IS ーバトライド・クロニクル   作:帰灰燼

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いよいよ、主役ライダー登場です


第九話 変身! 空からオレンジ!?

 

 

 

 

「やまっちおっ疲れー☆ 頑張ったご褒美にハグしてあげっふう!?」

 

 

倭がピットに戻るなり駆け寄る篠ノ之博士を、白式の雪片弐型が手荒く出迎える。

 

 

「ひどーい!! 今のはひどいよやまっちー!!」

 

「すんません、マジで疲れてるんでボケはまた今度で」

 

「むー、最近やまっち冷たくない? あ、最終調整するからそこのハンガーに白式を固定してねー」

 

「あっはい」

 

「……なあ箒、今思いっきりブレードでホームランされてなかったか?」

 

「姉さんがあの程度でくたばるようなタマなら、私ももう少し楽だったんだかな……」

 

「なんだろう、すげえ納得してる俺がいる」

 

 

まるで漫才のような箒と真司のやりとりを余所に、自らの手に握られた長刀を見やる倭。

 

 

「それにしても、<雪片>に<零落白夜>か……」

 

「やまっち、今<暮桜>みたいだって思ったでしよ? すっごい偶然だよねー 」

 

「あの、篠ノ之博士? ユキヒラとかレーラクビャクヤとか、身内ワードで会話されても正直チンプンカンプンなんすけど……」

 

 

疑問符を浮かべる真司に対し、篠ノ之博士は面倒臭げながらも仮想ディスプレイを展開して答える。

 

 

「しょーがないなー、特別に教えてしんぜよう! まず、この映像は誰かわかるよね?」

 

「織斑先生っすよね、まだ現役だった頃の」

 

「その通り! んで、その当時のちーちゃんの愛機が<暮桜>だったんだよ。 日本政府名義だったから現役引退と同時に返しちゃったけどね」

 

「そして、暮桜に搭載された唯一の武装である<雪片>の<唯一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)>ーーそれが<零落白夜>だ。 簡単に説明すれば、あらゆるエネルギーを切り裂く能力といった所か」

 

「エネルギーを切り裂くって……織斑先生、それ結構シャレになってませんよね? 本当に全てのエネルギーを切り裂くってんならーー」

 

「当然、ISのエネルギーシールドも無効化出来る。 そうなると、どうなる? 篠ノ之」

 

「は、はい。 IS本体が直接攻撃される為、緊急防御システムの<絶対防御>が発動し、大幅にSEを削ぐ事が出来ます」

 

「その通りだ。 能力発動の代償として暮桜自身のSEを消費するという問題点こそあるが、決まれば一気に勝負を決める事も可能だ。 何せ、私がかつて世界最強の座にいたのも、この唯一仕様能力あっての事だからな。 だが、SEを無効化出来るのならばーー」

 

「ーー絶対防御も無効化出来るって事ですか」

 

 

絶対防御は、言うなれば戦車に搭載されている「表面を爆発させて攻撃を相殺する装甲」の原理をISのSEで再現したシステムである。

 

元は宇宙空間を漂うスペースデブリから操縦者の身を守る為の緊急防御システムとして開発された事もあり、SEさえ十分なら文字通り絶対的な防御力を発揮するシステムなのだが、弱点も当然存在する。

 

一つはシールドを貫通する攻撃に対して発動する為、理論上僅かながらタイムラグがある事。

 

一つはSEの残量によっては攻撃を相殺し切れない場合がある事(対戦競技の場合は勝敗条件上最低限のSEが確保されている為問題は無いが)。

 

そして最後の一つは、SEを無効化する攻撃にはエネルギーシールド同様貫かれてしまう事である。

 

つまり、エネルギー無効化攻撃である<零落白夜>はISに対して二重の意味で「一撃必殺」となり得る訳だ。

 

 

「問題はそこなんだよなあ……束さん、どうにか装着者を傷付けないように出来ませんかね?」

 

