邪神様にお願い!   作:腐ったぼうけんのしょ

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貴族主人公編
プロローグ


 完全武装の騎士たちに取り囲まれる。

 

「封魔宮 冬芽! 汝を国家反逆罪の容疑で捉える!」

「は?」

 

 全くと言っていいほど寝耳に水だった。

 流石に非武装の所を完全武装の騎士達に囲まれてはどうにもならない。

 更に、俺に剣を向けたのは俺と双璧をなす、親友の、こいつだけは裏切らないと考えていた男だった。

 しかし、それは過去の事。先日捉えた邪教集団の情報から、親友が邪教に属しているのではと疑われる証拠がいくつも出てきたのだ。

 罠だ。だが、親友は確かにそういう所がなかったではないだろうか。

 迷っていた。

 だが、目の前の男はまっすぐに俺を見ていた。

 俺は親友を信じたかった。何か考えがあるのだと。

 そして、俺は命を賭けて親友にかけることにした。

 最強の騎士と呼ばれた俺はあっさりと捕まり、処刑が決まった。

 

「一体、何なんだよ!」

 

 困惑していた俺だが、地下へ連れてこられ、いざ尋問という所で親友がやってきた。

 

「楓」

「いいザマだね、冬芽。君の処刑は動かない。君は敵を作りすぎた」

「は? 俺は無実だ! 大体、何の疑いで捉えられているっていうんだ」

「この前検挙した邪教集団の悪事が、全て君の指示だったことになる」

「……へぇ。で? どういうつもりなんだよ」

「だが、貴族様が私のモノになるなら、命だけは助けないでもない」

 

 口付けられる。

 次の瞬間、くらりと眩暈がした。

 決定的な違和感と、強烈な眠気。

 眠剤を盛られた? いや、これは既に薬が浸透している状態だ。唇に薬を塗っていたとしても、こんな短期間に毒が回るはずがない。

 

 直後、俺は鳩尾を殴られ、頭突きを受けた。

 

「俺に触れるな、穢らわしい!」

 

 この声は、俺……!?

 つーか無理やりキスされた挙句に殴られるって何なんだよ。

 それと同時に眠気で満たされていた俺は、俺の意識はあっさりとおちた。

 

 

 

 

 

 

 

 目覚めたのは、暗い地下室ではなく、親友の屋敷だった。

 勢いよく起き上がる。頭がガンガンする。

 何が何だかわからず、首を振る。

 

 起き上がるとベッドの真ん前に鏡があり、俺の姿が映されていた。

 親友の疾風 楓の姿が写っていた。

 

「は?」

 

 思わず、鏡による。信じられない。どこからどうみても、俺は楓になっていた。

 一体何が。

 

 いや、頭ではわかっている。キスした途端、入れ替わったのだ。

 そして、楓はわかっててやってた。

 けど、入れ替わるなんて不思議がこの世の中にあるなんて、誰が考える?

 

 俺の口は、自然と答えを漏らしていた。

 

「邪神教……」

 

 邪教徒ならそんな邪法もあるというのだろうか。

 とりあえず、親友の部屋を家探しする。

 

 親友が作り出した状況なら、メッセージがどこかにあるはずだ。

 そういえば、鏡の裏に金庫があると言っていたな。

 自分が死んだら処分しろと言っていた。

 

 鏡を外して、金庫を見つける。

 その中には、手紙と貨幣を入れた小袋があった。

 

「親愛なる我が親友へ。

 これを見ているということは、私は死んでいるんだろう。

 

 以前言ったことを覚えているだろうか。

 

 君のものは私のもの。私のものは君のもの。

 

 私のものは、全て君にあげる。

 君の好きなように生きてほしい。

 

 何も知らないふりをするも、

 真実を騙って狂人に見られるのも、

 私の目指した道を究めるも、

 全てを捨てて一般人として幸せに生きるのも、

 君の自由だ。好きな道を選んでいい。

 

 願わくば、よく考えて後悔のない道を選んでほしい。

 私が助けられるのは一度だけなのだから。

 

 でも今は、私との思い出に浸ってほしいな。

 

 追伸 私の後を追うのは自己責任だからね」

 

「いや、俺に何があってお前に何があったんだよ」

 

 金庫の中身を見られる前提だっただろうことはすぐに気づいた。

 どうやら、自分も追い詰められていたが、親友も監視の目があったらしい。

 それと親友が邪教徒だったのは事実らしい。

 

 俺は考え、考えて……覚悟を決めて、ベルを鳴らした。

 楓が苦手だとぼやいていたメイドが入ってくる。

 

「楓様、お目覚めでしょうか」

「実は、何も思い出せないんだ。思い出せたのは俺の名前と、封魔宮 冬芽って名前だけ。風磨宮冬芽はどこにいる?」

「それは……既に亡くなっています。楓さま、それは記憶喪失ということでしょうか?」

「……そ、うなのかもな。どうして、亡くなったんだ?」

「貴方様が面会に行った時、貴方様の剣を抜いて、自らの心臓を貫いてです」

「そ、うか。しばらく1人にしてくれ」

「かしこまりました。食事の準備をして参ります」

 

 

 メイドが去った後、俺は拳を握りベッドを叩いた。

 

 いくらなんでも、勝手すぎるだろ!!!

 

 全然、全然わからねぇよ!

 

 とにかく、メッセージがあれだけのはずはない。

 思い出に浸れというのがヒントだ。

 思い出せってことだ。いくつか心当たりはある。

 

 ああ、でもその前にメイドから情報収集だな。記憶喪失者があっちこっちふらふらしてたら不自然だ。

 

 俺の心には嵐が吹き荒れていた。

 

 親友が、忌むべき邪教徒だった。

 

 親友が、命をかけて助けてくれた。

 

 助けてくれた方法が、恐らく邪教の秘儀だった。

 

『私は、神の奇跡ってあると思うよ』

 

 そういった楓を思って、俺は泣いた。

 

 俺たちは双璧の騎士。

 

 なのにどうして、一緒に戦わせてくれなかったのだろう。

 

 




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