魔都精兵のスレイブ:紅鬼伝   作:マーベルチョコ

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第13話 陰陽寮の異常者

再び十番組の会議室で仁太郎の処遇を決める会議が始まった。

仁太郎は恋のテストにクリアしたため今後の扱いをどうするか決めるためだ。

 

「32号は私のところで預かるわ」

 

開口一番に恋がそう言うと全員の視線が集まる。

 

「大丈夫なのかい?手を抜いていたとは言え足元を掬われたのに」

 

「大丈夫です。次はああはならないように徹底的に調教します」

 

りうの指摘に即答する恋の雰囲気は有無を言わさないもので全員が押し黙る。

しかし、その時天花は内心焦っていた。

 

(不味い……このままではお兄さんが潰されてしまう)

 

風夏との約束もあり、出来るだけ仁太郎を守ろうとする天花だが先のテストといい恋は仁太郎を殺すのではないかと危惧している。

何か案はないかと考えているとある事を思いついた。

 

「総組長、それであれば私の六番組でも預からせていただく事は出来ないでしょうか?」

 

「どういうことかしら?管理するのであれば一つの組で充分でしょう」

 

「利用するにしても皆が彼の事を知らなければ利用することもできません。なので各組で一定期間の試験運用を提案します」

 

天花の提案に恋は少し考え、口を開いた。

 

「いいわ。その案でいきましょう。全組で行なうとのことだけど順番はどうしようかしら?最初は私のところで決まりね」

 

「言い出した私は次でお願いします」

 

「じゃあその次はウチで預かるぜ!」

 

預かる順番は十番組、六番組、二番組……と決まっていった。

 

 

その後、治療を終えた仁太郎は十番組の組長室に立っていた。

執務机に座る恋と向き合う。

 

「今日から1ヶ月間、貴方は十番組で管理するわ。主に寮の管理をして貰う予定だけど醜鬼が現れた際には一緒に来て貰う。管理業務については後で管理人と話し合いなさい。分かったかしら?」

 

「あぁ、分かったよ。1ヶ月経ったらどうなるんだ?」

 

「次の組に管理が移るわ。別に私だけでもいいのだけれどもね」

 

恋はそう言うと机の引き出しからある物を取り出し机の上に置く。

 

「それではまず最初にコレを付けなさい」

 

「……首輪?」

 

それは犬などに付ける首輪だった。

 

「貴方を管理するって言うのは本当だけれども、もう一つの目的は貴方を魔防隊に従属させることよ。これは最初の調教よ」

 

いい笑顔で言ってくる恋に仁太郎は顔を引き攣らせる。

 

「それはあれか?何か特殊な仕掛けがあるとかそんな物か?」

 

「無いわ。ただの首輪」

 

「何で付けなきゃいけないんだ?」

 

「私、犬が好きなのよ」

 

「俺は犬か!?」

 

首輪を床に叩きつけて抗議する仁太郎に恋は少し不満そうにため息を吐き、立ち上がる。

 

「犬なんてそんな上等な物では無いわ。今の貴方は野良犬」

 

恋は首輪を拾って仁太郎に近づく。

 

「貴方の実力は前のテストで分かったけど、貴方が私達に従うかどうかは疑問を持ったわ」

 

「だからアンタらに従うって……」

 

「言葉だけなら何とでも言えるわ。だから……」

 

恋は仁太郎の襟を掴んで地面に倒し、足で両腕を押さえつけた状態で馬乗りになる。

 

「のわっ!?」

 

「貴方を屈服させて信頼を取らせてあげる」

 

退かそうと身動きするが桃で身体能力が高い恋に敵う筈がなかった。

 

「やっぱり鎧を着なければ一般人と同じなのね」

 

「なら鎧を着てやろうか?」

 

「いいのかしら?鎧を着る時に炎が出て、私の服が燃えてしまうわ。それともそれがお望み?」

 

挑発的な笑みを浮かべる恋に仁太郎は少し恥ずかしそうにして顔を逸らして、大人しくした。

 

「いい子ね♪」

 

恋は楽しそうにしながら仁太郎の首輪をかけた。

 

『無様だな』

 

(うるせえよ……!)

 

首輪をつけられた仁太郎を見て覇鬼が鼻で笑い、恋に気付かれないように覇鬼を睨みつけた。

 

「そこにいるのね。調書にあった覇鬼という醜鬼は」

 

しかし総組長である恋はそれを見過ごさなかった。

 

『誰が醜鬼だ!あんな醜い奴らと一緒にするな!!』

 

「えっ、何でバレたんだ?見えるのかよ?」

 

「見えないけど貴方の視線を追えばどこにいるかは分かるわ。ちなみに今どんな顔してるかしら?」

 

仁太郎はチラッと覇鬼を見る。

 

「めちゃくちゃ怒ってる」

 

「そう、ならその醜鬼も調教対象ね」

 

仁太郎はやっぱり首輪が鬱陶しくなり、外そうと引っ張るがびくともしない。

 

