魔都精兵のスレイブ:紅鬼伝   作:マーベルチョコ

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第9話 動き出す魔防隊と鬼

上座に座る山城 恋を筆頭に9人の組長が長机を囲んでいる。

 

一番組組長  冥加りう

 

二番組組長  上運天美羅

 

三番組組長  月夜野ベル

 

五番組組長  蝦夷夜雲

 

六番組組長  出雲天花

 

七番組組長  羽前京香

 

八番組組長  ワルワラ・ピリペンコ

 

九番組組長  東風吹希

 

魔防隊を支える9人の組長が一同に会する組長会議は年に決まった時期にしか行わないが今回の組長会議は緊急で始まった。

 

「今回、緊急で集まってもらったのは他でもないわ。天花が担当である静岡で魔都災害が短期間に頻発しているわ。それも過去類を見ない数よ」

 

長机の中央に静岡県の地図が立体映像で表示され、魔都災害が起こった地点を赤い点で表示する。

その数は10個以上あり、同じ地域に短期間で発生するのは以上だった。

 

「明らかに異常だわ。そしてそれに合わせて見られた異常がもう一つ」

 

地図が消えて次に表示されたのは鎧を着て戦う仁太郎の姿だった。

 

「異常体醜鬼32号、通称『白鎧(しろよろい)の鬼』。50年前に確認された異常体醜鬼6号と同系統の醜鬼よ。特性は炎を操り攻撃する、人の言葉を話すのと……人を助ける」

 

恋は少し呆れたようにそう言うと他の組長が話し出す。

 

「人を助ける……俄かに信じられませんね」

 

九番組組長 風吹希がそう呟く。

 

「しゅ、醜鬼が人を助けるなんて……今まで聞いたことがありません」

 

三番組組長 ベルが少し怯えながら話す。

 

「京香と天さんは白鎧の鬼と遭遇しているんだよね?」

 

五番組組長 夜雲が2人に目を向ける。

 

「私は一度しか遭遇していないがあの時の彼奴はまさに獣。人を助けるどころか言葉さえ理解できていない様子だった。その後に遭遇している天花の方が詳しいはずだ」

 

全組長が何度も仁太郎と遭遇している天花に目を向ける。

 

「確かに京ちんが言うように最初は通常の醜鬼より凶暴で敵味方関係なく襲っていたけど、今は醜鬼を敵として人を助けているよ」

 

「醜鬼を敵として……ね。私たちの味方という訳ではないのね?」

 

恋が天花に質問するが首を横に振るだけだった。

 

「私達を警戒して逃げるだけだからね。味方として考えない方がいいかも」

 

「天花の追撃から逃げるんだ。相当な実力者だろーな、コイツ」

 

天花の答えに被せるように二番組組長 美羅が質問すると今度は難しそうに首を傾げる。

 

「うーん……確かに攻撃力は高いけど振る舞いは素人のそれだね。襲撃がある度に改善されているけど」

 

「素人?どういう意味かしら?」

 

恋が天花の言葉を疑問に思い、さらに質問すると天花は表示されている仁太郎を見る。

 

「……鎧の中身は人間かもしれません」

 

『ッ!』

 

その一言に組長全員が目を見開く。

 

「確証はありませんが怪しい人物はいます」

 

天花は手元のタブレットを操作し、仁太郎の個人情報を表示する。

 

「男……?」

 

「へぇ、男が」

 

「数ヶ月前に発生した祭り現場での魔都災害で行方不明になった人物で名前は赤木 仁太郎。家族はおらず、施設育ちです」

 

「その男が白鎧の鬼だと?データだと未だに行方不明らしいけど?」

 

「鬼かどうかは今は断定できません。しかし彼はもう施設に帰ってきています」

 

「……行方不明なのに帰還しているということ?それは魔防隊がデータを更新していないだけじゃないの?時々あるじゃん、連絡忘れとかさ」

 

「そう思って彼本人を訪ねてきたよ。あれは完全に嘘をついてたね。……必死に取り繕うとした様子は面白かったけど」

 

夜雲の質問で天花は施設を訪ねた時の必死に誤魔化そうとする仁太郎の様子を思い出し、愉快そうにする。

 

「怪しいならその時に連行してくればいいじゃねーか?」

 

美羅は至極真っ当なことを言うが天花は否定した。

 

「まだ人類の味方である可能性があるなら、私はそれに賭けてみたいと思うの」

 

「………」

 

天花の言葉に総組長である恋はどういう方針にするか思案する。

その時今まで黙っていた一番組組長 りうが口を開いた。

 

「監視を続けるのは構わないけど、もしその男が敵だった場合はどうするんだい?異常体醜鬼6号と同じと考えるなら早急に対処が必要だと思うけどね」

 

「りうさん。6号は醜鬼の中でも特に危険だったとか」

 

京香の質問にりうは目を伏せて思い返す。

 

「6号の強さは異常だったよ。当時私は平の組員で戦闘に参加したが運良く生き残れた。当時の総組長含む9人の組長のうち生き残ったのは3人。組員はもっと死んでしまったよ」

 

その時の光景を思い出す。

血塗れ姿で倒れている仲間とその中心に立つ深い青の鎧の鬼の姿を。

 

「えぇ、ですので監視役との連携は密にしています」

 

「監視?誰か組員を施設に張らせているのかい?」

 

「彼の義理の妹さんに協力してもらっています。優秀な魔防隊候補生ですよ」

 

「そう分かったわ。天花は引き続き協力者と共にこの男の監視を続けて。

それと他の組は静岡で次に魔都災害が起こった時に駆けつけられるように準備を整えておいて」

 

恋の指示に全員が頷いた。

 

 

魔都のどこかで紫黒は手元に術で表示した静岡県の地図を見ており、魔防隊と同じで魔都災害が起きた点を見ていた。

 

