魔都精兵のスレイブ:紅鬼伝   作:マーベルチョコ

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第15話 鬼であろうと

いつも通り管理人の仕事と雅と要のエサやり(威嚇と遊ばれる)をこなして、百紀から呼び出しをもらい研究室で研究をしているとふと外の方に違和感を感じ、視線を向けた。

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんか変な感じが……」

 

次の瞬間、十番組寮内が激しい衝撃に襲われ、研究室内の備品がいくつか倒れてしまう程だった。

 

「あー!?データが!!」

 

「な、何だ今の?地震?」

 

百紀は悲鳴を上げて、仁太郎は戸惑いの声を上げた。

 

 

○

時間は少し遡り、十番組寮を一望できる離れた丘で紫黒は寮を眺めていた。

 

「目的のモノはあそこか。魔防隊の結界も大したものだね。探し出すのに結構時間がかかってしまったよ。……さてお前たち、目標はあの中だ。彼が現れるまで好きに暴れればいいよ」

 

紫黒はそう言いながら後ろを振り向く。

そこには数多くの通常醜鬼と複数の異常体醜鬼がいた。

その中でも体中の亀裂から赤い光を発している醜鬼が前に出てくる。

 

「先鋒は君だ。その身を捧げて来てくれ」

 

そしてその後、醜鬼たちは結界前の地面から現れ、亀裂の入った醜鬼が結界に向かって体当たりをした。

ぶつかった瞬間、醜鬼は大爆発を起こし自爆したがそれを引き換えに結界を破壊した。

次々と醜鬼たちは寮に向かって走り出し、暴れ始めた。

 

「なにごと!?」

 

「醜鬼!?どうして結界が!?」

 

組員たちも襲撃に組員たちは驚きながらも対処していくが突然の事態のため押され気味だった。

そして襲撃は百紀により研究室にいる仁太郎にも知らされた。

 

「あー、なんか寮が襲撃を受けてるっぽいね」

 

「マジかよ!?助けに行かないと!」

 

走り出そうとした仁太郎を百紀が止めた。

 

「待ちなよ。その首輪がある限り君が行っても戦えないだろ?それよりもここにいた方がいい。一応醜鬼用の対策もしてるから」

 

百紀はそう言ってボタンを押すと出入り口にシャッターが閉まっていく。

仁太郎はそれを見るとなんの躊躇もなく駆け出した。

 

「何してんだよ!」

 

「いや、襲われるから防御壁を下ろしたんだけど……え、いや危ないって!下手したら死ぬよ!?」

 

下ろされるシャッターのギリギリを転がりこんだ。

外に出ると多くの醜鬼が暴れており、組長がいないなか組員たちが対抗していたが通常醜鬼の数と異常体醜鬼に劣勢だった。

燃え盛る炎と半壊した寮を見て仁太郎はしばし呆然としてしまう。

 

「きゃあっ!」

 

組員の1人が醜鬼に押し倒されるのに気づいた仁太郎は我に戻り、体から炎を吐き出しながら助けに入る。

 

「ガアァァァッ……グガッ!?」

 

顔を殴りつけ倒すと倒れた組員に声をかける。

その組員は先日、仁太郎に暴行した若い組員だった。

 

「大丈夫か!?」

 

「32号!?何で私を助けて……」

 

「何でって、助けるのに理由なんかいるか!?」

 

「……っ!」

 

組員はそう言われて複雑そうな表情になるが、仁太郎の死角にいた醜鬼が遅い掛かろうとしてくるのに気付きすぐに立ち上がる。

 

「どいて!」

 

醜鬼を倒すと仁太郎に少し恥ずかしそうな表情をしながら小声で話す。

 

「これで、この前の借りは返したから」

 

「……別に気にしてないって」

 

「2人とも!無事かしら!?」

 

そこに上司の組員が数人の部下を引き連れて助けに現れた。

 

「突然の敵襲と結界の破壊に全員の足踏みが揃っていない!一旦集まりたいけど異常体のせいで集まれないわ」

 

