【完】転生したら倒産確定地方トレセン学園の経営者になってた件   作:ホッケ貝

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エセ理事長、大同盟を築き上げる

パシャッ! パシャッ!

 

 大小様々なカメラのフラッシュが、眩いぐらいに焚かれている。

 会見場に集まった記者達は、今か今かとその時を待っていた。

 

「――中央と地方の活性化のため、そして、ウマ娘のために、我々は手を組むこととなりました」

 

 俺の隣に座るURA会長は、たいそう立派な協力動機を語る。

 これを聞く一般の人にとっては、URA会長は英断をしたように見えるかも知れない。

 だが、0から10まで交渉のすべてを知っている俺は、はっきり言って聞くに堪えない。

 

――貴方と組んだところで、金になるとは思えないのだが――

 

 嫌な記憶が頭を過る。

 "仇を忘れるな"と、神が申しているような気さえした。

 

 ほんのちょっと前までは、俺らと組んだところで大した意味がないと大口を叩いていたが、これでもかと手を組むメリットと既得権益の確保を強調し続けると、さらに儲ける事ができる事に気がついたURA上層部は急に態度を軟化させ始め、終盤になると話し合いが意外なほど早く進んだのである。

 

 幾らでも言いたい事があるが、それらは心の中にてグッと堪え、「こっちの要求を飲ませた時点で俺の勝ち!」と、自分を鼓舞してポジティブになる。

 ポジティブこそ最強だって、はっきり分かんだね。

 

 それはともかく、URA会長の熱い想い()を語り終えた所で、いよいよ例のアレが始まる。

 

 俺とURA会長の間に用意された"地方中央間協定書"と題された紙に、それぞれの名前をサインする。

 

 座っている位置と利き手の都合上、先にURA会長が、そして後に俺が名前を書き入れる。

 

パシャ!パシャ!パシャ!パシャ!パシャ!パシャ!パシャ!

 

 すると、パチンコの激戦区かってぐらいとてつもない数のフラッシュが焚かれる。

 その瞬間、俺は悟った。

 

 あぁ、これ絶対新聞の見出し写真に載るやつだ――と……

 

 

 

 

 

「――――フッフッフ――――速報を聞きましたよ――――交渉が成功して、良かったですね――――色々と手を回した甲斐がありましたよ、フッフッフ――――」

 

「そうですわね……。大きな仕事を終えて、何よりですわ」

 

 記者会見を終えたその日の夜、急遽シンボリ家とメジロ家の会食に招かれたため、今俺は高級レストランにいる。

 

「自分の力だけでは、到底中央に太刀打ちできなかったはずです。私の無理なお願いを聞いてくださって、心よりお礼申し上げます。本当に、ありがとうございましたッ…!」

 

 中央という苔むす岩の如く動かない意思を動かすためには、地方というの名の外野である俺の説得だけでは、はっきり言って力不足だし、心に響かない。

 

 そこで俺は、「使えるものはなんだって使っちゃうぜ!」の精神で、今まで築き上げてきたコネを総動員することにした。

 

 中央と関わりが深いメジロ家やシンボリ家といったウマ娘名家はもちろんのこと、北海道在住のURA関係者にも協力を持ち掛けたり、意図的にメディアにリークさせ、地方中央協調支持の世論を形成したりして、内からも外からもじわじわと圧を掛けていった。

 

 そうした手厚い援護射撃もあって、やっとの思いで中央との協力体制を構築することに成功したのである。

 

 この協定によって、地方所属のまま中央のレースに出られるようになった他、これとは別に、ホッカイドウシリーズ限定ではあるが、中央との転校・転入をより密接な協力体制や業務効率化によってスムーズに行えるようにする協定を、さりげなく捻じ込む事に成功した。

 

 これにより、"ホッカイドウシリーズは中央へ転入しやすい"というメリットを得ることができ、これはホッカイドウシリーズの魅力……ひいては利益へとつながるだろう。

 

 オグリキャップのようなシンデレラストーリーを生むと共に、オグリ・クラシック問題の再発を防ぐ事に役立つはずだ。

 

 また、この中央との協定と並行して、実はもう一つ大きな協定を結ぶことに成功している。

 

 それはズバリ、去年から協議していた"北日本地方レース協定"である。

 

 おおむね中央で結んだ協定と同じであるが、強いて言うのならば、より広大で自由度の高い転入体制を築き上げたことによって、ウマ娘自身の適性に合った学園に入り直せる他、交流戦を増やしたり、以前までトレーナーが所属校を変える場合は一度辞職して再度就職しなければならなかったが、協定によってその手間を省けるようにした。

 

 さらに、これはまだ正式には定まっていないものの、アプリウマ娘のアオハル杯をモデルに、学園対抗の特別レースを実施する予定もある。

 

 それはともかく、見方によっては"地方中央間協定は北日本地方レース協定の廉価版"とも解釈できることに、お気づきだろうか。

 実は、中央との交渉の際、前身である地方レース協定の締結にて培われたノウハウもまた、大いに役立ったのである。

 

 かくして、外部的、内部的の様々な要因が緻密に連動したことによって、地方と中央の協力というビッグプロジェクトを成し遂げることに成功したのである。

 

「――ウフフ、協定を結ぶついでにURAを改革してくれたらよかったのにねぇ」

 

「いやぁアサマさん、あれほどデカいと身動きが取れないというか…北海道限定だから成功したみたいな一面がありますからねぇ…」

 

「――――まぁ――君なら――なんだかんだ言ってできそうだけどもね――――」

 

「そ、そんな無茶なぁ……」

 

 

 

 

 

『中央と地方 雪解けへ!冷戦終結か!?』

 

 誰もが予想だにしなかった報が、全国各地へ瞬く間に広がった。

 

「こうであってほしいと思ったが、まさか本当に」というのが、大半の民衆の感想だった。

 

 この先進的な取り組みは、すぐに効果を発揮することとなる。

 

 ホッカイドウの"末永く走れるトレーニング"によって鍛えられたウマ娘は、当時のURA関係者の低い予想を裏切り、対等に渡り合う大活躍を収めることとなった。

 

 その中には、北海道の田舎にて暮らす、日本一を目指したあるウマ娘がいた……

 

―2022年、理事長亡き後に放映されたドキュメンタリー番組のフレーズより引用―

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