目のコアを残し失踪したのだ。

 

以来、彼女の消息は掴めていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……筈の人物が、何でこんな所にいるんですか「束さん」?」

 

「ふっふっふ、束さんはやまっちの危機には何処にでも駆け付けるのだよーーあ、ちょっと「ちーちゃん」痛い痛い」

 

「そのあだ名はやめろと言った筈だぞ、「束」」

 

 

始業式から一週間後、クラス代表決定戦当日。

 

IS訓練に使われる施設の一つ、第三アリーナ・Aピットにて、エプロンドレスとメカニカルなウサ耳という奇妙なファッションに身を包んだ女性が、織斑先生から鋼鉄すら握り潰しかねない握力のアイアンクローをお見舞いされていた。

 

 

「三年間も姿を見せずに何をしているかと思えば……何をやっているんですか、「姉さん」」

 

「あっ、やあやあ久しぶりだね、箒ちゃん。 元気そうでお姉ちゃんは嬉しいよ〜♪」

 

「ええ、まあ……」

 

 

実の姉らしき女性の醜態に呆れ半分、困惑半分といった表情を浮かべる箒。

 

 

「いやー、それにしてもおっきくなったねー。 特に胸がーーあ、ちーちゃんやめてやめて、束さんの頭脳がミシミシいってるから」

 

「潰れてしまえ」

 

 

賢明な読者なら既に察しが付いているだろう、現在進行形で織斑先生からアイアンクローを食らっているこの変人が「篠ノ之 束」ーー十年前、ISを世に生み出した張本人である。

 

 

「で、何で束さんが此処にいるんですか?」

 

「それはね、やまっちに「これ」を届けに来たんだよ。 さあ、皆様ご覧あれ、オープン・セサミ!!」

 

 

アイアンクローからあっさり抜け出した篠ノ之博士は、傍らに鎮座していたコンテナを仮想コンソールを操作して遠隔解錠する。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそこに「白」が、いた。

 

白。 真っ白。 飾り気の無い、無の色。

 

冷たい程の「空白」が、そこに存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……IS?」

 

「そう、これがやまっちの専用機、その名も<白式>だよ!」

 

「白式……」

 

 

純白の騎士鎧を前に、一人佇む倭。

 

だが、その脳裏にふと束の言葉が引っ掛かる。

 

 

「あの、織斑先生? 確か俺の専用機って「倉持技研」って所が用意するって言ってましたよね?」

 

「ああ、確かに言ったな」

 

「何で束さんが持って来たんですか? 束さんって別に倉持技研に所属してる訳じゃないんでしょ?」

 

「うん、だって白式は束さんが作ったんだもん」

 

「…………は?」

 

「正確には、倉持技研が開発を頓挫していた欠陥機をそいつが完成させたのがその機体だ。 技研はデータ解析の許可と引き換えに名義だけを貸しているという訳だな」

 

「……チェンジで」

 

「ひどい! やまっちひどいよー!」

 

「だって、唯でさえ束さんの発明品は癖が強いってのに、元が欠陥機って……絶対何か仕込んでるでしょ?」

 

「だってー、普通に作ったって面白くないんだもーん」

 

「ビックリ箱抱えて戦場に突っ込むこっちの身にもなって下さいよ……」

 

「ビックリ箱っつーか、普通に時限爆弾だな……」

 

 

ガックリ項垂れる倭の背中に、内心合掌する巧。

 

と、何故か篠ノ之博士が巧を凝視している。

 

 

「な、何か用ですか?」

 

「んー……ねえ君、名前は?」

 

「お、大神 巧ですが」

 

「ああ、君が「三人目」だね。 じゃあ、そこの茶髪が「四人目」でいいのかな?」

 

「あ、はい。 赤城 真司です」

 

「そっか。 じゃあ、たっくんとしんくんでいいよね? あ、答えは聞いてないから」

 

「「……は?」」

 

 

いきなりあだ名を付けられ困惑する二人を余所に、白式の調整を進めていく篠ノ之博士。

 

 

「お、おい箒、何だよあの人。 自分勝手にも程があるだろ」

 

「すまない真司、あの人は昔からああなんだ……」

 

 

その時、ピット内に試合時間を告げるブザーが鳴り響く。

 

 

「時間か。 橘、準備をしろ。 アリーナを借りれる時間は限られているからな、実戦でものにしろ」

 

