この女神の従者に導きを!   作:燕煮煎

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■3-0.師の在り方

「弟子との良き関係性ですか?」
「─────そうだ」

「適度な会話と適度な試練と適度な距離感です」
「ムウよ、それは解になっておらぬ」

「シャカ、貴方は弟子との会話をしていますか?」
「会話とは?」

「試練以外での歓談ですよ」
「しておらぬな」

「──────(厭きれ」
「必要性が無いことをする意味があるのか?」

「人間性を感じ合うには必要なことですよ」
「人間性とは?」

「弟子と向き合うための姿勢ですね。弱者と並ぶには強者が腰を折って同じ目線で語るのが大切なのですよ。強さだけで物語ると畏怖されて誤解を受けます」
「──────(?」

「貴方は解らないのですね、シャカ」
「解らないのが答えなのか?」

「そうです。師の強さは威厳ではありますが、弟子として接するには強過ぎてはいけないのです。下手に出過ぎるのも悪手なので微調整は必要でしょうか」
「適度な距離感は考えたことがない」

「そうでしょうね。貴方は崇められてしまう存在なのですから、神格化され過ぎた弊害ですかね」
「──────(冷汗」

「派遣された弟子を手助けしまくりましょう」
「手助けとは言ってもな、弟子の要請で転位させるくらいしか出来ぬよ」

「その弟子に小宇宙や物資などを送ることは出来ないのですか?」
「出来なくはないが、干渉し過ぎるのではないか」


 前の二人が失敗作だっただけで、派遣した弟子は比較的まともに育成した。転生前の手解きはしたし、平行世界の私から資料を入手したりもした。
 あやつが転位を要請したらば、その時に餞別を与えるのも師匠としての配慮なのやも知れぬな。


3.補正無き従者にスキル恩恵の導きを!

■3-1.スキル取得の吟味

 

 冒険者生活を続けて60日くらいになった。新米冒険者として板に付いてきた感じで『獣肉ハンター』としてアクセルの住人から私を猟師扱いするのが定着している。

 

 猟師として認識されたのは好都合だ。聖闘士であるのを隠せるなら冒険者アバター冥利に尽きる。元居た世界でのサバイバル生活の延長線上の流れなので手馴れているのは苦にならない。自然の中で生き抜くことが修行という格言もある。自然素材の投擲だけで「獣狩り」をしてるので環境忍者生活と言えなくもない。忍者スタイルで聖闘士を擬態路線で行くのを確率してる渦中か。

 

 聖闘士は基本無手なだけで、武具を使用しないのが信条という訳ではない。ライブラの老師は武具の塊だった。サジタリウスは弓矢がデフォルト装備だったし、アンドロメダは鎖鞭の二刀流という凶器を備えていた。

 

 それに小宇宙を燃やして闘気を高めた技の数々は飛び道具そのものという見識にある。聖闘士の技は拳で殴るのではなく拳に纏わせたオーラを放つ気功波の状態だ。

 

 基本無属性の闘気に、感情という志向形態を上乗せして属性変化を起こしている。

 

 喜びは、風属性にして爽快なり。

 怒りは、炎属性にして豪快なり。

 哀しみは、氷属性にして痛快なり。

 楽しみは、土属性にして愉快なり。

 

 それらを踏まえて固有技に昇華したのが、必殺技として定着していったのだろう。

 

 獣を刈る喜びで充たされているので、私の拳は風属性になっている。このままだと風のアクエリアスの黄金聖闘士が爆誕してしまうな。

 

 

 酒場には「鳥系の唐揚げ」や「獣肉ステーキ」が定番メニューに並ぶようになった。カエル肉やトカゲ肉が一般流通してる世界で、日本人転生者好みの食材料理が提供されるのに一役買ったのだ。やはり元居た世界の味に近い料理には舌が馴染む。日本人の味なる「味噌汁」も再現したいところだが海藻を何処で調達できるかが解らないので絶賛頓挫中だったりする。

 

 私が最初に取得した職業スキルは「料理」だった。消費ポイントは「3」なので無駄に浪費した感はあるが後悔はしていない。

 

 自炊もする猟師生活なので、あった方が調理バフ補正が付いて食生活が充実する。というか、日本人転生者たちはこれを真っ先に取得すべきだと声高らかに宣言したい。異世界食糧事情は一見して華やかだが、見た目がグロくて気色悪いゲテモノ料理が割りと出てくる。食べ慣れれば問題ではないが、どうしても生理的に受け入れ体制が構築不可なグロテスク料理がある。

