魔都精兵のスレイブ:紅鬼伝   作:マーベルチョコ

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第18話 六番組での生活

六番組に来て数日が経ち、仁太郎も六番組に慣れてきたがそれでも色々な面倒ごとに巻き込まれていた。

 

○サハラの寝相

六番組組員 若狭サハラは趣味が寝ることと言うほどよく寝る。

その日も掃除していた仁太郎だがリビングの掃除をしようと向かうとソファで寝ているサハラを見つけた。

 

「むにゃ〜……」

 

「なんちゅう格好してるんだ……」

 

気持ち良さそうに寝ているサハラだが掛け布団はズリ落ちて、薄着の格好が露わになっていた。

仁太郎は目のやり場を困らせながら掛け布団を戻そうとする。

しかし、その瞬間サハラは仁太郎の腕を掴み組み技を仕掛けてきた。

 

「ぬぉっ!?」

 

「むにゃむにゃ……」

 

咄嗟に仁太郎は体に力を入れて倒れないように支えるがサハラの健康的だが程よく肉がついた柔肌の太ももが顔に押し付けられた。

しかも寝心地が悪いのか仁太郎を押し倒そうと力を込めてくる。

 

「どんな寝相だよ!?お、おい!サハラさん!?サハラ!?起きろ!起きろよ!」

 

必死に叩いたり、揺らしたりするが全く起きる気配がない。

仕方なしに床に下ろそうとすると今度は足の位置を変えて首を絞めてきて、今度は股の間に顔が挟まってしまう状態になってしまった。

 

「むごっ!?」

 

「んっ……!」

 

仁太郎が驚いて声を出してしまうとサハラは僅かな違和感を感じて声を漏らしてしまう。

それが気に入らなかったのか今度は体に腕を回しそうとするがふと動きを止めた。

 

「………」

 

「さ、サハラ……?」

 

サハラは締め付ける力を緩めて、今度は寝ているのに器用に仁太郎の前に移動すると真正面から抱きついてきた。

 

「ぽかぽか〜……♪」

 

そう言いながらサハラは仁太郎の胸に頬を擦り付けながら更に気持ち良さそうに寝始めた。

仁太郎は困惑しながら体に当たる柔らかい感触を感じて少し頬を赤くした。

 

「どうしよう……」

 

「zzzzz」

 

そんな呟きとサハラの寝息がリビングに静かに響いていた。

 

 

それから暫く経ち、仁太郎は八千穂と天花の前で正座させられていた。

 

「それでぇ〜?お前は管理人の仕事もせずのうのうと昼寝しとったというのか?夕飯もまだ出来ていないとは大した重役ぶりじゃのう?えぇ?」

 

八千穂は嫌味たっぷりに正座している仁太郎に詰め寄る。

仁太郎も自分が悪いと思っているので黙っているが八千穂の煽りにこめかみがぴくぴくと動いていた。

 

「もういいよ、八千穂。今回はサハラも悪いみたいだし」

 

「ごめんなさぁい」

 

天花は八千穂を宥め、後ろに控えていたサハラも眠そうだが申し訳なさそうにしていた。

 

「それじゃあ夕食の準備を始めてくれるかな?サハラも手伝うように」

 

「すぐにやります!」

 

「はぁい」

 

天花はまだ文句を言いたげな八千穂を引きずってその場を後にすると、サハラと仁太郎だけになる。

仁太郎は立ち上がり、夕食の準備をはじめようとするとサハラが近づいてくる。

 

「今日はごめんね」

 

「いいよ、気にしてないから。でも寝相はなんとかして欲しいな。プロレス技はかけて欲しくないし」

 

ゲンナリしながら言う仁太郎にサハラは反省しているかと思いきや笑みを浮かべて仁太郎に近づく。 

 

「仁太郎くんの体ってとっても暖かくてつい抱きしめちゃった。また一緒に寝ようね♪」

 

「……勘弁してくれ」

 

その後も時折、サハラと無理矢理昼寝させられている仁太郎の姿があった。

 

 