「じゃあアイツらの興味を惹かさればいいんだな」

 

仁太郎は少し離れると全身から炎を滾らせて炎の柱を天高く燃え上がらせた。

 

「ほら、こっちに来いよ」

 

全ての醜鬼は炎の柱を出している仁太郎に気がつくと襲っていた組員を無視して仁太郎に向かっていく。

醜鬼が向かってくるのに対して仁太郎は構えをとったが、それは一瞬ですぐさま背中を向けて走り出した。

 

『戦わないのかよ』

 

「あの数は無理だろ!?」

 

視界いっぱいの醜鬼の群れに仁太郎は逃げ出し、覇鬼は落胆した表情をしながらため息を吐いた。

暫く逃げていると仁太郎に声がかけられた。

 

「32号!!伏せなさい!!」

 

その声に従って地面に伏せると背後から追いかけて来た醜鬼達に強烈な一撃が放たれた。

大爆発を起こし、通常醜鬼は殆ど倒したが異常体は生き残っていた。

 

「32号、立てるかしら?」

 

「ああ、助かったよ」

 

上司が仁太郎に声をかけてくる。

その後ろには複数の組員を引き連れていた。

 

「貴方のおかげで体制を整えられたわ。これでケリをつける」

 

仁太郎も立ち上がって組員達の横に並び、両陣が一斉に動き出してぶつかり合う。

組員達は仁太郎が前に指摘したみたいなワンマンプレーはなく互いに助け合いながら戦闘をしており、それは仁太郎にも同じで助けた組員と上司が助けに入ってくれていた。

戦闘は徐々に魔防隊が押しており、あともう少しというところで上司が仁太郎に声をかけた。

 

「32号!貴方は寮内に行って!何体かの醜鬼が寮内に入ったわ!中には銀杏をはじめとした非戦闘員がいるの!……醜鬼の貴方に頼むのは癪だけど今あの子達を助けるには貴方の力が必要よ!貴方の力なら今の醜鬼の群れを突破出来るはず、行きなさい!!」

 

「ああ!わかった!」

 

仁太郎は拳に炎を纏わせて寮の前に固まっている醜鬼に目掛けて突撃する。

拳をぶつけると醜鬼達は爆散し、そのまま寮の壁を破壊して中に入っていく。

醜鬼たちが仁太郎を追いかけようとするがその前に上司をはじめとした組員が守りを固める。

 

「お前達の相手は私たちよ」

 

組員達は仁太郎を毛嫌いしているかもしれないが今は仲間を助けるという目的で仁太郎と十番組組員との想いは一つになった。

 

 

○

銀杏達は恋が寮内の中庭に作った日本庭園に避難していた。

中庭の片隅に銀杏の結界を張って避難していたがそこに異常体醜鬼が現れ、結界を壊そうと攻撃を仕掛けてきた。

銀杏の結界は本人曰く、身持ちが固いので結界も鉄壁とのことで実際に堅固な結界だが複数の異常体醜鬼が長時間結界を攻撃し続けて銀杏の限界が近かった。

 

「くっ…うぅ……!」

 

「銀杏ちゃん……」

 

脂汗を掻きながら結界の維持に努める銀杏に管理人である女性は不安そうにする。

やがて醜鬼が重い一撃を結界にぶつけると結界は粉々に砕けちった。

 

「きゃあっ!!」

 

衝撃で倒れてしまう銀杏に醜鬼が近づいていく。

その間に2つの影が割り込んだ。

 

「バウッ!!バウッ!!」

 

「ガウゥッ!!」

 

雅と要が2人を守るように立ちはだかるが醜鬼はそれを見て笑みを浮かべると2匹を両手で掴み上げた。

 

「キュウゥゥ……」

 

「やめて!」

 