「やまっち、いくら束さんでも出来ない事はあるんだよ? 大体<唯一仕様能力>なんて狙って付けれるものじゃないんだし、なんでやまっちの白式がちーちゃんの暮桜と同じ<唯一仕様能力>に目覚めたかなんてそれこそ束さんにもチンプンカンプンだよ」

 

「要は、如何なる状況下でも確実に相手のエネルギーシールドだけを切り裂ける実力を身に付けろという事だ。 なに、お前なら出来るだろうよ。 何せ、<唯一仕様能力>とはそういう物だ」

 

 

<唯一仕様能力>とは、操縦者とISの双方が最高のパフォーマンスを発揮した時に発現する能力の事である。

 

本来ならば<二次移行(セカンド・シフト)>ーー一次移行を終えたISが経験を積み、より操縦者の「専用機」として最適化する現象ーーを迎えたISで発現が確認されており、一次移行の時点で<唯一仕様能力>を発現させるケースは前代未聞だったりする。

 

 

「でも、凄いですよ橘君! <唯一仕様能力>は二次移行に到達した専用機の皆さんでも発現しない事の方が圧倒的に多いんですから! これって、橘君と白式の相性が最高に良いって事ですよね?」

 

「へー、さすが巨乳眼鏡、いい事言うねー」

 

「き、巨乳眼鏡?」

 

「私の同僚をからかうな馬鹿者。 橘、その機体は以後お前の物となる。 故に、自らの手足の如く扱えるようになれ。 いざという時にまともに動けないのでは話にならんからな。 さて、調整も終わったようだし、今日はもう帰って休め」

 

「あ、やまっち。 今は待機形態になってるけど、「出てこいシャザーン!!」って念じればすぐ出てくるからね」

 

「古っ!!」

 

「あ、それと専用機の運用には色々と規則がありますから、ちゃんと目を通しておいて下さいね?」

 

 

そう言って山田先生が倭に渡したのは、紙自体は薄いのに電話帳クラスの分厚さのルールブックだった。

 

 

「まじかよ……これ、全部読むのにどれだけ掛かるんだ?」

 

「仕方ありませんわ。 世間一般でのISの扱いは兵器ですもの」

 

「そりゃそうだけどさ……って、オルコット?」

 

 

見ると、倭以外は既にピットを後にしたらしく、いつの間にか来ていたセシリアと二人きりだった。

 

 

「セシリアとお呼び下さいませ。 わたくしも、倭さんとお呼び致しますわ」

 

「あ、ああ、わかった。 そういえばさ、怪我は大丈夫か?」

 

「ええ、幸いそれ程胸も無いもので」

 

 

苦笑するセシリアに、十分でけえよ、と内心ツッコミを入れる倭。

 

 

「そういやさ、なんか用でもあったのか?」

 

「ええ、実は……始業式の日の無礼を謝らせて頂きたいのです」

 

「無礼ねえ……正直、あの日は俺も言い過ぎた感があるし、セシリアも反省してるってんならもういいだろ」

 

「ですが……」

 

「良いって良いって。 ダチってのはこの位笑って許すもんだぜ?」

 

 

そう言って差し出された手を、セシリアはゆっくりと握り締める。

 

 

「倭さん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。

 

 

「ここ、何処よもう〜……」

 

 

悪態をつく少女ーー深琴の表情には疲労の色が濃い。

 

彼女は、丸一日樹海を彷徨っていた。

 

周囲には毒々しい色をした果実が所々に実っているが、深琴は何故かその果実を手に取る気にはなれなかった。

 

 

「携帯も繋がらないし、裕也さん本当にこんな所にいるのかな……あ、あれはーー」

 

 

近くの木にもたれ掛かり休息を取る深琴の目に、草むらに埋れた状態の何かが映る。

 

 

「これ……間違いない、裕也さんのメールに載ってたこの画像と同じ……!」

 

 

拾い上げたそれは、奇妙な形状をしたバックルだった。

 

 

「やっぱり裕也さんはここにいるんだ! 早く見つけないと……!」

 

 

