第7回ウマ娘小説合同企画   作:通りすがる傭兵

1 / 5
夏って、何だか青春を感じる時期だと思います。それだからこそ、色々なドラマが生まれるのかもしれないです。


小さいけど色々とアツい夏休み(作:BuddPioneer)

 

 夏。それは熱いけど、学生なら青春を謳歌する季節。勿論、トレセン学園のウマ娘たちも例外ではない。夏休みという長いようで短い休日を堪能したいものである。だがしかし、彼女たちはレースに備えてトレーニングもしなければいけない。そのため夏休みとは言っても、実際はトレーニングが殆どを占めてしまう。これは、あるウマ娘の夏休み中に起きたちょっとした出来事の記録である。

 

 

 

「なんで、なんで前との差が縮まりませんの!」

 

 

 メジロマックイーンは、夢の中で走っていた。レースは丁度、4コーナーを曲がり、最後の直線。自身の力を振り絞り、最後の力を振り絞って駆け抜けるが、前との差は一切縮まらない。それどころか、むしろ離されていく。

 

 

「私がこんな結果になるなんて、許せませんわ!」

 

 

 ゴール板を三着で駆け抜けたところで、彼女は目が覚めた。

 

 

「なんだ、夢でしたか。びっくりしましたわ。」

 

 

 しかし、彼女は異変に気づいた。夢から覚めても、周りは真っ暗なままなのだ。そして、自身が急斜面にいることにも気づいた。急斜面の頂上付近からは、微かに光が漏れている。あの頂上に行けば、何か周りのことが分かるかもしれない。そう思った彼女は、気がついたら走り出していた。

 

 

「真っ暗闇の中を走り回るって、一体何でなのかしら・・・?」

 

 

 真っ暗闇の中を走りながら、マックイーンは一人呟いていた。今日の朝ご飯は何だろう。トレーニングは何をしようか。お昼何食べよう。3時のスイーツは何食べよう。晩ご飯は何にしよう。スイーツ、スイーツ、スイーツ・・・・・。ほとんどスイーツのことばっかり考えながら走っていたら、斜面の頂上が見えてきた。

 

 

「やっと頂上ですわ!」

 

 

 歓喜の声を上げ、光の差す頂上についたマックイーン。どのような景色が広がっているのか、いざ見渡してみると、そこには驚愕の景色が広がっていた。

 景色自体は、寮の部屋と変わりがない。だが問題なのは、その大きさである。一つ一つのものが、とても大きいのだ。まるで、巨人の部屋に迷い込んでしまったような雰囲気だった。しかも、ついさっきまでスイーツスイーツ言いながら登ってきた斜面は、自分のベッドにある枕だった。

 

 

「そんな、そんな。あり得ませんわ。そんなことが・・・・・」

 

 

 事実でない、と考えてしまい、反射的にほっぺをつねってしまう。しかし、しっかりと痛みが返ってきた。

 

 

「何で私、小さくなってしまったのです?!」

 

 

 つまりマックイーンは何故か、2頭身の小さい身体になってしまったのであった。

 

 

 

「うう・・・どうしましょう。」

 

 

 驚愕の事実が判明してから約5分後。マックイーンは唯一人、枕の上で体育座りをしていた。同室のイクノディクタスは丁度ランニングに行ってしまっているらしく、空いていた。

正直なところ、ここから早く出たい。でも小さくなった自分は、部屋の扉を開けることなど絶対できない。というか、ベッドから下りようとすれば、絶壁とも言える高さである。骨折などの大けがをしかねない。

このままイクノディクタスが戻ってくるまで待とうかな、と思っていたところだったが、助け船は思わぬ所からやってきた。

 

 

「ちすち~っす。ゴールドシップ様のおでましだぞ~♪」

 

 

 そう、マックイーンと竹馬の友(?)であるゴールドシップが部屋にやってきたのだ。いつもなら『ノックしてきてから入ってきて下さいませんこと?』と言うのだが、今回ばっかりは言うのが遅れてしまった。というのも

 

 

「大きすぎますわ・・・」

 

 

 ゴールドシップの想像以上の大きさにビビってしまったのである。いつもの時でも相当デカいゴールドシップだが、今のマックイーンは2頭身の大体15センチくらいの小さなウマ娘。対してゴールドシップは170センチ。身長だけで11倍以上の差があるのだ。何も言えなくなるのも無理はない。

 

 

「ってあれ?マックイーンいねえな。」

 