 

 元の世界線でも存在してたが、地方によってはゲテモノ料理しか出さない場所があった。いわゆる昆虫食や奇食にあたる暗黒地帯だ。どうしても食べなければいけない状況下でも、可能なら食さずにいたいカテゴリーに分類される罰ゲームを超えた何かだろう。

 

 ゲテモノ料理の珍味とか正直いって喰えない。それを食すくらいなら雑草を頬張った方がマシ。その雑草を美味しく調理できるなら最高じゃないか。

 

 

 話を戻すが、私の未修得スキルリストは過分に充実していた。これまで冒険者としてパーティー参加に従事したり、クリスと組んで冒険者生活を堪能することで盗賊スキルも入手した。

 

 スキルポイントは30ある。これまで一度しか使用しなかったのでまるまる残してある状態なのだ。

 結合は、スキル頼りの仮合成に過ぎない。

 この中で必要なスキルを優先的に取得して、まともな家屋造りに役立てる所存にある。

 

 

 まずは「1P」消費の初級魔法セットだな。

 五種のスキルがセットの時点で破格待遇なのだが何故か『初級』なので現地人に敬遠されまくっているのが不憫過ぎる。低出力魔法は攻撃威力に適してないだけで、生活魔法として有能だというのに日本人転生者は家電製品の代替案として採用しないのは何故なのだろうな。

 

 水を出現させる「クリエイトウォーター」は不純物ゼロの真水の確保が出来る優れもので、マナさえあれば何処でも水が確実確保できるのは利点は高い。

 

 火花を灯す「ティンダー」は火種で松明などを着火させるし、料理での火力バフとしても応用は出来る。

 

 氷粒を散らす「フリーズ」は瞬間冷凍。酒やドリンクを冷たくするのに使えるし、暑さ対策には非常に有能で真夏の炎天下ではクーラー替わりになりうる。

 

 風を巻き起こす「ウィンドブレス」は範囲拡散効果。複合魔法の下地として使うので単体では団扇程度にしかならない。範囲を絞れば威力を高めることは可能という実に玄人好みな調節には研究の余地がある。

 

 土を生成する「クリエイトアース」は家庭菜園に最適といった柔らかな土壌生成に使える。本来は土壁や土台を作るスキルなのではと疑っている。スキルレベルを上げての性能向上に期待したいところか。

 

 

 木材加工のために戦士系の木こりスキルを取得する。スキルが無くても調達は出来るが、素材強度にバフ効果が付くなら見過ごせない。

「1P」採取

「1P」採掘

「2P」伐採

「3P」木工

 

 草木花を素材アイテムとして認識が出来るのが「採取」スキルで、これを取得しないと素材にならない。厳密にはアイテム補正が付かないらしい。

 

 土砂や鉱石を素材アイテムとして認識が出来るのが「採掘」スキル。これも同様に取得しないとアイテム補正が付かない模様。

 

 斧を使用しなくても指定の樹木を裁断するのが「伐採」スキルになる。ちょっとおかしくたまらない。拳撃で対象を薙ぎ倒すのに綺麗に切口が裁断されてる不思議現象には乾いた笑いが出た。

 

 その伐採した木材を成形加工するのが「木工」スキルである。カンナを使わずに綺麗な採寸状態になるとかスキルの素晴らしさに感銘している。木材アイテムにバフ補正が付くので、この世界で工匠が幅を利かせられないのは、斯様にスキル取得で代用が出来てしまう環境からだろう。このスキルは『大工殺し』だと思うよ。

 

 

 次は「10P」消費の『鍛冶合成』を取得。

 高めのポイント消費は痛かったが、崇高な目的のためには必要不可欠なスキルだったのでやむ無し。

 

 体外的にチートスキルを隠すために得たが、家屋の補強工事のための必需品だろうか。そして「聖衣」の再現のためにもムウ様を真似た聖衣修復を試そうと思う。

 佐藤和真は、この鍛冶合成で擬似的に電化製品を造り上げてバニルに商品を卸して成金していた。使い方次第では、錬金術スキルとして応用が効くのだろう。

 

 

 残りのポイントは盗賊スキルに充てた。気配察知や千里眼は必要ないので未取得にある。

 聖闘士なら気配察知は可能だし、千里眼はスキルに頼って動体視力を疎かにしたくなかったので除外した。バインドを取得しなかったのも手刀で首裏を物理的に昏睡させれば無問題だし。

