【完】転生したら倒産確定地方トレセン学園の経営者になってた件 作:ホッケ貝
雪虫が冬の訪れを道民に知らせようと舞い、制度制定に向けて東西南北上下に動きまくる今日この頃、俺は世間話のネタがないかとテレビをつけていた。
「天皇陛下の病状は日々悪化の一途を辿っており――」
「あーそうか、もうそろそろか……」
9月に昭和天皇が吐血して以来、マスメディアの雰囲気がなんとなくだが重苦しくなり、
あ(察し)ふーん…となるぐらい、事態の深刻さを物語っていた。
昭和天皇の崩御――いわゆるⅩデーが、刻一刻と迫っているのである。
史実では、昭和天皇が崩御したとき、国民全体がお通夜状態――いわば自粛ムーブになったのである。
これによって派手な催しは自粛され、中央では開催が延期になったりもした。
その点、ここホッカイドウシリーズは自粛ムーブ期間と冬季開催休止期間がたまたま被っているため、実質ここだけノーダメージである。
さて、そのようなことはともかく、もうそろそろで昭和が終わるのかと思うと、なんだか寂しく感じる。
だが同時に、時代が変わる瞬間を生き、そして見ることができると思うと、不思議な高揚感が生まれるのだ。
複雑な感情のままテレビをボーっと見つめていると、なかなか興味深いことが取り上げられていた。
「オグリキャップ、大活躍!」
オグリキャップ……それマジ?!
それまでのアンニュイな感情から一転攻勢、オグリキャップというネームドキャラが出てきて、俺は外人四コマのように狂喜乱舞する。
そうだ、そういえばこの時期だったか!と、俺は腑に落ちる。
オグリキャップとは、もはや語るまでもないほどのアイドルホースだ。
笠松競馬改めカサマツトレセン学園から彗星の如くデビューを果たし、そのままカサマツで十勝したのちに中央へ移籍、クラシックに出られなかったり低迷期が来たりと、次々と降りかかる困難にめげず、ラストランの有馬記念で有終の美を飾った名ウマ娘である。
また、大井トレセン学園からイナリワンが出たりと、地方に何かと注目が集められていた時代なのである。
実はホッカイドウシリーズにも、ドクタースパートという地方上がりのアイドルホースがいるのである。
史実では皐月賞を勝利したりとなかなか活躍した……のだが、どうにもいまいち知名度に欠けているのである。
史実の戦績やドラマ性など、個性はなかなかのもののはずなのだが、より強い個性を持ったオグリキャップらに隠れてしまった感が否めない。
ああ、そういえばそんな馬もいたなと思い、ドクタースパートが史実通りいるのかどうか確かめるべく、ホッカイドウシリーズ加盟校の全生徒が記載された生徒資料を読み漁る。
「あ、いたいた――え、ここ……!?」
なんと、所属校が"旭川"になっていたのだ。
確か三年前に見た時には別のところになっていた筈なので、割と最近転入してきたということになる。
ということはつまり、改革のおかげでこっちに来た可能性があるのでは?と、俺は勘ぐる。
ちなみにだが、ホッカイドウシリーズ加盟校同士の転入はかなり簡単なことを、今のうちに述べておく。
改革が思いもよらぬ"福"を招き入れたということに、俺はやりがいを感じて喜んだのであった。
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