【完】転生したら倒産確定地方トレセン学園の経営者になってた件   作:ホッケ貝

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エセ理事長、爆弾解除を試みる

=ホッカイドウシリーズの現状=1991

・崩壊

駄目だった

結局株価は上がらなかった

高いビルの屋上で、紙屑を捨てた大人の行列ができている

株と人、どちらが早く落ちるのか?

経済力が大幅に低下する

やる気が大幅に低下する

 

・起爆時期不明のリミッター爆弾、北海道植民銀行

先送りするな!今ならまだ間に合う!急いで爆弾を解除しろ!

経済力が少しずつ低下する

 

・レジェンド理事長

今代の理事長は、改革に意欲的なようだ

もっとも、成功するかどうかは置いておいての話だが……

話題性が少しずつ増加する

経済力が少しずつ増加する

やる気が少しずつ増加する

 

・中央、地方、北海道

ここ最近、レースの世界を志すウマ娘と親に新たな選択肢が浮上してきている。

スポーツ医学の大々的な導入や、卒業後の進路サポートなどといった改革が功を奏し、新たに北海道という枠の概念が浸透しつつある。

話題性が増加する

経済力が増加する

エースウマ娘出現率がUP

 

・有能な人材の流入

中央の怠慢は地方のチャンスであり、現状維持は緩やかな後退でもある

先見の明ある人材が、希望を求めてホッカイドウへ流れてきている

話題性が少し増加する

経済力が少し増加する

エースウマ娘出現率がUP

 

・陰の実力者

官・民・軍、名家、そして世界まで友好関係を広めた元理事長の活躍によって、我々の事業は成功しやすくなっている。

背中には気をつけろ

やる気が大幅に増加する

 


 

 冷たい雪は溶け、桜が可憐に咲き誇り、新社会人や新入生は新しい環境に緊張しつつ、職場や学校へ歩みを進める。そんな春の季節が、例年通り北海道に訪れる。

 なかなか微笑ましい景色だった。

 

 しかし、世間へ目を向けると、お気楽に過ごしている場合ではない事は明らかである。

 

 例えば、中東の独裁者として悪名高いサダム・フセイン率いるイラクがクウェートへ侵略した事を機に、91年の1月17日に国連軍による空爆が始まり、その後は陸戦を経て4月6日に終戦を迎えた"湾岸戦争"が勃発した。

 

 最新の電子機器兵器や暗視スコープの戦闘映像が茶の間に映し出されたこの戦争は、"ハイテク戦争"と呼ばれる事になる。

 「まるでゲームをしているようだった」という従軍兵の回顧録のフレーズが有名だろう。

 また、背後に沢山の利権が渦巻いた事によって、人類史上"最低"の戦争とも呼ばれるのであった。

 石油利権闇深しである。

 …おや、こんな時間に訪問とは、一体誰だr(((

 

 というアメリカンジョークはさておき、この時、日本は数百億ドルにもなる莫大な支援金を戦後のイラクや多国籍軍に支援したものの、全くもって感謝されなかったどころか逆に批判される事件が発生してしまう。

(念のため述べておくが、ざっくり言うとイスラム教には"金だけ出しておしまい"という行為は卑しい事である的な概念があるらしい。要するに、"気持ちや検討よりも行動を"という訳である)

 

 この"日本政府のトラウマ"は、自衛隊の海外派遣――いわばPKO活動を推し出す事になり、後に自衛隊はペルシャ湾やカンボジア、ゴラン高原やアフリカなど、様々な危険地帯で水道整備や地雷除去等の活動をすることとなる。

 また、これら活動の中には、我らがホッカイドウシリーズ加盟校卒業生も多数参加していた事を、今のうちに述べておく。

 

 中東以外にも目を向けてみよう。

 

 例えば、ソ連ら東側諸国なんかが今年の目玉だろう。

 

 そう、言わずと知れたソ連崩壊である。

 

 ざっくりと言うと、調子に乗って見栄っ張りな事をし続けたせいで、友人に愛想を尽かされて周りから誰もいなくなり、ぼっち・ざ・ぶろっく!(オフ会0人(レーニン)連邦)化してしまうってな感じだ。

 

 また、統治能力チートなチトー亡き後のユーゴスラビアが大分裂を起こして、地獄なんぞ生ぬるい紛争が起きたり、東欧諸国の民主化が加速したりなど、共産主義の失敗が決定的になっていく。

 

