鳩原さんが失踪したという話は絵馬から教えられた
何でもトリガーを複数持ち出した上での失踪だそうで、最後に確認されたのは警戒区域内の公園と呼ばれる場所だったそうだ
そこに門が開かれた痕跡があり、鳩原さんと最低3名の民間人が門を通ったということもわかっている
この超重大機密違反は直ぐに関係者に伝えられた
まず鳩原さんの所属する二宮隊の隊員達、鳩原さんの狙撃手としての師匠にあたる東さんに伝えられた
間接的に私と絵馬にも情報が伝わり、絵馬は鳩原さんが機密違反をしたことだけが伝わった
私は尋問官の方に鳩原さんが機密違反をしてしまったことだけが伝えられ、何か有ったか聞かれたが特に何もと答えた
私は関係が短かったこともあり尋問には呼ばれなかったが、絵馬に鳩原さんと1週間前に何を話したのか聞かれた
私は絵馬から鳩原さんの話を聞いた時にある程度情報を理解していた
まず鳩原さんは弟さんの仇を取る為にボーダーに入り、ボーダーで働いているうちに遠征の事を知り遠征部隊に入る為に努力を続け、そして遠征部隊参加を勝ち取った矢先に人を撃てないという欠点を問題視され遠征部隊から外されてしまったこと
次に鳩原さんはこれで弟さんを探すのを諦めた訳ではなくどうにかして弟さんを探すために近界に行く方法を探していた
たぶん私と接触したのはA級隊員で近界民という情報を知っていたからであり、近界の様子を知ることができれば程度に聞いてきたのだろうが、まさか放置された遠征艇が有ることを知ったため、鳩原さんは行動に移したのだと思われる
私はまだ鳩原さんに師を仰いだのが1週間程度と短く鳩原さんの性格も優しい人、教え方も上手で丁寧、キレイ好き程度しかわからず、ここら辺は絵馬の方が理解しているのだろう
問題は遠征艇の事を話すかどうかだ
まず間違いなく遠征艇の事を話せば放置していた事を絵馬を通して上層部に知られてしまうため罰則が発生するだろう
絵馬との関係や二宮隊、東さんとの関係も拗れる
東さんや絵馬との関係が拗れれば狙撃手の訓練はとても難しくなってしまう
狙撃手は全て師弟関係を辿れば東さんに通じる為に東さんとの関係が拗れればアドバイス等を貰えなくなってしまう可能性が高い
なので私は保身に入った
「鳩原さんから近界の世界はどの様な世界があるか教えてほしいと言われて私の祖国と私が遠征したことのある国の情報を教えました。ただこの情報は私担当の尋問官にも伝えたのでボーダーの上層部も理解していると思います」
「……じゃあアルは鳩原さんが機密違反した原因や何も言わずにボーダーに来なくなったことに特に関わってないと」
「はい、その様な行動に出るような方ではないと思っていたのですが、絵馬はどう思いますか?」
「オレも師匠がそんな行動に出るとは思ってなかったさ……」
絵馬は鳩原さんの事を信じている様で、私はこれ以上は特に言わなかった
ただ、鳩原さんが居たから繋がっていた縁だったため、鳩原さんが居なくなったことで狙撃訓練を絵馬に教えて貰うみたいなことには発展せずに自然解散の流れとなった
翌日鳩原さんは規律違反で除隊処分、二宮隊はA級からの降格及び一定期間のA級再昇格の停止、あと影浦隊の隊長の影浦さんがメディア対策室長の根付室長を殴ったことでポイント10000点の没収と影浦隊の降格及び一定期間A級再昇格の停止処分となった
絵馬曰く根付室長が鳩原さんの悪口をぐちぐちと言っていて不愉快に思った絵馬の代わりにぶん殴ったとのこと
……つまりA級の実力がある部隊が一気に2つもB級に落ち、B級からA級に上がるための試験が受けられる枠は2つの為、順当にいけば二宮隊と影浦隊がこの2枠を埋めてしまい、更に2つの部隊は一定期間昇格しないため期間中誰もA級に上がれない可能性が出てきてしまった
A級を目指すアルにとってとてもめんどくさい事になったと思うのだった
鳩原さん除隊から数日後、アルは弧月のポイントが4000を超えB級へと到達し、B級部隊に参加するか部隊を作る権利を得た
既にある部隊への参加は声をかけてくれる人もいるが、学校に行っていなかったり、遊びに誘われてもボーダーから出れないため断ったりしていたので人付き合いが苦手と思われたらしく、関わりにくいし、アルも不用意に参加してギスギスするのも嫌なので新しく部隊を作る方向にシフトした
