魔都精兵のスレイブ:紅鬼伝   作:マーベルチョコ

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第16話 デート(帰省)

「私とデートしようか?」

 

「はい!…………えっ?」

 

天花の突然の言葉に勢いよく答えたがその内容に呆然としてしまう。

それを尻目に天花は仁太郎の腕を引っ張る。

 

「まずは服を変えようか。その作業服じゃ外に出てたら格好が付かないでしょう?」

 

「え?はぁ!?デート!?いきなり!?なんで!?」

 

「? 私とのデートは嫌かな?」

 

戸惑う仁太郎を見て、天花はいたずらっ子みたいに笑みを浮かべて質問すると仁太郎は更に戸惑う。

 

「え?い、いや出雲組長みたいな綺麗な人とデートできるのはそれは嬉しいけど……」

 

「ふふ、素直だね。素直なのはいいことだよ」

 

そう言われながら用意された服を着替え、六番組が管理する門に着く。

 

「これが六番組が管理する門。この向こう側は現世、つまり市民が住む日本に繋がっている。今日は君をある所に連れて行きたくてね」

 

「は、はぁ……」

 

あれよあれよ流されるままに来てしまった仁太郎の顔は疑問の表情でいっぱいだった。

 

「今から行く所は君なら喜んでくれるはずだよ」

 

天花は先程までの笑みではなく微笑んで仁太郎に行った。

 

門を通り、外を出ると天花は早速仁太郎の手を掴んで自身の能力である『天御鳥命』で移動する。

何度か転移するとある道で止まった。

その道は仁太郎にとってとても見覚えがあった。

 

「ここは……」

 

「もうどこに連れて行こうとしているかは分かったよね?」

 

仁太郎と天花は道を進んでいくが段々と仁太郎の足が速くなっていく。

やがて仁太郎は足を止めて目の前の建物を見る。

そこは『ヒノデ施設』、仁太郎の家だ。

 

「………」

 

「これで風夏ちゃんとの約束を守れるよ。さぁ、インターホンを押して」

 

仁太郎は促され、指が震えながらインターホンを押す。

 

「はーい、どちらさ……ま……」

 

「おばさん……ただいま」

 

以前より少し痩せた祥子が仁太郎の顔を見て、一瞬驚いた表情するとみるみると目に涙を溜めて仁太郎の手を握る。

 

「…‥お帰りなさい」

 

祥子の言葉に仁太郎は安心したように笑みを溢した。

すると今度は奥から風夏が現れる。

 

「先生、どうしたの?」

 

「風夏、ただいま」

 

現れた風夏に仁太郎が声をかけると驚いて固まってしまった。 

再び仁太郎が声をかけようとすると風夏が抱きついてきた。

 

「うおっ!?」

 

「仁太郎……じんたろう……!やっと帰ってきた……!」

 

涙を流しながら胸に顔を埋める風夏の頭を仁太郎は優しく撫でた。

優しく抱きしめていると施設の奥から今度は子供達が出てきて仁太郎を見つけて、大騒ぎと大号泣が始まった。

その後は泣き喚く子供達をなんとか宥めて中に入ると天花は祥子と風夏でお茶を飲んでいた。

 

「改めて出雲天花さん。仁太郎を連れ帰って来てくれてありがとうございます」

 

「ありがとうございます!」

 

祥子と風夏は頭を下げて礼を言うと天花は手で制する。

 

「私は魔防隊として当然のことをしたまでですよ。家族を元のところに戻すという業務をね」

 

「そうですか……実際のところ魔防隊と陰陽寮はあの子の扱いをどうするつもりでしょうか?」

 

「………それについては夜に話します。子供達には聞かせられないので」

 

そう言って嬉しさの余りに仁太郎を揉みくちゃにしている子供達を見る。

そして夜になり遊び疲れた子供達は全員寝てしまい、仁太郎、天花、風夏、祥子がリビングで話し合っていた。

 

「現在、赤来仁太郎は魔防隊で預かりの身となっていますが今でも陰陽寮から引き渡しの要求は来ています」

 

「マジか……」

 

「引き渡しって、魔防隊で預かっておけばそれでいいんじゃ……」

 

「魔防隊と陰陽寮は全くの別組織と考えていい。魔防隊は人類を守る為に戦うけど、陰陽寮は人類繁栄のために何でもする……今はそんな違いくらいでいいけど、赤来くんの身柄を確保したらどんな研究をされるか……」

 

風夏の質問に天花は神妙そうに言う。

 

「研究なら十番組でもされましたけど?」

 

