魔都精兵のスレイブ:紅鬼伝   作:マーベルチョコ

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第6話 夢と現実の特訓

魔都の一角を監視・守護する拠点、六番組陰陽寮の組長室であり自室でもある部屋で天花はパソコンを操作していた。

画面には魔都で行方不明になった人達のリストが載っており、天花はそれを訝しげに見ていた。

 

「『赤木 仁太郎』か……」

 

仁太郎のフォルダを開き、その中の項目を見つめていた。

そこには『状態:捜索中』となっていた。

 

「君は一体何者なんだい?」

 

天花は興味深そうに笑みを浮かべてそう呟いた。

 

 

ショッピングモールの一件から戻り、子供達は疲れてしまいすぐに寝たが仁太郎は寝付けずにいた。

というのも目の前に覇鬼が仁王立ちし、見下ろしていたからだ。

 

『これで分かっただろう?俺の力の必要性が。今回みたいな一件はまた起こるぞ』

 

「……あのなぁ、魔都事件なんて早々起きないんだよ。今回は偶々だ」

 

『お前あれが偶然に起きたものだと思っているのか?』

 

覇鬼の言葉に仁太郎は訝しげにする。

 

『あの醜鬼はお前を狙っていた。弱っていたはずの女が側にいたのにも関わらずお前を襲ったんだからな』

 

「そんな……じゃあ俺がここにいたら家族全員が危険な目に遭うってことか!?」

 

『そうかもな。だからお前が家族を守れ』

 

覇鬼の『守れ』という言葉に仁太郎は驚くがすぐに自信を無くした表情になる。

覇鬼の力があるとは言え元は一般人なのだから、醜鬼に立ち向かうのは怖い。

モールの時は無我夢中で恐怖はほぼ無かったが今思い出すと恐怖で体が震えてしまう。

 

「俺が守るよりみんなから離れたほうが……」

 

『奴らがまた家族を襲わないという保証もない。逃げたところでその先で襲われたらどうする?……いい加減覚悟を決めろ。お前の前には2つの選択肢しかない!逃げて醜鬼に怯えるか、戦って全てを守るかだ!』

 

仁太郎は目を閉じて少し黙り込む。

やがて拳を握り締め、目を開いて覇鬼を見る。

 

「覇鬼、俺を強くしてくれ」

 

その目には覚悟が宿っていた。

 

 

仁太郎は広い石造りの広場の中心に立っていた。

 

「どこだここ……」

 

仁太郎は風呂そう呟き、広場の端から外を眺めるとそこには地面はなかった。

下は雲で埋め尽くされており、広場は空の上に立っている塔の頂上にあったのだ。

下を見た仁太郎は顔を真っ青にして、ゆっくり広場の中央に戻る。

 

「驚いたか?」

 

「うおっぅ!?」

 

突然話しかけられ、声がする方を振り向くといつもの半透明の姿ではなく実体化した覇鬼が立っていた。

 

「ここはお前の夢の中だ。今からここでお前を鍛えるが取り敢えず……」

 

「え……ぶへぇっ!?」

 

覇鬼は腕を上げたと思うと次の瞬間仁太郎の頬を殴り、吹き飛ばした。

殴り飛ばされた仁太郎は漫画のように回転しながら地面に落ちた。

殴られた痛みと驚きで体を震えさせながら覇鬼を睨む。

 

「い、いきなり何しやがる!?」

 

「はぁ……受け身1つ取れば少し楽だったんだがな。立て、傷はもう癒えてるだろう」

 

そう言われ殴られた頬を触ると腫れもなく、血も出ていない。

 

「ここは夢の中だ。いくら傷つこうが無かったことになる。ここでお前に戦い方と戦いの基礎を教える。さらにここは現実世界と時間の流れが違う。だいたい現実での1時間がここだと1日だ」

 

「俺が寝る時間がだいたい6時間だから……6日間鍛えるってことか!?」

 

「それにここなら寝なくて済む。寝ずにやるぞ」

 

「そんなの無茶だろ!?滅茶苦茶だ!」

 

仁太郎が寝ずの訓練に文句を言うが覇鬼は腕を組み、仁太郎を睨みつける。

 

「大切な人を守りたいなら無茶をやりきれ。でなきゃ何もできずに終わるぞ」

 

その表情は少し悲しげに見えて仁太郎はそれ以上文句を言わなかった。

 

 

そして次の日の朝、目が覚めた仁太郎は体が休まった感じがしなかった。

覇鬼の特訓は最初は基礎練習からだが6日間も寝ずにやるのは普通に考えて疲れる。

 

「はぁ、この特訓が毎日か」

 

『言っておくが現実世界でも特訓は続けるぞ』

 

「え"っ……!?」

 

『いくら夢の中で強くなっても体ついてこれなければ意味がない。夢の世界では技術と心構えを、現実世界では強さそのものを鍛える。お前は家族を守れるようになるためには超速で強くならないといけない。そのためにはゆっくりなんてできないぞ』

 

