魔都精兵のスレイブ:紅鬼伝   作:マーベルチョコ

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第3話 轟く鬼

『オオオォォォォッ!!!』

 

単にまだ轟く程の雄叫びに魔防隊の面々と風夏達は耳を塞ぐ。

組長はものともしてないのか静かに鎧の人物を見据える。

すると突然、鎧の人物は近くの醜鬼に近づき拳を振り抜く。

たった一発の攻撃で醜鬼の顔面は崩壊し、吹き飛ばされる。

さらに違う醜鬼の顔を掴んで、まるで重さを感じさせないように振り回したり、体を貫通させる程の拳を叩き込んだりと獣を思わせるかのような戦いぶりを見せる。

 

「……‥話ができる様な相手だと思うか?」

 

「いいや、思わないね」

 

「なら、行動不能まで追い込むぞ」

 

京香が刀を天花が身構えると僅かな殺気を感じ取った鎧は仕留めようとした醜鬼の顔を掴んで京香たちの方に向かって投げた。

 

「っ!?ふっ!」

 

突然の攻撃に京香は一瞬驚くがすぐさま冷静を取り戻し、投げられた醜鬼を真っ二つに切り捨てる。

 

「………」

 

『グルルル……』

 

睨む京香と獣の様な唸り声を上げる鎧の視線が静かにぶつかり合うなか、鎧の背後の空間が僅かに歪み始める。

 

『!? ガァッ!!』

 

それに気づいた鎧はすぐさまその場から離れると歪み始めた空間は『バツン』と大きな音と共に切り裂かれた。

 

「勘がいいね」

 

天花の能力『天御鳥命(アメノミトリ)』で空間を引き裂く攻撃を仕掛けるが鎧の研ぎ澄まされた感覚で即座に反応し避けられてしまう。

京香と天花は互いの目を見て頷き合うと京香が前に出て刀を構える。

 

「ハァッ!!」

 

京香は掛け声と共に鎧に切り掛かり、天花はその場から瞬間移動し風夏を守っている日万凛達の側に現れる。

 

「出雲組長!」

 

「先に君たちを避難させるよ。互いに手を握って」

 

一般人を避難させることを優先した天花の行動に、鎧は攻撃を防ぎながら気付いた。

逃げようとすることに怒りを覚えたのか低い唸り声を上げて京香の刀を上へ弾く。

 

「くっ!」

 

大きな隙が出来た京香に鎧は追撃しようとせず、避難しようとする天花達に向かって飛び出した。

 

「天花!!!」

 

京香の呼び声で鎧が向かって来たことに気付いた天花は急いで瞬間移動しようとするが呆然としていた風夏が動けず能力が使えない。

 

(まずい……!僅かに間に合わない……!)

 

自分が風夏に触れるのと超人的な跳躍で向かって来る鎧のスピードだと僅差で鎧の方が速い。

鎧が腕を振りかぶって殴り掛ろうとした瞬間、鎧の腕は不自然に止まり、地面に転がり落ちた。

 

「え……?」

 

突然のことに呆けた声を出してしまう風夏の前に天花は立ち、鎧から庇う。

 

(今のはわざと…‥いや、不自然に止まった)

 

自身の腕を見て、訝しげにする鎧の様子にそう天花は考える。

鎧の背後から京香が切り掛かるも避けられ、今度は京香に向かって拳を振るおうとするがやはり不自然に止まってしまい、攻撃できずに終わる。

 

「妙な動きだ」

 

「まるで別の何かに止められているようだね」

 

『グウゥゥ……ガァッ!!!』

 

鎧は思うようにいかないことに苛立ちを見せ、右拳を地面に力任せに何度も叩きつけた。

力が凄まじいため地面にクレーターができてしまう。

 

『フゥ…!フゥ…!フゥ…!』

 

怒りが収まらない鎧は息を荒らげ、その様子を京香達は警戒しながら観察する。

すると突然京香達とは全く違う方向に向かって飛び出し、逃げ始めた。

 

「逃がさないよ!」

 

すかさず天花が鎧に向かって空間を裂く攻撃を仕掛けるが全て避けられ、逃げられてしまう。

 

「………」

 

逃げられたというのに天花は追うともせず、逃げた鎧の姿が見えなくなるまで見続けた。

その様子に風夏を守っていた日万凛が声を掛ける。

 

「出雲組長、追わないのですか?」

 

「……相手の正体が分からない状態で追うのはリスクが高いからね。今回は逃してあげるさ」

 

そう言って天花は警戒を解いた。

 

「よし、陰陽寮に戻るぞ」

 

京香の言葉で全員がその場を後にした。

 

 