「ゴールドシップ、私はここですわー!」

 

「イクノディクタスもいないし、トレーニングにでも出かけたのかな?」

 

「だから、私はここですわー!」

 

 小さいマックイーンはここに自分がいると叫び、ぴょんぴょん跳びはねて必死にアピールする。だがしかし、身長も小さければ声も小さいため、全く気づいてもらえない。

 

 

「うーん、来る時間を間違えたか?時間を改めてまた来ようかな・・・。」

 

「だからいい加減気がついてくださいましー!!!!!」

 

「ん?あの枕の上で跳ねているヤツ、何だ?」

 

 もうここまでか・・・と思ったその時、ゴールドシップがこちらに気がついたのか、こちらに近づいてきた。そして、マックイーンの前で立ち止まった。

 

 

「・・・コレ、本当に何だ?」

 

「だから、私ですわ!メジロマックイーンですわ!!!」

 

「ふ~ん。最近のフィギュアって喋るんだな。凄い進化だ。」

 

「だから違いますわー!!!」

 

 

 自分がメジロマックイーンであると必死に訴えるが、中々聞き入れてもらえない。

 

 

「ゴールドシップ、疑っておりますの?」

 

「だってこんな手のひらサイズのウマ娘がいるか普通?」

 

「うぐっ」

 

 

 しかも、まさかの正論にクリティカルダメージを食らってしまう。しかし、ただでは転ばないのがメジロマックイーン。信じてもらうには、この方法しかない。そこで、超絶ウルトラスーパーレベルの切り札を切った。

 

 

「ゴールドシップ、貴女最近【検閲済】kg太りましたわよね?」

 

「グフッ」

 

「しかも、また最近学園内でやらかしましたわよね??昨日の夜から生徒会メンバーが必死に貴女のことを血走った目で探していますわよ。」

 

「オッフ」

 

「まさかここに来たのって、自分を生徒会メンバーから匿ってもらおうとして来たのではありませんの???」

 

「ガハッ」

 

「どうです?これで今目の前にいる小さい小さいウマ娘がメジロマックイーンであると信じてもらえましたか???」

 

「お、おう。よーく分かったぜ。」

 

 

 これでもかとマックイーンは色々なカードを切りまくった結果、白毛並に真っ白になったゴールドシップは目の前にいる小さなウマ娘がメジロマックイーンだと信じた。

 

 

「それで、ゴールドシップ。」

 

「お、おうなんだ。流石にこれ以上色々とバラされるのはキツいぞ。」

 

「流石にこれ以上バラしませんわ。まあ、もっとカードはあるんですけどね。」

 

「おいさらっとやべえ事言うんじゃねえ。で、何だ?」

 

「見ての通り、私は小さいですわ。ですから、今日一日ちょっと肩を貸してくれませんこと?」

 

 

 見ての通り、マックイーンは今とても小さい。そのため、この姿では移動もままならない。そこで、移動の足としてゴールドシップを必死に呼んだのだ。

 

 

「いや、まあいいけどよ。」

 

「じゃあ早速。」

 

 

そう言うなり、マックイーンはゴールドシップの肩に助走をつけて飛び乗った。

 

 

「いや、こういうのって普通はこっちが手を差し伸べるべきなんじゃねえのか?」

 

「それもそうでしたわね。でも、特に問題ないですわ。」

 

「お前本当にお嬢様か?結構ワイルドすぎじゃね???」

 

「あら、そうです?では、食堂へ行きますわ。私、お腹が空きましたの。」

 

「おうよ。」

 

 

 そういえばマックイーンがワイルドなのは今に始まったことではなかったか、と思いながら食堂へと足を運ぶゴールドシップであった。

 

 

 

 ここは食堂。腹が減っては戦ができぬ。大飯ぐらいであるウマ娘の胃袋を心ゆくまで満たしてくれるこの食堂で

 

 

「パクパクですわ!パクパクですわ!」

 

 

 マックイーンは片っ端から平らげていた。あの小さい体で、ある。なお、食べる量は一切変わっていない。これには

 

 

「ええ・・・」

 

 

 流石にゴールドシップもドン引きしていた。そりゃそうである。大きさ15センチのマックイーンが普段と変わらない量を食べていたら、ドン引きするのも無理はない。

 

 

「そろそろデザートですわ。」

 

「マックイーン、お前まだ食うのかよ・・・。」

 

「あら、メインとデザートは別腹でしてよ。」

 

「マジかよ・・・。」

 