「1P」スティール

「1P」暗視

「2P」潜伏

「3P」解錠

「5P」鑑識

 

 スティールは、たった「1」で無双の働きをする盗人スキルだろう。問題としては、わざわざスティールと叫ばないと効果が発揮されないという残念仕様にある。このスキルは事前に対策されやすい欠点があり、視認性で直線上の対象を一つしか盗めないのを佐藤和真は主人公補正の幸運でゴリ押し展開。ピンチの時ほど絶対入手な確率には、創造神からのルート補正を受けているに違いない。

 

 暗闇やダークゾーンの中で視認可なのが「暗視」スキルの特性だろう。女神アクアは暗闇でも見える状態だったので神族には障害デバフはキャンセルされてるかもしれない。クリスとの冒険者活動は昼間よりも夕方以降が多くなったので義賊勧誘されるのだろうか。

 

 存在を希薄化できるのが「潜伏」スキル。気配自体は誤魔化せない上に接触されたり勘の良い対象には見破られる欠点があるが、忍者のような隠密行動を可能にする点には抗えない魅力がある。

 

 宝箱や封印された扉を開くのが「解錠」スキルだ。ダンジョン攻略する冒険者として活動するなら最優先で取得すべきスキルだろう。程度の低い錠前なら必ず成功するというのは緩い設定か。魔法で封印された対象に対しては無力なので、これとは別に「解封」という上位スキルが必要になっている。

 

 入手アイテム?の確定スキルである「鑑識」は冒険者には必須スキルだろう。冒険者じゃなくても日常的に必要になるスキルだ。何せ料理屋とかで出される調理対象のランクが丸解りになるので、不味い料理や飲料を避けることが出来るのはありがたい。スキルレベルが上がればアイテム価格の相場も読み取れるらしい。

 

 

 最後は『勇者狩り』の殺害カウントを防ぐために、騎士系の「峰打ち」を取得してみた。スキル消費ポイントは「1」という破格のチートスキル。おそらくは生肉素材確保の初級スキルとして認識されているからと推察する。

 

 懸念するところは、果たして拳闘や投擲に峰打ち効果があるのかが解らない。本来は先鋭化された武器に付属する手加減スキルなので肉弾攻撃での打撃戦に峰打ちがあるのかは不明なのだ。

 闘気や気功でも峰打ちになるのかは未知数といった具合だ。魔物相手にして峰打ちが通用するのであれば対人戦で安心して多用することが出来るので戦略の幅は広がり、不意の改心の一撃での殺処分カウントに怯えることはなくなる。

 

 

 

 

■3-2.鍛冶合成の始め

 

 初歩の初歩から鍛冶合成スキルを爆上げする。

 やることは、薪木の選定と石窯での獣肉燻製作業に終始一環する。それは料理だろ?と、異を唱える者もいるだろうか。

 

 鍛冶合成は、元を糺せば「家事合成」の言葉尻から起因している。獣肉を家事して薪木の薫りを獣肉に燻製するので、家事を合成しているのである。屁理屈に聞こえるだろうが、此がこの世界の法則だった。言葉合わせによる相乗効果でスキル効率の伸びが良い。

 

 薪木で木箱を造り、その木箱に逆さまにして塩漬肉を吊るし、石から放たれる熱波こと炎熱赤外線で燻製することで木箱自体で薫り付をしている。その木箱の下に焼けた石を配置して蒸らす。石を加熱させて保温状態を維持し、火力調整を適宜行ったのがキャンピング式の獣肉ベーコン調理法である。

 熱伝導が容易なアルミ缶とかは存在しないので、耐火性能が高い樹木を選定して薪木箱にしている。

 

 拾った石ころで竈を造ってみた。これもキャンピング式の簡易造成になるがサバイバル生活の習作の一環だ。スキルに頼らない状態で造り上げてから、スキルによる補正を行って徐々に改良を施して「石窯」として昇華するのが目的にある。

 

 スキルを全面的に信用してないせいもあるが、素人あがりのにわか猟師風情にまともな石窯が造成できる訳が無いのが大きい。脳内にある精巧な設計図とは裏腹に、実際に作り出せるかは全くの別問題なのだ。専業職人ではないので全ては模倣から始まっている。見よう見まねでサバイバル生活をしてきた習慣から来ている思考由来でもあった。

 

