魔都精兵のスレイブ:紅鬼伝   作:マーベルチョコ

4 / 20
第4話 守りたい約束と守りたくない約束

無事に帰ってきた仁太郎に施設の院長である祥子や子供たちも涙を流して喜んでくれた。

その夜子供たちが寝静まった時間に仁太郎、風夏、祥子は3人で話し合っていた。

 

「どうして今まで連絡をくれなかったの?」

 

祥子が代表として質問する。

無事であったのであれば連絡を一つよこしてもくれれば祥子たちも安心できたというのに仁太郎は連絡をしなかった。

 

「あー……いや、その……。魔都でさ、スマホが壊れちゃって連絡出来なかったんだ。魔防隊の人達に助けられた後もドタバタしてて連絡する暇がなくて」

 

仁太郎は申し訳なさそうにしながら説明する。

勿論、仁太郎が話した内容はその場を乗り切るための嘘だ。

それをバレないようにと必死に仁太郎は表情を取り繕う。

そんな仁太郎をいつもより距離が近い風夏は隣に座りながらジッと見ていた。

 

「そう………まぁ、無事でよかったわ。今日は疲れただろうからもう休みましょう」

 

ようやく解放されたと思い、仁太郎は席を立とうとすると祥子はそっと仁太郎の手を握った。

 

「本当に無事で良かった。おかえりなさい」

 

少し涙を浮かべながら言う祥子に仁太郎は心が温かくなる。

仁太郎は自室に戻り、部屋を開けようとするが後ろを振り向いて気まずそうに聞く。

 

「あの……風夏?もう部屋に着いたんだけど」

 

「………」

 

風夏はずっと仁太郎の服を握って後ろを着いてきていた。

部屋の前に来ても何も話さない風夏に仁太郎は声を掛けたが、それでも何も話さない。

すると、顔を上げて意を決した目で仁太郎を見つめてきた。

 

「私、自惚れていた。この力があれば誰でも守れるって。でも実際はあの頃と変わらない。醜鬼が出ても震えてることしかできなかった」

 

「そんなこと……」

 

「いいから聞いて。今度は絶対に仁太郎を守るから」

 

「お、おう……」

 

そう言って風夏は自分の部屋に戻って行ってしまった。

仁太郎は少し戸惑いながら、部屋に入り布団に寝転び目を閉じて虚空に向かって話しかけた。

 

「覇鬼、いるか」

 

『あぁ、いるぞ』

 

仁太郎の枕元に見下ろすように覇鬼は現れた。

 

「枕元に立つなよ。なんか怖いな」

 

『ふん、そんなの俺の勝手だ。それにしてもお前の家族は多いんだな』

 

「叔母さんを除いて全員、血が繋がっていないけどな。みんな醜鬼とかの襲撃で家族が死んじまったんだ」

 

『………そうか』

 

覇鬼の声は僅かに沈み、腕を組んでいる手に力が入る。

 

『人間、家に着いたんだ。約束を守ってもらうぞ』

 

「だから俺には赤来 仁太郎って名前があるんだよ。……で約束って?」

 

『忘れたのか!?チッ!……あの塵共を皆殺しにする』

 

忌々しげな表情で覇鬼は呟く。

 

「塵共って、醜鬼のことだよな?お前は醜鬼とは違う鬼って言ってたけどどういうことなんだよ?」

 

『知らん』

 

「知らんって……」

 

『俺と奴らは存在が違う。それは確かだ』

 

大雑把な説明しかしない覇鬼に仁太郎はこれ以上聞いても無駄だと分かった。

 

「で、俺は何をすればいいんだよ?」

 

『契約する時に言っただろうが!俺に体を寄越せ!奴らをぶっ倒す!』

 

物騒なことを言う覇鬼に仁太郎は困った表情になる。

 

『何を躊躇っている。お前も奴らを倒せてスカッとするだろうが!』

 

「俺はそんなに野蛮じゃないし……醜鬼は魔防隊に任せればいい。俺より何百倍も強いし」

 

仁太郎の言葉に覇鬼は怒りを露わにして怒号を上げる。

 

『巫山戯るなッ!!それは契約違反だろうが!!何のためにお前に力を貸したと思う!?』

 

「………」

 

仁太郎は覇鬼の言葉に答えず、黙っているだけだった。

 

『お前の記憶を見たぞ。幼い頃の記憶だ』

 

「っ!」

 

『無力のままじゃ、あの時と同じで大切な人が無慈悲に死ぬだけだ』

 

覇鬼がそう言うと仁太郎は立ち上がり、覇鬼に詰め寄る。

 

「その話を、するなッ………!」

 

仁太郎は自分より体が大きい覇鬼を見上げながら睨む。

覇鬼はその目を見て、真剣な表情で仁太郎を見る。

 