「無理よ。その首輪には私の能力で固定させて貰ったわ。私が許可しない限り外すことは出来ない」

 

得意げに言う恋に対して、仁太郎は顔が青ざめる。

 

「さあ、今日は出歩くわ。貴方に会いたいって言う人がいるの」

 

「会いたい奴?」

 

「そう。貴方と同じ陰陽寮の異常者よ」

 

 

恋は仁太郎を連れて十番組の敷地内のある建物へと向かっていた。

 

「陰陽寮に行くんだよな?確か陰陽寮はあっち側にあるって資料に書いてあったはずだけど」

 

「そうね。だけどその人はその考え方と研究の仕方に陰陽寮と折り合いが悪くて爪弾きにされたのよ。けれど力は使えるから私の判断でここで研究させているの」

 

「へぇー、どんな人なんだ?」

 

「会えば分かるわ」

 

そうこう話している間に仁太郎を待つ人物がいる建物にやってきた。

寮と同じく和風の作りなっているが寮よりも近未来的な作りになっていた。

中に入ると様々な機械が並んでおり、仁太郎は物珍しそうに見ていた。

 

「東研究員、例の異常体醜鬼を連れてきたわよ」

 

恋が声をかけると部屋の奥から黒の長髪で小柄な女性が現れた。

顔立ちは綺麗というより可憐と言え、10人が10人振り返る顔をしている。

 

「やあやあ総組長!やっと実験体を連れてきてくれたんだね!待ち侘びたよ!」

 

「なあ、この人俺のことを実験体って言ったぞ?大丈夫?」

 

「東研究員、現時点で分かっていることは?」

 

「無視するのか?おい」

 

睨む仁太郎を無視して東研究員と話し出す。

 

「体は普通の人間と全く一緒。桃の能力もないし、醜鬼の痕跡もない。全くどうしてあんな能力を使っているのか気になるねぇ!!」

 

そう言いながら仁太郎の体をペタペタと触り、仁太郎は体を触れられる恥ずかしさと東研究員から僅かに漂ってくる香りに顔が赤くなる。

 

「いや、あのちょっと触りすぎ……」

 

「何赤くなってるの?気持ち悪い。東研究員は男よ」

 

「はあ!?こんな可愛い顔してるのに男ぉ!?」

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃないか!改めて自己紹介を。僕の名前は東 百紀(あずま ももき)。陰陽寮の研究員だけどほとんど魔防隊に所属しているもんさ。あ、あと男だから。チ⚪︎コも付いてるし」

 

「あ、あぁ……よろしくお願いします。俺は赤木 仁太郎です」

 

突然の下品な言葉を躊躇なく話す百紀に仁太郎は苦笑いしながら握手する。

 

「さて、それじゃあ裸になって!」

 

「は……?」

 

突然の申し出に仁太郎は表情が固まる。

 

「これからもっと細部まで調べるから早く裸になって!拒否権なんか無いよ!」

 

百紀は仁太郎の作業服に手を掛けて引っ張ってくる。

 

「ちょっ、ちょっと待って!イキナリ過ぎませんか!?山城組長も止めてくれよ!」

 

「…………」

 

恋に助けを求めるが恋は顎に指当てて考え込んでいる。

 

「ねぇ、何で私にはタメ口なのかしら?」

 

「いきなり蹴りをぶつけてくる奴は尊敬できないし、敬語を使いたく無い」

 

真顔で言ってくる仁太郎の言葉に恋の額に青筋が浮かび上がった。

 

「………東研究員、この犬畜生を徹底的に調べ上げなさい。黒子の数から毛穴の数までね」

 

「了解です!」

 

「え!?ちょっ、ちょっと!?」

 

この後、めちゃくちゃ調べられた。

 

 

その後体の隅から隅まで調べられた仁太郎は涙を流し、乱れた服のまま地面に寝そべっていた。

 

「屈辱だっ……!」

 

「やっぱり身体は普通の人間と同じ。桃の能力の因子も見つからなかった」

 

「そう」

 

泣き崩れている仁太郎を無視して、百紀と恋はデータを眺める。

 

「だから力の出所は『魂』じゃないかって考えられるね。彼には力の所以と考えられる鬼が見えるんだろ?計測器、能力で物理的に観測できないならそれはそういったスピリチュアル的な物だと思うよ」

 

百紀の言葉に取り敢えずは納得した恋は仁太郎を連れて研究室を後にするがその際、

 

「次回は君の力を計測するから!そんなに大変じゃないよ。4〜5日寝ずにぶっ通しでやればすぐだし!」

 

といい笑顔で百紀に言われ、顔を引き攣らせた。

そして会議室に戻ると恋から話し出す。

 

「東研究員との検査はこちらから声を掛けた時に向かいなさい。これからもう一度テストするから」

 

「テストって……ここに入るためのテストは受けたろ?」

 

「入るのはね。だけど使えるかは別よ」

 

恋は真っ直ぐに仁太郎を見て笑みを浮かべた。

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