 クリエイトアースのスキルレベル上げは、畑の造成で爆上げしてみた。大地に突き入れる拳闘による衝撃で、土壌破壊をして荒地を造成した後にスキルを使用。堅牢な土壌を柔らかな土壌へと生成変換する。クリエイトアースは、素粒子レベルで元素分解して硬度を操作するスキルだと思われる。初級魔法は、魔法そのもののメカニズムを術者に把握させるのが目的にあるのだろう。造形理解をしてこそ形状変化への機微が対応出来ようか。

 

 初級魔法で出力調整を学ぶことで基礎技術スキルを養うのではないか。魔法の申し子たる『紅魔族』以外は無調整の人間なので、こうした自己鍛練は度外視されている傾向にあるのだろう。女神アクアは、勇者候補に基礎技術を付随させて送り込まなかったのは実に無謀で短慮で杜撰だったとしか言いようがない。

 

 初級魔法を駆使したスキル育成生活を始めて一週間が経過した。冒険者活動中においても、初級魔法を取り込んだ戦術効果は大きい。

 

 ティンダーは、威嚇や猫騙しとして気を崩すのに使えたのは面白かった。威力は無くとも「衝撃音」の効果は絶大なりという考察を得た。敵側の集中力を削ぐに効果覿面なのは、聴覚が優れている対象ほど厄介な障害になり得たからだ。人間でも不足な自体に狼狽えるので、全生物に効果的なのではなかろうか。

 

 ウィンドブレスは、ティンダーの音衝撃を拡散させたり、クリエイトアースで砂塵生成したのを「目潰し」として拡散させたりした。

 

 戦闘後のクールダウンに自己フリーズは有能だったし、食後のデザートを食す時にも果物や果実水などにフリーズを掛けて飲食したのは最高だった。軽くひんやりとした冷気を身体に取り込むのはリフレッシュする。

 

 クリスが私を見て羨ましそうな視線で攻撃してきたので、戦闘後のクールダウンをフリーズ範囲効果でクリスにも恩恵を与えた。

 

 

「ふわあぁあ、これ、いぃいねぇ────」

「だろう?」

 

「ひんやり果実も良いねぇ。ギュっと搾った果汁を水で割るのも、ノンアルコール飲料水な感じでお洒落かな」

「────だろう?」

 

 

 クリスとの日跨ぎ野営冒険者活動イベントは稀だが、ここぞという感じでクリス(女神エリス)からの好感度を稼いでいる。献身的に尽くすのは、感覚的には駄女神養成をしている状態だろうか。気苦労症候群の女神エリスに私が癒し的な依存を与えているのは心地好くもあった。これがペットに対する愛玩補正というのなら不徳な所業に該当する行為かも知れない。

 

 女神を堕落させて、心身を蕩けさせる。全うな手段で好感度を稼ぐなら違法にはならない。単に計算高い上の結果論である。クリスとの冒険者生活は、女神に捧ぐ甘美なる蜜月への始まりなのだから。

 

 原作設定では、以外にチョロインだった女神エリスなので男に飢えてはいたのだろう。インパクトアタッカーな佐藤和真に様々な初めてを受けた結果で、法令順守を破綻させるほどに佐藤和真の害意を赦している。女神エリスの優先順位に私が割り込んでいるなら、佐藤和真への配慮を欠く結果に連なる可能性は高い。

 

 原作設定の佐藤和真は、女神に愛されたハーレム野郎なのは間違いないのだ。今回に限り、ひとりの女神の寵愛は欠落するのだが。果たして女神の恩恵が薄まった佐藤和真の異世界転生生活は、どう転変するのだろう。

 

 

 日常的にクリスとの冒険者活動が軌道に載ってきた成果で「神器回収活動」へと誘われる義賊生活も始まっている。ここで致命的な失敗をしなければ、人員増強という名の佐藤和真の強制参加イベント発生は未然に阻害が出来る。女神エリス側の感心を引くために、少しは聖闘士としての地力を見せても良い頃合いだろう。

 

 私は、素手の方が強いのだという証明。

 女神には、紳士的でもあるという証明。

 

 彼女との好感度を荒稼ぐには、余計な男は御法度。それが信者のモブだろうと排斥あるのみだ。エリス教徒としての献身はそこそこ貢献してる可能性が…いや、正直に言うと登録だけの信徒でしかない。時間拘束がキツイので、これには「悪魔狩り」をして爆上げ貢献を検討している。何処かに悪魔無限発生する悪魔領域が発生してないだろうか。奈落の底に繋がるダンジョンを捜索してみるのも視野に入れておくか。

 