「百紀研究員だね。彼は陰陽寮所属だけどほとんど魔防隊みたいなものさ。……陰陽寮の研究は彼の研究が100倍優しく感じるほどだと思ったほうがいいよ」

 

天花のその言葉に仁太郎は身震いした。

 

「……陰陽寮に仁太郎が取られないようにするにはどうすればいいのでしょうか?」

 

祥子が核心をついたことを聞いた。

 

「ハッキリ言って貴女達にできることはありません」

 

「そんな……!」

 

風夏がショックを受けた顔になるが天花は希望を展示した。

 

「助かるためには赤来くんが頑張らないといけない。魔防隊は君に価値があるかどうかを判断するためにお試し期間を設けているよね?」

 

「ああ、総組長から説明されました」

 

「これは君に知られてはいけないんだけど、君はその期間に全組長から信頼を勝ち取って魔防隊に所属してもいいと言われないといけない。でないと君は陰陽寮でモルモットか死刑になるだろうね」

 

「全組長から信頼を……え、待って俺、死刑になるの?」

 

まさかの発言で仁太郎が驚くが無視して話が続く。

 

「今のところ君の所属に賛成なのは私、つまり六番組と東組長の九番組、そして山城総組長の十番組」

 

「九番組、東組長……」

 

祥子は九番組に何か思うところがあるのかそう呟き、仁太郎は気になったが後回しにした。

 

「他の組は様子見派と反対派で半々に分かれているね。反対派は中々強情な人たちだから頑張って!」

 

「頑張って、って言われても……」

 

応援されても不安そうにする仁太郎だが天花には大丈夫だという自信があった。

 

「君はあの山城総組長を賛成派に傾けたんだ。なら大丈夫だよ」

 

恋は使えるものは何でも利用するという価値観で元々賛成派だが、それでも総組長に上り詰めた人物が人を見誤るようなことはしない。

その恋を納得させたのだから希望はある。

 

「………まぁ、頑張るしかないのは分かりました。覚悟を決めます」

 

覚悟を決めた仁太郎を見て天花は笑みを浮かべる。

その時、ふと仁太郎はあることが気になった。

 

「そういえば何で出雲組長は俺にそんなに協力的なんですか?……助けて貰っている立場ですけど、普通反対派の人たちの反応が普通かなって思うんですけど……」

 

「それは………」

 

天花は以前仁太郎に会いに来た時に正体を詰問した時の様子を思い出した。

嘘をつく時の人間は大体2通りの反応をする。

饒舌になって自分が嘘をついていることを誤魔化すか、黙り込んで反応を示さないかだ。

しかしその時の仁太郎はしどろもどろになりながらどうにか誤魔化そうとしていた。

典型的な反応に天花は悪戯を隠す子供っぽく見えて苦笑いが浮かびそうになり、家族にも容疑がかかるかもしれないと言ったときにその様子が一変した。

 

『家族は関係ない。変な事を言うのはやめてくれ』

 

突然真剣な顔つきになり、それ以上は許さないと言わんばかりの雰囲気に驚いた。

それと同時に強い興味が湧いてしまった。

何かを守る為に強く見せる、獣のような男だと。

 

「君が面白いから、かな?」

 

「どういうことですか?」

 

「ふふ、何でもないよ。それより敬語はやめて欲しいな。立場は私が上だけど歳は君の方が上だ。今はお試し期間なんだしプライベートの時は普段通りでいいよ」

 

「わかり……分かった、ありがとう。これからよろしく」

 

「こちらもよろしくね」

 

「………」

 

言葉遣いを崩して話す仁太郎に天花は微笑んだ。

そして2人の雰囲気にただならぬ感じがした風夏は恩人である天花を少しジト目で睨んでしまった。

 

 

夜になり、2人は六番組寮に戻った。

流石に二日間も仁太郎を現世にいさせておくのはできなかったためだ。

 

「あっちでは言えなかったけど妹さん、風夏ちゃんは来年には魔防隊入りが決まっているんだ」

 

「そうなのか!?」

 

「魔防隊は万年人手不足だからね。成績も優秀、異常体醜鬼を単独で迎撃できる能力が当然だろうけど、一番は……」

 

「俺への牽制……か」

 

仁太郎の言葉に天花は黙って頷く。

仁太郎は結果的に人質みたいになってしまった風夏のことを思い、悔しく思うが不満を漏らすなら魔防隊に自分の価値を見せつけてやればいいと奮起する。

 

「だったら風夏が入隊する前に魔防隊に俺を認めさせてやる!」

 

「その意気だよ。お兄ちゃん♪」

 

「……あ、あのお兄ちゃんって言うのやめてくれ。なんか恥ずかしい」

 

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