 しかしながら、結局が雪解けしても、春のような平和な世の中は訪れなかった。

 

 そんなハイテクと絶望の新時代の幕開けが、1991年なのだ。

 

 さて、この頃になると、いよいよバブル崩壊の兆しが見え始めてくる。

 

 上がるだろうと楽観的に見られていた株価や土地価格は結局上がらず、下に向かってバクシン中だ。そうなるとさすがに「あ、ちょっとヤバいかも~(すっとぼけ)」となる者もちらほら出てくるが、それでも恐ろしい事に、大多数が夢から覚めていないのが現状である。

 

 小さな袋にたくさんの物を詰め込んだ時のように、金融業界はミチミチと音を立てて、今にでも決壊の時が訪れようとしている。

 

 それはズバリ、"不良債権"である。

 

 不良債権を簡単に言うと、土地や不動産の利息等の利益が、投資した元の額に達することができず損した額を指すものだ。

 競馬で言うのなら、単勝や枠連など合わせて1000円を賭けて、結果一部の馬券があたって辛うじて800円だけ返ってきた――この時200円の損が出るのだが、それが不良債権と言われるものだ。

 

 どんな言葉や言語で誤魔化そうにも不良債権は不良債権、損である事には変わらない。

 この損を公に公表――つまり赤字になろうものなら、その暁には信用を失い、無限預金引き出し編のスタートである。そうなれば、流出額は某おにめつの映画の興行収入を優に越えるだろう。

 

――みんなにお金を貸している銀行だからバレたらやばい、バレたら被害がデカすぎる……それだけは絶対に避けなければならない……せや!

 

 結果、隠蔽飛ばし粉飾決済のチキンレースが、大蔵省(現財務省)と銀行ぐるみで行われているのである。

 ブレーキが無い暴走車だって、はっきりわかんだね(絶望)。

 さらにはハンドルも効かなくなる始末と来たもんだ。もう終わりだよこの経済。

 

 はっきり言って、未来知識チートを持つ俺でさえも、これから訪れる未曾有の大不況を防ぎきる事はできない。なんせ、あまりにも桁が違いすぎるからだ。

 

 三欧証券、海一証券、北海道植民銀行……それ以外にも住専や長期信頼銀行、さらにはヘドソンなど、これから沢山の大企業が潰れてしまう。

 

 悔しい事に、それを回避する事はできない。

 将来無くなる企業の支店や本社を通りすぎるとき、毎回胸が締め付けられる。

 それに関わる社員やその家族など、沢山の人がリストラや失業に苦しむ事になる未来を知っていると、手を差し伸べて救いたくなる。でも、できないのだ。全員を救うことはできないのだ。

 なんせ、これからは自分が生き残るだけでも精一杯な時代になり、他人を気にする暇が無くなるのだ。

 

 しかしながら、想いが潰えたところで、なにも希望まで潰えた訳では無いのだ。

 

 そう、今のうちに根回しをすることで、将来起こるダメージを軽減する事が、未来知識チートを持つ俺にはできるのである。

 先延ばしして爆弾がデカくなるぐらいなら、今のうちに火薬をちょっとずつ抜いていけば、爆発したときの被害は少なくなるよねって訳だ。

 

 てなわけで、早速検討ではなく行動を加速していく。

 

 ……とは言え、大企業相手に今すぐにできる事と言ったら、コネと功績を説得力にした粘り強い説得ぐらいしか無いだろう。

 

――今のうちに不良債権を消化しておかないと、おたくのところ将来とんでもない事になるぞ、と……

 

 経営を決定できる立場で無い以上、とにかく説得して、採算の見込みの無い投資にブレーキをかけるよう圧を掛け続けるしか無いのだ。

 

 また、北海道の他の業界にも、これから訪れる不景気に対して警鐘を促し続ける。

 その中には、"希望の肉"や"スノーエンブレム"など、将来大爆発を起こす企業も含まれている。

 

 さらに、不景気に対抗するため、今のうちから銀行の合併に関する取り決めの仲裁も行っている。

 現実では実現しなかっただけあってなかなか難航しているが、まだ余裕があるうちから行動し始めている事に意味があるだろう。

 少なくとも、前世よりかはスムーズに行ける筈だ。

 

 かくして、俺はとにかく多くの悲劇を減らすために、巨大な爆弾群の処理に奮闘するのであった。




まだ間に合う!理事長急げぇぇぇ!!!

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