「えー、ちょっと待ってよちーちゃん、まだフォーマットとフィッティングが終わってないんだよ?」

 

「時間がないと言ったぞ。 実戦でやって貰う。 出来なければ負けるだけだ」

 

「ちょっと横暴じゃありませんかね?」

 

「おーぼー」

 

「おーぼー」

 

「ごーもー」

 

 

口々に抗議する面々に、スパァン、スパァン、スパァン、ドゴォ、と制裁の一撃が飛ぶ。

 

勿論、最後の篠ノ之博士へは出席簿では無く鉄拳が飛んでいる。

 

「いったーい!! ひどーいちーちゃん、束さんの脳が二つに割れたよ!?」

 

「誰が剛毛だ、失礼な」

 

「だってー、ちーちゃんって絶対男性ホルモン多いって。 その内ヒゲ生えるんじゃないかってくらい男らしーー」

 

 

瞬間、神速のアイアンクローが篠ノ之博士の顎を捉え、それ以上の発言を封じる。

 

 

「ーー山田先生、後はお願いします」

 

「あ、は、はい!! じゃあ橘君、カタパルトの方にお願いします」

 

「アッハイ」

 

「倭……勝ってこい」

 

「がんばれよ!」

 

「まあ、存分に恥をかいて来い」

 

 

カタパルトに機体を固定する倭に、口々に激励の言葉が投げかけられる。

 

背後で織斑先生に引きずられていく篠ノ之博士を意図的に無視して。

 

そして。

 

 

「橘 倭、白式、行きます!!」

 

 

白き騎士が戦場に舞い降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

 

アリーナの試合開始位置で地面スレスレを浮遊するセシリア。

 

自然体で長大なライフルを構える姿は、実に様になっている。

 

 

「売られた喧嘩は買う主義なんだよ。 ……なあオルコット、何でこんな事したんだ?」

 

「あら、このIS学園でIS操縦者が雌雄を決する事に、理由など必要でして?」

 

 

ライフルの銃口が倭を捉えーー

 

 

「貴方がそのISに相応しいか否かーー確かめさせていただきますわ!!」

 

 

ーー光が迸った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー押されているな」

 

「あ、織斑先生。 流石はオルコットさんですね、専用機の性能を余すことなく引き出しています」

 

「イギリスの第三世代機、か……」

 

 

<ブルー・ティアーズ>。

 

イギリスが開発した最新型のIS用武装であり、ISの挙動制御に用いられるPICーーパッシブ・イナーシャル・キャンセラーにより独立稼働する小型攻撃端末。

 

この特殊武装の実験機として同名が与えられたセシリアの専用機には、移動式特殊ビーム砲台型の端末がフィン・アーマー型の非固定浮遊部位に一基ずつ、計四基搭載されている。

 

IS本体からそれ程遠くまでは離れられない上、サイズ上ビームの出力も高くはないが、ISの防御手段であるエネルギーシールドを削るには十分な威力を備え、端末の数だけ異なる方向から同時に攻撃を放つ事により命中率も高くなる。

 

そして、圧倒的な手数により逃げ場を狭められた標的は、端末を操るセシリアの装備するロングレーザースナイパーライフル<スターライトMk-Ⅲ>による正確な狙撃によりトドメを刺される事になる。

 

セシリアがイギリスの代表候補生へと上り詰めたのも、複数のブルー・ティアーズを自在に操る空間認識能力と正確無比な狙撃の腕、そしてそれらを機械の如き精度とタイミングで使いこなす彼女自身の精神力による所が大きい。

 

 

「でも、橘君も凄いですね。 まだ30分しかISに乗っていないのに、<一次移行(ファーストシフト)>も終わってない機体であそこまでオルコットさんの猛攻を凌ぎ切るなんて」

 

「あいつは妙に勘だけは鋭いですから。 大方、オルコットの弱点に無意識に気付いているのでしょう」

 

「弱点……ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリア・オルコットは焦っていた。

 

 

(橘さんのシールドエネルギーはもう僅か、武装も近接ブレードしか展開していない。 後はこのまま削り切るのみ……その筈ですのに、この言い知れない不安は一体……)

 

 

そう、倭はこの試合が始まってから近接ブレードを二本しか展開しておらず、挙動も素人丸出しで隙だらけ。

 