 

 パックイーン、おそるべしである。ポッコリ膨らんでいたお腹も、気がついたら凹んでいた。

 

 

「かき氷のウマ盛り・極を頼んできて下さいませんこと?味は任せますわ。」

 

「お、おう。」

 

 

 ゴールドシップは、かき氷のウマ盛り・極を注文しに席を離れた。

 ここで、少しかき氷のウマ盛り・極について補足説明を。かき氷のウマ盛り・極は、高さだけでも50センチ、氷は20キロも使用したトレセン学園食堂渾身の一作である。なお、これを完全に食べることのできた健啖家は5人ほどしかいないという。ちなみに、食べきることができたら、食堂の壁に、サイン色紙とその時の写真が掲出される。普通のウマ娘でさえ完食するのが難しい逸品を、マックイーンは食べるというのである。端から見れば無謀とも言える挑戦とも取れる。なお、残したら反省文を書かされる。

 

 

「お、お待たせ。流石に持ってくるのに疲れたぜ、コレ。」

 

 

 しばらくして、ゴールドシップが例のかき氷のウマ盛り・極を持ってきた。マックイーンにとっては、文字通りの山である。全体にメロン果汁100%使用のシロップがかけられており、禍々しい緑色を放っている。

 

 

「いただきますですわ!」

 

 

 そう言うなり、マックイーンは着の身着のままで、氷の山にかぶりついた。いちいちスプーンですくっていては埒が明かない。小さい身体でそのまま飛びついた方がいいと身体が直感的に感じての行動だった。

 

 

「パクパクですわ!パクパクですわ!」

 

 

 ひたすらに氷の山を削り取っていくマックイーン。かき氷は、薄く氷が削り取られており、口に含んだ瞬間から溶けて消えていく。シロップは、100%メロン果汁が使用されており、上品な甘さが口の中に広がっていく。そして、勿論

 

 

「くぁーっ!頭にキーンと来ますわ!!!」

 

 

 大量にがっつくとなるとキーンと頭にくる。これもまた、かき氷の醍醐味である。

 しかし、この勢いも徐々に落ちていく。30センチほど食べたところで、急にマックイーンが食べるのを止めたのだ。

 

 

「おい、マックイーン。どうした?」

 

 

 不安げにゴールドシップがマックイーンに声をかける。

 

 

「さ、流石に、これを見くびっていましたわ。」

 

 

 マックイーンの腹は、限界に近づいていた。正直、かき氷をいっぱい堪能したいと思い、ノリと勢いでかき氷のウマ盛り・極を頼んでしまったが、これほどの量を食べきるのは難しいと言わざるを得ない量であった。

 

 

『このまま諦めるのも1つの手段ですわ。ですが、諦めたら反省文。メジロのウマ娘として、これは屈辱とも言えますわ。でも、もう余力はそこまでない。どうしたら・・・』

 

 

 諦めかけていたマックイーンに、ゴールドシップが声をかけた。

 

 

「なあ、マックイーン。こんなところで諦めていいのか?」

 

「ゴールドシップ」

 

「お前は粘り強い精神力を持っている。そして、今の段階は、レースで言えば第4コーナーを抜けて最後の直線に入ったところだ。ここで諦めていいのか?今のままだと、レースを放棄することになるぞ。そんなままで終わっちゃうのか?メジロマックイーンというウマ娘は???諦めずに最後まで力を振り絞って、勝利を掴むんじゃないのか?お前さんの本気は、まだこんなもんじゃねえだろ?見せてみろよ、メジロマックイーンというウマ娘の本気を!」

 

 

 ゴールドシップの熱い言葉が飛ぶ。この言葉が、メジロマックイーンというウマ娘の本気を目覚めさせるには十分すぎる援護射撃だった。しかも、それだけではない。

 

 

「マックイーン先輩、頑張って!」

 

「マックイーンならば絶対やれる!」

 

「貴女ならば絶対やれるよ!」

 

 

 かき氷のウマ盛り・極を誰かが頼んだと聞いて、外野が気づかぬうちに集まってきていたのだ。それに挑戦しているウマ娘が、小さい小さいマックイーンだと知っても、みんなはいつものマックイーンと接するときと同じように見守っていた。そして、みんなで応援していたのだ。

 

 

「みんな、みんな、本当に、ありがとうございますですわ・・・。」

 

 

 思わず、マックイーンの目から涙がこぼれる。

 

 

