魔都精兵のスレイブ:紅鬼伝   作:マーベルチョコ

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第20話 剣の襲来

突然襲われた仁太郎と八千穂は周りの人間を逃し、犯人である青年を見据える。

ホストのような紺色のスーツを着た線の細い20代前半の青年だ。

顔は一瞬しか見えていないがとても顔が整っているのは分かった。

2人は青年と対峙して、相手の出方を窺う。

 

「これは……予想外だな」

 

青年は殴られた顔を抑えてブツブツ呟く。

 

「どうする?彼奴は動かんぞ」

 

「なら、こっちから動くだけだ!」

 

仁太郎は拳に炎を灯し、近づいて殴りかかる。

青年は抑えた手を避けて無傷の顔を仁太郎に向ける。

 

「予想外に()()()

 

殴りかかった拳は縦に真っ二つに両断された。

 

「があっ!?」

 

「覇鬼さんの炎はそんな風に弱くない。ガッカリだよ、人間」

 

青年は心底残念そうにいつのまにか持っていた剣についた血を振るい落とす。

 

「赤来!無事か!?」

 

「あ、ああっ!覇鬼!」

 

『言われなくてもやってやる』

 

斬られた腕から炎が吹き出し、治療される。

治ったことを確認するように握ったり開いたりして調子を確認する。

 

「アイツの攻撃、いつされたか分からなかった」

 

「こちらもじゃ。いつ剣を持っていたかも分からなかったわ。相手の実力が分からない以上……こちらから攻撃して探るしかあるまい!」

 

八千穂はポーズを取って能力を発動する。

 

東の辰刻(ゴールデンアワー)!!!」

 

発動した瞬間、5秒間世界の時間が止まる。

八千穂はすかさず銃を抜き、青年に向かって数発弾丸を放つ。

放たれた弾丸は青年の前で止まると5秒が経ち、命中する。

 

「今じゃ!」

 

「おう!」

 

仁太郎は両手に炎を灯し、弾丸を受けて俯く青年に近づき連続で殴打を浴びせる。

炎の連撃に青年はされるがままで抵抗しない。

仁太郎は両手を握り、青年の頭に打ち下そうとしたがそれより早く振り上げていた両断が横に切り裂かれる。

 

「赤来!」

 

「ぐぅっ!?」

 

『構うな!振り下ろせ!』

 

「……おおぉっ!!!」

 

切り裂かれた痛みで一瞬動きが止まるが覇鬼の言葉に血が流れる両腕を振るう。

両腕は炎に包まれ、青年の頭を目掛けて振り下ろす。

直撃し、青年の足場はその衝撃で亀裂が入るが倒れることはなかった。

仁太郎は一度後退し、八千穂の側に戻る。

 

「やったか?」

 

「どうだろうな……相手の実力が全く分からない」

 

青年は殴られた頭を振るうと心底ガッカリしたような目で仁太郎を見る。

 

「おい、お前、男の方だ。お前、覇鬼さんの力を持ったいるのにこの程度なのか?ふざけるのも大概にしろよ?」

 

語尾が荒くなっており、怒りが高まっているのが分かる。

謎の怒りを向けられる仁太郎は戸惑うが青年の言葉に疑問を持った。

 

「覇鬼……?お前、覇鬼のことを知ってるのか?」

 

「もちろん!あの人の敵を無慈悲に葬る姿は今でも目に焼き付いて忘れられないよ!!」

 

興奮した様子の青年に八千穂は引いた様子だが仁太郎の疑問は更に深まる。

 

「お前は一体誰なんだ……?」

 

「………雑魚とはいえ一応はこれから戦う相手だ。名乗らないのは失礼か」

 

青年は乱れた服を正して、仁太郎達を見据える。

先までの軽薄な印象は影を潜め、戦士としての顔が表れる。

 

「五星将が一人、『炎皇 覇鬼』の部下、剣鬼(つるぎ)だ。僕の名前は覚えなくていいよ。どうせすぐに切り殺すから」

 

青年、剣鬼の言葉に仁太郎はパニックになる。

 

「お、おい覇鬼、お前の部下だって言ってるぞ。てかゴセイショウって何だよ?」

 

『あんな軽薄な奴なんか知らん。そのゴセイなんたらも知らん』

 

覇鬼の言葉を聞いて怪訝な顔になる仁太郎に気づいた剣鬼は苦笑いを浮かべた。

 

「お前から覇鬼さんの気配を感じるから多分霊体でそこにいるんだろ?おおかた、僕のことは知らない、五星将のことも知らないとか言ってるんでしょ?相変わらず戦い以外は無頓着だなぁ」