「何度も醜鬼を送り込んで漸く絞り込めて来たね。彼のいる所」

 

紫黒は満足そうに呟く。

静岡で魔都災害が頻発していたのは全て紫黒が原因だった。

 

「彼の戦い方も分かって来たし、そろそろ本格的に行こうか」

 

紫黒は待ちきれないといった表情で妖艶に舌舐めずりした。

 

 

風夏が通う魔防隊組員育成校は年に一度、一般人に開放されて招き入れる時がある。

所謂文化祭みたいなものであり、生徒達はこの日のためにクラス毎で出し物の準備をしていた。

さらに、グラウンドでは日頃の訓練の成果を見せるために特殊なステージと模擬敵を用意し、模擬戦を見せれるようになっていた。

ここの訓練生である風夏の家族として仁太郎達、『ヒノデ施設』総出で訓練校に訪れていた。

風夏のクラスはメイド喫茶をしており、全員で行くのは迷惑だと思って何人かに別れて行くことになった。

仁太郎は年長てあるため小さい子達を連れて訪れた。

 

「お帰りなさいませ!ご主人様!」

 

色々な種類のメイドを服を着た生徒達が給仕をしてくれるみたいで子供たちは可愛らしい格好の女生徒達を見てはしゃいでいた。

 

「あの、すいません。霧海 風夏って子はいます?」

 

「あ、もしかしてご家族の人たちですか?ちょーっと待っててくださいね〜」

 

担当してくれていた女生徒は仁太郎達が家族だと分かるとにんまりと笑い、カーテンで仕切られている向こう側に入って行くと騒ぐ声が聞こえてきた。

 

「ふーちゃん!なんで行かないの!?」

 

「なんでって……家族が来てるから……」

 

「行けばいいじゃん!折角可愛い格好してるのにー」

 

「可愛いって、なんで私だけこんなメイド服なのよ!?こんなえ、エッチなのって……!」

 

「ジャンケンに負けたからだよ」

 

(全部聞こえてる……)

 

カーテン越しの会話で風夏がいることは分かったが恥ずかしがっているのも分かってしまい、メイド服姿を見た時にどういう反応すれば良いか悩んでしまう。

 

(褒めたら恥ずかしがって電撃が飛んでくるかもしれない……どうしよう?)

 

『普通に褒めればいいだろ?』

 

仁太郎の思考を読んだ覇鬼がそう言うが恥ずかしさのあまり電撃が飛んでくるイメージしか湧かない。

 

「いいから!ほら!」

 

「あっ!ちょっと……!」

 

痺れを切らした友人が風夏を仁太郎達の前に押し出した。

風夏のメイド服は肩が大胆に露出しており、ミニスカートです肌の露出が激しい物だった。

姿を現した風夏は仁太郎と目が合い、顔を徐々に赤くしていく。

 

「おねえちゃんかわいい!」

 

「すげーヒラヒラだ!」

 

幼い子供達は素直に風夏の姿を褒めるが仁太郎は過激な風夏の姿に呆然としてしまう。

 

「あ、ありがと……ぁ、アンタはどう思うのよ……?」

 

子供達に感謝を伝えると黙っている仁太郎に向かって質問する。

ここで下手なこと言うと怒りで電撃が飛んでくることは長年の付き合いで分かる仁太郎は素直に褒めることにした。

 

「似合ってるぞ。活発なお前に合ってるけどメイド服って言うギャップが出ていてはっきり言ってすごく可愛いと思う」

 

「…………」

 

仁太郎のその言葉に風夏は顔を俯かせてプルプルと体を震わせている。

仁太郎は怒らせたかと思ったが、顔を真っ赤にして嬉しさでニヤける顔を必死に我慢していた。

そして友達はそれを背後からニヤニヤと笑みを浮かべて見ていた。

 

「そ、そう……ありがと……

 

か細く何を言ったか分からない仁太郎が聞き返そうとしたが、風夏の友人が背後からメニューを差し出してきた。

 

「ご主人様〜、こちら当店のおススメになります〜。オススメはぁ『メイドのラブラブ♡ドキドキプリチーオムライス』か『メイドのムネムネ☆キュンキュンキュートパフェ』でぇ〜す♪」

 

「なんて?」

 

『喧しい品名だな』

 

折角だからオムライスを頼もうとしたが覇鬼がパフェを食べたいと

喧しいのでパフェに変えて注文した。

 

「はーい、パフェ3つお待たせしました!それじゃあフウカちゃん、美味しくなる魔法の言葉を言ってあげてね?」

 

「はぁ!?何でよ!?」

 

「何でってフーちゃんは今はメイドさんでしょ?ならやらなきゃ!」

 

顔を真っ赤にした風夏が友人に怒鳴るが友人はどこ吹く風で気にしていなかった。

 

「そもそもその魔法の言葉って注文でしょ?注文されなきゃやらな……」

 

「ねぇ、お嬢様、お坊ちゃま……風夏おねえちゃんのかわいいところ、もっと見たくない?」

 

「「見たーい!」」

 

「メイドの『魔法の言葉』入りまーす!」

 

「ちょっとミサキ!?」

 

友人、ミサキのゴリ押しに声を上げるが子供達はメイドの魔法の言葉に目をキラキラさせて楽しみにしているのを見て、口をキュッと結びながら仁太郎達の方を向く。

その時、仁太郎と目が合ってしまい更に顔を赤くするが震える両手を胸の前に持ってきてハートの形にする。

 

「も…もぇ……、っ!萌え萌えキュンキュン♪パフェさん☆フウカのご主人様大好きパワーで美味しくなれー♡」

 

その時、仁太郎は開いた口が閉じることが出来なかった。

 

 

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