 冒険者の野営食事生活は、食育依存である。

 料理への造詣が深く、料理の腕が確かなら仲間の好感度を促進させるボーナスタイムにある。料理のレパートリーは増やさなくてはいけない苦労が伴うが、プラス感情を引き出して相手の懐に入り込み心も腹も鷲掴みにする。男だからと言う理由だけでサバイバル生活よろしくな野趣的な料理しか出来ないのは大問題なのだ。

 

 毎度のジビエ料理だけでは相手は靡かない。女子には特有の甘いスイーツ脳が搭載されている。今のところはごく簡単な果汁で誤魔化せてはいるが、フリーズによるフローズンな氷菓子の開発を急ぎたい。最終目標はスキルによるパフェの自力制作か。パフェに添える焼き菓子も開発しなければ。アイスクリームには、解毒効果や刹那的な熱冷まし効果があると聞く。

 

 鍛冶合成で、菓子を造る作業か。果実酒を作る副産物工程で狙って見るとしよう。果実酒に漬けている果物は味や香り付けだけのモノでは無い。酒への役目が終われば取り出して食べることをお薦めする。

 酒漬果実は、実質的に干し葡萄のような類いだし充分に転用は効くだろう。この酒漬果実を酒のツマミにしていたので、なかなかに手頃で旨かった。仄かな甘さがしっくりと舌に馴染むので、砂糖薄めなジャムに似た風味にある。大人の味に仕立ててもいいし、甘味の強いアクセントに仕立ててもいいだろう。

 

 

 鍛冶合成と初級魔法の熟練値を上げ続けて熟練値を稼いだ。日々やっていたことは、獣肉を調達して鳥肉ブロイラーや獣肉ベーコンを作成しては酒場に卸すことである。調理のためにと鍛冶合成の副産物として「真空パック」を作成することに成功した。この世界になかったのは作る必要性が無かったからだと思っている。

 全ては魔法で解決できるので、科学文明未発達の弊害だろう。ビニールやナイロンにポリエチレンなどの科学繊維が無いのは廃れた技術枠だろうか?

 

 魔導大国ノイズの消滅により、いろいろと便利な道具の数々が喪失してるのは人類にとって大きな痛手だったと思われる。その技術空白地帯を日本人転生者のために創造神が用意したと推察すると空恐ろしい限りだが。

 

 生肉の腐敗軽減として「真空パック」は有用だ。一般流通させるために商人ギルドに持ち込む。100枚セット販売の手数料1%をレシピ込みで商人ギルドに委託。儲けよりも食糧事情改善を目的にしてると伝えて商談を丸め込むと商人ギルド側は快諾した。売れ筋アイデア商品になると商人ギルド側は判断したのだろう。製造単価が低いのでギルドの利潤が高いのも見込まれたか。

 

「次のアイデア商品を開発されたら、是非とも私共にお任せを」

 

 と、請われた。

 何か有用なモノが出来たらと私は言葉を濁す。

 委託販売締結のときに、私が開発者であることを伏せるように言い含めておいた。創作発明は副業以下でしかないので期待をされても困る。商人ギルドの販売網次第だが、隠し財源としての価値は見込めるだろう。

 

 

 

 

■3-3.曰く付きの土地物件

 

 冒険者生活を宿通いにするには、無駄遣いと言うのが私の率直な感想だ。先行投資として健康維持を鑑みるのは正しいとは思うが、聖闘士なので馬小屋暮らしをしても何も問題は無い。聖闘士としての気高さが損なわれる程度の犠牲で済むが、この馬小屋暮らしは底無し沼の極貧生活に腐りきってしまう危険性を孕む。

 

 春から秋に掛けては過ごしやすい環境だが、冬場の防寒対策の用意が出来なければ凍傷に至る。原作の佐藤和真が宿無し生活に嫌気が差して、女神の恩寵による幽霊屋敷を入手することになるのは創造神からの補正を疑う状況だ。このテコ入れは余りにも都合が良すぎる展開だったか。

 

 アクセルの街とは言え、土地付の家を買うなら相応に高い買い物になるのは当然の話だろう。土地だけでも数千万エリスはくだらない。新米冒険者がマイホームを入手するのは儚い夢物語なのだから。

 私の場合はと言うと、土地さえ確保すれば「結合」で家屋構築が出来る。家に向けて指定解除さえしなければ割合魔力量消費を維持しての住居生活が可能にある。

 