苦しそうな鳴き声を上げる要と雅に銀杏が悲鳴を上げるが醜鬼は下卑た笑みを浮かべるだけだった。

正に絶対絶命の事態の中、銀杏達の背後の壁が破壊され、そこから仁太郎が現れた。

即座に事態を判断した仁太郎は要と雅を捕まえている手を鋭い爪で引き裂き、助け出す。

 

「備前さん!管理人さんも無事か!?」

 

「私と管理人さんは激大丈夫です!だけど要ちゃんと雅ちゃんが……」

 

締め上げられた雅と要は弱っていた。

仁太郎は2匹をひと撫ですると醜鬼と対面する。

 

「この子達を頼む。普段可愛げのない奴らだけど死んでしまったら山城組長が悲しむ」

 

仁太郎は痛みで顔を歪めて睨んでくる醜鬼に近づく。

醜鬼は怒りに任せて殴りかかるが、それを簡単にいなしてがら空きの胴体を殴る。

醜鬼は一撃で倒れ、次の敵に向かおうとするが突然足元から黒い蛇が数匹這い上がってきた。

 

「何だ?」

 

仁太郎は慌てず体から炎を出して燃やそうとしたが燃えずに仁太郎を縛り上げる。

 

「くそっ、こいつら!」

 

もがくが更にキツく縛り上げてくる。

その時、背後から大きな気配を感じた。

縛られているせいで目を向けることができないが、庭園の周りを囲うように燃え広がっている炎の奥に何かがいるのはわかった。

 

「誰だ!?ここを襲撃した奴か!?」

 

仁太郎は確信していないが明らかに襲ってきた中では異質な存在に踠きながら叫ぶ。

 

「君のことはずっと見てたよ。いい加減捕まえないと他に気付かれちゃうからね。これで終わりにしよう」

 

声色で女性だと分かるが姿形も分からない相手に追い込まれていき、やがて足元が黒い沼に変わり沈んでいく。

不味いと思った瞬間、仁太郎に纏わりついていた蛇が弾け飛んだ。

 

「っ!?」

 

「な、何だ?」

 

困惑しながらも顔を上へ向けるとそこには恋が空中で佇んでいた。

 

「私が少し留守にしている間によくもやってくれたわね」

 

無表情のままそう言うが仁太郎には怒っているとハッキリ分かった。

そうして中庭と寮周辺で暴れている醜鬼に目を向けると瞳の紋章が切り替わる。

片足を引き上げると足先にエネルギーが収束されていき、そのまま地面に向かって振り抜くとエネルギーは拡散し、全ての醜鬼に命中した。

醜鬼はその一撃で全て倒され、戦っていた全員がその圧倒的な力に驚いて固まっている。

 

(流石に分が悪いか……惜しいけどここは退いておこう。まだ姿をバレるわけにいかないしね)

 

仁太郎を襲った人物、紫黒は足元に影の沼を作り出し逃げようとする。

 

「まだそこに何かいるわね」

 

しかし、恋はそれを見逃さなかった。

即座にエネルギーを貯めて放つ。

 

「っ!?」

 

「……逃げたか」

 

紫黒はギリギリの所で逃げることができ、恋の攻撃は建物を吹き飛ばすだけに終わった。

 

 

○

その後、怪我をした組員達は治療されに行き、動ける者は寮の修復作業をしていた。

仁太郎も傷を負ったが超回復で傷は癒えており、瓦礫の撤去作業を手伝っていた。

その時、恋が治療された雅と要を心配そうにしているのが見えて、瓦礫を片付けると近づいて行った。

 

「雅と要は大丈夫そうか?」

 

「ええ、優秀な治療師が処置を施してくれたわ。今は疲れて眠っているわ」

 

そう言って包帯に巻かれ、眠っている雅と要を優しく撫でた。

 

「何でこの子達を助けてくれたのかしら?助けるなら銀杏達が先じゃなかったかしら?」

 

「何でって……こいつらに何かあったらアンタが悲しむだろうし、俺はアンタに笑顔でいて欲しかったからだな」

 