『俺は事実を言っているだけだ。力が無ければ取りこぼしていくだけだ』

 

覇鬼はそう言うが仁太郎は再び布団に寝転び、目を閉じて聞く耳を保とうとしない。

 

『チッ……』

 

覇鬼はその様子を見て、虚空へと消えていった。

 

 

○

それから数日、仁太郎は平和な日常を過ごしていた。

その間も傍らで覇鬼が体を寄越せと言ってくるが仁太郎は無視を続けていた。

そんなある日、施設の皆で近くのショッピングモールに買い物に出かけることになった。

醜鬼の襲撃以来、出掛けることはなかったので皆の気晴らしになればと思っていた。

年長者である祥子、仁太郎をリーダーにして二組に分かれていた。

比較的年長者がいる子供達は祥子が率いて服やアクセサリーなどの買い物行っており、仁太郎達と分かれている。

 

「よし!みんなにアイス買ってあげるから好きなの選んできな。他の奴らには内緒な」

 

『やったー!』

 

フードコートでアイスを買ってあげると仁太郎が言うと幼い子供たちは喜んでどのアイスにしようか悩む。

仁太郎も自分の好みのアイスを買って食べようとすると覇鬼がいつものように体を寄越せと話しかけてくる。

 

『おい、体を寄越せ……って、何を食べているんだ?』

 

覇鬼は仁太郎が待つクッキー&クリームのアイスを不思議そうに見る。

 

「何ってアイスだよ」

 

『あいす?美味いのか?』

 

「冷たくて甘い氷菓子だよ」

 

『………食べてみたいな。食わせろ』

 

唐突に変なことを言い出す覇鬼に仁太郎は怪訝な顔をする。

 

「突然どうしたんだよ?それにどうやって食べるんだ?」

 

『お前と味覚を共有して食べる。いいから食え』

 

色々と聞きたいがアイスが溶けるのも嫌なので食べると覇鬼は目を見開いて叫んだ。

 

『美味いぞォッ!!!』

 

「うるせーよ!」

 

耳元で大声を上げられた仁太郎は覇鬼に向かって怒鳴るが、その様子を幼い子供達はアイスを食べながら見ていた。

 

「じんにーちゃんまた1人でおはなししてる」

 

「知ってるよ!ああ言うのちゅうにびょうかこころのやまいっていうんだって」

 

子供たちの言葉は仁太郎に聞こえており、その後は黙ろうとすると突然妙な感覚が仁太郎の背中を駆け巡った。

 

(何だ、今の?ぬるま湯が背中から頭に向かって駆け上がった感覚……)

 

『門だな』

 

覇鬼の言葉に仁太郎は目を見開く。

 

『来るぞ。奴らだ』

 

仁太郎は急いで子供達を集めて外に出た瞬間、ショッピングモールから警報と共にアナウンスが流れる。

 

『警報です!警報です!館内に門が出現しました!魔都災害が起こる可能性があります!従業員の案内に従い館内から避難してください!』

 

アナウンスが流れると出入口に人が殺到し、大勢の人達が出てくる。

仁太郎は少し離れたところに子供達と避難し、分かれて行動している祥子達に電話を掛ける。

 

「頼むから出てくれよ……!」

 

しかし、電話をかけても繋がらなかった。

 

「何でだよ!」

 

「にーちゃん……?」

 

不安そうな顔をして見上げてくる子供達に仁太郎はしゃがんで目線を合わせると安心させるように笑顔を浮かべる。

 

「大丈夫!多分みんな電話掛けてて繋がらないだけだよ」

 

そう言うが最悪の可能性が仁太郎の頭をよぎった時、ショッピングモールを見据えた覇鬼がふと仁太郎に声をかける。

 

『お前の妹と叔母は生きてるぞ』

 

「は?」

 

『あの2人は力が強いからわかりやすい。まだ生きている』

 

仁太郎はその言葉を信じて、モールの封鎖を行なっている警察と救急隊に

助けて欲しいと頼むがいつ醜鬼が襲ってくるか分からないため魔防隊が来るまで入ることができないと断られた。

 

「くそっ!どうすれば……!」

 

『……今こそ俺の力を使う時だろうが』

 

その言葉に仁太郎は覇鬼の顔を見る。

 

『今のお前には家族を救う力がある。それなのにお前はただ立ち尽くすだけなのか?あの時と同じように』

 

仁太郎の脳裏に幼い頃の記憶が甦えり、覚悟を決めた。

 

 

○

仁太郎達がいたフードコートとは離れた場所にあるファッション店が立ち並ぶエリアは瓦礫や備品が散らばり、見るも無惨な状態になっていた。

その散らばる備品を陰にして風夏達は隠れて、醜鬼の様子を観察していた。

 