 それをしないのは、実行する前に相応の稼ぎを貯めておかねばならなかったからだ。転生者特権のチートスキルは他者にバレてはならないのが鉄則。日本人転生者は大量に投入されているのだし、同じ日本人のよしみで援助を乞う愚者が出ないとは限らない。

 

 冒険者ギルドでの稼ぎは、冒険者ギルドが帳簿管理してるので家屋の構築を出来る程度の資産が必要。異世界転生してきて、わざわざ自前で家屋構築するような好き者はまず居ない。日々の冒険者生活で日銭を稼ぎ酒を煽り飲み食いして過ごすのが日常になる。金が無くなったら土方のアルバイトをすれば生計は立てられるのだが、転生前の生活行動と代り映えしない様相だ。

 

 日本人転生者たちは、よかれと思ってした所業が全て裏目に出て勇者行動を損失していくのが目に浮かぶ。勇者という価値に躍らされ、勇者という大口賭博に全身全霊を賭けて行き急いでしまうのだろう。

 

 先ずは、この世界で活きるために居城を入手すべき話が最適だと思われる。護る物が無い者は最強無敵だと言葉に聞くが、護る物や護りたい対象が無い者は執着心が希薄になり生き抗う力が弱くなっている。

 生に執着するからこそ、粘り強さが磨かれる。聖闘士の粘り強さとは、女神アテナの御身を護るという至高の願いの賜物なのだから。私の願いも女神アテナに注がれていたが、今は女神アクエリアスに傾いている。

 

 必要なスキルを得たので颯爽とアクセルで唯一無二の不動産屋に向かった。生活拠点の確保は冒険者のステータス。装備品や生活用品に金は掛けて無いので稼ぎは人並み以上に貯蓄が出来ていたと自負している。普段から節制して倹約していたとも云えるだろう。

 

 冒険者は、その日暮らしが基本型なので貯蓄を考えて行動しない冒険者は多い。冒険者は出稼ぎ労働者でもあるので、散財してこそ冒険者という見方も多い。彼等は目的意識が低いので先を見越してはいないのか。

 

 

「土地を買いたいのだが手頃な物件はあるか?」

「あんた、獣肉ハンターさんじゃないか」

「私を知ってるのか、なら話が早い。猟師小屋を造りたくてね」

「家付じゃなくていいのかい?」

「勝手がいいのは自作しないといけないだろう。大工に彼是指定しても思うモノが作ってもらえる保証は無いからな」

 

 此方の事情をわざわざ伝える気はないので、不動産屋の店主に向けて大袈裟に困り顔を擬態してみた。

 

「こだわる派なのか、なら仕方ない」

「マイホームはこだわりあってこそだろ?」

「あんた、若いのに渋い考え方をしてるな」

「なぜかよく言われるよ」

「静かで人気が無い場所がいいのかい?」

「その条件で頼みたい。安価であれば条件は最高だ」

 

 不動産屋の店主は渋味を前面に出してきた。しばらく腕を組んで唸っていたが商談は続く。

 

「そんな都合の良い物件が残ってる訳が無いね」

「本当に残って無いのか?」

「素性の良い物件は売れちまうからねえ」

「それなら、素性の悪い物件は売れ残るんだろ?」

「───あんた、事故物件が欲しいのかい」

「条件次第だな」

「酔狂だね、あんたは」

 

 珍獣を見る目になった不動産屋の店主は奥に行き書類の束を引摺り出した。事故物件たる塩漬け案件は割りとあるっぽい。人気が無くて土地が安い場所は総じて何かしらが付属している曰く付きの物件である。

 

 墓地が近いとか地盤が緩いとか郊外の外れの区画とか殺害事件の発生した場所と様々な理由から敬遠されての曰く付きの塩漬け物件だったりする。

 呪われた物件なので、厄除けの清めをしなければ常人が住める環境には無い。人避けが狙いなので私ならではの最良物件となる。

 

 相場の半分以下で土地購入契約を結んだ。

 土地の購入金額は5000万エリスで、手付け金で500万エリスを納めた。後ろが即城壁な郊外で治安は悪めらしい。街の外壁側なので壁崩落の危険性は高く、城壁の傘で日照権も悪いという感じにあるので鬱蒼とした雰囲気がある。

 

 日の力が無くても何も問題は無いようにすればいいという逆手の法則を発動した。日光浴が無くても、熱波で暖かみがある床暖房の家屋造りをすればいいのだ。

 

