特務官、多目的な任務を支援または完了させる組織。
時に戦い、時に助け、時には書類仕事でさえもこなす。
これはそんな特務官の話。
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「自分は第303特務遂行部隊群所属、
瓦礫の山となった“元”大都市。
見渡す限り、そこは都市ではなく荒れ果てた荒野。
普通であれば人々が寝静まる夜、うっすら明るい空の下、襲撃の一報を受けその場所にやってきた特務官が名乗った。
「怖いロボット達はもう居ないよ。大丈夫だから、こっちにおいで〜」
特務官 早崎瀬戸が微笑みかけながら呼んでいるその先には、瓦礫と瓦礫が重なり合ってできた小さな空間の奥でこちらを見る小さな子供、二人組。
明らかに警戒されていて出てくる様子はない。
子供たちの周りに視線をやると缶詰が数個地面に落ちている。
これで飢えを凌いでいるのだろう。
この街にかつてない規模の襲撃が発生してから4日が経ったいま、子供たちも危機的状況と思われる。
早く安全な所まで連れて行きたいんだけど…。
子供たちはこちらを向いたまま動く気配はない。
その空間に入ろうと思えば入れるが、それでは更に警戒されてしまうかもしれない。
「ほら〜、おいで〜…」
無反応。
「ほらほら〜、おいでおいで〜…」
こちらを睨めつける子供たちの目。
説得の意味を込め、優しく声をかけるも変わらないこの状況。
瀬戸は持っていた携帯食料の封を開けて子供たちに向け、渡すように腕を伸ばす。
「はい、これ、食べ物だよ〜、お腹空いてるでしょ?食べていいよ〜」
食料で釣る作戦。
しかし、そう簡単にはいかない。
子供たちに動く気配はなく、時間が過ぎていく。
携帯食料を持っている手は微妙に浮かせているからそろそろ腕が痛くなってきた。
瀬戸は携帯食料を衛生的大丈夫なように地面に置く。
「ここに置いてるから、いつでも食べていいよ。僕はちょっと食べ物探してくるから。また来るね」
そう言って瀬戸は数歩下がり背伸びをする、子供たちのいる空間の入口が低くてずっとしゃがんでたのだ。
空を見上げると星がよく見える。
うっすら月の光で明るい。
目線を下げると瓦礫の山、見渡す限り瓦礫の山。
倒れている電柱のようなものには銃弾の跡、地面のあちらこちらに爆発したようなひび割れと黒い煤。
ちょっと遠くへ視線をやると酷い姿となった人の遺体が目に入り、いたる所に機械体の残骸がある。
人々と機械体が目の前に広がる。
民間人を守るために銃を持つ人々、逃げ惑う民間人を襲う機械体。
結果は目を開いていればわかる悲惨なもの。
「見ていない現実を想像するのは良くないな、気がめいってしまう。現実を見て、任務遂行しましょうか!」
懐中時計を見る。時間は日付変更過ぎた頃。
…………カン!
瀬戸の頭の中に甲高い音が鳴り響く。
頭の上に付いている青白いレーダーが
目を閉じて付近の空間を把握、緑色の線で立体的に表されるエリアの中に赤い何かがうごめく。
「二時方向、距離500、敵1、気づいてなさそうだね」
特務官はあくまで支援要員。
戦闘員や戦闘部隊がいれば、戦闘には参加せず救護や見張、通信などを行うことが多い。
しかしそれは戦闘員が居たらの話。
レーダーに味方を示す反応はなく、映るのは瀬戸と敵と少し後ろで動く小さな影、2つ。
この2つの影は多分子供たち、置いていた食料を取ったのかな。
やはり子供たちは空腹状態にあるんだろう。
「怖いロボットを倒して、食料を集めに行きますか」
瀬戸は白い魔方陣を展開し、全身に魔法力を巡らせる。
魔法力と呼ばれている不思議な力を使うと筋力や治癒力などを増やせれるのだ。
人々はこの力を使うことで構造体と戦うことができている。
魔方陣の淡い光が全身を包む。
わざわざこんなことしなくても魔法力の効果はすぐ付与できるが、今回はたまたま気分が向いた。
レーダーの示す敵の位置を目指し瀬戸は動く。
走って数十秒、機械体は目の前の瓦礫の丘を挟んだすぐそこ。
機械の足音が深夜の廃都市に響き渡る。
ゆっくりとその場を周回している様子で、こちらには気づいてない。
持っている拳銃の安全装置を解除し、弾を装填。
いつでもやれる準備が整う。
走り出し、目の前の瓦礫の丘を軽々と上りてっぺんの少し手前でジャンプした。
高さは軽く5メートル。
普通の人間ならありえないが魔法力があるならこれくらいは普通だ。
高く飛んだことで機械体が見えた。
不気味に赤黒く輝く馬型の胴体、首元には一段と赤く輝く
機械体は高く飛んだ瀬戸に気づき、顔をこちらに向ける。
空中で見下ろす瀬戸と地面から見上げる構造体。
瀬戸が拳銃の標準を機械体へ完璧に合わせる。
「さようなら」
瀬戸が一言、言い放つ。
馬型の機械体は背の機関銃を動かし瀬戸に銃口を向けようとするが、遅い。
瀬戸の空中からの一撃は首元のコアを的確に破壊した。
コアは機械体の動力源。
どのような仕組みなのかはわからないが、破壊すれば敵は停止する。
硬い装甲を持つ機械体を倒す唯一の方法。
コアを破壊された機械体は赤黒い光を放つのを辞め、重力に引かれ崩れ落ちる。
ジャンプしていた瀬戸も空中に滞空できる訳ではないのですぐに着地。
