『治りましたか、キキ?』
『お師匠さま、この聖衣の輝きは鈍り抜殻のようです』
『なんと聖衣の霊核が抜け落ちてしまったのですか。さてはて困りましたね。私が出来るのは聖衣の強化修復のみです。聖衣の開発は専門外なのですよ。──という経緯なので、解決をお願いしますねシャカ』
『ムウよ、困ったときに訪ねてくるのは迷惑千万だ。私とて、全てに答えが導けるほどに万能にはないのだがな(カーン)』
『三千世界に通ずる見識があるのですよねシャカ?』
『聖衣は守護星座の神力と女神アテナの祈りによる結晶体だと伝えられているが、実際の製法は知らないのだ。遥か昔の神話より神々の恩恵を授かりし至宝こそが聖衣の原型だと聞き及んではいるが真実は流石に知らぬよ(オーム)』
『シャカよ、聖衣の心臓部が「神霊核(マナス)」なのですよ。私たちの聖衣にも宿っているのは、神々の分霊ともいえる記憶の種火なのです。私は種火を燃え盛るように調整しているだけに過ぎません。それを修復と呼ぶのは烏滸がましい限りです。シャカよ、貴方に頼みたいのは分霊が消えた先の世界を見通して戴きたいのです』
『ムウよ、私に無駄に開眼せよと言うのか』
『何もしないままと言うのは流石に不味いですからね。貴方の聖衣のメンテナンスに同じ症例が起こるかもですが、それでよろしいのですか?』
『ふっ、ものは言いようだなムウよ。よもや焚き付けてくるとは八方塞がりか』
『餅は餅屋です。貴方の方が確かな世界を見通せるのですから』
『して、ムウよ。誰を───────』
■0-1.始まりは唐突に
肝心なとこで天啓が途切れているが、それを成し遂げるのが大義なのだろう。
今一つ実感が沸かない夢見だが、これを理由に飛ばされてきたのだ。シャカ様の「六道輪廻」により使命をもって此処に都合よく転生しに来ている。
件の女神の片割れが今目前に控えているのだが、現時点で伝えても妄言だと一蹴されて終わる。力関係は無いに等しく、この女神が聖衣の神霊核だったとか馬鹿げた発想でしか無い。
『あなたは不幸な事故で死にました。貴方には三つの選択肢があります』
『第一に、このまま天界で魂のままに永眠するか』
『第二に、記憶を消して新たに生まれ変わるか』
『第三に、記憶を維持したまま異世界転生して人生をやり直すか』
『あなたなら、どれを選びますか?』
『私のお薦めなのは三番よ』
『生きてきた世界であなたは適合しなかったのだし、それなら別世界で人生再設計した方がお得だと思うの』
事も無げに親切を押し売りしてくる女神だ。異世界転生にノルマがあるかのような導き方に失笑を禁じ得ない。ここの場面は見たことがある。間違いなく、ここは『あの世界』なのだと達観してしまった。
使命に従うなら、ここで女神との縁を築くべきか。ここを通過すると女神は原作主人公のモノになる。そうなると物事を御しやすい構成になるし、本編が始まるまでの準備期間で対応策を山積みすれば懐柔できるかもしれない。だが原作に従ってよいのかは甚だ疑問だろう。最終的に、この世界から離脱しなければならないので原作通りの展開は望んでいない。
自分だけが知ってしまった真実を現実にするには、原作主人公の立ち位置に介入する必要がある。だが、原作主人公を意識した仲間づくりはする気がない。その立ち回りを押し付けるためにも、原作主人公を登場させて原作通りの展開を望まなくてはいけない二律背反の状態なのだ。
最初の起点を登録する。
女神との邂逅の場を起点に設定した。
これが転生前にシャカ様から授けられた固有スキル「起承転位」であり、世界の記憶概念である『アカシックレコード』に介入するスキルである。
このスキルは任意で事象の節目にセーブ&ロードが出来る特性にあるのだが、いつでも使用が出来るほどに容易ではなく使用権限は師匠であるシャカ様にある。シャカ様が親機で、私が子機の様相か。私が心底願うことで発動する厄介な代物らしく、使用にあたり莫大な小宇宙コストは私では賄えないのでシャカ様が肩代わりしてくれている。スキル使用の連発はシャカ様でも堪えるらしく、一度発動すると再使用するまでの小宇宙コストの充填期間が一年ほど必要とのこと。
シャカ様が瞑想して蓄積した小宇宙力をごっそり浪費して発動可能になる神業には、ライブラの老師でもガクブル冷汗ものという消費量には想像に及べない。
危機的状況の緊急回避として温存するのが妥当。シャカ様とて酷使させられるのは想定外なのだろう。与えられた使命の過酷さに戦々恐々としたのが記憶にある。
シャカ様の命懸けな神業スキルを私に委託したのは、弟子である私を想ってのことと解釈した。莫大な費用コストが私に掛けられているので、異世界で易々と死亡されては困るといった師匠の内情を察した。