 

仕方ないな、といった表情を浮かべる剣鬼に図星を言われた覇鬼は顔を顰め、仁太郎は呆れた目を覇鬼に向けた。

 

「だけど覇鬼さんの戦う姿こそ僕の憧れなんだ………なのにその力を持っている君ときたら……」

 

剣鬼は明らかに失望した目を仁太郎に向ける。

 

「……なんだよ?」

 

「ガッカリだよ人間。人間が覇鬼さんの力を全て扱える訳がないとは分かっていたけどそれでも予想より遥かに弱い……だからさっさとその力を返せ」

 

「返せって言ったって、俺だって好き好んで力を持ったわけじゃ……それにどう渡せっていうんだ?」

 

「……力は胸、いや心臓か?そこに集まっている。まぁ、心臓を抉り取ればいいや」

 

その言葉と同時に剣鬼の殺気が強くなり手には剣が握られている。

仁太郎達は構える。

 

「ふん!十番組の時といい、お前は化け物に好かれておるの!」

 

「好かれたくないけどな!」

 

剣鬼は一歩踏み出し、仁太郎達に一気に近づき剣を振るう。

仁太郎は八千穂を守るように前に出るが剣鬼の剣は仁太郎の鎧をいとも簡単に切り裂く。

 

「があっ!?」

 

「赤来っ!」

 

痛みで悲鳴を上げるが退くわけにいかないと踏み止まり、傷を即座に治す。

 

「しぶといなぁ。早く死んでくれない?」

 

「嫌だね!」

 

仁太郎も負けじと拳を振るうが剣鬼は簡単に避けてしまう。

 

「くっ!」

 

八千穂は援護で仁太郎に隠れながら銃を撃つが剣鬼には弾丸が見えているのかその攻撃も少し頭を動かすだけでかわしてしまう。

再度、仁太郎が拳を振るうがそのうでを掴み、自分の方に引っ張ると腹に蹴りを一撃ぶつける。

鎧越しでも衝撃は凄まじく、嫌な音が仁太郎の体内で響く。

そのまま仁太郎は上階まで蹴り飛ばされてしまい、剣鬼が食事をしていたレストランに突っ込んでしまった。

 

「赤来!?…ちっ!」

 

八千穂は吹き飛ばされた仁太郎に意識を向けてしまい、目の前の剣鬼から目を離してしまう。

しかし、剣鬼は八千穂には目を向けず吹き飛ばされた仁太郎の方に目を向けていた。

 

「しまった。吹き飛ばしたら殺すことができないじゃないか」

 

そう言うと跳躍すると上階へと辿り着く。

それを見て八千穂は相手にされていないことに気づき、顔を歪める。

 

「ふざけるなッ……!」

 

八千穂は階段へと向かい、仁太郎達のところに急いだ。

一方、上階へと登った剣鬼が崩れたレストランへと入り仁太郎を探すが見当たらなかった。

すると横の瓦礫の中から仁太郎が飛び出して、拳を張り上げるがそれを剣でいなして胴体を斬りつける。

しかし、今度はその剣掴むと自分の方に引っ張る。

 

「いつまでもやられっぱなしだと思うなよ!」

 

至近距離に近づいた仁太郎は攻撃し続け、剣鬼に攻撃させる暇を与えない。

 

(こいつ、剣が振るえないように間合いを詰めてきたな。それに……)

 

仁太郎の拳を腕で受け止めるが痺れと痛みが走る。

 

「さっきより強くなってるねぇ」

 

剣鬼は苦しい表情するどころか笑みを浮かべて嬉しそうにする。

その時、周りを見て陰で隠れている自分に給仕をしてくれた女性店員に気づいた。

 

「ここはさっきの店か」

 

「何言ってる!?」

 

「現世の食事は昔に比べてだいぶと進化したし、ここでは戦いたくないな」

 

剣鬼は空いている手で剣を何もない空間に振るうと次元の裂け目、門ができる。

 

「なっ!?」

 

「場所を移そうか」

 

剣鬼は仁太郎の腕を掴むと門に引っ張り、2人の姿は消えてしまった。

 

 

場所は魔都へと移り、再び2人は対峙する。

 

「ここなら暴れても良さそうだね。それじゃあ……」

 

剣鬼の体からオーラが現れ、全身を包んでいき鎧が現れる。

仁太郎の鎧とは異なり、尖った部分が多く、まるで全身に剣が生えている様な形状だ。

 

「本番といこうか」

 