「岡村さん誰かいませんかオペレーターの方……」
部屋で勉強を教わっていた時に岡村さんに私は泣き付いた
B級部隊を作るにはオペレーターと戦闘員の2名が必要だ
ただ私の場合は近界民でも大丈夫な人という但し書きが付く
近界民の殺意マシマシな部隊に入った場合最悪な事になってしまうからだ
かといって私は近界民ですがオペレーター募集してまーすなんて馬鹿な事をしたらドン引きされるだけだし、A級がすっ飛んで来るのでやれない
他のB級部隊に加わらないのもこういった理由があるからだ
「B級ランク戦まで残り1週間じゃ、普通に部隊作ってても間に合わないねー」
「そうなんですが、とりあえず私の有効性を上に見せなければ1番に損切りされるのは自分なんで……」
「そんなことしないよボーダーは」
「ですが……」
「で部隊を作りたいんでしょ! ならアルが近界民だと知っていてなおかつアルの性格も知っている人物が望ましい……適任が1人居るじゃない」
「だ! 誰ですか!」
「わ・た・し!」
「岡村さんやってくれるんですか!」
「まーね、ブランク有るけどこれでも元オペレーターからボーダー社員になったくちだからね……で、トリガー構成はどうするの?」
岡村さんがオペレーターをやってくれるとのことなので、勉強を切り上げて来週始まるランク戦に頭を切り替える
アルのB級昇格時のトリガー構成はこうなっている
メイン
弧月
アイビス
シールド
無し
サブ
バックワーム
無し
シールド
無し
「とりあえずこれで行きます」
「アイビス? イーグレットの方が良くない?」
「いえ、アイビスでなければダメなのです」
「まぁアルが良いなら良いけど……隊名はアル隊にする?」
「いえ、岡村隊の方が周りに馴染みますし、私は1B級隊員に対して岡村さんは職員でありますので上司は岡村さんだと思っています。ダメでしょうか?」
「いや、アルが良いなら良いけど……でもシールド扱える? 大丈夫?」
「1週間で慣らすしかありませんが、幸い手伝ってくれる方がいるので」
「誰かな?」
「太刀川さんが防衛任務以外は付き合ってくれるとの事なので」
「あぁ、あの馬鹿まだそんな事をしてるのか……」
「知り合いなのですか?」
「大学の後輩だからね。それよりもB級になったら使えるトリガーを説明しようか」
「お願いします」
岡村さんの説明が始まる
弧月のオプショントリガー
旋空……トリオンを消費して弧月の間合いを伸ばす
幻踊……弧月の形を変形することができる
レイガストのオプショントリガー
スラスター……ブレードが瞬時に加速する
銃手、射手のオプショントリガー
鉛弾……当たると鉛の重りが付き、相手の動きを封じる
スタアメーカー……相手にレーダーで表示できるポイントを取り付ける
防衛用のトリガー
シールド……大きさ広さ、トリオン量によって強度が決まる
エスクード……身体の接触部分の近くから出現させることができる壁
特殊なトリガー
バックワーム……レーダーに映らなくなる
カメレオン……肉眼に見えなくなる
グラスホッパー……ジャンプ台になり、踏むと加速する
テレポーター……瞬間移動を実現できるが距離はトリオン量及び視界の範囲内
スパイダー……ワイヤーを張ることができる
「凄い種類があるのですね。バックワームとシールドは太刀川さんや出水さん、鳩原さんや絵馬の話で聞いていましたし、狙撃手の訓練でバックワームを着用する機会が有ったので知っていましたが」
「せっかくだし太刀川に旋空を教わってみれば? 旋空も奥が深くて旋空の起動時間によって射程が変わるから1秒なら15m、0.2秒なら40mにもなるんだけど、旋空弧月の先端に当てる技量が必要になるよ」
「なるほど射程が伸ばせるのは便利ですね」
「それよりもアルは出水に頼んで射手トリガーの使い方を教わった方が良いかも。キュービットだっけ? あれだけ癖の強いトリガーを扱っていたのだからボーダーの射手トリガーなら使いやすいと思うよ。後は銃手のトリガーにするか」
「旋空はメインに嵌め込まないと起動しませんか?」
「そうなるねだから旋空をセットすればメインが全部埋まってサブが2つ空いている状態かな」