「………そう」

 

当たり前のことだ、といった風にいう仁太郎の言葉に恋は彼に見えないように顔を少し俯かせる。

その頬は赤く染まっていた。

 

「私の家族を助けてくれて……ありがとう」

 

「おう!」

 

笑顔で答える仁太郎の顔を恋は何故か直視できずに横目で少し見ることしか出来なかった。

 

 

○

襲撃から数日が経ち、十番組の研修期間が終わり六番組に移動する日がやってきた。

仁太郎、恋、百紀は中庭の椅子に座って仁太郎が淹れたお茶を飲んでいた。

 

「今日から六番組に移動ね。仕事は完璧になったかしら?」

 

「まだまだ練習あるのみだな。完璧なんて程遠いよ」

 

「ふっ、やる気があって結構だわ」

 

襲撃事件から恋は仁太郎に対して態度が柔らかくなっていた。

相変わらず戦闘訓練、業務に対しては厳しく接していたが日常では態度が変わっていた。

 

「仁太郎くんさぁ。本当に行くのかい?漸くここに慣れてきた所なんだからずっといとけばいいじゃないか」

 

「そうはいかないって。早く俺を魔防隊に認めさせないといけないんだから」

 

百紀が不満を漏らす。

仁太郎はそれを苦笑いしながら断ると更に残念そうにする。

 

「はぁ、ここから離れられると手軽に研究ができないんだよね。手続きが面倒だし……ならせめて最後に腕と足を一本ずつ置いて行ってくれない?どうせすぐに生えるんだし」

 

「ぶっ飛ばすぞ。テメェ」

 

百紀の狂気じみた言葉に仁太郎のこめかみがピクリと動いた。

その様子を見ていた恋がふと口を滑らした。

 

「でも、そうね。寂しくなるわね」

 

「「え…!」」

 

まさかの恋からの発言に仁太郎と百紀も驚く。

 

「私の訳がないでしょ。この子達がよ」

 

呆れた様子で言いながら視線を向こうに向けると中庭で遊んでいた要と雅がやって来た。

怪我から完治し、動き回っても問題なくなっていた。

恋に撫でられると今度は仁太郎の方に恐る恐ると近づいていく。

仁太郎は手を広げて招くと2匹は尻尾を振りながら擦り寄っていき、気持ちよさそうに撫でられる。

 

「最初の頃と比べるとコイツらもだいぶと懐いてくれたよな」

 

「貴方に感謝してるのよ」

 

すると少し離れた所で黒い穴が出現し、六番組組長 出雲天花が現れた。

 

「じゃあ、そろそろ行くわ」

 

仁太郎は荷物を持って天花に近づいていく。

離れていく仁太郎の背中を見て、恋は声をかけた。

 

「赤来仁太郎!」

 

仁太郎は初めて恋に名前を呼ばれて驚き、振り向く。

 

「せいぜい殺されないように頑張りなさい!」

 

恋なりの激励に仁太郎は笑みを浮かべ、拳を高く上げて答えた。

天花と仁太郎は姿を消し、中庭に2人と2匹しかいなくなると百紀が話しかけて来た。

 

「さっきのワンちゃんたちが寂しくなるって言ってたけどさ。あれ嘘でしょ?寂しいの組長じゃない?」

 

「………なに馬鹿なこと言っているの。そんな訳ないでしょう」

 

恋はそう言って足早に仕事に戻り、百紀はその様子を見てぼそりと呟いた。

 

「素直じゃないねぇ」

 

 

○

六番組に着いた仁太郎は早速、天花に呼び出しをくらっていた。

 

「異常体醜鬼32号、いえ赤来仁太郎。貴方に早速任務を与えます」

 

「……っ、はい!」

 

仁太郎はいきなりのことで驚くが姿勢を正して聴く姿勢になる。

天花は真面目な顔をしていたが一転して笑みを浮かべた。

 

「私とデートしましょう?」

 

「はい!…………えっ?」

 

 

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