○シスコン同士

仁太郎の仕事は管理人で組員の自室を掃除するのも仕事だ。

勿論、プライベートもあるので掃除されたくない人は事前に申し出ることもある。

しかし六番組では八千穂以外は掃除を仁太郎に任せている。

サハラも当初は掃除を自分でしていたが昼寝を一緒にしてからは許すようになった。

 

床磨きをしていると間違えてバケツを溢してしまい、運の悪いことに水が八千穂の部屋に流れてしまった。

どうするかと悩んだがこのままにしておくと後が怖いと思い、部屋に入る。

入った瞬間、部屋の内装を見て仁太郎は開いた口が塞がらなくなった。

部屋一面に八千穂の妹、日万凛の写真が貼られていた。

もはや狂気的な風景だった。

固まっていると背後から音が聞こえた。

 

「見たな………」

 

「はっ!?」

 

振り向くと八千穂が立っており、その顔は俯いているので伺うことができない。

すると八千穂は能力のポーズを取ると次の瞬間には仁太郎は手足を縛られて地面に倒されていた。

 

「私様の秘密を知ったからには生きては帰さぬ」

 

僅かに汗を滲ませた八千穂が瞳孔が開いた目で話すので仁太郎は冗談で言っているのではないと分かり、焦り出す。

 

「ま、待てって!この部屋のことは誰にも言わないからさ!本当、本当に言わないから!」

 

「他の者にはとうに知られておる。お前に知られたのがダメなんじゃ!」

 

「そんな理不尽なっ!?」

 

話が通じないかと思い、どうにか逃げれないかと周りを見ているとあることに気づいた。

銃口を額に押し付けようとする八千穂に慌てて質問する。

 

「こ、この写真の人って家族の人か!?お前に似てるな!」

 

「当たり前じゃ!日万凛は私様の妹じゃ!」

 

『妹』という言葉に仁太郎は活路を見出した。

 

「妹か!俺にも妹が沢山いるんだ!」

 

「そうか。ならその妹達に遺言はあるか?」

 

銃口を強く押し付けてくる八千穂に仁太郎は更に慌てる。

 

「ち、ちがっ、そうじゃなくて!妹って可愛いよな、ってことだよ!」

 

「ハンッ!何が可愛いじゃ。家族に認められようと必死に努力して、無理して結果に全く結びつかない彼奴など可愛いなど思わんわ!」

 

八千穂はそう言うが仁太郎はその言葉に違和感を覚えた。

 

「ん?でもそんなに頑張ってるのは知ってるし、こんなに写真を貼ってるってことは大切なんだろ?」

 

「な、何を馬鹿なことを!こ、これは……そう!彼奴の変なところを撮って飾ることでああはならんと自分への戒めにしとるんじゃ!」

 

八千穂はそうは言うが明らかに無理があるし、写真には笑顔のものが多い。

仁太郎は座り直して八千穂に向き合う。

 

「素直になれないのか」

 

「なぬ!?」

 

図星を突かれた八千穂は固まるが仁太郎は話を続ける。

 

「素直になれないと後々後悔するぞ。これマジ経験談」

 

「はぁ?」

 

「いいか……」

 

 

それから暫く時間が経ち、天花はサハラを連れて八千穂の部屋に急いでいた。

 

「本当に八千穂が赤来君を部屋に連れ込んだの?」

 

「連れ込んだっていうか無理矢理連れ去ったというか……」

 

サハラは曖昧な表情しながら言うと天花も困惑した表情をした。

 

「とにかく八千穂の部屋に向かうよ。仁太郎君がどんな目に合っているか分からないからね」

 

「りょうかい〜」

 

2人が八千穂の部屋の前に着き、扉を開けると仁太郎と八千穂は向き合って言い合っていた。

 

「日万凛はな。ドジでグズじゃ!目標を明確にしてひたむきに頑張るがいつも直前で失敗してしまう……心配になるがそこがまた可愛いんじゃ!」

 

「分かるわー。頑張ってるところを見るとめちゃ応援する。さりげなく助けに入ったりしちゃうんだよな。あ、お茶どうぞ」

 

「うむ、いただこう。……ふぅ。その助けが気づかれると『余計なことしないで!』と言われるがどうしても手が出てしまう。日万凛は失敗してしまうからもっと私様に頼ればいいものを」

 

「まぁ、気持ちは分からないでもないけど見守るのも一つの手だろ。……そこのところうちの風夏は努力したことが今は身を結んで訓練校の主席だ!すげーだろ!?」

 

「なにおう!?それならば日万凛はな……!」

 

互いに自分の妹を褒めちぎるシスコンに天花は半目になり、サハラは苦笑いを浮かべた。

 

「何かな?これは?」

 

「まぁ……同士だからウマがあったってことですかね〜」

 

ひとまず六番組の最大難敵と仲良くなったのだ。

 

 

○組長の飼い犬?