「なるほど……グラスホッパーは肉体に作用するのですか? 物体に作用するのですか?」
「物体だね、瓦礫を飛ばしたりして目潰しする隊員も居たからね。ただトリオン体の弾は弾かないでグラスホッパーが壊れるから注意ね」
「なるほど……ならグラスホッパーもセットして、エスクードってのも入れようかな? 壁はシールドよりも硬いのですか?」
「硬いよ。アイビスもシールドなら集中シールド2枚でもトリオン量によっては貫通するけどエスクード2枚なら確実に耐えられるし、エスクードは瞬時に複数枚出すことができるよ。トリオン量によるけどアルなら瞬時に10枚は出せるんじゃないかな?」
「地面から生えてくる感じですかね?」
「そうそう壁からも生やせるよ」
「ならエスクードもサブで入れて」
メイン
弧月
旋空
アイビス
シールド
サブ
バックワーム
エスクード
グラスホッパー
シールド
「で良いかな」
「注意だけどトリガーをセットするだけで攻撃に使えるトリオン量は減るから注意ねまぁ1つ辺りだいたい0.2位だけどエスクードは1消費するし、これに緊急脱出の1が必ずB級以上のトリガーには組み込まれるからアルの場合は3.4が使用不可のトリオンになるから注意ね」
「ちなみにトリオン量を数値にすると私はどれぐらいになるのですか?」
「25なんだけど約2ヶ月経過して最近また測ったら25.6有ったんだよね……アル年齢16だっけ?」
「はいそうです」
「トリオン器官は20までは成長するからアルは最終的に30位にはなるんじゃないかなこの調子だと」
「たぶん急激に伸びたのは健康的な食事ができているからも大きいかと思いますが……」
「確かにそれは有りそうね。トリオン器官の成長については基礎研究段階だからアルのデータは結構貴重なのよ。トリオン量が元から多い人は成長率も高いのよね……とと、話が逸れた。後エスクードについて補足だけど近くと表現したのはトリオン5位の人なら接触面から25m以内の距離に展開することができるわ。だからアルの場合は理論上125m以内なら接触さえしていれば生やすことができるし、瞬間的に10枚出せると表現したけど1秒以内なら25枚は展開することができると思うわ。最大枚数はアルのトリオン量なら……200枚ね」
「それだけ多ければ何でも守れそうですね」
「そうね、ただエスクードは耐久力は一定だからアルが集中シールドをした場合よりは劣ると思うわ」
「さっきから出てくる集中シールドとはなんですか?」
岡村さんはアルにシールドの詳しい説明をしていく
まずシールドの特徴としてトリオン量が多い人ほどシールドは硬くなるというのがあげられるがトリオン量が少なくても攻撃を守るのに必要な量にするには守る範囲を狭めれば良い
これを集中シールドと呼ぶ
集中シールドの他に全体を球体状に守るのが全体シールド
分割して擬似的に2枚以上のシールドにする分割シールド
シールドをキューブ状にすることで厚みを出して防ぐ立体シールド
例外だがグラスホッパーと組み合わせて腕に集中シールドを展開してぶん殴るという技も有ったりとエスクードにはできない汎用性と可能性に飛んでいるのがシールドというわけだ
「全体シールドしかできない祖国のバリアがゴミ性能すぎる」
「よくそれで生存できていたね」
「何事も工夫ですよ」
「で、俺と殺り合うと」
「はい、死合いをそうですね……30殺りましょうか」
「いいね……授業料はポイントで徴収するからな」
「わかってます」
部隊の申請は岡村さんに任せてアルは太刀川さんと約束の死合いを開始する
今回はランク戦のブースで殺るので観客は居ないため存分に試すことができる
「よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
まず普通に弧月を使った打ち合いだが、太刀川さんは二刀流な為、前回よりも攻撃力が高く手数も多い為、アルは前回できた奇襲からの押し込んで勝つという戦法が取れなくなった
弧月1本で二刀流相手に戦えているアルの防御力の高さが目立つが、太刀川さんは次の一手を行う
旋空弧月
その威力は先端に行くほど高く、並みのアイビスよりも高い瞬間火力が出せる