だが、そのような射的の的同然の相手にセシリアは内心攻めあぐねていた。

 

 

(くっ……また躱された! 確実に当たるタイミングでしたのに……)

 

 

先程から、クリーンヒットが一発も無くなっているのだ。

 

ブルー・ティアーズからの攻撃はそれなりに当たっているのだが、本命のレーザーライフルの狙撃は試合開始直後の一撃以外全て躱されるか、近接ブレードを盾代わりに受け流されている。

 

故に、只でさえ精神的に負担の掛かるブルー・ティアーズの制御を長時間、戦闘中の緊張状態の只中で強いられ、一気に決められないストレスも合間って、セシリアは徐々に追い詰められていく。

 

そして。

 

 

「そこだぁ!!」

 

「なっ……ブルー・ティアーズが……「斬り」落とされたですって!?」

 

 

完璧に倭の意識の死角に配置した筈のブルー・ティアーズが一基、近接ブレードの一撃で両断されたのだ。

 

それにより精神が乱れ、ブルー・ティアーズの挙動が目に見えて鈍る。

 

そして、それを見逃す倭では無い。

 

 

「二つ! 三つ! こいつで、最後だぁぁぁぁぁ!!」

 

 

程なく、全てのブルー・ティアーズが鉄屑と化す。

 

 

「よくも、わたくしのブルー・ティアーズを!!」

 

 

苦し紛れにライフルを放つも、ブルー・ティアーズの援護射撃を失った直線的射撃がそう当たる筈も無く、セシリアは最早隙だらけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(思った通りだ! こいつ、ビットを使いこなせてねえ!)

 

 

セシリアの狙撃を躱しつつ、飛び込むタイミングを伺う倭。

 

白式に搭載されていた武装が近接ブレード二本だけだったのには思わず頭を抱えそうになったが、考えてみれば倭には銃器を扱った経験が無く、搭載されていた所でマトモに当てられるとは思えない。

 

なら、多少不利でも使い慣れた獲物の方がまだ勝ち目があると思い直しーー開き直ったとも言うーー上空へと距離を取ったセシリアに切り込むチャンスを伺っていたのだが、

 

 

(何でだ? これだけ大量のビームの弾幕、本当ならとっくの昔に蜂の巣になっててもおかしくねえ。 なのに、何で俺はまだ負けてねえんだ?)

 

 

戦闘中にふと感じた違和感。

 

それにさえ気付いてしまえば、正体を掴むのは簡単だった。

 

 

(多分、あれだけ大量のビットを一斉に、別々の動きをさせるのはセシリアだって大変な筈! だったら、自分で動かし易いように何らかの手段を講じてる筈! それも、俺の目に見える形で!)

 

 

それは、セシリアとブルー・ティアーズ、双方の挙動にあった。

 

一つは、セシリアが特定の身振りをする度、ブルー・ティアーズがそれに応じたパターンで動いている事。

 

二つは、ブルー・ティアーズが倭を中心に二基ずつ、鏡に映したように挙動がシンクロしている事。

 

三つは、ブルー・ティアーズの攻撃中はセシリア本人は動けず攻撃も出来ない事。

 

つまり、この二つのパターンを把握さえすれば、ビットとライフルの波状攻撃を躱し切る事も、攻撃の隙を突いてカウンターを決める事も可能となる。

 

そして、最早自分を縛るブルー・ティアーズは存在せず、高威力のレーザーライフルも銃口の向きさえ気を付ければ躱すのは容易い。

 

 

「貰ったぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

レーザーライフルの連射を掻い潜りつつ、最大速度でセシリアへと肉薄する倭。

 

その刃がセシリアに届く寸前、セシリアが浮かべたのはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

驚愕の表情、では無くーー

 

 

 

 

 

 

 

 

勝利を確信した笑みだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「掛かりましたわね!! ブルー・ティアーズは後二基ありましてよ!!」

 

 

その言葉と共に放たれたのはーーサイドアーマーに接続されていた実弾型ブルー・ティアーズから放たれた、二発の誘導ミサイルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後一話で主役変身回に行けるかな




あ、因みに束は今後ライダー勢とは仲良しとまではいかなくてもそれなりの関係にするつもりですので悪しからず


後、千冬は仕事中は山田先生に同僚として接しているので、原作と違い敬語だったりします


それではまた
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