【完】転生したら倒産確定地方トレセン学園の経営者になってた件 作:ホッケ貝
「こっから出てくるのはなんだぁ!?接点T!!(a,b)を通るように引いたときのぉ↑!!接点T!!だからぁ!!この点とこの点とこの点が出るわけだぁ!!この点は出ねえよぉぉ!」
「おー、元気にやってるな……」
シンボリ家と共同開発協定(ほぼ委任)を結んでから間もなく、ホッカイドウシリーズ運営と俺は、洋芝のコースをどこに作るかということと、それにともなってレースの編成の変更を念入りに選定すること数ヶ月、歳を取れば取るほど時間の経過が早くなるようで、いつの間にか紅葉が風に乗ってひらひらと舞う季節になっていた。
徒然なるままに廊下を歩いてみると、右からも左からも、生徒に学びを教える先生の威勢の良い声が耳に入ってくる。
「懐かしいなぁ、あんのときは寝落ちしかけながら受けてたっけな」
給食を食った後の授業は高確率で眠くなるという経験を幾度も遭遇した身としては、寝落ちしないで頑張れ!と、黙々と授業を受ける生徒達に対して心の中で励ましの言葉を送り、その場を去る。
さて、気分転換の散歩がてらに授業の光景を見て回ってきたのち、いつもの理事長室に戻ってきたところで仕事モードに切り替えなければならない。
洋芝研究と同時平行するように、俺はとある改革を行おうとしていた。
それはズバリ、"教育改革"である!
制服という外観の魅力で他所と差別化することで、ここへ来る魅力と理由を作り出した今、次に必要とされるのは教育という中身に付加価値を付ける事だと判断したのである。
と言っても、今回の改革は制服の変更のような話題集めを主軸としたものではなく、どちらかと言えば生徒の学校生活と将来に主軸を向けた内容とする予定だ。
そもそも我が校は、中央と比べて格に劣る地位にある。
例えば、中央卒というだけで大手に行くことも夢ではないが、対して地方卒の肩書きはいまいちパンチに欠け、そこらの高卒と同程度に扱われてしまうという苦々しい現状がある。
我々含め地方は、当てられる予算や入ってくる生徒の学力が文武両道の超難関である中央と比べて一段も二段も違うため、卒業後の進路に苦しむ場合が多いのである。
また、「中央は名門」「地方は落ちこぼれ」という偏見が存在するのがなかなかデカい。
まぁ、実際その通りなので言い返せないのが辛いところだ……。
就職に苦労すると長々と説明してきたが、幸いにも彼女らはウマ娘なので、主に肉体労働の方面からスカウトが来る。
だが、全員が全員なりたい訳ではない。
また、肉体労働は肉体労働でも、よからぬ意味での方面からもスカウトが来ることがあり、これは中央でも問題になっている事だ。
と言うような事情で、在学中の生徒やこれから入ろうと考えている学生とその親は、"卒業後の進路"に不安感を拭いきれていないのである。
特に、これから入る生徒と親にとって、卒業後の進路が安泰という訳でもないのにわざわざ絶妙に高い学費を払ってまで、絶対に成功するとは限らないレースの世界に入る勇気がないというのが現状だ。
そのような"不安感"が、学園の経営状態の健全化を阻む最大の障壁なのだ。
そして、その不安感を取り除く事こそが、旭川トレセン学園改めホッカイドウシリーズ加盟校が生き残る策であり、改革に協力してくれた生徒達に対する最大級の恩返しであると俺は考えている。
その為に、俺は教育関連の専門家や、学園の重鎮や教員とも大々的に相談を繰り返して、以下の三つを主軸とした改革の策を練る事になった。
・指定校推薦枠を作る
・就職ルートの確立
・資格取得を援助
第一に指定校推薦枠は、文字通りの意味を持つ。
要するに、進学したいと考える生徒を後押しするための目標だ。
もちろん、無条件で推薦を受けれるのではなく、成績優秀かつ人格的に問題の無い生徒が対象となっている。
これによって進学しやすくなるので、進学希望の生徒にとってはかなり嬉しい話となるだろう。
第二に就職ルートの確立は、不況になっても確実に就職できるようにしようという目論見だ。
これは、バブル景気が崩壊してとんでもない不景気になることで、後に氷河期世代と呼ばれる就職難に陥るのを回避するための策である。
第三に資格取得を援助する訳は、上記の策を後押しする為に定めた策だ。
英検なり危険物なり、資格を持つことで就職の幅が広がるし、転職にも役立つ筈だ。
また、学歴に対抗できる唯一の手段が資格であると俺は考えている。
なので、資格取得の援助の為に受験費の半分を学園が払うと今のところ定めている。
また、この中には乗っていないが、悪質マルチ商法やカルト宗教の勧誘などといった魔の誘いに対する対策方法の講義も行う予定だ。
という訳で、上記の三つの大目標を元に教育方針を再構築するとともに、俺はこれからも改革に奔走するのであった。
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