とある山の人目がつかない場所に小規模のクナドが現れ、そこから鎧が出てくる。

鎧は足元が覚束ない様子で足を進め、木に手をつくと手と腕の鎧部分が砕け散り、人の手が露わになる。

やがて全身の鎧が砕け、中から仁太郎の姿が現れた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

仁太郎は全身から汗をかき、荒くなった呼吸を整えようと深呼吸をする。

途端に全身から力が抜け、地面に転がる。

疲労感が全身を襲い、意識がどんどんと遠くなっていく。

 

『おい起きろ。寝ると死ぬぞ』

 

「…………はっ!」

 

声で気がつくと目の前に覇鬼が仁太郎の顔を覗いていた。

 

「夢じゃ……なかった」

 

『当たり前だ。お前は俺と契約したんだ、夢であってたまるか』

 

覇鬼は不機嫌そうに鼻を鳴らす。

仁太郎は立ちあがろうとするがやはり力が入らない。

無理矢理力を込めて、木にもたれ掛かりながら立ち上がる。

 

「体に力が……それに喉がカラカラだ」

 

ゆっくりと足を進めて山中から道路に出て、自販機を見つけた。

 

「飲み物……!」

 

足をもつれさせながら小走りで自販機に近づき、金を入れようとするがズボンのポケットには財布も小銭もなかった。

 

「あぁ、くそっ……!」

 

『何だ?この機械をどうしたい?』

 

「飲み物を買うんだよ!なのに金がない……!」

 

『この中に飲み物があるのか。なら金なんぞ必要ない』

 

「は?」

 

『手を機械に当てろ』

 

仁太郎は言われるがまま自販機に手を当てると、手が鈍く光りだして熱を発する。

やがて高温の熱で自販機は熱暴走を起こし、大量の飲み物が出てきた。

 

『これでいいだろ』

 

「お前、これ泥棒だろうが」

 

『なら飲まなければいい』

 

「………あとで払いにくる」

 

仁太郎は気まずそうにしながら水を飲み干した。

ペットボトル3本飲み干した仁太郎は自販機にもたれて覇鬼に話しかける。

 

「なぁ、お前は何なんだ?」

 

『だから鬼だと言っているだろうが』

 

「鬼って醜鬼と同じってことか?」

 

『……あの塵共と同じだと?巫山戯るなよ』

 

仁太郎の言葉に覇鬼の顔は怒りに染まり、それを見た仁太郎は背筋が凍りつく。

覇鬼の表情はまさしく鬼だった。

 

「じゃ、じゃあ何なんだよ」

 

『鬼は鬼だ。それ以外あるか』

 

「訳わかんねー……」

 

しばらく休憩したら体力が戻ってきた仁太郎は立ち上がって歩き始める。

 

『どこに行くんだ?』

 

「家に帰るんだよ」

 

『どっちに行くのか分かってるのか?』

 

「とりあえず人がいる所に行く、それからだ。……の前に服を何とかしなきゃな」

 

仁太郎の服は自身の血と土で汚れており、人前に出たら通報されてしまうのは確実だ。

 

「そういえば傷はどうしたんだ?背中をバッサリ切られた筈なのに」

 

『俺が治しておいた。感謝しろよ』

 

背中を見て傷がないことに驚く仁太郎に覇鬼は少し得意げに答え、

2人(?)はまず服を調達する為に歩き始めた。

 

 

醜鬼の事件から3日後、風夏はようやく陰陽寮から事情聴取と治療をを終えてヒノデ施設の日常に戻ってきた。

しかし、その表情は仁太郎が未だに行方不明となっているためとても暗い。

捜索を約束してくれた六番組組長 天花が一度連絡をくれたがまだ見つからないとしか言ってくれなかった。

それを聞いた風夏はさらに落ち込み、施設の子供たちも辛いが風夏を励まそうとしたがあまり効果はなかった。

 

(私にもっと力があれば……)

 

そんな時にふと玄関に大きな気配を感じた。

彼女は桃の能力のおかげで常に電磁波によるセンサーが働いている。

そのセンサーが捉えたのは漠然とだが人間を超えた何かだった。

 

(なに……この気配は……!?)

 

異常な気配に恐怖し、風夏は冷や汗を流して体がガクガクと震えてしまう。

しかし、今度こそは家族を守ると意を決して玄関に向かう。

玄関はすりガラスで近付いてくる人影はハッキリと分からない。

風夏はいつでも能力を使えるように身構える。

強大な気配を放つ何者かが玄関の前に立ち、扉を開く。

 

「あ、風夏」

 

「ぇ……じ、仁太郎?」

 

入ってきたのは少し小汚いパーカーを着た仁太郎だった。

仁太郎は風夏の顔を見ると少し気まずそうにして風夏に笑いかける。

 

「いや、ごめんな!連絡取れなくて。連絡しようとしたら魔都でスマホが壊れてしまって……っと」

 

「っ!!」

 

説明する仁太郎に風夏は涙を浮かべて飛びついて抱きしめた。

少し驚いた仁太郎だが風夏の頭を優しく撫でた。

 

「ただいま」

 

「おかえり……」

 

 

 

 

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