組長室で書類仕事をしていた天花は最後の書類を片付け、背伸びをして肩をほぐす。

 

「う〜ん……」

 

「お疲れ様、お茶淹れようか?」

 

「うん、お願いするよ」

 

作業を手伝っていた仁太郎も一区切りを終えてお茶を入れてあげ、世間話を始めた。

 

「そういえばみんなって休みの日とかなにしてるんだ?」

 

「……どうしたの?いきなりそんなこと聞いて。私達の私生活が気になる?」

 

天花は仁太郎の質問にニヤリとしながら聞き返す。

 

「あ、いやさ、こんな何もないしいつ襲われるか分からない所でどうやって過ごしているのかな、と思ってさ。昨日も夜中に襲撃があったし気が休まらないんじゃないかなと少し心配でさ」

 

「それなら心配ないよ。この魔防寮は強固な結界で守られているし、みんなももしものことがあっても動けるようにしているから。休日といってもみんな大体寮にいることが多いからね。サハラは寝ること、八千穂は主にトレーニングと妹さんについてかな?みんな思い思いに過ごしているよ」

 

「出雲さんは?」

 

「……私は小説や映画、音楽鑑賞かな?まぁ、それも最近はマンネリ気味だけどね」

 

「マンネリ?またどうして?」

 

天花は少し退屈そうに呟いた。

 

「長く続けていると刺激がなくてね。飽きてきそうなんだよ」 

 

すると天花は仁太郎をじっと見つめてきてニヤリと笑みを浮かべた。

その瞬間、仁太郎は嫌な悪寒が走った。

 

「赤来くんは今、総組長に飼われているんだよね?」

 

「全く違うわ!」 

 

天花のとんでも発言に仁太郎は食い気味に否定した。

その様子を見て、天花はおかしそうに笑う。

 

「ふふっ、君が否定しても総組長は手のかかるワンちゃんって思っているんじゃないかな?」

 

すると天花は目の前から姿を消し、仁太郎の前に立ち、顔を近づけてくる。

 

「私も君を飼ってみようかな?」

 

そう言いながら仁太郎の顎を触り、妖艶さを醸し出すと仁太郎の顔は真っ赤になってしまう。

慌てて離れると天花は更におかしそうに笑みを浮かべた。

 

「照れちゃって、かわいいね」

 

「……っ!か、揶揄わないでくれ!」

 

逃げる仁太郎を能力を使って背後に現れると今度は耳に息を吹きかけてきた。

 

「ふぅ〜……」

 

「のわっ!?」

 

その後も能力を使い、様々な方法で揶揄ってくる天花はさっきの退屈そうな顔とは打って変わって楽しそうだった。

その日から天花の趣味に『仁太郎を揶揄う』が新たに加わり、寮内で変な声を上げて驚く仁太郎とそれを見て楽しそうにする天花の姿が見られた。

 

 

魔都のとある場所で、岩肌に亀裂が入りそこから長髪の青年が現れ、地面に倒れ落ちる。

 

「ぅ……ここは?」

 

青年は起き上がるとため息を吐き、愚痴を吐き捨てた。

 

「はぁ……そうか、()()()()()()()()()

 

すると周りに醜鬼が出現し、青年を取り囲む。

普通の人であれば恐怖で動けず嬲られてしまう状況だが青年は鬱陶しそうに見るだけだった。

 

「ゴミが蔓延るようになったんだ。丁度いいや、憂さ晴らしに付き合えって貰うよ」

 

その後、その場には無惨に切り刻まれた醜鬼と亀裂の入った地面が残っていた。

 

 

新たな脅威が仁太郎を襲う。

 

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