「おいおい、その時の涙は完食したときにとっておいたほうがいいぜ。」

 

「そうですわね。」

 

 

 溢れ出る涙を拭い取りながら、マックイーンは再び氷の山と対峙する。一度消えかけていた心に、再び火が入る。

 

 

「メジロマックイーン、参りますわ!!!」

 

 

 再び心の炎が天高く燃え上がったマックイーンが止まることは決してない。まるで暴走列車のように氷を平らげていく。そして、挑戦から実に21分38秒後。

 

 

「これで、最後ですわ!」

 

 

 とうとうマックイーンは、山のようにそびえ立っていたかき氷を全て平らげることに成功したのであった。溶け出した氷も全て飲み干し、全身びしょ濡れ、お腹も今まで以上にボッコリ膨らんだ状態で、容器の底に満面の笑みでピースサインをしていた。それこそ、G1をセイしたときくらいの達成感が、マックイーンの心の中にはあった。

 

 

「みなさんの応援のおかげですわ!ありがとうございますですわ!!!」

 

 

 周囲からわっと歓声が上がる。みんな、マックイーンがかき氷のウマ盛り・極を完食したことを、祝ってくれていた。本当に、それだけみんなマックイーンのことを思ってくれていたのである。

 

 

 

 さて、その日の夜。

 

 

「マックイーン、まさかアレを完食するとはな。中々やるじゃねえか。正直見直しちまったぜ。」

 

「そうでしょう?もっと褒めて下さっても構いませんのよ?」

 

 

 マックイーンはゴールドシップの自室にいた。今回マックイーンを連れていってもいいのは、同室のイクノディクタスの了承済みである。なお、あの後マックイーンはびしょ濡れのまま色紙にサインし、記念撮影をした。おそらく、明日には色紙と写真が掲示されるであろう。

 なお、小さくなってしまっていたため、トレーニングは中止となったので、ひたすらゴールドシップの肩の上で一日を過ごした。勿論、風呂も一緒である。

 

 

「今日は色々と疲れましたわ。私は早く寝たいですわね。」

 

「おう、じゃあ電気消すぞ。」

 

 

 ゴールドシップが部屋の電気を消す。ちなみに、マックイーンはゴールドシップの頬に頬ずりをしている。

 

 

『何だかこんなに頬ずりされたのは初めてだぜ・・・』

 

 

 心の中で、少しだけ照れたゴールドシップであった。

 

 

 

 翌日。

 

 

「う~ん・・・よく寝たぜ。」

 

「あら、今頃起きましたの?お寝坊さんですわね。」

 

「ゴルシちゃんはマイペースだからな。」

 

「そういえばそうでしたわね。」

 

 

 ゴールドシップが起きたら、そこにはいつも通りのマックイーンがいた。既に制服姿で、準備を完全に整えた状態である。

 

 

「ほらほら、早く準備しなさいな。オグリキャップさんに朝食を全て持って行かれますわよ。」

 

「おう。早く準備するわ。」

 

 

こうして、また新たな一日が幕を開けたのであった。

 

 

 

数ヶ月後。マックイーンはレース前の検量に臨んでいた。夏休みが明けて、初めてのレースである。

 

 

『夏休みが明け初めてのレース。前回のような真似はもうしませんわ。さて、体重はどうでしょう・・・』

 

 

 意気揚々と体重計に乗ったメジロマックイーン。しかし、

 

 

「【検閲済】kgです。」

 

「う、嘘・・・前回より【検閲済】kgも増していますわ!!!」

 

 

 なんと、前回よりも2桁も体重が増えていたのである。これにはマックイーンも顔面蒼白。

 

 

『もしかしたら、あのかき氷が効いていたのかもしれませんわ。』

 

 

 もしかしたら、かき氷のウマ盛り・極が体重に響いていたのではないか、と心配したマックイーンであった。

 結局、このレースでも勝ちきれず、余計体重が心配になるマックイーンだった。

 

 

 

【完】

 




ここまでお読み下さいまして、本当にありがとうございました。作者のBuddPioneerと申します。今回、マックイーンの身長が小さくなって、それで超絶大きなかき氷に挑戦したら面白そうだな、と思い書いてみました。小さくなったマックイーンはねんどろいどくらいの大きさをイメージして書きました。個人的にはマックイーンのねんどろいど、早く出てほしいです。最後に。ゴルマクはいいゾ。


作者:BuddPioneer
ハーメルンマイページ(https://syosetu.org/user/348705/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。