決意を新たに樹海を往く深琴。

 

その様子を、何者かが木の陰から伺っている事を気づかずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

「? セシリア、今何か聞こえなかったか?」

 

「そういえば、ジッパーを開けるような音が聞こえたようなーー」

 

「!!セシリア、後ろだ!!」

 

 

警告と同時に振り下ろされた一撃を、倭はセシリアを押し倒す形で躱す。

 

 

「っ!? 倭さん、血が!!」

 

「カスリ傷だ!! それより、何でインベスがこんなに大量に!?」

 

 

見ると、倭達の居るピットは既に大量の低ランクインベスーー<初級インベス>によって埋め尽くされていた。

 

 

「仕方ねえ、ISで叩き潰す!! セシリア、援護頼む!!」

 

「任されましたわ!」

 

 

止むを得ず、お互いの専用機を展開し迎撃する。

 

幸い、個々の強さはそれ程でも無いが、とにかく数が多い。

 

加えて、倭の白式はエネルギーが回復し切れておらず、セシリアのブルー・ティアーズも予備に用意していたのを装備し直したレーザー型ビットが二基だけだ(実弾型は補充し忘れて弾切れ)。

 

このままでは押し切られるーー二人の脳裏に最悪の展開が過ぎった、正にその時。

 

 

「はっ!!!」

 

 

鋭い斬撃がインベスを纏めて切り払い、

 

 

「橘君、オルコットさん、大丈夫ですか!?」

 

 

正確な射撃がインベスを尽く蜂の巣にする。

 

 

「千冬さん!! なんでここに!?」

 

「織斑先生だ! 生徒から「第三アリーナから化け物が出てきた」と通報があったのでな、山田先生と共に先行させて貰った! お前達は早く離脱しろ!」

 

「二人だけじゃ無理です! 俺もーー」

 

「自惚れるな馬鹿者!! ひよっこ二人加わっても邪魔にしかならん!! それに、間も無く他の教師も駆け付ける!! 分かったらさっさと行け!!」

 

「私達なら大丈夫ですよ。 ゲームキャラなんかに負けたりなんかしません。 だから、危険な事は私達大人に任せて下さい」

 

「……了解致しましたわ。 倭さん、参りましょう」

 

「……ああ、わかった」

 

 

悔しげながらも、倭はセシリアと共にその場を後にする。

 

だが、その耳に更なる破壊音が響く。

 

 

「この方向は管制室……逃げ遅れか!?」

 

「……倭さん、行きましょう! 織斑先生には、わたくしも一緒に頭を下げて差し上げますわ!」

 

「セシリア……っし、行くか!」

 

 

頷き合い、二人は破壊音の方向へと向かう。

 

と、管制室近くでそちらから逃げてきたらしい人影がふらつきながら歩み寄ってきた。

 

 

「!! 大丈夫か…って、深琴!?」

 

 

その人影は、この場所には居る筈の無い人物ーー深琴だった。

 

 

「や、ヤマト!! あんた、こんなとこで何してんのよ!?」

 

「こっちの台詞だ!! てか、何でそんなにボロボロなんだよ!!」

 

 

見ると、彼女の着ているチーム鎧武のパーカーとスパッツ、そしてバッシュは擦り切れだらけで泥で汚れている。

 

まるで、長時間山道を歩いてきたような有様だ。

 

 

「だって、裕也さんが行方不明になってもう一週間近くにもなるし、心配で……それで、一週間前に待ち合わせた場所にもう一回行ってみたら、ジッパーみたいな裂け目が空中に開いてたから、もしかしたらって……」

 

「お前なあ……」

 

「あの、倭さん? こちらの方はお友達ですの?」

 

「あ、ああ。 ダンスチームの仲間で幼馴染の白鳥 深琴ってんだ。 それにしても、ジッパーみたいな裂け目か……」

 

 

その時、倭の思考を中断するかの如く管制室の扉が内側から吹き飛び、中から虎の頭を持つ緑色の怪物が現れた。

 

 

「な、何ですのあの怪物は!?」

 

「あいつ、こんな所まで追いかけて来たの!?」

 

「どういう事だ!?」

 

「裂け目の向こうでいきなり襲って来たのよ!! 多分、向こうがあいつの住処なんだと思う!!」

 

「マジかよ……って危ねえ!!