師匠の趣は、大願成就するまでは絶対に還ってくるのは赦さない。何が何でも成し遂げてこいと使命の成功率の低さを物語ってもいる。果たして元の世界軸に戻ることが叶うのは、いったい何時になるのだろうか。
私が執れる行動選択肢はそう多くはない。この世界の規定範囲を大きく逸脱すると本来の脚本が発揮されるように「強制力」が働くように設定されている。この世界軸における私の立ち位置は異物であり、世界の特異点になる有害因子に相当する。世界からの自浄作用に捲き込まれずに抗いながら使命を全うするのが目的だ。
原作に倣うか、原作を盗るか、原作を蹴るか。
────果たしてどの選択が正解なのだろう。
■0-2.難易度「normal」女神エリスの従者
「原作に倣う」のは、原作通りに女神アクアを佐藤和真が連れてくる展開だ。
女神アクアの引率を佐藤和真に担わせて、自分は女神エリスに尽くしてエリス教徒になり女神エリス側の動向を探ることになる。女神アクアの品性劣化を軽減するべく佐藤和真の視野範囲外で補正行動は取る予定で、二人に分裂した知性が融合した折りに起こるであろう不具合を減らす目論見もある。
いわゆる転生初心者コース。
最初から緩い設定での肩慣らしだろうか。
私の致死攻撃は「非殺傷」に制限されており、峰打ちして人類対象を処さないように不殺を心掛けている。
佐藤和真のメインイベントには、なるべく過干渉しないよう自重している流れにある。原作再現に近い状況を模索しながらも女神アクアの動向を監察する。原作で語られていない状況を先読みして、佐藤和真に配慮する行動が必要になる。再現不可な状況が起きた場合は、私が悪事を肩代わりして暗躍する必要もあるのだろう。
身バレを防ぐために、聖闘士であることを隠しながら猟師生活を擬態していくスローライフ生活が主軸になるだろう。
私が、世界環境に馴れる試みの方が大きい。
一個人で行う影響の余波を知ることも大事か。
私の行動理念は、初めてを既知にする作業。
世界を知り尽くすために、冒険者生活を満喫する。
現地戦力の調査を兼ねて「勇者狩り」を敢行する。
この路線の周回では、先達者のスキルを見切ることに注視している。あわよくば古参者のスキルを視認してスキル未修得リストを充実させたいところだ。
■0-3.難易度「hard」女神アクアの従者
「原作を盗る」のは、原作主人公である佐藤和真の立ち位置に割り込む。
女神アクアの従者となり女神アクアからの信任を得ることを第一に行動する。駄女神化ルートが進行しないように手綱を引きビシバシ矯正する。めぐみんとダクネスの仲間入りルートを拒絶。一芸特化の仲間枠は、佐藤和真のために残しておくべきだろう。代わりに、ゆんゆんとクリスの固定編成枠の引き入れを画策する。
こなれた転生中級者コース。
女神アクアは、女神エリスより潜在技能が格上なので難易度が高くあるらしい。
最初から実力を見せつつ威圧行動を隠さない。
私の致死攻撃の「殺傷」は解禁されており、悪党は徹底的に鉄拳制裁を行う。
魔王軍は殲滅対象で、容赦なく悪魔死すべしに歯止めを掛けないフリーダムさを解禁する。
佐藤和真のメインイベントに過干渉していく流れにあり、佐藤和真の魔王討伐的な立ち位置を簒奪する。
魔王軍最前線のベルゼルグ王国に深く介入するので、ベルゼルグ王家から信任を得るために佐藤和真の王女アイリスとの義兄妹フラグをバキバキにへし折る。
聖闘士であるべく、聖闘士として行動開始。
聖衣の再現構想を実現させたい。
女神アクアのオタク知識を借り受ける必要性あり。
最初の周回では未解明に終わった『世界の謎』に立ち向かう探求ルートになるだろう。
■0-4.難易度「extend」女神アクエリアスの従者
「原作を蹴る」は、闇堕ちルート。
転生者の魔王軍入りを体験して敵側の情報を抜き取りたい。神側の常識と様相だけでは整合性に欠ける。神視点では語られない何かを見出だすのが目的だ。
創造神を困らすために『第二次聖魔大戦』を誘発させて、神界と魔界を衝突させてみたかったりもする。実質的には、不倶戴天の七大天使と戦うバニル爆惨大往生ルートと言えるかもしれない。
みなぎる転生上級者コース。
度重なる周回の果てに解禁されたルート。
神と悪魔による茶番劇を崩壊させ、バニル宿願の最終戦争の勃発を目論む。
私の致死攻撃の「殺傷」は解禁されており、悪党を含めた全人類に鉄拳制裁を行う。
神の軍勢は殲滅対象で、善悪を問わずして立ち塞がる障害は悉く排除する。
女神アクエリアスを世界から解放させるために、創造神が設定した楔を破壊するのが目的にある。
ついでに、他の様々な楔も外して『解放者』となるかもしれない。
導入部分だけ、聖闘士星矢の原作キャラが登場。
前座は、シャカやムウが小噺をする視点。
本編は、オリ主の視点。
シャカはオリ主の師匠ですが、原作崩壊気味。
主人公は、白金聖闘士です。
誰しもがネタで考えてみたことがあるはず。