アルは咄嗟に弧月でガードするが、弧月を粉砕され、太刀川さんの二撃目によってベイルアウト
タブレット越しに太刀川さんが
「これが旋空弧月だ。どうだ? 守れそうか」
「ちょっと工夫してみますね」
続いて2回戦
太刀川さんは私を強くするために旋空弧月重視の立ち合いをしてくれ、旋空弧月は覚えたての集中シールドによって防げるか試したところ集中シールド+弧月なら余裕集中シールド2枚だと2枚目にビビ、立体シールドだとヒビが入りながらも防ぎきることができた
ただ立体シールドは集中シールドよりも範囲が小さいため位置が少しでもズレたら終わりなため太刀川さんの太刀筋を見極めて要所要所で使っていく
集中シールド+弧月だと攻撃や流しに対応できないため、立体シールドで防ぐしかないという悲しみもあるが
あとは
「グラスホッパー」
グラスホッパーを踏んで間合いから外れることでの回避
で、空中で弧月を投げる
太刀川さんはこれを避けるが太刀川さんの更に後ろにグラスホッパーを2枚展開し
くの字に展開することで弧月が加速しながら再び太刀川さんに襲い掛かりザックリ腹部に命中する
くの字と言っても少し横にズラしており、太刀川さんが避ける確率が高い左に1歩分移動した位置に行くようにグラスホッパーを調節していたりする
「今日B級に上がったってことはグラスホッパー初心者だよな……それでこの精度かよ……面白いじゃねぇか」
そのまま太刀川さんはベイルアウトし1勝1敗
2回目は太刀川さんも警戒して投げても叩き落とされるのでそれを更に呼んでグラスホッパーを展開したり(太刀川さんの二撃目で壊されたためなにも無し)、エスクードで太刀川さんを上に飛ばしてみたり(空中旋空弧月やられてアルベイルアウト)、エスクードで視界を隠してアイビスで壁越し射撃をしたり(太刀川さんベイルアウト)、旋空弧月同士で打ち合いをしてみたり(アル技量不足でベイルアウト)ととにかく色々試してみる
アルが何かしてくる度に太刀川さんは嬉々と受けたり避けたり叩き落としたりと本気なのか遊んでいるのかわからない感じだが喜びを爆発させていた
最終的にアル10勝太刀川さん26勝と予定より6戦も多くやってしまったが、太刀川さんは
「また明日もやろう!」
と誘ってくれたので明日も、明後日も明明後日もとB級ランク戦が始まるまでずっと戦い続けることになる
1週間後の戦績はアル90勝太刀川206勝10引き分け(相討ち)
で太刀川さんが勝ち越しているがポイントの差が約4万ポイントあるためこれでもアルが2000ポイント程奪い取りあっさり6000ポイントの壁を突した
「いやー! 楽しかった! 1週間で上手くなったな! 勝率もほぼ3割だし俺に対してここまでやるならB級中位までなら無双できるだろう。あとあの当てにくい事に定評のあるアイビスをあそこまで当てるのは相当だぞ」
「……太刀川さんだから言いますけど私のアイビスまだ全力で弾込めしてません。ランク戦で度肝を抜いて見せますので」
「お! そりゃ楽しみだ! 今週の土曜日の午前の部だよな?」
「あ、あと出水さんに伝言良いですか」
「お? なんだ?」
「バイパーとアステロイドを今度教えて欲しいと伝えてください。本当は菓子折りとか持っていくのが礼儀だと思うのですが買えないので……今度直接行って伺いますが一言言っておいた方が良いと思ったので」
「おしわかった。じゃあランク戦隊服も含めて楽しみにしてるわ」
「隊……服?」
「あ? 知らないのかB級になったらトリガー弄って隊服をカスタマイズできるんだぞ。1週間程度で出来上がるから岡村さんに聞いてみれば?」
「ありがとうございます」
隊服は岡村さんが勝手に申請していたのペルソナというゲーム? のジョーカーというキャラの戦闘服になっていた
仮面付きだし……
「ランク戦が終わったらゲーム機貸すからやろう!」
と言われて私は何も知らないコスプレをさせられるのでした
あと隊室は私の横の部屋になりました
ちゃんちゃん
最初セーラー服にしようかと迷って怪盗服にした
戦闘体だからできるコスプレだよなぁ
ランク戦何回かしたらBBF書きます
岡村さんの能力も知りたいと思うから
追記
絵馬が鳩原の失踪について深くは知らなかったので修正