「ここに隠れていたら大丈夫だからね」

 

祥子は逃げ遅れた子達を安心させるために声をかけ続けていた。

その時、近くで激しい音が鳴り顔を向けると今回襲ってきた醜鬼の姿見えた。

顔は鳥のような嘴を持ち、上半身は木を簡単に払えるほど巨大だが下半身は蛇のような形をしており足はない。

醜鬼は手当たり次第に暴れ回り、何かを探している様子だった。

 

「ここにいたら危ない……早く移動しないと」

 

風夏がそう呟くが移動しようにも動けば醜鬼に見つかってしまう。

しかし、移動しなければいずれ醜鬼に見つかってしまう。

追い詰められた状況で祥子が立ち上がった。

 

「風夏、みんなを連れて逃げなさい。私が囮になるわ」

 

「え……、ちょっと先生!?」

 

祥子は風夏に有無を言わさず醜鬼の前に立ちはだかる。

 

「私が相手よ」

 

醜鬼は獲物を見つけたと言わんばかりに祥子に近づいて、腕を振るうがそれは祥子によって受け止められた。

受け止めた祥子の全身は淡く光っており、エネルギーを放出しており何かしらの能力を使っている。

醜鬼は受け止められたことに怒ったのか、激しい攻撃を繰り出してくるが祥子はそれを落ち着いて回避していく。

 

(あの子たちが逃げ切るまで時間を稼がないと)

 

祥子がここまで戦える理由は彼女は元魔防隊だからだ。

それも副組長を務めた実力者だった。

ある一件で深い傷を負ってしまった後遺症で彼女は魔防隊を辞め、孤児院を経営している。

遠目に風夏が逃げ遅れた人達を先導しているのを確認する。

その時、逃げようとしている1人が躓いてしまい大きな音を立てて、醜鬼の注意がそちらに向いてしまう。

 

「しまった……!」

 

躓いた人を助けようと風夏が駆け寄るがそこに醜鬼も襲い掛かろうとする。

祥子は体からエネルギーをさらに大きく放出させると醜鬼より早く風夏達の元に駆けつけ、醜鬼の攻撃を受け止める。

 

「うっ……!」

 

「先生!?」

 

「いいから…!行きなさい!」

 

受け止めた攻撃の強さで古傷が痛んで呻き声を上げてしまう祥子に風夏が心配するが祥子はすぐに体勢を整える。

攻撃を受け止めた箇所が一際輝いて光を放つ。

光は腕と体を通って足に移り、祥子はその足で醜鬼を蹴り上げた。

醜鬼の巨大は簡単に蹴り上げられ、ショッピングモールの2階3階を巻き込んで吹き飛ばされた。

 

これが三島 祥子の能力『輝光反軍(アンチブレイク)』。

自分が受けた攻撃を何倍にもして跳ね返す能力だ。

醜鬼を吹き飛ばした祥子はその場に膝をつき、荒くなった呼吸を整える。

 

(昔ならこんな攻撃なんてことなかったのに……やっぱり衰えたわ)

 

呼吸が安定しない祥子はふらふらと立ち上がり、蹴り飛ばした醜鬼の様子を見る。

祥子の攻撃で多少ダメージを負わすことができたが、まだ戦えるようだ。

 

(あと2回くらいなら反撃できる。あと一撃をぶつけて逃げるしかないわ)

 

祥子は風夏達が逃げ切るにはもう少し時間を稼ぐ必要があると判断し、呼吸を整えて再び身構えるがその瞬間古傷が激しい痛みが走る。

その場に両膝をついて倒れてしまう祥子を醜鬼はチャンスだと思い、祥子に襲い掛かる。

 

(まずい……!)

 

痛みで激しい冷や汗を流す祥子は迫る醜鬼を睨むことしか出来なかった。

醜鬼の剛腕が祥子に振るわれそうになった時、頭上から炎の塊が祥子と醜鬼の間に落ちた。

 

「その人に近づくな」

 

炎の中から声が聞こえ、炎は一気に掻吹き消える。

そこには鬼の鎧を着た仁太郎が祥子を守るように立っていた。

 




人物紹介

○
三島 祥子(みしま しょうこ)

年齢:39歳
性別:女
身長:159cm
スリーサイズ:86・59・88
見た目:暗い紺色の長髪を毛先で束ねて肩から前に垂らしている。
    タレ目で目元に泣き黒子がある。

能力:『輝光反軍』(アンチブレイク)
自分が受けた攻撃を何倍にもして跳ね返す

詳細
仁太郎の叔母であり、児童養護施設『ヒノデ施設』の院長。
元魔防隊の組員であったがある魔都災害で大怪我を負い、現場に復帰することが出来なかったため児童養護施設を経営することになった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。