 今後は、違法に資材調達を行うので人目に付かない方が丁度いい。違法にと言うのは、誰かしらが管理する私有地かは知らないので知らずに盗掘してる可能性は捨てきれないからだ。それと家屋建築の前に可能な限り合成レベルは引き上げておきたいので素材回収を重視してるのもある。

 

 

 原作通りなら、アクセル辺境領は悪徳地方領主のアルダープが施政しているはずだった。それが、現アクセル領主がダスティネス家とは原作剥離が出ているの状況には驚いたものだ。お陰で何処かの私有地に侵入しても潜伏で切り抜けられるし、悪魔マクスウェルに干渉されないのでクリスの記憶障害は発生しない。マクスウェル召喚に失敗したのか、はたまた召喚した上でアルダープが処された後なのか考察は難しい。

 

 「結合」スキルを使っては自然素材の乱獲する。魔力量消費の代償は大きいが、視認できる対象ならば引き寄せることが出来るのは効率がいい。聖闘士なので一般人転生者よりは荷重が重いモノを引き抜き担ぐことが出来たので、夜な夜なアクセル郊外に出掛けては自然素材を調達してをせっせと繰り返した。

 

 スキルには熟練値があるので使い続ければスキル効果は向上する。日常的に垂れ流しに使いまくればスキルレベルはざっくりと爆上げ可。

 合成スキルは素材がゴミでも熟練値が貯まるので、低品質練習素材の確保は生命線と言える。

 

 聖衣の合金素材を造るのは難度がとても過酷。この世界の伝説級くらいの素材にあたる。

 聖衣の材料には、オリハルコン・ガマニオン・銀星砂・神の霊血という通常入手不可能な素材ばかりで構成されている。

 これを魔導科学技術で代替構成して再現するのだ。

 オリハルコンは、魔法文明だと高難易度で錬金合成されているが珍しくもない魔法金属にある。日本に伝わるヒヒイロカネは、オリハルコン以上の硬度を誇っていたとあるので代替素材でなんとかなるだろう。

 

 非常識に手間隙が掛かる錬金合金精製で失敗すると膨大な時間浪費に卒倒する。素材は貴重品で時間的損失の失敗は赦されないのだ。前準備は可能な限り極限に高め尽くしてこそ聖闘士らしくもあるだろう。

 

 

 ティンダーで瓦礫を破壊して、クリエイトウォーターで素材を濯ぎ洗い、ウィンドブレスで素材を乾かして素材の残骸を回収する。荒地をクリエイトアースで整地という清掃コンボが炸裂した。これを闇夜の中で繰り返して明け方と共に撤収することに励んだ。

 

 いつしか酒場の都市伝説にアクセル郊外は障害物が除去されてスッキリしてるので人知れず善意でゴミ処理をする「必殺掃除人」が暗躍してると風聞された。身バレしないようにフードとコートに身を包み覆面した上で潜伏スキルを使用して素材回収しまくった。この行動は治安維持に努めた訳ではなく、やがて来る災厄のための前準備の一環である。

 

 佐藤和真が来て、彼のパーティーに『めぐみん』が仲間入りしたらアクセル郊外は彼女の日課の爆裂魔法で荒地になってしまう。有益素材を根こそぎ消し炭にされるくらいなら回収した方が遥かにマシなのだ。低品質素材だが鍛冶合成の練習素材はいくらあっても足りなくなるので数多いのは問題とならない。岩や小石は砂利として流用できるので素材として確保しておくに限る。

 

 

 

 

■3-4.平屋の城造り

 

 大量の屑素材を購入した敷地の一角に溜め込んだ。周囲から素材が見られないようにクリエイトアースで生成した強固な土壁で包む。家屋造りの前に素材倉庫が満載になるのは滑稽であったが、不足の度に探しに廻るのも億劫なので素材調達は目敏く回収するに限る。敷地面積は広いが未購入区画との境が解らなかったので、購入区画に沿ってクリエイトアースで周囲を土壁で囲う。

 

 囲った周囲の土壁の内壁から10メートルほど離れた場所に三段階ほどマトリョーシカの如く四重の堀を造成した。私がめざす家屋造りは『城』であった。敷地面積の半分は水路で構成されている。外堀・中堀・内堀・本堀という用途別の水路を設置する。其々に養殖する水産生物を繁殖させたい。

 

 外堀は、海水生物の養殖水路。

 中堀は、淡水生物の養殖水路。

 内堀は、甲殻生物の養殖水路。

 本堀は、稲作用の用水路。

 