 

 

咄嗟に怪物が放った怪光線から深琴とセシリアを庇うが、その代償として白式は大破し、待機形態へと戻されてしまう。

 

 

「ヤマト!!」

 

「倭さん!!」

 

「いってえ……だ、大丈夫だ! けど、白式が……」

 

「今の攻撃……もしかしてバリア無効化攻撃ですの!?」

 

「どうするのよ!? このままじゃ、私達皆やられちゃうわよ!!」

 

「どうするって……ん? 深琴、さっきから何持ってんだ?」

 

 

ふと、倭の目が深琴の持つバックルらしき何かに止まる。

 

 

「裂け目の向こうに落ちてたのよ。 多分、裕也さんが落としたんだと思う」

 

「裕也兄が? なんか、ベルトみたいだな……あっ」

 

 

深琴から受け取り、何気に腰に当てた瞬間、バックルからベルトが展開。

 

左半分にヘルメットの横顔が浮かび、倭の言葉通のベルトへと姿を変える。

 

 

「本当にベルトになった……」

 

「倭さん、危ない!!」

 

 

怪物から目を離した倭目掛けて放たれた怪光線から間一髪倭を庇うセシリア。

 

だが、倭を抱える為にライフルを手放し、ブルー・ティアーズも怪光線で全滅してしまった。

 

 

「わ、悪いセシリア!!」

 

「お気になさらないで下さいまし。 友を救えずして、何が貴族ですか」

 

 

丸腰になりながらも、セシリアの表情に後悔の色は無い。

 

だが、状況は絶望的だった。

 

 

(くそっ……俺はまた、何も出来ねえのかよ!!)

 

 

悔しさの余り、待機形態の白式を握り締めたーーその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦極ドライバーの反応を感知しました。 コアを排出します』

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

突如、白式から響いた謎の音声に顔を上げると、ISの収納機能<量子変換>で粒子化されていた何かが実体化され、足元に転がった。

 

 

「何だこれ……錠前?」

 

 

それは、蜜柑のようなデザインに「L.S.-07」の型番がマーキングされた錠前だった。

 

 

「それ、<ロックシード>じゃない! しかも、ランクAのすっごいレア物!」

 

「マジか!? 何でそんなもんがISのコアにーー」

 

≪Orange!!≫

 

 

偶然、解錠スイッチを押したらしく、ロック部分が音声と共に解錠される。

 

 

「や、倭さん、上を!!」

 

「上? ……うぇえ!?」

 

 

そこには、円形に展開した裂け目から降りてくる、隕石サイズの蜜柑ーーいや、オレンジがあった。

 

 

「ちょっ、何だあれ!? 何だよあれ!!? まさかあれがランクAインベスか!?」

 

「し、知らないわよ!! 私だってランクAの錠前なんてカタログでしかーーねえ、そのベルトなんか光ってない?」

 

 

見ると、バックル中央の窪みがロックシードが呼び出したオレンジに呼応するかの如く光っていた。

 

 

「もしかしたら……こうか!」

 

 

一か八か、バックルの窪みにロックシードを嵌め込み、ロックを掛ける。

 

 

≪Lock-on!!≫

 

 

すると、法螺貝の音を始めとした和風の音楽が流れ始める。

 

 

「えっと、これからどうすりゃいいんだ?」

 

「もしかして……こう、ですの?」

 

 

そう言ってセシリアが動かした、窪みの斜め上に設置されていた刀のような小さなブレードが、ロックシードをーー「斬った」。

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ソイヤッ!!≫

 

≪オレンジアームズ! 花道・オンステージ!!≫

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそして、少年は運命を掴み取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、主役の初戦闘回です

それではまた
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