仁太郎は覚悟を決めたが少し顔が引き攣っていた。

 

 

それから1週間が経ち、祥子も退院して漸く普段の生活が戻ってきていた。

祥子はまだ全快ではないため子供たちは手伝いをしてくれている。

勿論、風夏も手伝ってくれている。

まだ日が昇りかけの時間に起きて祥子の代わりに朝食の準備をしようと起床してリビングに行く途中で出掛ける仁太郎が目に入った。

 

「仁太郎……こんな朝早くからどこに?」

 

「おはよー、風夏ねーちゃん」

 

「おはよう……ねぇ、仁太郎が朝早くにどこかに出掛けてるんだけど知ってる?」

 

「特訓って言ってたかな?」

 

「特訓?なんで?」

 

不思議そうに風夏は首を傾けた。

その頃、仁太郎は朝から覇鬼と特訓を行なっていた。

走り込み、筋トレと身体能力を主に鍛え、そして夢の中でも教わった型を反復練習していた。

 

「998……999……1000……」

 

今は10キロのランニングと筋トレを終えて、正拳突きを繰り返していた。

全身に汗が滴り、拳を振るう毎に汗が拳から飛び散る。

 

『あと1000回したら朝食を食べて再開だ』

 

「おう…!」

 

やがて朝食前の特訓を終えて帰ってきた仁太郎だが全身に汗だくで足元が覚束ない様子だった。

 

『シャキッとしろ。この後は飯を食ってバイトの時間まで特訓だ』

 

「ぉ、おぅ……」

 

力なく答える仁太郎はリビングに着くと子供たちと祥子が朝食を食べていた。

 

「た、ただいま……」

 

「あら、おかえりなさい……相変わらず凄い汗ね。まずはシャワーを浴びてきなさい。あっ、でも今は風夏が入ってるから後でね」

 

祥子にそう言われたが疲労で頭が回らない仁太郎は風呂場に向かってしまった。

風呂場の扉を開くと目の前に下着を脱ごうとする風夏がいた。

少し背伸びしているのか黒の大人っぽい下着で風夏の健脚を包んでおり、程よい肉付きの太ももが強調されている。

更に上半身は何も着ていないので大きさは少し控えめだが綺麗な形の美乳とその上のピンク色まではっきりと見えてしまった。

 

「あっ……」

 

「え……」

 

仁太郎は呆けた声を出して、風夏は少しの間呆然としていたが頭が追いついてくると顔を真っ赤にしながらぷるぷると震えて仁太郎を睨み付ける。

仁太郎は回らない頭で必死に言い訳を考えてどうしようもないことを口走った。

 

「あ、そのな、えーっと……く、黒はまだ早いと思うぞ……?」

 

「……っ!!」

 

更に顔を真っ赤にした風夏は手に雷を纏って仁太郎の頬を思いっきりビンタし、吹き飛ばされた仁太郎は壁に激突した。

その頬は煙を大きく赤く腫れ上がっている。

 

「死ね!バカ!」

 

風夏からの罵声に仁太郎は言い返すこともなく、気絶してしまった。

 

『今のはお前が悪いと俺でも分かる』

 

覇鬼の言葉は仁太郎には届いておらず、それから暫く風夏は仁太郎のことを無視していた。

 

 

特訓を開始してから現実世界では1ヶ月が経ち、仁太郎の動きもそれなりになってきていた。

というのも夢の世界では6日間経過しているので、1日で7日間特訓していることになる。

それを1ヶ月続ければ217日訓練したことになる。

その長期間特訓を続ければ様々になってきていた。

覇鬼は仁太郎の様子を見てあることを決めた。

 

「訓練の続きを続けるぞ」

 

「また突きと蹴りの反復練習か?」

 

「いや、もう一段階上げる」

 

今まで仁太郎の横で突きや蹴りのフォームが乱れれば指摘だけをしてきた覇鬼が仁太郎の前に立つ。

 

「俺と実戦練習だ」

 

覇鬼がただ立っているで空間がビリビリと揺れるような仁太郎は威圧感を感じ、冷や汗を額から流す。

 

「見ろ。いくら突きや蹴りを練習しても殺気を当てられて身構えることも出来なければ意味がない。これから後半の3日は実戦を通してお前に戦い方を教える」

 

覇鬼はそう言って構えをとる。

 

「どうした!?突っ立ってるだけじゃ意味がないぞ!構えを取れ!」

 

怒鳴られて仁太郎は見よう見まねで覇鬼と同じ構えを取る。

200日以上も反復練習をしたおかげか仁太郎の構えは様になっていた。

特訓の成果が表れていることに覇鬼はほくそ笑みながら仁太郎に掛け声と共に攻撃を仕掛けた。

 

「行くぞ!」

 

 

実戦での特訓が始まって3日後、新たなバイトに勤しむ仁太郎はモールと同じ妙な感覚に襲われた。

 

「今のって……」

 

『醜鬼だな。また奴らがこちら側に現れるぞ』

 

その言葉に仁太郎は目を見開いた。

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