レーダーを確認すると反応は完全に消滅していた。
これで敵を撃破。
しかし、他に機械体が居るかもしれない。
瀬戸はすぐさまレーダーの範囲をできるだけ拡大させて、周囲の状況を把握する。
「不気味なくらい居ないね…」
機械体の存在を確認できず、ものの数分でレーダーの効果範囲を元に戻す。
「さて、本来の目的、食料を探さないとね」
瀬戸は振り返って近くを散策し始めた。
それから数時間後。
長い長い夜ももう終わり、空が薄く明るくなってくる頃。
子供2人の居た空間の入口に戻ってきた瀬戸の手には少しばかりの食料があった。
街が襲撃されてまだ4日目の夜、5日目の朝の前。
奇跡的に半壊状態だったマーケットの売り場にあったものをなんとなく持ってきた物。
封はしてるもの、見た目の状態も良さげなものを選んできたから食べれると思う。
適当なところに座り込み、毒見兼補給兼夜食としてパンをひとかじり。
「美味しい!」
最近は各地を転々としていたから瓶詰めや缶詰め、時々川魚とかしか食べていなかった。
「こんなに美味しいものを食べたのは何時ぶりだろう…」
少し考えるもここ最近は無い。
考えているうちにパンを一つ食べ終わった。
美味しいものはこんなにも早く食べてしまうのか、もう少しゆっくり食べれば良かったと少し後悔する。
レーダーを確認するが反応は無く、付近に機械体は居ない。
静かな夜、もう一時間もしないうちに空は次第と明るくなり始めるだろう。
お腹も少しは満たされ、大きな瓦礫によりかかり、少しだけと思い目を閉じる。
瀬戸は朝からこの荒れた街を目指し移動して、到着したのは夕暮れ時。
それから避難できていない市民の捜索をしていた。
緊張が解け、一日分の疲れが来ると同時に睡魔も徐々に瀬戸を襲い始める。
夜は涼しい。
瀬戸の着る青を基調とした長袖の上着にスカートや黒タイツは組織から支給された特務官専用の制服。
機能性や恒温性に優れていて夜の涼しさはあまり感じられず、暑くはないほど暖かく、それが睡魔を強くさせる。
上着を脱げば涼しくなるが、眠気で意識がもうろうとする瀬戸にそんな思考はない。
「寝ちゃったら…、駄目なのに……」
様々な要因が相まって睡魔は強力になる。
今寝てしまったら、子供たちに何かあったときどうしようもできない。
全身が深いどこかへ沈んでいくような、何かから開放されたような不思議な感覚。
眠りにつこうとしているのだ。
それはいけない、寝てはいけない。
わかっている、わかってはいるのに体は言うことを聞かない。
市民を見つけることができたのに、有効な救助をする前に瀬戸は眠ってしまった。
カン
「敵!?」
瀬戸が飛び起きた時、暗かった空はもう明るく遠くの山からは顔を出したての太陽がこちらを見ていた。
軽く寝てしまっていたのだ。
すぐさまレーダーを確認し、付近の状況を探る。
機械体の反応はない。
レーダーの効果範囲外まで移動したのかもしれない。
効果範囲を拡大させ、敵を探す。
依然として反応はない。
「あれれぇ...。空耳、だったのかな」
機械体は居ないようなので少しだけ安心して視線を下に向けると、寝てしまう時は無かった缶詰などが少し散らばって落ちていることに気づいた。
さっきのカンという音は缶詰が落ちた音かもしれないという予想がつく。
落ちているのは瀬戸が夜な夜なマーケットからなんとなく持ってきた食べ物の入っていたものばかり。
ちょっと視線をずらすと瀬戸を見てる子供がふたりいた。
多分昨晩見つけた子供たち。
ひとりはヒビの入った眼鏡をかけた黒髪の長い少女。
もうひとりは少女を背にして守るように両手を広げ、睨みつける少年。
二人ともパンを食べかけていながらだが警戒している様子。
瀬戸はしゃがみ込む、顔の高さをなるべく合わせることで警戒心を少しでも解いてもらうため。
「僕は早崎瀬戸、救助隊と同じで君たちを助けるためにここに来たんだ、よろしくね」
瀬戸は微笑みかけるが、子供たちの様子はあまり変わらない。
「ええーっと、君たちお腹すいてるよね、そこにあるパンとか缶詰とか食べてしまっていいよ」
瀬戸が言うと少年少女はゆっくりと食べ物を口へ運び始める。
しばらくすると少年少女の目から数滴の涙がこぼれ落ちた。
少年はパンを食べ終わる頃には数滴ではなく、流れるほど。
少女は涙をこらえながらも泣いている。
その状況を瀬戸は理解できていなかった。
二人とも泣いている理由が安心感、恐怖からの解放ということに気づいていないのだ。
何をしたらいいのか、なんと声をかければいいのか、何もわからず目を丸くし、おどおどとする瀬戸に子供たちが抱きつきに行く。
戸惑っていた瀬戸の理解が追いついた。
子供たちはさらに泣き始め、顔を瀬戸の体にこすり付け、抱きつく手には力がこもる。
「怖かったよね、もう、大丈夫だからね」
瀬戸はそう言って、そっと抱きしめ返すように手をまわす。
子供たちはまだ泣き止まなかった。
これはまだうごくメモ帳3Ⅾがある時代から私の頭の中にある話を文字化した話です。
頭の容量が足りなくなったのでバックアップ(?)したものです。
頭の中では綺麗に映るんですが、文字化するとよくわからなくなりますね。