剣鬼は手甲から剣を出して仁太郎に向け、先とは段違いの殺気を仁太郎に向ける。

その殺気を向けられ鎧の中で冷や汗を流し後退りしそうになるが、なんとか踏み留まり、拳を構えて剣鬼に向かって踏み出した。

 

 

剣鬼が開けた門は少しずつ閉じてきており、ギリギリのところで八千穂が出てきた。

 

「はぁ、はぁ、ギリギリじゃったか。赤来達はどこに……?」

 

走ってきて息を切らせている八千穂の鼻に鉄臭い血の匂いが届いた。

その匂いが濃くなる方へ足を運ぶと、仁太郎と剣鬼が

戦っていた。

いや、それは戦いとは言えず、一方的に仁太郎が斬られているだけだった。

剣鬼の剣は仁太郎の鎧をいともたやすく切り裂き、血を吹き出させる。

 

「ほらほら!もっと頑張りなよ!!」

 

「くっ…そがぁ!」

 

追い詰められている仁太郎の様子を見て、八千穂は即座に能力を使用する。

 

「東の辰刻!!5秒止まれ!!」

 

時間を止めた瞬間、剣鬼の死角向かって弾丸を放つ。

放なたれた弾丸は剣鬼に真っ直ぐに向かい、時間が動き出す。

当たると思われた弾丸は寸前の所で剣鬼に切り落とされた。

 

「なっ!?」

 

「ん?さっきの人間の女か。まさかここまで追ってくると思わなかったよ。あちら側にいとけばいいのに態々殺されに来たのかい?」

 

悠然と歩く剣鬼に八千穂に近づけまいと仁太郎が掴み掛かるが一瞬で切り伏せられる。

 

「君は後だ。先にあの女を殺すよ」

 

「ぐっ……!逃げろ!」

 

仁太郎は倒れた状態で叫ぶが八千穂は不適な笑みを浮かべる。

 

「ふん、何を言っておる?私様の力の前では全てが無意味じゃ!『東の辰刻』!!」

 

能力を発動し5秒間時間を止めて、今度こそ死角に回り込み至近距離で弾丸を放つ。

 

「この距離で先みたいに防げまい!」

 

時間が動き出し、放たれた弾丸は今度こそ当たると思われたが当たる瞬間に剣鬼は身を翻し、全て避ける。

 

「なっ……!?」

 

「はぁ……さっきから小蝿みたいに鬱陶しいなぁ。大方、時間停止か時間操作系の能力でしょ?お前が変なポーズを取った瞬間にエネルギーの変調があるし。だけど、まぁ……僕には関係ないね。お前がいくら時間を止めたとしても僕なら反応できる。それに時間を止めて圧倒的に火力不足だね」

 

剣鬼は先程切り落とした弾丸を拾い上げ、観察する。

 

「力は込められているけど、こんなもんじゃ僕の鎧に傷一つ付かないよ」

 

圧倒的な実力差に八千穂は冷や汗が流れる。

すると目を離していなかったはずだが少し離れていた剣鬼が目の前に一瞬で移動して、八千穂の拳銃を掴むと自分の心臓部分に突きつけるように合わせる。

 

「ほら、撃ってみなよ?」

 

明らかな挑発だが八千穂は動くことができない。

この近距離では能力を発動するための隙も作れない。

 

「ふぅん……何もしてこないならもう死ぬかい?」

 

剣鬼は腕を振り、八千穂の顔に向かって突き出す。

剣が目の前に迫り、八千穂は瞬時に死ぬと分かってしまう。

 

(日万凛……)

 

走馬灯のように駆け巡ったのは最愛の妹、日万凛のことだった。

剣の切先が目の前に迫った瞬間、倒れていたはずの仁太郎が間に割り込んで剣を掴むことで阻止した。

 

「逃げるんだ!八千穂!!」

 

「赤来!?」

 

「そんなことさせると……」

 

仁太郎の腕を振り払おうとするが万力のような強い力で剣を握られているためそれができなかった。

 

「じゃが……!」

 

「俺たちじゃコイツに勝てない!応援を呼んできてくれ!!」

 

剣を握る手から血が滴ろうとも決して離さず、八千穂に向かって怒鳴る。

 

「くっ……!必ず連れてくるから死んではいかんぞ!」

 

八千穂は悔しさを顔に馴染ませながらその場から逃げた。

 

「美しい自己犠牲だね。反吐がでそうになるよ」

 

逃げた八千穂にもう興味がないのかしがみつく仁太郎に目を向け、空いている腕を振るって仁太郎を殴り飛ばす。

 

「まぁ、これで邪魔者はいなくなったしゆっくり心臓をいただこうか」

 

そう言いながら剣鬼は剣を仁太郎に向ける。

 

 

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