 家屋造りが出来なくても、堀工事はクリエイトアースでカチコチに硬度を上げれるし、漏れさせないために試作の合金などを混ぜこんでの強度試験も兼ねている。

 

 外堀だけは、五倍の面責と容積にしてある。これは防犯のために危険な海洋生物を飼育するための措置で、この世界の生物は巨大な対象が多いので大きめにしておくべきだ。

 

 中堀は、二倍の面責と容積の控えめとした。食糧にする魚や水草のみを放流するので釣り堀のようなものか。

 

 内堀は、甲殻生物の繁殖水路。魚と同伴させると食い散らかすから別けている。蟹が逃げ出さないように堀渕を天井返しにしてある。蟹が壁を登れても天井の壁だと落下するしかない。

 

 本堀は、稲作のための用水路。この世界に日本米があるのかは不明だが多分あるよう気はする。見つからなければ麦飯で代案とするかもしれないが。

 

 池や泉を作成しないのは邪魔だから。水遊びなら稲作の用水路で事足りるし、堀は雨水で上限近くになるとアクセルの町の水場に流れるように設計した。大量に確保していた屑素材は底砂利として活用しているし、路面舗装材としても大活躍した。素材カスの粉やガラクタは外堀に投棄している。投棄する際には原型破壊してるのでテトラポットとして活躍してるよ。

 

 

 敷地面積の半分が水路。

 残った敷地面積の半分が資材倉庫で埋まり。

 更に残りの部分で天守閣を造成する。

 

 天守閣というにはお粗末過ぎる家屋造りになった。

 基礎設計技術が足りないと、絵に描いた餅か。

 

 倉庫の拡張発展が家屋造りなはずだが、何故なのか巧くいかなかった。不動産屋に建前で述べた「猟師小屋」にしておけばよかったと大後悔している。

 

 そこで砦風の平屋の城を思い付く。

 あれなら設計素人でも再現可能な範囲だ。

 擬似的な『真田丸』にすればいいのだ。

 あれは、城名称とは名ばかりの平屋だが「城」属性にされている。そこに猟師小屋の機能性を融合させれば問題無しだろう。

 

 天守閣モドキを解体して、平屋の土台を造る。

 アースクリエイトを酷使させる作業に熟練値は鰻登りで稼がれていく。自然素材で賄う家造りは、エコでナチュラルでワイルドでスタイリッシュだ。自然的落材利用の日本風家屋だが、非常にも簡素だった。馬小屋のような平長屋がそこに構築されていた。

 

 これでは身内にお披露目が出来ない。クリスをお迎えするのは当分先のことになりそうだと溜め息が出た。

 

 見てくれが悪いが、外見とは裏腹に内装だけは現代風にしてある。建築技術が皆無なので外装を立派にするには美意識をバフる審美眼スキルを取得すれば補正されるのだろうか。

 

 食卓と寝床に風呂場があればいいかと開き直ることにした。どっちゃりとした新居は脳内設計図とは程遠い外見に仕上がっている。貧乏長屋に石窯が突き刺さったかのような猟師小屋であった。質実剛健な水路造りと比較すると言葉を喪うほどの貧相な住居である。

 

 風呂場を造成するのに何が必要なのかを考えた結果から石窯を採択した。燻製肉を作るのに石窯は必須だったので複合的な役割を担う施設を造成したのだ。

 日保ちするには片っ端から燻製にすれば当座は凌げる。冷蔵庫なんて便利な物は存在しないが、これには「真空パック保存」で対処した。

 

 資材倉庫内に置けば涼しさで食材の傷みは抑えることが出来ている。いつしか佐藤和真が鍛冶合成して『魔導冷蔵庫』を造るので、それを買えば事足りる話なのだから気長に待つとしよう。




【主人公の解説コーナー】

主人公は、居城を造成しました。
それは立派な堀で、とても質素な城でした。

彼は、使命とは別の活きるための目的を造りました。自身の住居を充実させること。聖衣を再現構成すること。

大願成就は、女神アクエリアスの回収ですが。
無理なら、どちらかの女神との共同生活を目論みます。

主人公は聖闘士ですが、正義ではありません。シャカ様を師匠として敬愛しています。女神を回収するので簒奪者の側面があります。
ダーティーではありますが、女神には甘口です。

この世界線だと人類同士の殺傷を制限してます。目的を忘れた勇者候補を嫌ってます。勇者と戦うのは彼等の必殺技とスキルを見るためです。聖闘士ならば、一度見た技は通用しない法則の活用ですね。
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